軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

672 食欲パワー

ベリオス王国の王都を出立した俺たちは、数日後にはクランゼル王国へと戻ってきていた。

ベリオス王国で受けた依頼の最終確認や、王都での買い物で数日かかったのだ。

だが、おかげで使い切ったポーション類は多少補充できたし、食材なども仕入れることができた。フランが気に入ったマーボーカレーなどもたくさん作ってやることができるだろう。

時間をかけて王都を巡った甲斐があったというものだ。

いや、一番時間がかかったのは、フランとウルシの買い食いだけどね。買い出しの合間に、有名店はほとんど回っただろう。

『久しぶりのクランゼル王国だな』

「ん」

『国境を越えただけなのに、妙に懐かしい気がするぜ』

この世界に来て初めて降り立った場所だからなのか、妙に懐かしさを感じる。俺にとっても、ここが特別な国になっているのだ。

だが、フランは俺の感傷など知ったこっちゃないとばかりに、ウルシの背にヒラリと跨った。そして、南をビシッと指し示す。

「ウルシ。急ぐ。時間がない」

「オン!」

フランの言葉に、ウルシが全速力で走り始めた。

フランだけではなく、ウルシも真剣な表情だ。どこか焦っているようにも見える。

その焦りを表すように、フランとウルシの旅は強行軍であった。いつもなら休むタイミングでも休まず、魔術で体力を回復しながら、一直線に進んでいく。

食事さえ走りながらだ。ウルシが疲れたら、フランが自分の足で走り続ける。

俺たちが現在向かっているのはアレッサだ。

近くまで来たんだから、クリムトやアマンダに挨拶をしておかないとね。

だが、真の目的地はバルボラである。

急げば料理コンテストに間に合うかもしれなかった。参加は難しいだろうが、フランとウルシの目的は屋台なので、祭りの最中に間に合えばいいのだろう。

そのために、限界を超えるつもりなのだ。

「たとえ足がへし折れても、絶対に屋台に間に合わせる!」

「オン!」

5時間後。

「もう行かれるのですか?」

「ん」

「あと半月もすればアマンダさんも帰還すると思うんですがね?」

「それだと間に合わない」

「依頼の最中でしたか? それでは仕方ないですね」

俺たちは無事アレッサに辿り着き、以前世話になったドナドロンドなどに軽く挨拶回りをした後、冒険者ギルドでクリムトと情報交換をしていた。

因みに、アマンダは北の国境の偵察をするために、アレッサを空けているという。

大魔獣の放っていた凶悪な魔力は方々に届いていたようで、クランゼル王国でも観測されたらしい。そのため、多くの冒険者に国境の偵察依頼が出されたようだ。

俺たちが伝えた大魔獣事件の情報は非常に喜ばれた。ああ、秘密にしなきゃいけないことはキッチリ黙っているぞ?

対してクリムトからは精霊魔術や、デミトリスについての情報をゲットしている。精霊魔術に関して目新しい情報はなかったが、デミトリスに関しては色々と興味深い話が聞けた。

単騎でゴブリンスタンピードを鎮めた話や、戦争で敵国の城に突っ込んで国王の首を取った話。不動という異名の元になった、とある橋の中央に1人で陣取り、侵略してきた敵軍相手に3日3晩その場を動かずに橋を守り切ったという話など、物騒な逸話は枚挙に暇がない。

最近では落ち着いたが、好々爺と呼べるような人物ではないだろう。また、今でも自分は修行中であると称し、各地で魔獣を狩っているそうだ。

色々と面白い情報も聞けたし、短期間でもこの町に戻ってきてよかった。

「じゃあ、いく」

「ああ……。私だけフランさんに会ったと知ったアマンダさんが、ブチブチと文句を言う様が想像できてしまいます……」

すまんクリムト。アマンダによろしくな?

『で、もうバルボラ間近か。早かったな』

「ん。頑張った」

「オン!」

2人の食への執念によって、俺たちは驚くほど早くクランゼル王国を縦断していた。

町のそばをウルシが走り抜けると警戒させてしまう可能性があるので、町を避けて蛇行しながら走っても、北の国境からバルボラまで4日で到着している。

恐るべし、食欲パワー!

中央部にある険しい山岳地帯を、わずか1日で踏破できるとは思ってもいなかった。

多分、富士山よりも高くて険しい山が並んでいただろう。下手したらヒマラヤ以上?

だがフランは寒さや低酸素を物ともせず、時には空中跳躍を使い崖を駆け上り、クレバスに落ちても這い上がり、山脈を一直線に進んでみせたのだ。

空中跳躍が使えないほどに吹雪いた時にも休まず、障壁を張りつつロッククライミングであった。ヘソ出しの衣装が見てるだけで寒そうなのだ。

こういう、地球人と比較できるような姿を見ると、改めてこっちの人間たちの超人具合がよく分かるな。

また、かなり強い魔獣も出現したが、フランとウルシの勢いを止めることはできなかった。むしろ、僅かな休憩時間に美味しくいただきました。

他にも色々と新作料理を作ったが、俺も雪山で変なテンションになっていたらしい。ちょっと頑張り過ぎて、10種類以上の新作料理を作ってしまった。

特に好評だったのが、雪山の上で見つけた雪苺と氷河を使って作ったスムージーである。魔術で温めた簡易かまくらの中で飲む雪苺スムージーが、かなり美味しかったようだ。

カレー以外であれほど食いついたのは久しぶりなんじゃないか? 数時間足を止めて、雪苺を大量に採取しまくったほどなのだ。氷河もたくさん収納してあるから、いつでもスムージーが作りたい放題である。

それ以外の収穫だと、新スキルがいくつか手に入ったことかね?

雪走り、雪潜り、雪中遊泳の3つだ。どれも、雪の中での行動を補助するスキルである。限定された場所でしか使えないが、いざという時にあっても困らないスキルたちだろう。

俺のお気に入りは雪中遊泳だ。まるで水中にいるかのように、雪の中を泳げるのだ。フランがこれをやると一気に体が冷えるけど、無機物の俺には関係ないからね。

『じゃあ、バルボラに入ったら、まずは料理ギルドに向かってみるか』

「ん!」