軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

662 彼女の名前は

ウィーナが出会ったことがあるという、多くのインテリジェンス・ウェポンたち。

その中でも珍しいという、狂っていないインテリジェンス・ウェポンの情報は、是が非でも知りたかった。

湖の異変の原因を突き止めたら教えてもらえることになっていたんだが……。原因を突き止めるどころか、大元を消滅させてしまったからな。

当然、解決という扱いで、情報を教えてくれるらしい。

「まだ彼女が現存しているかどうかわからないけど……」

「彼女?」

『女なのか?』

俺たちは驚きの声を上げてしまった。

男だなんて決まっているわけじゃないんだが、過去に出会った剣の人格は全てが男だった。

俺もそうだし、魔剣ゼライセも魔剣ゼロスリードも、神剣ファナティクスも基本人格はそうだった。そのせいで、無意識に相手が男だと思ってしまっていたらしい。

アナウンスさんは女性だけど、元人間なわけじゃないしね。

『女か』

中に入っている精神が元々人間のものならば、当然性別がある。

いや、剣に性別などないといえばそうなんだが、やはり中の精神の性別は重要なのだ。だって、俺が女性風呂に入ったら事案だろ? きっと、色々な人に怒られるだろう。

フランの場合は子供だし、俺は保護者だからぎりぎり許される。そこは譲れんが、他の女性のいる風呂にはちょっぴり入り辛いわけだ。

「話を続けていいかしら?」

『おっと、すまん。ちょっと驚いちまった。続きを頼む』

「ごめんなさい」

「私が彼女と出会った場所は、呪われた大陸ゴルディシア」

『トリスメギストスが滅ぼしたっていう、例の大陸か……』

世界を滅ぼしかねない、最悪の魔獣に滅ぼされた大陸。今はその魔獣を押し止めるための、巨大な結界に覆われているそうだ。そして、世界各国から派遣された騎士団や冒険者が、魔獣と戦い続けているという。

確かに、インテリジェンス・ウェポンが存在するにふさわしい場所かもしれなかった。

『ウィーナレーンがそのインテリジェンス・ウェポンと持ち主に出会ったのは、1000年以上前なんだろ?』

「ええ」

ということは、持ち主が代わっている可能性は高いだろう。

『まだゴルディシア大陸にいる可能性は低そうだよな……』

「ん……」

「いえ、それは多分大丈夫。むしろ、彼女が破壊されていないかの方が心配ね」

「?」

『どういうことだ?』

「使用者はまだ生きているから」

『はぁ? マジか?』

1000年だぞ? いや、それでも生きている存在が全くいないわけではない。ウィーナたちハイエルフなど、その筆頭だ。

『もしかして、インテリジェンス・ウェポンの持ち主は、ハイエルフ?』

そう尋ねてみると、ウィーナは首を横に振った。ハイエルフではないらしい。

『じゃあ、どんな奴なんだ?』

「所持者は不老不死の罪人。名はトリスメギストス」

「えっ?」

『あの?』

フランが驚きの声を上げた。それだけ、飛び出した名前が衝撃的だったのだだろう。

何せ、お伽噺に語られるような超有名人にして、史上最悪の罪人と言ってもいい存在なのだ。

「トリスメギストス……」

『神罰で永遠に魔獣と戦い続けることを強制されたっていう、竜人の王様だったか?』

「そうよ」

だが、それで思い出した。

『以前、フレデリックが、トリスメギストスがインテリジェンス・ソードを持ってるって言ってたな』

ファナティクスに支配され、暴走した半竜人の少女ベルメリア。彼女の守役にして、自身も半邪竜人という種族だった男性である。

ゴルディシア大陸出身であるらしく、色々と情報にも詳しそうだった。

王都での事件後、姿を消したらしいが、彼がファナティクスの存在を知った後に、そんな話を漏らしていた。

2人の話に出てきたインテリジェンス・ウェポンは、同じ存在だったってことか。

「名前は――いえ、銘はファンナベルタ」

『ファンナベルタ』

それが狂っていないインテリジェンス・ウェポンの名前か。

「そう。かの竜人王の副官にして相棒。冷血の魔女。虐殺剣士。黄金王の影。様々な異名を持っていた高位魔術師であり、自ら望んでインテリジェンス・ウェポンになったエルフ。それが彼女よ」

『もとエルフ!』

だから、ウィーナたちと知り合いなのかもしれない。

『今の異名を聞いた感じ、友好的に話を聞くのは難しそうか?』

「そうね。少なくとも、とっつきやすい相手ではなかったわね」

トリスメギストスの副官として、彼の補佐をすることを生き甲斐にしているような女性であったらしい。

「トリスメギストス至上主義者ってところかしら?」

『……それってさ、剣になる前から狂ってたとかいうオチじゃないよな?』

最初から狂ってたから、剣になってもこれ以上は狂いません的な?

「まあ、少なくとも狂っていなかったとは思うわ。狂信者ではあったかもしれないけど。それに、剣になって千年以上の間、変わらない精神を維持できているということは確かでしょう?」

『それはそうだな』

狂わない方法と、自分を保つということはイコールと言ってもいい。剣にならずに、俺として存在し続けられる方法があるなら、ぜひ聞いてみたかった。

あっちの、剣に成り下がった自分を見たことで、改めてそう思う。

「ゴルディシア大陸……」