軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

656 力、補充

シエラが反対しなくなったことで、落ち着いてゼロスリードから力を供給してもらうことができる。

もうバレてしまったわけだし、俺が直接指示を出すことにした。

『ゼロスリード。今からお前の力を貸してもらう。抵抗せずに、ジッとしていてほしい』

「……わかった」

やはり、剣に話しかけられることに違和感があるんだろう。ゼロスリードがどんな顔をしたらいいのか分からない様子で、躊躇いがちに頷いた。

皆が声も発さずに見守る中、俺は邪気支配を発動する。

なるほど、確かに支配だ。ゼロスリードから漏れ出している僅かな邪気を、俺の意思通りに操ることができた。

次はゼロスリードの中の邪気だ。

『いくぞ』

「ああ」

邪気支配の対象を、ゼロスリードの内側の邪気へと広げる。

ゼロスリードの表情は変わらない。何をされてもいいという覚悟があるからだろう。

そんな風に落ち着ている状態でも、やはり邪人は邪人。その中には凶悪な邪気が流れ、渦巻いている。

これが、高位の邪人から生み出される邪気か。

邪気支配によって今までよりも邪気を詳細に感じ取れるようになったが、寒気がするほどの圧迫感があった。

それでも、邪気支配を使い、ゼロスリードの邪気へと干渉を強めていく。

自画自賛だが、意外と上手くいっているんじゃないか? 多分、俺は魔力操作や気力操作が得意なのだと思う。

肉体がない分、苦痛や疲労といった負担が少ないし、俺自身が何をするにも魔力などの流れを操る必要があるからな。普通の人間よりも、この手のスキルに慣れているのだ。

ゼロスリードの身に纏う邪気が、僅かに俺の意思に従い始めるのが分かる。そして、段々とゼロスリードから引き剥され、俺に向かって流れができ始めた。

『よし、この調子だ……』

「む」

ゼロスリードが軽く身じろぎする。本人にも、自身の邪気が外部から操作されているのが分かるのだろう。

だが、やはり抵抗があるな。

ゼロスリードは完全に身を委ねてくれているのだろうが、それで完璧に邪気を操れるわけではないようだ。

他者の支配下にある邪気だからだろう。特に、ゼロスリードのような高位邪人の邪気を支配する場合、難易度は高いはずだ。

逆に、ゴブリンやオーク相手だったら、もっと楽に邪気を吸い出せるのだと思う。今度試してみよう。

それでも根気強くスキルを使い続けると、僅かずつではあるがゼロスリードの中から邪気が引き出され、俺へと流れ込んでくるのが分かった。

『あとは、この邪気を魔力に変換すればいいのか?』

まだ試してはいないが、邪気支配スキルを使えば邪気を散らして、この力を魔力に変えることができそうだった。

しかし、アナウンスさんがその言葉を否定する。

《否。邪気支配スキルの効果により、邪気をそのまま扱うことが可能です》

『え? 魔力と邪気を両方使用可能ってことか?』

《是。魔力に比べ効率が低下しますが、変換することによる目減りに比べれば、邪気をそのまま使う方が得られる力は大きいでしょう》

いやでも、それって大丈夫なのか? いくらスキルのおかげとはいえ、邪気をそのまま使うなんて……。

正直、今の俺が耐えられるのだろうか?

『邪気を俺の中に通しても、平気なのか?』

《試算では、一時的であれば問題ありません。また、仮称・アナウンスさんの演算補助により、一時的に邪気による影響を最低限に抑えることが可能です》

『おお、そうなのか! さすがアナウンスさん!』

《邪気の影響を、個体名・師匠の内部において、影響力の少ない場所に優先して流し、基幹部分を保護します》

つまり、邪気によるダメージを、あまり重要じゃない場所に分散させるってことだろ? それに、一ヶ所のダメージが少なければ回復も速いだろうし。

『アナウンスさん! よろしく!』

《是。制御はお任せください》

よーし、これであとは、ゼロスリードの体調次第だろう。こっちは少しずつ、邪気を吸収していこう。

『じゃあ、次はウルシだ』

「オン」

『お前もかなりキツイだろうが、ここは踏ん張ってくれ』

「オン!」

『いい返事だ』

俺は同時演算スキルを使い、魔力吸収を連続して使用していく。ウルシの場合、俺と魔力的な繋がりがあるおかげか、かなりスムーズに魔力を吸収することができた。

《必要魔力を充填するまで、残り12%》

「クゥ……」

『もう少しだ。頑張れ!』

「グル……」

《必要魔力を確保しました》

『よし!』

俺が魔力吸収を止めた瞬間、ウルシは無言でその場に伏せた。意識はあるようだが、疲労でまともに声が出ないらしい。

再生も止まってしまい、血が滲み出しているのが見える。

だが、ここで謝るのは違うだろう。

『よく耐えたぞウルシ! お前のおかげで、魔力が大分回復した!』

「ウ……」

あとで念動を使って目一杯、撫でてやるからな。

《邪気の充填も、完了しました》

『よっしゃ!』

それじゃあ、いっちょやってやりますか!

俺は再び精霊察知によって感じ取ったレーンとウィーナレーンの縁に向かって、スキルを使ってみた。

『精霊の手、起動!』