軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

628 大魔獣を倒すための作戦

「私たちが、大魔獣を弱らせる」

「オン!」

「そうすれば、レーンを分離した後に、邪神の聖餐で弱らせて、ウィーナレーンが止めをさせるんでしょ?」

突如、大魔獣を攻撃すると言い出したフランに、ウィーナレーンが呆れたような視線を向けている。

レーンも似た表情だ。さすが双子。レーンの方がかなり若い外見ではあるが、似た表情をするとそっくりだ。

まあ、だからレーンは姿を変えていたんだろうが。ただでさえ不思議な少女が、ウィーナレーンそっくりとなれば、何らかの騒ぎになりそうだしね。

「私とレーンの話を聞いていたの? 大魔獣には近寄れない。先制攻撃の一撃でどうにかできるほど、甘い存在じゃないわ」

「へいき」

「いえ、気合でどうこうなる問題じゃないのよ?」

「私とウルシは、邪神の支配が効かないから、へいき」

「へ?」

「は?」

「邪神の支配を無効化できる。まったく問題ない」

「……えぇ?」

「そんなの、ありえない……」

フランの発言を聞いたウィーナレーンと、レーンが、目を点にした。シエラも同じように驚いている。

「……嘘じゃないのよね?」

「……そんな能力、聞いたこともない」

「でもほんと」

フランがそう主張しても、周囲の人間は信じてはいないようだった。明らかに疑いの眼差しを向けてくる。

「正直、この状況でフランが暴走し始めたら、どうしようもなくなるのだけど?」

「でも、本当にフランが大魔獣を弱らせられるなら……。レーンを分離させることができるかもしれない」

「まかせて」

結局、フランがどれだけ主張しても、ウィーナレーンたちの疑念が晴れることはなかった。邪神の支配を無効化できるというのは、それだけ信じ難い話なのだろう。

強者であれば支配を跳ね返せるが、それも無効化しているわけではないのだ。耐えているだけである。

邪であっても、神は神。その力を無効化できる存在など、居るはずがない。それが彼女たちの常識であるようだった。

「……俺も、同行する」

「シエラ? 儀式はいいの?」

「大魔獣にダメージを与えた後、儀式に復帰すればいい」

「その前に、邪神の支配を忘れているんじゃないの? さっきも言ったけど、私のような精霊体じゃないと、操られてしまうわ。まあ、フランという例外がいたわけだけど」

「信じてくれる?」

「嘘の気配がないもの……。それに私の勘が、やらせた方がいいと言っている」

「勘?」

「これでも時を司る精霊よ? ただの勘じゃないわ」

未来視とまでは行かなくとも、より良い選択肢を選び取る力のようなものがあるようだ。

「その勘が、シエラも大丈夫そうだと言っているんだけど……」

「俺の場合は、この剣のおかげだ。ゼロスリードおじちゃんが封じ込められた魔剣・ゼロスリード。そのおかげで、邪神の支配を防ぐことができる」

ゼロスリードは邪人だったから、邪神の支配に対して耐性があるのか? いや、邪人だったら、より邪神の影響を受けるんじゃないのか?

「ゼロスリードおじちゃんには、共食いというスキルがあった。そのおかげで、邪神の力を逆に吸収できるんだ」

そうか、あのスキルのおかげか。所持している俺が想像する以上に、使える範囲が広いようだった。これは、俺も少し研究してみるべきかもしれない。

「じゃあ、私とウルシとシエラで邪神を攻撃する」

「お待ちなさい! 邪神の聖餐を使うと言っても、そんなに簡単に儀式を再開することなどできないわ!」

「そうなの?」

「当たり前でしょう」

まあ、考えてみれば当然か。

だが、シエラたちの手が借りられるのであれば、こちらとしても非常に有り難い。戦闘力ではフランに劣るが、邪気に対しては俺たちよりも詳しいはずなのだ。

そこで、どうするのが最も良いのか、その場で話し合った結果、とりあえず全員で協力することになったのであった。

ウィーナレーンとレーンも、この時ばかりは不穏な空気になることもなく、言葉を交わし合った。

「じゃあ、纏めるわよ。まず、私が邪神の聖餐を使用するための儀式を開始する。その時点では、シエラとロミオ、そしてゼロスリードたちがここにいる必要がある」

「ん」

「その間に、フランが攻撃を開始し、儀式の発動が終了した時点でシエラも攻撃に加わる」

「任せてくれ」

邪神の聖餐が発動したとしても、その効果は一瞬で発揮されるわけではないらしい。そもそも、邪神の聖餐とは、対象の邪人たちから力を吸収し、自らの力とする能力だ。

その過程で、弱った邪人に対して命令を下せるというだけだ。

今回は大魔獣の中に眠る邪神の欠片から邪気を奪い、本来であればロミオに流れ込んでしまうはずの邪気を、ゼロスリードたちやシエラに分散させることが目的だった。

邪神の聖餐を発動して邪気の流れを作ってしまえば、シエラたちが儀式場から離れても問題はないらしい。

つまりそこからは、シエラと魔剣ゼロスリード。そして今のゼロスリードも戦いに参加できるというわけだ。

「そして、その後の結果は、あなたたちの頑張り次第になるわ」

「大魔獣の力をきっちり削りきることができれば、レーンが分離してくれた後に私が大魔獣を滅ぼす」

「でも無理だった場合は私は分離せず、ウィーナレーンの封印術で再封印する」

上手くいけば全員の望みが叶う。

失敗した場合も、最低限封印までは持っていけるだろう。正直、問題を先送りにするだけの、臭い物に蓋をするだけの解決になってしまうが。

大魔獣が復活するよりはずっとましだ。

ただし、フランはそんな終わり方するつもりはないようだが。

「きっと、全員が笑顔で終われるようにしてみせる」