軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

615 魔石兵器破壊

フランは俺を構えると、魔石の前で大きく脱力した。

その状態で、ゆったりとした呼吸を繰り返しながら、集中力を高めて。

その姿は、ついさっき黒雷神爪を使おうとして魔力を練り上げていた姿にそっくりだった。ただ、今の方がより深い。

一気に魔力を練り上げるのではなく、時間をかけて少しずつ力を溜めていくつもりなのだろう。

正直、止めたい。先程失敗したということは、まだフランには早いということである。そんな技を無理に使うことは、フランへの負担がかなり大きいだろう。

魔力統制などの上位スキルを俺と共有しているため、無理をすれば成功できてしまうからこそ、心配だった。

しかし、すでに大量の魔力をその身の内で制御し、瞑想状態に入っている。ここでやめさせるのは逆に危険だろう。

それに、他に手がないのも事実だった。

こうなれば仕方ない。俺は風の結界などを維持して、フランの補助をするだけだ。

それにしても、先程と比べると魔力の流れに無駄が少なくなっているように感じた。もしかして、1度使おうとしたことで何かを掴んだのだろうか?

体内を循環する魔力の流れや、黒雷の密度に、さっきのような歪みが圧倒的に少ない。無論、完璧ではないし、フランへの負担が減ったわけではない。

その証拠に、我慢強いフランが苦悶の表情を浮かべている。この顔を見るだけでも、かなりの苦痛がフランを襲っているのが分かった。

だが、ヒールなどをかけるわけにもいかない。今のような微妙で精密な魔力操作を行なっている最中に、他の魔力を浴びせられるのは邪魔にしかならないからだ。

俺は心の中でフランにエールを送りつつ、静かにフランを見守った。

そんな中、不意にレーンが声を上げる。

「ゼライセがくるわ!」

『……! そうか』

まずい。しかし、俺はフランに声をかけることはしなかった。フランもレーンの言葉は聞こえていたはずだが、一切反応しない。

俺も、それ以上は何も聞かなかった。今は、フランの邪魔をするべきではない。

それにしても、俺にはゼライセの気配が捉えられない。ヴィヴィアン・ガーディアンの目を誤魔化すために、透過能力を使っているのだろう。

しかし、レーンには分かっているようだ。時の精霊だからか?

まるで人間の少女のような、不安げな表情のレーンを横に、フランは静かに呼吸を繰り返す。

そうして、短く濃密な時間が過ぎる頃、水中に飛び込んでくる影があった。

ゼライセだ。懐から魔石を取り出すと、それを足元に投げ出す。すると、強力な魔力が発せられ、周囲の景色が一変していた。

どうやら、風を操作して、ドームを生み出す能力を持っていたらしい。あれも魔石兵器の一種か。

水中に作り出された空気のドームの中で、ゼライセが魔剣・ゼライセを抜き放つ。

「追いついたよ! そこまでにしてもらえるかい?」

ゼライセだった。かなり焦った表情である。魔石兵器には鉄壁の防御を施してあるはずだが、それでも不安なようだ。

それだけフランを評価してくれているってことかね? それに、魔石兵などをあっさり倒されたことで、警戒されているのもあるだろう。

だが、一足遅かったな。

「!」

カッと目を見開いたフランが、全身の力を使い、渾身の突きを放った。足首から膝、腰、肩、肘、手首と、全ての力が余さず伝達された、美しい突きだった。

「黒雷神爪!」

同時に、俺の切先が黒い雷で覆われる。

先程フランが放とうとした黒雷神爪は、黒雷の刃を作り出し、自ら手に持って振るう技だった。

だが、黒雷神爪は武器に纏わせるのが本来の姿である。

当然、使用難度もこちらの方が簡単だろう。

フランもそれは分かっていた。それでいながら単独で使用するタイプを選んだのは、俺を心配してのことだ。

日に2度も神属性を纏うなど、無茶が過ぎる。剣神化でボロボロな俺が、さらに酷い状態になるのは明らかだった。

だが、今はこの魔石兵器を破壊せねば、多くの人が不幸になる。絶対に成功させねばならなかった。

それに、本日2度目の剣神化を使うよりは、一瞬だけ黒雷神爪に使われる方が、まだ俺への被害は少ない。

だからこそフランは、突きを放つ瞬間まで、黒雷神爪を発動しなかったのだ。俺が神属性を纏う時間を、できるだけ少なくしようとしてくれているのだろう。

「はぁぁ!」

『らぁぁ!』

ガギィンン!

手ごたえは鈍い。

先程、魔石兵器に向かって天断を放った時と、そう変わりはなかった。しかし、さっきとはその結果が大きく違っている。

『きたぁぁ!』

「ん!」

目の前にあった巨大な紫色の魔石が、綺麗さっぱり消え去っていた。俺の中に、大量の魔力が流れ込んでくる。

『うおおおおおおおおおおおおおおお――!』

なんだこれは! 今までにない、凄まじい魔力の奔流だ! ランクB魔獣の魔石とさえ比較にならないほどの魔力である。

『――』

快感など通り越して、頭が真っ白になる。

(師匠?)

『――』

(師匠!)

『――フ、ラン?』

(だいじょぶ?)

『あ、ああ。すまん。見苦しいところを見せた』

危なかった。今、ゼライセに襲われていたら、俺は全く役立たずだったろう。それだけ、あの魔石兵器に使われている魔石が高位の魔石だったのだ。

ああ、やばい。まだ少し混乱してしまっている。しっかりせねば。

「……おいおい……。本当に……?」

しかし、ゼライセはゼライセで、驚きの顔で立ち尽くしていた。

「前の僕が、君だけには気を付けろって言った意味がようやく分かったよ……」