軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

613 ゼライセの嘘

ゼライセが構える魔剣・ゼライセから、凄まじい魔力が吹き上がる。

その魔力だけでも、侮れない相手だと分かる。だが、当然それだけではない。

『フラン、魔剣・ゼライセは相当なスキルを持っているはずだ。下手したら、ゼライセが持っていたスキルをそのまま全て所持しているかもしれん! 気を付けろ!』

「ん!」

まず気を付けなくてはいけないのが、魔術やスキルの連打だろう。俺とフランの基礎戦術と言っても過言ではない。

剣と使い手が同一スキルを使えるということは、向こうもそれが可能であるということだった。

「あはははは! いくよ!」

「はぁ!」

「はは! いいね! その剣とも十分打ち合える!」

俺と魔剣・ゼライセが打ち合わされるたびに、相手の耐久値がガンガン削られていく。それでも、一撃で破壊されずに自己修復で回復を続けているため、結果としてフランと斬り合うことができていた。

さらに、その状態でも魔術が飛んでくる。

「む」

『俺が防ぐ、フランは斬り合いに集中!』

「ん!」

なるほど、敵に回すとその厄介さがよく分かるな!

一見すると本人に詠唱をしている素振りがないのに、いきなり大魔術が発動する。まるで無詠唱だ。

隠密系や隠蔽系のスキルのせいで、魔力の流れを察知することも難しい。俺たちのように剣が魔術を放つと分かっていても、虚を突かれるのだ。初見の相手が魔術を躱せないのもしかたないだろう。

しかも、インターバルもおかしい。スキルや大魔術を放った直後は、どうしても体が硬直し、動きが鈍る。しかし、ゼライセと魔剣が交互に攻撃を繰り返すため、硬直が無視されるのだ。

俺たちがいつもやっていることだが、やられてみるとその理不尽さがよく分かった。

明らかな大技を放った直後、全く同じ大技を間髪容れず放ってくる。チャンスと思って突っ込んだ相手にとっては、悪夢だろう。

さらに面倒なのが、例の透過スキルだ。ゼライセの気配が消失し、こっちの攻撃がすり抜けてしまう。

ただ、その使い方がさっきとは全く違っていた。先程まではオンオフの間隔が長かったはずだ。

一度この謎スキルを使用したら、しばらくは使いっぱなしだった。そして、その間は向こうからもこっちに攻撃はしてこなかった。多分、スキル発動中は攻撃ができないのだろう。

しかし、今は違う。頻繁にオンオフを繰り返し、ガンガン攻撃をしてくる。

魔剣・ゼライセを使うことにより、スキルの持つなんらかの副作用を軽減できるようになったらしい。

「ほらほら!」

「ちっ!」

「あはは! 殺せなかったかぁ。残念!」

対して、こちらはフランと大人ロミオ――シエラの2人がかりでありながら、攻め手に欠いていた。

俺たちは単純に消耗が大きい。俺は剣神化の影響でボロボロだし、フランも魔力を消費してしまっている。

ゼライセのような油断ならない相手に対して、残った力を全て使うような迂闊な真似はできないし、結局は相手の動きを見ながらの戦い方になってしまっていた。

ゼライセが実体化している間。つまり攻撃中にカウンターを狙ってはいるんだが、そこは向こうも分かっている。上手くタイミングをズラされ、狙った3回とも失敗に終わっていた。

シエラも、スキルを消失させたあの謎能力を使う気配はない。こっちに気を使っているのか?

フランはシエラに近づき、声をかけた。風魔術でゼライセには聞こえないようにしてある。

「ねぇ。ロミオ……シエラ? ロミオ?」

「シエラでいい」

「シエラ、さっきの力は使わない?」

「まだ無理だ」

それで分かった。連続での使用ができない能力なんだろう。消耗が激しいのか、代償が大きいのだと思われた。

あれほどの能力だ。ポンポンと使えるわけはなかった。

それにしても、ゼライセとの戦いを続けながら、俺は妙な違和感があった。

こんなものなのか? 試し切りとか言っておいて、ゼライセが本気で攻撃しているように思えない。勿論、その攻撃は激しいし、気を抜けばやられるだろう。

しかし、インテリジェンス・ウェポンである魔剣ゼライセを使っておきながら、この程度なのだろうか?

俺にはそこが納得いかなかった。

試運転がてら軽く戦っているのかとも思ったが、どうもそれも違うようなのだ。会えば挑発じみた言動を繰り返すゼライセだが、今はことさら意識してフランたちを挑発しているように思える。

「ほらほら! こんなものなのかい? 期待外れだなぁ!」

「逃げてもいいんだよ?」

「まだ僕を殺せると思ってるの? ムリムリ!」

「今のうちに逃げたら? 今なら見逃してあげるよ?」

「うわっ! 今の攻撃やばかったぁ! さっすがぁ! でも残念でしたー」

逃げてもいいという言動は嘘だ。だんだん分かってきたぞ。どうやらフランたちを挑発して、この場に引き留めておきたいらしいな。

つまり、足止めが本当の目的だ。この先に行かれたくないらしい。

となると、ここでゼライセを相手にしているよりも、この先に向かった方がいいだろう。ゼライセを倒せば全部終わるとは思うが、剣神化も使えない俺たちでは、確実に仕留められるかどうかわからない。

(じゃあ、どうする?)

『理想は、シエラにゼライセの足止めをしてもらうことかな?』

その間に、俺たちはディメンジョン・シフトでこの先を確認にいく。どうせ、ろくでもないことが起きているのだろう。

フランがシエラに近づき、囁く。

「奴の足を止められる?」

「何かあるのか?」

「ゼライセは、私たちを足止めするのが目的。だから、私はこの先を見てくる」

「なるほど……」

「どう?」

「分かった。俺も奥の手を切ろう」

シエラが自信ありげに言い放った。

実際、シエラと魔剣・ゼロスリードの底は未だ知れないのだ。これだけ自信ありげなのだから、任せてもいいかもしれない。

「少しだけ、奴の注意を引け」

「わかった」

軽く打ち合わせをした後、フランはゼライセに向かって突っ込んだ。

あえて見え見えのカウンターを狙うと見せかけることで、ゼライセが攻撃しにくくするとともに、フランに意識を集中させる。そこに俺が、時空魔術ディメンジョン・ソードの連撃を叩き込んだ。

魔力を過剰に注ぎ込んだオーバーブースト状態のディメンジョン・ソードは、相当な威力がある。

それが12発。全方向からゼライセに襲いかかったのだ。

理想は、透過状態を解除し、障壁かなんかで防ごうとしてくれることだったんだが――。

ゼライセは透過状態を維持したまま、その場で足を止める。そして、魔剣・ゼライセを振るって次々と飛来するディメンジョン・ソードを叩き落としていった。

時空属性まであるらしい。

だが、これも想定内だ。インテリジェンス・ウェポンを侮ることはしない。

本命は、奴の足下である。

「ガルルゥ!」

「くぅ! まさか自分がダメージを負うタイミングでっ?」

ウルシの影転移からの次元牙が、ゼライセの両足を飲み込んでいた。

ウルシはなんと、ディメンジョン・ソードの嵐に自分が巻き込まれるタイミングで、攻撃を仕掛けたのである。影から顔を出したウルシに、数発のディメンジョン・ソードが直撃した。

だが、ウルシも覚悟の上である。数か所に深い裂傷を負いながらも、その牙で確実にゼライセを捕まえていた。

そこにシエラが一気に突っ込んだ。漆黒の剣に凄まじい邪気を纏わせながら。

「おおおおおおおおお!」

シエラの手から放たれた邪気の塊が、まるで蛇のようにうねると、ゼライセの腕に絡みついた。

「邪縛黒鎖!」

なるほど、鎖っぽく見える。すると、ゼライセが急に体勢を崩していた。

「くっ! な、なんだぁ……?」

「それは邪気の鎖。どうだ? スキルの維持も大変だろう?」

どうやらあの邪気でできた鎖には、さっき使った周囲のスキルを打ち消したものと似た性質があるらしい。完璧に打ち消せはしないようだが、そのかわり持続力があるんだろう。

「これでいいだろう?」

「ん。任せた」

「え? フランさん、どこに? 逃げるのかい! しばらく見ない間に、随分と腰抜けになったね!」

「……ふん」

「あ! 待て!」

自分を無視して湖の中心へと駆け出したフランを見て、ゼライセが慌てて後を追おうとする。しかし、その前にシエラが立ちはだかった。

邪気の鎖がある限り、シエラを無視して追ってくることはないだろう。

「おいゼライセ。お前の相手は俺だ」

「くっそー!」