軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

577 サバイバル実習本番開始

ヴィヴィアン湖に到着した翌日。

学院の生徒たちは10人1組となって、セフテントの町の周辺に散っていた。薬草採取や、脅威度F魔獣の討伐を行うらしい。

ちゃんと、冒険者ギルドからの正式な依頼である。各班に冒険者ギルドに登録している生徒が必ず入っており、他の生徒は同行者扱いなのだ。

特戦クラスだけではなく、上級クラスなどにもレディブルーで普段から冒険者として活動している生徒は多い。彼らにとっては簡単な依頼に思えるが、そう簡単な話ではないようだ。

レディブルーとヴィヴィアン湖周辺では、植生も棲息動物も気候もかなり違う。いつもと同じと考えていると、なかなか手こずる可能性もあった。

各班には教官が1人、冒険者が1人付いており、精霊の監視もあるようだ。イレギュラーがなければ、危険は少ないだろう。

「チャールズっす」

「フラン」

「よろしくお願いしまっす。黒雷姫さんが一緒だなんて、心強いっす」

「よろしく」

フランも1つの班の護衛を任されている。同行する冒険者は、ランクEの若手冒険者だ。

教官と冒険者はバランスがとれるようにしているらしく、強い冒険者には弱い教官。弱い冒険者には強い教官がセットになるように調整されているようだった。

それ故、教官で一番強いフランに、一番弱いチャールズが組まされたのだろう。しかも、狙ったのかどうかは分からないが、同じ班にキャローナとカーナがいた。

「よろしくお願いしますわ。フランさん」

「ん」

「私も、またフランとご一緒で嬉しいわ」

最初、チャールズの頼りなさそうな様子を見て不安げだった生徒たちも、同行する教官がフランであると知って笑顔に戻る。

上級生たちはフランがウィーナレーンに次ぐ実力であると知っているからだろう。

それでも不安そうなのは、新入生たちである。彼らはフランが駆け出し冒険者にしか見えていないのだ。

ウルシの背に乗っている姿を見ているはずなんだが、実力をきちんと見せてはいないからな。優秀な魔獣使いとでも思っているのかもしれない。しかも、そのウルシは今は影の中におり、フランしかいない。

となると、明らかに駆け出しのチャールズと、子供のフランという、初心者コンビが護衛だ。そりゃあ不安にもなるだろう。

現在、フランたち第3班は薬草類の採取と、ウルフの群れの討伐にやってきていた。場所は、湖から少し離れた山の中腹である。

キャローナが地図を見ながら、先頭を歩いていた。俺やフランが手助けをすればあっという間にこなせてしまう依頼ばかりだが、今回は生徒にやらせなければいけないからな。

「小川の周辺で採取しましょう」

キャローナの言葉に不安げな表情で返したのは、カーナである。

「え? でも、いいんですか? 水辺に近づいて」

「近寄ってはいけないのは湖です。小川であれば問題ありませんわ。ですわよね? チャールズさん? この先にある川だったら近づいて大丈夫でしょう?」

「え? あ、そうっす。この先の小川であれば問題ないっす」

「ありがとうございます。では、そちらに向かいましょう」

「はい」

キャローナ、やるな。さりげなく、小川があるという情報を引き出したぞ。キャローナの持つ地図は、セフテントの冒険者ギルドで写してきたものだが、どこまで正確かは分からない。

季節によって消える川もあるし、情報が古ければやはり川がないこともある。しかし、チャールズが口を滑らしたことで、今も川があることが確実になった。チャールズがあえて嘘を言っていなければ、であるが。

まあ、単純に口を滑らせただけだろう。そもそも、本人はヒントを与えたことにすら気づいていなさそうだ。呑気にキャローナと会話している。これは他にも情報を教えてしまいそうだった。

今回の校外サバイバルにおいて、生徒たちにはいくつかの制限が設けられている。それは、ヴィヴィアン湖に近づかないというものだ。これは学院側が設定した物ではなく、冒険者ギルドに要請されたものである。

モドキの出現頻度が上がっており、危険すぎるということだった。

小川に到達したキャローナたちは、薬草類を探し始める。すると、1人の生徒が歓声を上げた。

「見ろ! これって薬草の一種だよな?」

「おー、緋水草じゃないっすか! 今は品薄なんで、高いっすよ!」

以前、俺たちも採取した緋水草だ。あの時も足りていないという話だったが、今もまだ不足しているらしい。

緋水草はこの国特有の風土病への特効薬となるはずだが、その風土病の感染が拡大しているのだろうか?

フランにその辺のことを聞いてもらう。だが、チャールズにも詳しくは分からないようだった。

「この辺はどうってことないんすよ。でも国の東側の方では需要が上がってるみたいっす。皆さんは魔術学院から来たんすよね? 詳しいんじゃないっすか?」

『いや、風土病が広がってるなんて話、全く聞かなかったぞ』

「知らない」

「そうなんすか?」

「キャローナは?」

「学院でも、特に問題はないと思いますわよ? 例年通り、他国からの新入生が数人、罹患した程度ではないでしょうか?」

キャローナも風土病が流行しているという話は知らなかったらしい。

「他の町では流行している?」

「いえ、フランさん。それはあり得ません」

この風土病は子供の方がかかりやすく、流行する時には確実に魔術学院でも患者の数が増えるらしい。逆に言えば、魔術学院で流行っていないのに、他所で流行しているなどということはありえないそうだ。

「じゃあ、どこで流行ってる?」

「それは私にもわかりませんわ。もしかしたら、もっと東の沿岸地域のみで流行しているのかもしれませんわね」

ああ、因みにフランは問題ない。緋水草から作った薬は、予防薬にもなるらしく、すでにフランにはそれを飲ませてあるのだ。

「カーナ、どうしたの?」

「え? いえ、少し気になっただけです。不足してる薬を調達したら儲かるかなーと」

「おお、さすが学院の生徒さんすね。今の話からそんなことを思い付くとは」

「商会の娘ですから」