軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

527 試験の内容

「じゃあ、何度か戦えばいいの?」

「そうじゃ。最初は手加減してもらって、ある程度の実力を見る。その後は、圧倒的な力で叩きのめして、鼻っ柱をへし折ってもらいたい。ベッキベキのボッコボコにな」

「ひひ、軟弱どもにはいい薬だよ」

ガル爺さんが腕を振り回しながら、中々過激なことを言ってくる。ジル婆さんも楽しげだ。

「いいの?」

フランは2人の言葉を聞いて、軽く首を傾げて聞き返した。これ、ジジババコンビは分かっていないだろうけど、かなりやる気満々だからね。

「さっきの奴らを見たじゃろ? なんというか、どうも気が抜けておってな」

「甘やかしてるからだろ?」

「まあ、否定はせんよ。ここらでは、どうしても命の危険のある依頼が少ないでな」

「言葉じゃあ、どれだけ言っても完全には伝わらんからねぇ」

「うむ」

弛んでいる冒険者たちをボコボコにして、気合を入れ直してほしいらしかった。力の差を見せるだけなら、他にも方法はあると思うが……。冒険者に対してはこれが一番確実だからだろう。

「ただ、いくつか注意点がある。まずは手加減の問題」

「殺さなければいいんでしょ?」

「いやいや、さすがに再起不能なほどの怪我は困る! じ、冗談だよな?」

「ん?」

「おい、ババア……」

ガル爺さんのこめかみからツーッと汗が落ちるのが見えた。ようやくフランが見た目以上に危険だと理解したらしい。

「もう頼んじまったよ」

「だ、だよな。とりあえず、未来のある冒険者たちだ。後遺症が残るような怪我はできるだけ避けたい」

「わかった。できるだけ気を付ける」

「絶対に! 気を付けてくれ!」

「ん。任せておいて」

「……まじで頼むぜ?」

大丈夫だ。フランが加減を間違えたら、俺が止めるから。まあ、できる限りは。

「あと、派手な魔法は使えん」

「なんで? 結界がある?」

「いや、単純に船内だからだ。火魔術や雷鳴魔術を使ったら、船への被害がデカイ」

「なるほど」

単純な理由だった。フランの異名の意味を知っているからこその忠告だろう。

「一応、結界やらで強化はしてあるが、お前さんが全力で魔術をぶっ放したら絶対に耐えられん」

「やり過ぎると、請求が行くから注意することだね」

『フラン、絶対に船を傷付けるな!』

(わかった)

どう考えても魔導船だし、機関部に被害でも与えたらどれだけの請求額になることか……。絶対にやり過ぎないようにせねば!

「あと、従魔がいるんだろ? そいつ、今呼び出せるか?」

「ウルシ」

「オン!」

「おお、気付かなかったぜ! 闇魔術持ちか! しかもこりゃあ……」

「ダークネスウルフ? いや、違うかね? 強そうだってことは分かるが……」

相手が人型であれば長年の経験である程度の強さを感じ取れるのだろう。体に流れる魔力の淀みのなさや、立ち居振る舞いや、視線など、判断材料は多い。フランが魔力を抑えていても強者であると察することができる者がいるのは、それ故だ。まあ、簡単に言ってしまえば冒険者の勘ということになるわけだが。

ただ、この2人は狼型の魔獣についてはそこまで詳しくないんだろう。進化して、より魔力の隠蔽が上手くなったウルシの力を測りかねているらしい。

「ウルシ、とても強いよ」

「ほう? フランが言う程か? そりゃあいい。なら、ウルシっつったか? その狼にも戦って貰いてえ」

「オンオン!」

「ウルシ、やるって」

「助かるぜ。この辺は獣型の魔獣で強いのがあまりいなくてな。ぜひ魔獣の恐ろしさも分からせてやりたいんだ。冒険者の偏りはいざという時に致命的だからなぁ」

「偏り?」

「おう。この辺の冒険者は、よく言えばヴィヴィアン湖やその周辺のプロフェッショナル。悪く言うと、尖り過ぎてるんだよ」

この周辺で必要な技能ばかりが磨かれて、他地域のダンジョンなどに行くとあまり活躍できないということが多いらしい。ここのギルドでランクCになった男が、レベルEダンジョンであっさりと死んだこともあるんだとか。

そうなってくると、冒険者たちも外に出て行こうとはしなくなる。それは地域にとっては悪くない事なので、問題視されてはこなかった。

ただ、そんなことが長く続くと、ベリオス王国内でヴィヴィアン湖周辺で活動する冒険者が低く見られるようになってくる。湖の上なら役に立つが、他の場所じゃ1ランク下で考えろ。そんな風に言われているそうだ。

「それが悔しくてな……。何とかしてーとは思っているんだが、なかなかうまくはいかないんだよ」

「だから、ウルシが協力してくれるのは本当に有り難いのさ」

ジル婆さんがそう言いながらウルシを撫でている。

「それにしても綺麗な獣だね……。こりゃあ、実はとんでもないランクなんじゃないかい?」

「さあ?」

「……まあ、船を壊さんでくれればいい」

「オン!」

「だいじょぶ」

「じゃ、そろそろ試験場に行くとするか」

試験場は、それなりに広い部屋であった。それこそ体育館くらいはあるだろう。天井は低いが、動き回るには十分だ。

その中央で、緊張した面持ちの若者が8人立っている。あれ? 事前に聞いていたよりも少し多いな。

「ああ、昨晩ランクアップ条件を満たした奴が増えたんだが、問題ねーか?」

「へいき」

「よし。それじゃあ、今回の試験官を紹介しておこうかね。冒険者のフランだよ」

「ん。よろしく」

「お前ら、幾ら相手が上のランクだとしても、子供相手に情けない姿を見せるんじゃねーぞ?」

ジル婆さん、やっぱり性格悪いね。フランの素性を詳しく説明しないつもりか。ガル爺さんもその思惑に乗るようだ。冒険者たちを煽っている。

「はい!」

「任せてくださいよ! 絶対にランクアップしますから!」

「今回は楽勝なんじゃね?」

「へっへっへ、可愛いぜ」

ご愁傷さま。