軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

528 湖の冒険者たち

「ねえ。あの人たちは?」

「あれは野次馬だね。どうせジジイが呼んだんだろ?」

「奴らも最近弛んどるからな。ここで一発目を覚ましてもらおうと思ってよ。強さを見せつけてやってくんな」

「それとも、手の内は見せたくないかい? だったら今から追い出すが」

「ううん。へいき」

はっきり言って、手の内を見せるような戦いにはならないだろう。それに、俺とウルシには分かるがむしろフランは喜んでいる。黒猫族地位向上のチャンスなのだ。

やる気になり過ぎてないか心配になる程だった。

「おお、そりゃよかった。事前に確認もせずに集めたのは悪かったな」

「まったく、ジジイは厚かましいからね」

「面の皮の厚いババアに言われたくねーんだよ!」

そんな話をしながら軽くストレッチをしていると、野次馬の中から1人の男が近づいてきた。

この中で、明らかに1段上の力を持った冒険者である。最低でもランクC。スキルや能力によってはBでもおかしくはなさそうだった。

『強いな』

(ん。鑑定は?)

『あー、どうすっか?』

(近づいてくる知らないやつを鑑定するのは当然)

『そうか?』

(ん。ばれたら、その時はその時。ぶっとばすか、逃げればいい。それだけ)

シンプルだね! 悩んでる俺が馬鹿だったらしい。

肩の荷が下りた気持ちで鑑定を使うと、やはりかなり強かった。ステータスはランクC上位くらい? コルベルトよりは大分弱いが、その分水魔術や水中行動系のスキル、罠感知などバランスがとれている。戦闘力以外の評価が高い、オールラウンダーと言えるだろう。

「やあ、押しかけてしまってすいません。私はランクB冒険者でロブレンと言います」

「ん。私はランク――」

「おおっと、名前だけにしておいてくれ」

「? わかった。私はフラン」

「ああ、今日は色々と勉強させてもらおうと思っている。よろしく」

「ん」

差し出された手を握り返すフラン。黒髪の爽やかイケメンだが、悪い奴じゃなさそうだ。それに、ランクBか。

「それにしても、ギルマス。彼女の正体をあえて隠す意味あります? 僕以外にも何人かは気付いてますよ?」

「むしろ気付かねー奴らが怠慢だ。情報を仕入れる耳も、相手を見る目も腐ってるってことだからな!」

「はは、手厳しい……」

「笑いごとか! まあ、低ランカーどもはいい。だがな、C、Dの中にも、フランを侮る奴らが多いことが問題だ! 長い間ぬるま湯につかり過ぎてて、感覚が鈍ってやがるんだ」

「まあ、ここ20年くらい、大きな事件もありませんでしたからね~」

「へらへらすんな! エースのお前がそんなだから、ヴィヴィアン湖の冒険者も馬鹿にされるんだ! 王都の奴らにはアメンボなんて言われてるんだぞ!」

「言い得て妙じゃないですか」

「ぐぬぬ」

「まあまあ、気にしたって仕方ないですよ。棲み分けしてるだけじゃないですか」

ロブレンは本気で気にしてないっぽい。どうやら、かなり大らかな性格らしいな。対してガル爺さんはせっかちなタイプだ。こりゃあ、合わないだろう。

いや、ガル爺さんが一方的に血圧上げている感じかね?

まあ、いい。それよりも気になっていることがあるのだ。

『フラン、あの子供に見覚えあるか?』

(ない)

『だよな』

フランとウルシの姿を見た直後から、ずっとこちらを睨み続けている少年がいた。他のメンバーからも疑惑や侮りの視線を向けられてはいたものの、殺気を滲ませているのはこの少年だけだ。

どこかで叩きのめしたことでもあったかと思ったのだが、フランも覚えていないらしい。

『まるで親の仇でも見るみたいな目だが』

(……知らない)

『まあ、考えても分からんし、少し気を付けておこう』

(ん)

親族が黒猫族に殺されたとか、そんな理由だろうかね? それとも、フランが倒した敵の子供とか?

「じゃあ、ランクEの2人。出ろ」

「おう!」

「分かりました」

ガル爺さんの言葉に、30代前半程度の男性と、20代半ばの女性が前に進み出る。

どちらも戦士。槍を使うようだ。このギルド、槍使いが非常に多いらしい。8人中、5人が槍使いだ。残りの内2人も魔術師と弓使いというだけなので、戦士はほとんどが槍装備ということになる。

「ダゴール先輩直伝の槍捌き、見せてやるよ!」

そう言って男が構えた槍の穂先は、まるで銛のような形状をしていた。いや、まるでじゃなくて、銛代わりに使うのか?

そう考えて、ようやく分かった。湖上であるが故に、槍が使いやすいのだろう。さらに、先輩が後輩を指導する中で、先輩の真似をする冒険者が増えれば、それで槍使いが増えることにも繋がるわけだ。

鑑定してみると、やはり槍術以外に、銛術や、投げ槍などのスキルを所持している。あとは水泳に潜水といった、水中を行動するためのスキルに加え、水上歩行なども使えるらしい。

確かにヴィヴィアン湖特化型の冒険者だ。ほかの受験者も見てみるが、だいたい同じようなスキル構成だった。これは、ギルドマスターたちが危機感を抱くのも分かるな。

この状態では不測の事態に対する柔軟性がない。だとしたら、精々暴れて危機感を植え付けてやるとしようか。

「いくら試験に遅れが出てるからって、こんなガキを連れてくるとはなー。実力よりも、よそ者ってことを重視したんだろうが……。怪我しても恨むなよ?」

「……」

「おい、なんか言ったらどうなんだ? それとも今更ビビッて――」

「御託はいい。こい」

フランが男の言葉を遮って、指でチョイチョイと呼び寄せるようなしぐさで挑発をする。男の話がつまらなかったのだろう。

自分から行かないのは、最初は打ち合って力を発揮させるように言われているからだ。うんうん、ちゃんと依頼内容を覚えてるなんて、偉いぞ!

「なめるなよ、このガキィ!」

この男、煽り耐性はゼロのようですな。