軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

449 閃華迅雷+????

(まだ試してないことがある! それがダメだったら逃げてっ!)

『試していない事?』

(ん!)

「クハハハハ! 死ねぇ!」

「くっ!」

フランは決意の表情を浮かべると、溶鉄魔術に紛れて追撃してきた侯爵の振り下ろしを何とか受け流す。あまりの衝撃の強さに、フランが顔をしかめた。

「シャアァ!」

「ぐぅ!」

衝撃を殺しきれなかったフランの隙を逃さず、アシュトナー侯爵が左拳を叩きつけてくる。フランは咄嗟に後ろに飛んだが、その拳が頬にめり込んだ。首を捩じることでさらに威力を殺そうと試みたようだが、化物並みの腕力を誇る相手の攻撃を完璧にいなすことなどできはしない。

フランの頬が一瞬で腫れ上がっていた。ただ、侯爵が格闘系のスキルを持っていないことが幸いしたな。捩じり込まれたり、衝撃を浸透させられたりすることもなかったのだ。

だが、今の侯爵からはここで様子見をするような甘さはなかった。自爆覚悟でフランを殺す覚悟を決めたことで、こちらを侮る気持ちが消えたのだろう。

「ヴォルカニック・ゲイザー!」

開幕で侯爵がぶっ放した魔術など比較にならない程、広範囲でマグマが噴き上がっているのが見えた。威力も範囲も倍化しているようだ。

侯爵邸どころか、周囲の邸宅も巻き込んでいる。

何をするつもりなのか分からないが、早くしないと押し切られるぞ! そもそも、この魔術でエリアンテたちが死んだりはしてないよな?

正直、自分でもどっちを望んでいるのか分からん。死んでいて欲しくないとは思うが、死んでくれていたらフランが逃げる気になるかもしれないと思ってしまった。

酷いとは思うが、それが俺の本音だ。

エリアンテたちの安否を探ると、まだ生きているようだった。あの3人で固まって協力し合っているようだ。だったら、魔術を防ぐことはできるだろう。

ちょっとホッとしてしまった。

風魔術で溶岩の波を散らしつつ、フランが俺を構えた。その目は死んでいない。何かやる気だ。どうするつもりだ? 閃華迅雷と剣神化の組み合わせに全てを賭けるか?

だが、俺は嫌な予感がした。何故かフランを止めねばいけないと思ったのだ。危機察知が仕事をしたのだろうか?

『まて、フラン一体何を――』

しかし俺が止めるよりも早く、フランが力強い声で呟いた。

「潜在能力解放!」

『なっ! ばっ! おまっ!』

今は閃華迅雷を使っているうえ、力を奴のスキルで強奪されている状況なんだぞ!

フランの周囲には膨大な魔力が渦巻き、凄まじい存在感が放たれる。それは、アシュトナー侯爵に匹敵するレベルだった。

そのステータスは倍増と言っても差し支えない。敏捷に至っては1000を超え、他のステータスも軒並み800オーバーだ。ここまで強化されるのか? いや、考えてみたらフランはまだ子供だ。その内に眠る潜在能力がより強大でも不思議ではないだろう。

アシュトナー侯爵の放つ魔力と、フランの放つ魔力がぶつかり合い、周囲の空気が激しく振動する。

「いく!」

『ああ! わかったよ!』

もう俺の意思ではどうにもできない。フランが使った潜在能力解放は、フランでなくては解除できないのだ。だったら、破滅が訪れる前に勝負を決めるしか道はなかった。

フランの意思を無視してもう転移で逃げてしまおうかとも思ったが、俺にはその決意を蔑ろにはできない。

「はぁぁぁ!」

潜在能力解放でアシュトナー侯爵に負けない力を手にしたフランは、俺の目にも留まらぬ速さで斬撃を繰り出す。

速い! しかし雑さはない。それこそ、単なる斬撃なのに空気抜刀術を超えるだろう。ランクC、Dどころか、コルベルト級の冒険者であっても反応できずに一方的に斬られるかもしれなかった。

「こ、これはぁ……!」

突然速度が上昇したフランを目の当たりにして、侯爵は驚愕の声を上げている。だが、それでも反応できてしまうだけの能力が今の侯爵にはあった。

「あぁぁ!」

「このガキィ!」

しかし、先程は一方的に力負けしたフランだったが、今回は互角だ。どちらかが吹き飛ばされることもなく、拮抗する両者。

コンマ数秒にも満たない鍔迫り合い。

その瞬間、押し返そうとする侯爵の力をすかすように、フランが短距離転移した。

勿論、転移させたのは俺だ。だが、フランからの指示などない。しかし、俺にはフランが何を感じ、どう動きたいと望んでいるのか、手に取るように分かった。

潜在能力解放によって、俺とフランの結びつきが強化されたらしい。もっと言ってしまえば、フランが俺を自らの剣として完璧に使えている。

『フランの腕の延長になったイメージが流れ込んでくる。これが、剣として装備者に使われる感覚か……』

自分が一本の剣として扱われている。だが、全く嫌じゃなかった。むしろ、充実感さえ覚えている自分がいる。

「なにぃ?」

「ふっ!」

フランを吹き飛ばそうと力を入れた瞬間に転移されてしまい、侯爵の動きがほんの一瞬止まる。今の侯爵であれば体勢を崩すとまではいかないが、背後のフランの斬撃を完璧に躱す程の余力は残っていなかった。

「しっ! はぁ!」

「くそぉ! 急にぃ!」

超短距離転移と、閃華迅雷による高速移動を連続で繰り返しながら、フランは侯爵を連続で攻撃し続ける。

フランの命を燃やした最後の猛攻だ。しかし、侯爵を倒すには至らない。生命力が急激に弱まるフランを見て、この攻撃が長く続かないと理解したのだろう。侯爵は焦りの表情を見せながらも、フランの攻撃を捌き続けた。

もう生命力が残り少ない。誰が見ても、万事休すだ。

侯爵は自らの勝利を確信するかのように、ニヤリと笑った。

これが、フランの狙いだとも知らずに。

フランは一定の速度とタイミングで攻撃をし続けることで、自分の身を削りながら侯爵の呼吸を誘導していたのだ。そして、いきなりそのタイミングをズラす動きをする。

真横から放たれた横薙ぎの一撃をガードするために、侯爵がほんのわずかに無理な体勢で疑似狂信剣をかざした。だが、侯爵が予測したタイミングで衝撃は訪れない。

「黒雷転動!」

攻撃が疑似狂信剣で受けられる寸前、フランの体が一条の黒雷と化し、瞬間移動並の速さで逆サイドに移動していた。

潜在能力解放状態になったおかげで、今まで使用できなかった黒雷転動を使えるようになったらしい。

奇しくも。これはキアラがゼロスリードに対して行った攻撃に酷似していた。見ていたわけじゃないのに、似た攻撃を繰り出したフランを見て、感情にならない熱い何かがこみ上げてくる。

『いけぇぇぇ! フラァァン!』

「はあああああああ!」