軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

379 王城のお風呂と食事

「すごい……!」

『ああ、そうだな』

「ふははは! そうだろう! そうだろう!」

王城に泊めてもらうことになった初日。

俺たちは王城にある王族用浴場に案内されていた。今まで何度か豪華な風呂は見たことあるが、ここは断トツだろう。

総大理石なのは当たり前。お湯が出る部分は虎の彫像だ。天井からは巨大な魔導シャンデリアがぶら下がり、壁には神話の一幕や英雄譚が描かれている。この絵は3ヶ月ごとに描き直すというのだから凄まじい。

大きなプールのような湯船の周囲には樹が植わっているんだが、これが観葉植物というには凄まじく巨大だった。樹齢100年は優に超えているんじゃないか? 神社とかに生えていたら御神木扱いされそうな木が、10本以上植わっている。

話を聞いてみると、かなり貴重な魔法植物だった。この樹になる果実を食べると、それだけで癒しの効果があるらしい。

何から何まで壮大な無駄遣いな気もするが、他国の使者などに、国の威信を見せつける意味があるんだろうな。

そうじゃなければ、あの獣王がこんな豪華な風呂を作らせようとは思わないだろうし。いや、意外と派手好きっぽかったし、こういうのも好きなのか?

「まずはこちらで体を洗うのだ!」

「ん」

洗い場まで別にあった。なんか高級そうな石鹸や薬液が置いてある。メアが自ら色々と説明してくれた。

王族の風呂なので、面倒なお手伝いさんがいっぱい付いてくるかと思ったんだが、風呂場に一緒に入ってきたのはクイナだけであった。どうやら獣王がそういうのを嫌がるらしく、獣人国では王族と言えど侍女1人程度しか湯あみを手伝わないらしい。

「背中を流してやろう。こい」

「ん」

うんうん、仲良きことは美しきかな。互いの背中を流し合い、頭を洗いっこしているフランとメアを見ていたら、それだけで感動してしまったぜ。フランにも対等な友達が出来たんだよなぁ。

『うんうん』

そう、俺は2人を目の前で見ているのだ。

「次は師匠」

「お! ならば我も手伝おう! 今回は師匠にも世話になったからな!」

フランは羞恥心が全然ないけど、メアも俺のことは気にしないタイプであるらしい。いや、元人間だったって伝えたんだけどね。今は剣なのだから構わないと言われてしまったのだ。

俺も、フランたちを見てやましい気持ちには一切ならんけど、嫁入り前の娘がこの反応でいいのだろうか?

これまた高級そうな、ふんわり柔らかなスポンジでゴシゴシと擦られる。メアも俺が錆びたりする心配はしてないみたいだな。まあ魔剣だし、自己修復もあるから、その心配はしていないのだろう。

ただ、クイナはさすがに放ってはおけなかったらしい。チューブトップのような湯あみ着を身に着けたクイナが、フランたちから俺を取り上げる。

「なにをするのだクイナ」

「ん」

「少々お待ちください。幾らなんでも、お嬢様は羞恥心というものをお持ちください。フランさんにとっては家族のようなものなのでしょうが、お嬢様にとっては赤の他人でしょう?」

「別に良いではないか。師匠だぞ?」

「良くはありません。とりあえず師匠さんはこちらを」

何をするのかと思ったら、俺の柄にある狼のエンブレムの目の部分に、布を巻かれた。目隠しのつもりであるらしい。うーむ、そういえば何も知らなければここが目に見えるか。

実際は体全てが目みたいなものなので、こんなことされても何も変わらないんだけどね。

どうしよう……。正直に言うべきか否か。クイナを安心させるためだけだったら、このまま黙っていてもいいとは思うが……。後でばれた時が怖い。

ここは正直に言おう。

『あのー、俺はスキルというか、特殊な目で周囲を見てるから、そこを隠しても意味ないですよ?』

「なんと、そうだったのですか?」

『はい』

「では、今もお嬢様のあられもない姿がバッチリシッカリお見えになっていると?」

『あ、ああ』

「そうですか」

え? もしかして怒ってる? 怒ってますクイナさん?

「これが普通の男性でしたら、未婚の王族女性の肌を見たということで、色々と責任をとってもらうところなのですが……」

せ、責任? それって、いわゆる「私が責任をとって幸せにします」的なやつ? 怖!

「師匠さんは素晴らしい御仁ではありますが、さすがに剣では婚姻は認められません」

当たり前だ! しかし、考えてみたらメアって王族なんだよな。肌を見せる云々に関しては、厳しいのは当然か。肝心の当人は分かっていないようではあるが。

「まあ、師匠は剣なのだし、大丈夫だ! なあフラン」

「ん」

「……はぁ。師匠さん、出来るだけ見ないようにお願い致しますね?」

『わ、分かった』

結局俺は風呂場から出るまで、天井の絵画を見上げ続けていたのだった。いや、見たいわけじゃないんだけど、チラッと視線が動いただけでクイナが反応するのだ。あの眠そうな目でジーッと見られると、剣なのに冷や汗が出そうになる。

多分、スキルの気配察知、尋問、魔力感知、魔力制御や、称号の暗殺者殺しで俺の魔力の動きを微妙に察知できているんだろう。絶対に敵に回したくないな。

おかげで、天井に描かれていた英雄画を細部まで覚えちゃったぜ。

風呂から出た後は、晩餐だ。いや、普通に夕食って言った方がいいかな。メアの部屋で、マナーも何もなく、いつも通りの荒々しい食事をするだけなのだ。

フランの事を気遣ってというよりは、メア自身が面倒であるかららしい。普段は冒険者をしているわけだし、こっちの方が性に合っているんだろう。

久しぶりに俺が作った食事以外を口にするフランだが、かなり満足している。さすがに王宮の料理人が作っているだけあり、かなり美味しいらしい。

肉祭りであるというのも高ポイントなんだろう。もう、出てくる料理が肉肉肉なのだ。肉料理が多めとか、そういうレベルじゃない。

全てが肉料理である。しかも豚肉の牛肉巻とか、鶏肉の蜥蜴肉添えとか、そんな感じだった。サラダも肉サラダだし、スープも肉スープ。胸焼けしないのかと思うが、フランとメアは美味そうに次々と腹に収めていく。

ただ、これは肉食系の獣人だからであるようだ。クイナに軽く話を聞いてみたら、彼女は野菜の方が好きであるらしい。草食獣である獏の獣人だからだろう。

獣人国のコックさんは大変だな。種族によって趣味嗜好が大分違うみたいだし。ただ、基本は人なので、肉も野菜も魚も普通に食べることはできるため、庶民はそこまでこだわらないようだった。

選り好みできるところは、一応お貴族様ってことなんだろう。