軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

333 邪気祓い

ミューレリアが逃走した後。戦場にはバシャールの騎士たちと、邪気に飲まれて暴走する冒険者たち、それとフランたちが残されていた。

『クイナ! メアとキアラを守れ!』

俺たちは冒険者と騎士の無力化だ。まあ、雷鳴魔術を連発すれば問題なかったけどね。冒険者も邪気によって暴走しているとはいえ、麻痺させてしまえば動きを止めることができた。

「ぐああああ!」

「おるあああ!」

「うるさい」

冒険者たちを一旦縛り上げたんだが、目を覚ましてからずっと叫んで、拘束を解こうと暴れている。

「――」

逆に騎士たちはずっと黙ったままだった。こっちはこっちで面倒そうだ。

「とりあえず冒険者たちを正気に戻したいが、どうしたものか」

「ぶん殴っても無理でしょうねぇ」

疲労困憊状態から回復したメアと、グエンダルファが腕を組んで悩んでいる。実は浄化魔術も試してみたんだが、俺の使えるレベルでは邪気を払うことができないらしい。

やはり俺の破邪顕正がカギだろう。

(ちょっと斬る?)

『いや、さすがにそれは……。まあ、最終手段という事で』

(ん)

『とりあえず、俺が触れてみるか』

(わかった)

少しはましになるかもしれない。そう思って、相手を傷つけないように気を付けながら、俺の刀身を冒険者の体に当ててみてもらったのだが、その効果は想像以上だった。

「ぐぎゃぁぁぁぁ!」

『うおっ!』

冒険者が一際大きな絶叫を放ったのだ。俺も思わずビクッとしてしまった。その直後、冒険者の体から立ち上っていた黒い魔力が祓われ、雲散霧消していくのが分かる。

冒険者は気を失ってしまったが、その体からは邪気が完全に消え去っていた。あの絶叫ぶりがちょっと心配だったが、生命力などは減っていない。

「おいおい、何をしたんだ」

「邪気を消した」

事態が分かっていないグエンダルファは、顔を引きつらせている。まあ客観的に見たら、フランが剣の腹を押し当てたら、いきなり冒険者が絶叫して、気絶した訳だからな。そりゃ心配にもなるだろう。

グエンダルファは邪気の祓われた冒険者を抱き起こし、その頬を軽く叩いている。

「おい、おい。大丈夫か?」

「うん……ここは……」

どうやら正気に戻ったらしい。受け答えもしっかりしており、記憶も邪気の弾丸を受けるところまではしっかり残っている。これなら、他の冒険者たちに同じことをしても大丈夫だろう。絶叫が少しうるさいが。

「ひぎゃぁぉぉぉ!」

「げろぐぁぁぁ!」

「な、なにが起きてるんだ……!」

やはり何も分からないグエンダルファだけが、体を反らせながら絶叫を上げる冒険者たちに、引きつった表情を向けていた。ただ、フランが悪意を持っていないことは分かっているようなので、止めるつもりはないようだ。

5分後、全ての冒険者から邪気が消え去り、正気を取り戻していた。俺がやったことと言えば、ただ触れるだけだ。それだってフランの手を借りているわけだから、実質何もやってないに等しいが。

それにしても凄いのは破邪顕正の威力だろう。まさか軽く触っただけで人を暴走させるほどの強い邪気を消去できるとは思わなかった。そりゃあ、邪人に対して致命的な攻撃手段となるはずだ。

冒険者たちの介抱はグエンダルファに任せて、次は騎士たちの尋問だな。

「さて、大人しくこちらの質問に答えるのであれば、手荒な真似はしないが?」

「――」

メアの威圧に対しても、騎士たちは誰一人怯えた様子を見せない。その瞳には強い覚悟と、獣人に対する憎悪が浮かんでいた。

「貴様らがバシャール王国の人間だというのは分かっている。あの邪人、ミューレリアとの関係は?」

「――」

「貴様らの目的は何だ?」

「――」

簡単な質問にさえ、口を開こうとはしない。これは口を割らせるのは簡単ではないだろう。

「仕方ない……では口を開きたくなるようにしてやろう。クイナ」

「分かりました」

そして、クイナとメアによる尋問が始まった。普通に質問することから始まり、脅し、痛めつけ、回復させてさらに痛めつけ。そんな事を繰り返しても、騎士たちの口の堅さは変わらなかった。

お前だけ助けてやると言っても、仲間を痛めつけられたくなければ喋れと脅しても、かなり激しい拷問をされても、騎士たちの目に浮かんだ強い光は失われない。敵ながら感心してしまうな。

「これが最後だ。貴様らとミューレリアの関係は?」

「――」

騎士の1人は、指を1本1本ゆっくりとへし折られながらメアの強力な威圧をかけられても、歯を食いしばったまま呻き声を上げるだけであった。

「はぁ……。こいつらの覚悟は本物だろう。拷問では、口を割らん」

「残念ながら、そのようですね」

グリグリと動かしていた男の指から手を離しつつ、クイナがメアの言葉に同意する。

「仕方ない。クイナ、頼む」

「分かりました」

「何をするの?」

「クイナの奥の手を使う」

見ていると、クイナが一人の騎士の前で覚醒した。相手は、この騎士たちのリーダーでもある、ヨハン・マグノリアだ。彼は自らの体を盾としてフランの攻撃を防いだことで瀕死の重傷を負っていたが、ミューレリアのポーションと、俺の回復魔術により命の危険からは脱していた。

それでも完治ではなく、未だに地面に寝っ転がったままではあるが、その方が都合が良いらしい。

「多少弱っている方が効き易いですから」

クイナがそう言って使ったのは、固有スキルである夢幻陣だった。このスキルは幻術の効果に加え、催眠の効果も僅かに持っているらしい。あくまでも幻術がメインなので、催眠効果自体は弱いようだが。それこそ、クイナが全魔力を使い、ようやく弱った人間を催眠状態にできる程度の力しかないらしい。

「さて――私の目を見なさい」

「くっ」

ヨハンが痛む体に鞭を打って、何とかクイナから目をそらす。

「ふふ。嘘です、別に目など見ずとも幻術はかけられます」

意識を何かに集中させることで、自らの催眠に対する注意を一瞬でも低下させることが目的であったらしい。ヨハンは目を背けるという動作に集中することで、逆に隙を見せてしまったのだ。

クイナの全身からかなりの量の魔力が発散される。

「――さて、かかりましたかね。あなたのお名前は?」

「ヨハン・マグノリア」

「成功です」