軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

190 情報収集

トーナメント表を確認した後、俺たちは冒険者ギルドにやってきていた。

目的は他の参加者の情報を仕入れることだ。

「エルザいない」

『まあ、いたとしてもエルザに情報を教えてもらうのはどうなんだ?』

「ん?」

『だってあいつも参加者だぞ? 聞けば喜んで教えてはくれそうだが……』

対戦する可能性のあるライバルなんだ。そんな相手に頼るのはどうなんだ?

『他の冒険者か、ディアスに話を聞こう』

「わかった」

とりあえずその辺の冒険者に話しかけて――とか思っていたら、エルザが凄まじい勢いで近づいてきた。

「フランちゃん! 決勝トーナメント進出おめでとう!」

満面の笑顔である。なんかライバルとか言ってたのが馬鹿らしくなってきちゃったな。

「試合見てたわよ? 頑張ったわねー!」

「ん」

「それにしてもあの青猫族の男……。もっとギタギタにしてやれば良かったのに!」

「失格になるかもしれないから」

「ああ、敗者への意図的な攻撃禁止ね。うーん、確かにあの状況は……。まあ、仕方ないわね。それよりもフランちゃん。なんか雰囲気変わった?」

「ん?」

「何て言うのかしら……。頼もしくなったっていうの? 凄く大きく見えるわよ?」

「修行頑張った」

「それだけかしら? でも、そうね。フランちゃんくらいの子は、ちょっと見ない間に成長するものだもの。きっと修行と武闘大会でググンと成長したのよね」

「ん」

「それで、今日はどんな用があってギルドに来たのかしらん?」

「対戦者の情報を調べに来た」

「あらん? 意外だわ。フランちゃんは、そんなの気にしないタイプかと思ってたんだけど」

「情報は大事」

「うんうん。そうよね。えーっと、フランちゃんの1回戦の相手は……誰かしら?」

「知らない?」

「ええ。ゼフメートなんて冒険者、聞いたことないわ」

エルザが知らないってことは、少なくともウルムットの冒険者じゃなさそうだ。それに、有名な冒険者でもないだろう。

「他の子にも聞いてみましょ?」

エルザが酒場にいた冒険者たちに、ゼフメートと言う冒険者を知っているか聞いて回ってくれた。

「あなたたち、ゼフメートっていう冒険者、知らないかしら?」

「ゼフメートっすか? 知らないっすね」

「俺もだ」

10人いた冒険者全員が知らないと答える。これは冒険者じゃないかもな。参加者が全員冒険者っていう訳じゃないし。

傭兵、騎士、魔術師など、冒険者じゃなくとも強い者はいるだろう。フィリップ・クライストンなんかはそのタイプだし。

『これは調べても無駄かもな。ゼフメートって奴の情報は諦めよう』

「ん。じゃあ、デミトリス流武術について」

「あら? どうして?」

「使い手と当たるかもしれない」

「参加者にデミトリス流の使い手なんかいたかしら?」

「何故か使ってない」

「ああ。そういうこと。試練中なのね」

「試練?」

「あら、知らない? デミトリス流では、皆伝の認可を受けるのに、有名な試練があるのよ。特殊な魔道具で力を封じられた状態で、ランクA冒険者にならなきゃいけないらしいわ」

かなり有名な試練らしく、その場に居た他の冒険者たちも情報を補足してくれた。

デミトリスの試練とは、封印珠という魔道具でステータスとスキルを封印された状態で、ランクA冒険者に昇格するという試練だ。

さすがに詳しい割合は分からないが、ステータスは最低でも2割。スキルはデミトリス流の一部と、全スキルのレベル低下状態になってしまうんだとか。

だからバルボラでコルベルトの強さがあれだけ違っていたんだな。リンフォード戦では封印を解除していたんだろう。

エルザはデミトリス流の人間とパーティを組んでいたことがあるらしく、その技を間近で見たことがあるらしい。

「その子はまだランクも低くて、そこまで凄い技が使えたわけじゃないけどね」

デミトリス流の奥義は『気』にあるらしい。

この世界には魔力がある。その魔力を体内や体表、武器に作用させて強化や防御に用いた場合、気と呼ぶ。魔力と呼ぶ場合は、魔術的に作用させていることが多い。

魔力も気も本質的には同じものだが、その運用方法が内向きか外向きかで呼び方が違うのだ。また、使用者の資質やスキルによって、得意不得意も分かれることが多い。

「デミトリス流は、その気をより進化させているの。詳しいことは分からないけど、気と魔力の中間のような使い方をするんだとか」

「気なのに魔力?」

「ええ。気を飛ばしたり、気を盾の様に固めたりね。あとは敵の体内に気を打ち込んで、内部から破壊する様な技もあったはずよ。上級者にはその先があるらしいけど、さすがに詳しいことは分からないわ」

いわゆる遠当てとか、かめは〇波とかそう言ったものだけではないようだ。内部破壊となると、かなり厄介そうである。

「でも、武闘大会であまり気にすることはないと思うけど」

「なんで?」

「デミトリス流の試練中、私欲や私事での封印解放が許されていないはずだから。他人を救うためだったり、悪人を懲らしめるためだったらともかくね」

まあ、武闘大会は完全に私事に当たるよな。じゃあ、コルベルトと戦う時、封印解除される心配はないってことか? だったら俺たちの方が有利かもな。

「ん。なるほど」

「他に聞きたいことはある?」

ロイスやゴドダルファ、アマンダ、フォールンドに関しては俺たちの方が詳しいだろう。あとは……ラデュルか。

「ラデュルは?」

「ラデュルおじいちゃん? 強いわよ~。もうお歳だから体力はないけど経験豊富だし。多彩な魔術で対策を取らせない戦い方をするわね」

「どんな魔術を使う?」

「あたしの知る限り、大地、大海、暴風は使えたと思うわ」

それはかなり凄いな。三属性で上級魔術を使える魔術師なんて、ほとんど見たことが無いぞ。ロイスが大地と月光、時空を使えるから、上級3つ並と言えるかもしれないが、そのくらいかな。

しかもラデュルが使う大地、大海に関しては情報が少ない。これは警戒する必要があるだろう。

「他に知りたいことはない?」

「ん? 今はない」

「そう。他に知りたいことがあったらいつでも聞きに来てね? 何でも教えちゃうから!」

「ん」

「でも、トーナメントで当たることがあったら、その時は容赦しないわよん? 正々堂々の戦いの場で手加減すること程失礼なことはないから」

「わかってる」

「あら? やる気ね! ふふふふ」

ニッと笑うフランを見て、エルザは少し驚いたようだが、直ぐに似た様な好戦的な笑みを浮かべて嬉し気にしている。

エルザもバトルジャンキーか!