軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

閑章二 海中ダンジョン 01

レイドスでの騒動から半年。

俺たちの周りでも色々と変化があった。

一番大きいのは、フランがランクS冒険者になったことだろう。

最初の頃は、どの冒険者ギルドに行っても即座に正体がばれ、お祭り騒ぎであった。だいたいどのギルドにもある併設の酒場で、大宴会が始まるのだ。

一応、フランを歓迎してという名目だが、完全にフランからの振る舞い酒目当てだよな? まあ、フランは意外と煩い宴会が好きだから、喜んでたけどさ。

今日はバルボラへとやってきたんだが、昼頃から町の人を巻き込んでの大宴会が始まり、夜になってようやく宿に戻ってきたところだった。

宿の部屋は、いわゆるスイートルームってやつだ。普段はお貴族様が泊まるような部屋なのだろうが、フランもウルシも気にせずベッドにダイブしている。

宿の人は下にも置かない対応だった。バルボラにとっては恩人なうえに、この国の救世主でもある。そう言って、宿代を受け取ろうともしないのだ。

半年経っているんだが、バルボラの人々にとってはまだまだ最近の出来事に感じるらしい。

フランたちは窓に近づき、月明かりに照らされた港を見つめた。襲撃の痛手から立ち直り、綺麗な桟橋と大きな船が並んでいる。

宿の売りになるのが頷ける美しさだ。

ただ、フランもウルシも景色を見ようとしたわけではなかった。

「なんか、聞こえた?」

「オン?」

『どうしたんだ?』

耳を澄まし、外の音を聞こうとする2人。俺には町の喧騒と波の音くらいしか聞こえなかったが……。

「来いって言ってる」

「オン」

『え? まじで聞こえてんの?』

「ん」

フランとウルシには、何者かの呼び声が聞こえているようだ。俺は感覚を研ぎ澄ます。すると、微かな魔力の波を感じることができた。

どうやら、フランとウルシに対し、何者かが念話を使っているようだ。というか、俺のことは知らないんだろうな。

「どする?」

『うーん。怪しさしかないが……。悪意や敵意は感じるか?』

「ん……? えらそう?」

どうやら、上から目線の命令口調であるらしい。やはり怪しさしかない。

『やっぱいくのはやめて――』

「オンオン!」

『え? お前行きたいのか?』

「オン!」

中型犬サイズのウルシがフランと俺に縋りついて、行きたいアピールをし始める。どうやら、念話の誘いに乗りたいらしい。

「私も興味ある」

『フランもか? 仕方ないな……。いざとなったらすぐに離脱できるように、慎重に行くぞ』

「ん!」

「オン!」

ということで、声の指定する港の堤防へとやってきた。俺には聞こえないが、近づくたびに声が「そうだ」「もっとこちらへ」と教えてくれるらしい。

バルボラの巨大な港の中でも、かなり外れの方だ。岸から十数メートル離れた、石組の消波堤防の上である。

これ、フランだからよかったものの、普通の冒険者じゃ来るだけでも一苦労なんじゃないか?

やはり、フランとウルシを知って、呼んだっぽいな。

ただ、人影はない。隠れているのかと思ったが、俺の感知にも引っかからなかった。いや、違うな。海の中に何かがいる。

魔力を抑えているようだが、相当強いだろう。

すると、フランがコクリと頷いた。

「わかった」

『ど、どうしたんだ?』

(今から出てくるけど、攻撃しないでくれって)

その直後だった。海中の存在が浮上してくる。ザバーッという水音を立てながら姿を見せたのは、体長20メートル近い狼に似たフォルムをした生物だった。

ただ、毛が生えているのは顔の一部や鬣だけで、体の殆どは青緑色の美しい鱗に覆われている。あと、背や尾の先端にはヒレが生えていた。

狼っぽいとは言ったが、どちらかと言えば海に適応した生物なんだろう。

俺がいつでも行動に移れるように魔力を練り上げていると、魔獣の体が淡く輝き始める。魔力は感じるが、攻撃ではない。

俺たちが堤防の上から見守っていると、その体がドンドンと縮んでいった。ウルシと同じで、サイズ変更をできるスキルがあるんだろう。

最終的には大型犬のサイズまで縮むと、海面を蹴って堤防へと上がってくる。

「待たせたな。神狼の縁者たちよ」

外見の厳つさとは違い、中性的で涼やかな声だな。

「? 神狼?」

「うむ汝が持つ剣から、フェンリル様の力を感じる。それに、その眷属からもだ」

おっと、フェンリルさんの関係者か?

「あなたは誰?」

「我は『静かなる海』。海神龍リヴァイアサン様の眷属だ」

「リヴァイアサン! 見たことある!」

ミドガルズオルムに追いつめられていた俺たちの前に現れた、海の神獣。ミドガルズオルムを一撃で滅した超存在は、忘れることができないインパクトを俺の中に刻んでいった。

「我も主から聞いている」

てことは、向こうも俺たちのこと覚えてるって事? いや、神獣同士なら、俺の中のフェンリルさんのことも感じ取っていたのだろう。だったら、あの短期間の邂逅でも、憶えていて不思議はないか。

「汝らに頼みがあってきたのだ。神狼の剣の所持者の少女と、神狼の眷属たるその黒狼にな」

「頼み?」

神獣とその眷属が俺たちに頼み事? どう考えても、厄介事だが……。

「うむ。海中に、少々厄介なダンジョンができてしまってな。その攻略に、助力を頼みたいのだ」

「ダンジョン!」

あ、フランが興味持っちゃったなぁ。これは断れないわぁ……。

だって、フランの目がキラキラ輝いてるもん。