軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1284 従機

「あれ、王都?」

『多分な。あんだけデカい都市、クランゼル王国にもそうないだろうし』

「ん。おっきいし、高い」

『確かに。あの高い建物が王城だろう』

超人将軍との激闘から2日。

俺たちは城の尖塔が確認できる距離まで、王都へと接近していた。ウルシの足なら半日もかからない距離だったが、ジャンの馬車に合わせて移動することで想定よりも少し時間がかかったのだ。

まあ、そのおかげで皆の消耗も少しはましになったけどね。

道中、戦闘は全くと言っていいほど起こらなかった。そもそも、生物の姿がなかったのだ。

人も魔獣も草木も、全てが生命力を吸い取られ、生贄にされたのだろう。そして、ラランフルーラやネームレスが強化され、俺たちに倒された。

そのことを考えると、なんとも空しい気持ちになる。

負けてやればよかったなどとは、口が裂けても言わない。だが、他に道はなかったのか? ゴーストタウンを通り過ぎる度に、そんなことを考えてしまう。

「すごい邪気」

『ああ。邪神の欠片が復活しかけてるっていうのは、間違いないな』

「ん」

『正直、俺たちだけじゃまともに戦うことすら無理だと思うが……』

それでも王都にやってきたのは、半分は威力偵察のつもりだった。邪神の力の復活状況と、その力を測ることが一番の目的だ。

少なくとも俺はな。まあ、フランやフォールンドたちは、あわよくば倒そうくらいは考えてるだろうが。

マレフィセントが本調子なら、可能性はゼロじゃないだろう。

それに、他の神剣使いのこともある。マレフィセント以外に、2人神剣使いが神託を受けているはずなのだ。

1人はフィリアースに所属する、ディアボロスの使い手。もう1人は謎だ。

そのどちらかと協力し合えれば、こちらとしてもかなり助かるんだが……。

王都で戦闘が行われている気配はない。

というか、人間の気配が皆無であった。みんな、生贄にされて、死んでしまったのか? 住民たちの安否が心配であった。

その代わり、人とは違う生命力が感じられる。ここからでは正確な種族などは分からないが、邪気が感じられる。

邪人か? 正直、王城がどの勢力の支配下にあるのか、いまいち分からないんだよな。

王家なのか、邪神の欠片がその支配力を発揮してしまっているのか。他に何か暗躍している者たちがいるのか。

シビュラ曰く、王族よりも宰相の方が権力を持っているようだった。その宰相は何をしているのか? 比較的常識があるという話だが、個人と国益は別だからなぁ。

公爵たちとつるんでいたのなら、邪神の復活を主導しているってことだ。そうなると、王都全体が敵と考えた方がいいのかもしれない。

一度王都の手前で止まり、シビュラ主導で潜入可能なルートを相談する。馬鹿正直に正面の門を使うのは危険だし、他の通路を使いたい。

実際、脱出や搬入用に、いくつかの地下通路が存在しているそうだ。それを利用すれば、正面突破よりは安全性は上がるだろう。

話し合いの末、最も近い王都南側にある脱出通路へと向かうことにした。王都周辺に巡回がいることもなく、脱出路の出口があるという林へと辿り着く。

正確には、脱出路の出入り口を守る小さな出城があるそうだ。確かに、木々の上から石造りの屋根のようなものが見えているな。

距離はまだかなりある。だが、俺たちは即座に戦闘態勢へと移行していた。

『何か来るぞ!』

「片方は、邪気すごい!」

『何かを追ってやがるのか?』

かなりの速度で、林の中から邪気の塊が迫ってくる。ただ、俺たちに気付いたというよりは、何か違う相手を追いかけているようだ。

どちらも、かなり大きい。しかも、金属音のようなものが響いていた。

身構えたまま待っていると、鈍い爆発音が幾度か響き渡り、林の中から巨大な何かが飛び出してくる。

人型なのだが、そのサイズはかなり大きい。なんせ、薙ぎ倒した木々とほぼ同じ身長だったのだ。シルエットは、やや角ばった感じの鎧を着た巨人という感じである。

あの存在に、俺は見覚えがあった。

『従機だ』

(ん! 強そう)

銀色の装甲にグリーンのラインが走った、以前見た機体に似た従機である。手には巨大な剣を持ち、その顔のモノアイは、林の中を見つめている。

見えずとも分かった。林の中に、何か巨大な生物がいる。

数秒後。その生物が姿を現した。

全身を漆黒の邪気に覆われた、二足歩行の存在だ。サイズは従機よりもやや小さいが横幅はかなりあり、パワーでは引けを取らなさそうである。

「ブモオオォオォォォォ!」

低く重い咆哮を上げる謎の邪人に対し、モーター音のような甲高い音を立てる従機が立ち向かう。

銀色の巨剣と、謎生物の持つ金属製の棍棒がぶつかり合い、凄まじい金属音が鳴り響いた。そのまま鍔迫り合いとなる。

互角なように見えるが、すぐに従機が謎生物を押し始めた。最後には長い足を使って謎生物に足払いを仕掛けると、そのまま地面に押し倒す。

「ブオオォ!」

謎生物が逃げ出そうともがくが、従機を押し返すことはできなかった。すると、従機の肩パーツの一部がスライドし、中から銃口のようなものが出現する。

そこから放たれたのは銃弾ではなく、真っ赤な炎だ。灼熱の炎が、従機ごと謎生物を覆い尽くした。

従機も巻き込まれているが、大丈夫なのか?

十数秒後、そこには黒焦げになった巨大生物の死骸と、傷ひとつない従機の姿があった。

邪人が倒されたことはいいことなんだが――。

(敵?)

『わからん』