軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1283 side 血死騎士団長ローザ

「ローザ団長! 右翼が押し込まれています!」

「茜雨の子たちを向かわせなさい!」

「は!」

王都の一角。

王都の東城壁から200メートルほどの場所にある出城を巡り、私たちは邪人どもと激戦を繰り広げている。

相手は、王城の中からドンドンと湧いて出てくる邪人ども。私たち赤騎士団の団長ですら知らなかったけど、王城の地下には何かヤバいのが封印されていたらしい。

その封印が解けかかり、邪人を生み出しているようだった。

民は脱出させた。全員を救うことができなかったのは悲しいけど、半分は逃げられたかしら?

私たちは殿よ。本来は外からの攻撃に備えるための出城に籠り、王都の中から湧き出す邪人どもと戦っている。

陛下と宰相を逃がすためにね。

だが、邪人の勢いが段々と増してきている。数もそうだけど、個々の強さが増しているようなのだ。

このままでは、遠からず守りを突破されるでしょう。

「団長たちがいてくれたら……」

「いないものは仕方がないでしょう! 泣き言をいうんじゃないの!」

「す、すみません……!」

伝令役として側に控えさせていた、紅旗騎士の青年が弱気な言葉を呟く。

実は、今ここで戦っている赤騎士は私の配下である血死騎士だけではない。紅旗、茜雨、朱炎、赤剣の騎士たちも、多くがこの戦いに参加している。

団長や幹部を失い、右往左往していた紅旗と朱炎は、私が声をかけて集結させた。この有事に、戦力を遊ばせておく無駄はできないもの。

赤剣、茜雨は団長含む一部が失踪してしまい、指揮系統が混乱していた。そこで、一時的にこちらに合流している形だ。

緋眼に関しては、分からない。居場所も何も、さっぱりなのだ。あそこは上から下まで強いから、無事でいると思うけど……。むしろ、こっちが無事で済むかわからなかった。

最初は、ゴブリンやオーク程度で、出現頻度も低かった。それが、すぐに敵の数が増え、ミノタウロスなどが加わるようになり、今となっては全身を邪気に覆われた凶悪な邪人が無数に湧き出すようになっている。

強い敵には私が対処しているが、段々とその頻度が上がっていた。

このままでは遠からず、限界を迎え――。

「団長! き、巨大な邪人が!」

「見えてるわ! 私が対処します!」

「はっ!」

あれは、ミノタウロス? 凄まじい邪気を放っている。見たことも聞いたこともないほどに、強い邪人だ。

「でも、私なら!」

我が宝具、ブラッド・メイデンの能力を発揮し、赤い霧を邪人に浴びせる。

すると、邪気ミノタウロスが体を震わせて、悲鳴を上げ始めた。動きも止まり、完全に隙を晒している。

「やりなさい!」

「「「おう!」」」

赤騎士たちが一斉に攻撃を加え、ミノタウロスを撃破した。

私のブラッド・メイデンは、元々吸血用の兵器なだけあって、邪人相手でも通用する。そのおかげで、なんとか戦えているのだが……。

「次は邪気オーク20体です!」

「ちっ!」

これはマズい。数が多すぎると、そのまま押し切られるだろう。

陛下と宰相が脱出してから、まだ20分ほどしかたっていない。もっと注意を引き付けなくては。ただでさえ、他の出口からも邪人たちが外に出ているかもしれないのに。

「堅陣! 耐えなさい! 私が前線に出ます!」

「は!」

「弓を使える者を、集めておきなさい!」

「了解です!」

私が出城の外に出ると、すでに巨大なオークたちと乱戦になりかけていた。急がなくてはならない。

完全に入り乱れてしまえば、私の赤い霧に赤騎士たちを巻き込んでしまう。事前に処置を施した決死隊ならともかく、普通の赤騎士たちでは一緒に殺してしまうわ。

「ぐあぁ!」

「この豚が! 私の部下を、放しなさい!」

「ブゴオォォォ!」

食われそうになっている部下を救うため、私はオークに殴りかかる。普通のオークなら瞬殺できるはずの一撃も、相手を後退させることしかできなかった。

やはり、ただの邪人じゃない。纏う邪気がこいつらを強化しているのだろう。

ならばと、拳から直接赤い霧を流し込んで、1体ずつ倒していく。しかし、これが限界であった。

ゴオォン!

「だ、団長! 扉が破られました! 魔術タイプがいたようです!」

「仕方がない……。反対側の門から脱出します! 若い騎士たちから逃がせ!」

「は!」

出城内の狭い通路では、少人数でしか戦えない。私はともかく、他の騎士たちでは殺されるだけでしょう。

一度脱出し、外で陣形を立て直すしかない。部下たちがすぐに動き出し、順調に出城から脱出をしていく。だが、敵は想像以上に数を増していたらしい。

「ぎゃぁぁぁ!」

「ま、回り込まれた!」

出城の外から悲鳴が聞こえてくる。しかも、何十人もの悲鳴だ。外に敵が待ち構えていたらしい。

しかし、駆けつけることはできない。

「ブウウウゥゥ!」

「ゴオオォォ!」

「新手が!」

凄まじい邪気で全身が覆われた、2体の邪人が姿を現したのだ。さきほどのミノタウロスよりも、さらに強力だった。

邪気があまりにも濃密すぎて、どんな種族かも判別できないほどなのだ。それでも、見ただけで分かる。私ですら、勝てないかもしれない強敵だ。

そんな中でも部下たちの悲鳴は絶え間なく聞こえてくる。

ああ、覚悟はしていたけど、ここが私たちの死に場所なのね。こんな、よく分からない邪人どもにすり潰されて死ぬなんて、最低。

でも、1体でも道連れにしてやるわ。

「まずはお前らから――」

ゴオオォン!

「ギャァァオォォォ!」

「ギィィィィィ!」

「え?」

な、何が? いきなり出城の天井が砕けて、巨大な銀色の鎧が降ってきたわ! そして、右側の邪人が叩き潰された! こ、これは、伝説の戦機? じ、実在していただなんて!

同時に黒い雷が奔ったかと思ったら、左側の邪人の首が刎ね飛ばされる。

「だいじょぶ?」

「あ、あなたは……!」

私にとっての死を退けたのは、数多の仲間の命を奪った、黒い死神だった。