作品タイトル不明
1207 進軍の赤騎士団
赤剣騎士団、茜雨騎士団が現れて戦況は一変していた。超人兵はドンドン倒され、数を減らしていく。
すると、超人兵たちが大きな動きを見せる。
なんと、後退するように、赤騎士たちから距離を取り始めたのだ。さすがに被害が大きくなってきたので、態勢を立て直そうというのだろうか?
だが、リミッターを外した超人兵たちは、勝手に生命力が減少していく。時間が経過すればするほど、俺たちが有利になるのだ。
それでも、何故か動かない。指揮官たちが迷っているのか? それとも他に目的が……?
そこでふと、あの違和感が思い返される。大地が魔力を吸い上げているかのような、気持ちの悪い感覚。
もしかして、あえて自爆しようとしている? 死ぬことに意味があるのか?
『……う~む』
(師匠? どしたの?)
『実は――』
俺が、自身が覚えた不安を語って聞かせようとした、その時だった。
(動いた!)
『ああ、だが、これは……!』
(あいつら! みんなの方行った!)
『ここにきてかよ!』
敵があえて自ら命を捨てようとしているのだとしても、村人たちを助けるために倒さねばならない。フランは大慌てで超人兵たちの前に立ち塞がった。
さっきまでなら、フラン目がけて殺到してきていたはずだ。だが、超人兵たちはこちらに目もくれない。
未だに残る1万以上の異形全てが、遥か彼方の村人達を目指しているようだった。フランが加護を使いこなすきっかけとなった、ホルナ村前での戦いと同じである。
いや、今回の方が厄介かもしれない。意図的にばらけたようなのだ。的を絞らせず、範囲魔術で一掃されるのを防ぐためだろう。
結局、村人を守ることが最優先の俺たちからしたら、これが一番嫌な行動なんだよな。それは民の守護者である、シビュラたち赤騎士団も同じだろう。
「ちっ! 追うぞ!」
「「「おう!」」」
回復もそこそこに、即座に超人兵を追って動き出す。
だが、誤算が1つあった。
赤騎士たちの方が強いとはいえ、それは連携やスキル、戦闘経験の高さのお陰であった。ステータスそのものが上回っているわけではない。
むしろ、超人兵たちと比べれば、ステータスでは圧倒的に負けている。
つまり、単純な走力では、魔獣の力を手に入れた超人兵の圧勝なのだ。赤騎士たちが必死に後を追いかけても、超人兵との距離は離れていく。
赤騎士団を大きく迂回しても、超人兵の方が先に村人たちへと辿り着くだろう。
追いつけるのは、シビュラと茜雨騎士団長、他数人だけに思えた。その戦力で、村人たちを守り切れるだろうか?
前もできたからといって、今回も上手くいくかは分からない。フランも、俺と同じように考えたのだろう。
今まさに、配下を置いて自分だけで駆け出そうとしていたシビュラのもとに駆け寄ると、声をかけた。
突き刺さる無数の敵意と殺意。最も強い殺気は、茜雨の団長だろう。だが、彼らはフランに攻撃を仕掛けたりはしなかった。
「シビュラ。話がある」
「久しぶりだね! 話ってのは、今する必要がある事かい?」
「ん。ここにいる全員で、あいつらに追いつける方法がある」
「言ってみな!」
打てば響くようなレスポンスの良さだが、次の話はさすがに即答してくれないだろう。どう説得するか……。
「ん。全員で、私の指揮下に入る」
「よし! 乗った!」
『え?』
フランが詳しい説明する前に、シビュラが叫んでいた。いやいや、マジか? フランの下に付けと言っているんだぞ?
フランを無条件で信頼してくれるような仲ではない。それなのに、どうしてだ?
赤騎士たちも、俺と同じ気持ちなのだろう。圧倒的ポカーン顔だ。
しかし、シビュラが何も言わせなかった。それは、フランに敵意を向ける茜雨騎士団長であっても、同様だ。
「いいから従いな。マドレッドもだ。フランは嘘ついちゃいない。目を見りゃわかるさ」
「……ん!」
凄まじいのは、赤騎士たちのシビュラへの信頼度だろう。シビュラが従えと言っただけで、口を噤んで頷いていた。マドレッド――茜雨騎士団長も同様だ。
どうも、シビュラの方が格上の扱いっぽいな。
説明するための時間さえ、必要ないのは本当に有難い。
「それじゃあ、ここから追いつくまでは私が隊長! 本気で走る!」
「了解だよ! フラン隊長殿!」
「「「おう!」」」
その瞬間までは、フランに従ったシビュラに従っていただけなのだろう。だが、走り出してしまえば、彼らは悟る。
何が起きたのか正確には分からずとも、フランによって自分たちの走力が数倍に引き上げられたのだと。
勿論これは、フランが持つ進軍の戦乙女の称号の効果である。
進軍の戦乙女:条件を満たした戦乙女に与えられる称号。
効果:100名以上の軍勢を率いた時、戦乙女の持つ隠密系、移動系スキルの効果が軍勢全てに及ぶ。直接指揮しない場合、その効果は大幅に減少。
100人以上の赤騎士が、シビュラの言葉によってフランに従う意思を持ったのだ。そのことによって、称号がしっかりと彼らに影響を及ぼしていた。
俺が持つ大量のスキルが、フランを介して赤騎士たちへと付与される。今までもこの称号を使ってきたが、今回ほど凄まじい効果を発揮したことはなかっただろう。
元のステータスが高い最精鋭であることで、少しの強化でも上がり幅が大きいのだ。
「ははははは! これはすごい! これなら、追いつくぞ!」
「ん!」
赤騎士たちはフランを先頭に、凄まじい速度で突き進むのであった。