軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1200 死体処理

フランと半蟲人たちが村に帰還すると、大勢の人々が出迎えてくれた。

あれだけ暴れ回ったフランを怖れる様子もなく、皆が心配してくれている。

彼らが赤騎士たちの戦いを、間近で見たことがあるのも無関係ではないだろう。強者の存在を知り、受け入れているのだ。

「……ぁ」

「大丈夫だ! 喋らなくていいぞ嬢ちゃん!」

「助かった! ありがとう!」

「お姉ちゃん! だいじょうぶ?」

村人たちは、真摯な顔で感謝の言葉を口にする。誰も嘘をついていない。いや、1人だけ嘘をついているやつがいたな。子供の「強いって知ってたし! べ、別に心配してねぇし!」っていう言葉が嘘だった。ほっこりするぜ。

男衆によって宿へと運ばれ、一室に寝かされると、引き継いだ女衆が色々と世話を焼いてくれる。

額に濡れタオルを乗せて、汗を拭き、布などで扇いでくれるのだ。

皆が、いつの間にか眠ってしまったフランを、優しい目で見つめている。

「すーすー……」

「こんな子が、村を救ってくれただなんてねぇ」

「ありがたいわ……」

「でも、もうこの村は……」

「村長たちは、村を捨てる相談してるわ」

女性たちの会話は、やはり情報の宝庫だな。どうやら、村長たちが全員での避難を考え始めたようだが、ルートがないらしい。

西側の軍勢は倒したが、そちらはマレフィセントの残した黒い大地のせいで、険しい山岳ルートしか残っていない。

そして、東からは敵が迫っている。まだ東征公の配下だとは村に伝わっていないが、味方でないことは分かっているのだ。

南は西以上の山岳地で、一般人が通り抜けることは不可能。

となると、北となる。村人たちも、王都方面へ助けを求めるつもりであるらしい。しかし、大丈夫なのか? 東征公がこのような暴挙に及んだ以上、国がどうなっているか分からん。東征公の反乱を受けて保護してもらえるのか、国自体が東征公と手を結んでいるのか。

刃鷹は、自分たちの行いが国のためになるような言い方をしていたが、明らかに狂っていたし、どこまで信用できるかもわからない。

俺たちとしては、西へ移動してクランゼル王国へと亡命するのが一番安全だと思う。ただ、提案するのは簡単だが、その道のりは非常に過酷だろう。

ともかく、フランが動けるようにならないと、護衛もできん。問題は、どれほどの時間がかかるか分からないことだ。フランは未だに、疲労困憊の顔で寝息を立てている。

『最悪。俺の分体とウルシで村人を護衛しながら、西を目指すぞ』

(オン)

半蟲人たちはどう動くか分からないが、フランは村人を救うために動きたがるだろう。少なくとも、村人を見捨てるという選択肢はないはずだ。

ウルシとそんな相談をすること30分。

フランはまだ眠っているが、苦しんでいるような様子はない。むしろ、その顔は穏やかに見えた。

極度の疲労が原因なだけで、苦痛を感じているわけじゃないんだろう。俺も、密かに魔術を使い、内部から癒し続けていた。

危険な状態は完全に脱しただろう。本当はここでフランを見守っていたいが、やらなくてはならないことがある。

『ウルシ。フランの守りは任せたぞ』

(オン)

俺はフランのことをウルシに頼み、そのまま気配を消して村の外に出た。

『さて、死体をドンドン収納していくかね』

俺の目的は、村周辺に転がる超人兵たちの遺骸である。放置していれば腐って疫病の元にもなるし、魔獣が寄ってくるかもしれない。

それに、レイドス王国は死霊魔術を頻繁に扱う。最悪、超人兵が復活して再び死霊の軍勢となる可能性があった。

倒された超人兵から、他の超人兵へと魔力が流れ込むという不思議な現象が起きていたが、そのせいか死体は完全に魔力を失っている。だが、低級のゾンビ化するだけでも、かなりの脅威となるだろう。

俺は自身を鋼糸化し、魔石が残っているものは吸収しながら死体をドンドン次元収納へと仕舞っていく。正直処分に困るが、今は仕方ないのだ。ジャンあたりに押しつけられないかね?

様々なことを考えながら掃除を続けると、不意に俺の体が輝いた。

『これは――』

《仮称・師匠の自己進化ポイントが限界に達しました。新システム『混沌の使徒』起動。切り替え完了まで、一時的にシステムが沈黙します――》

え? 限界って、どういうことよ! ちょっと、アナウンスさん? 尋ねても、アナウンスさんからの返答はない。

しかし、違う方が、俺の疑問に答えてくれた。気づくと、周囲が白い空間へと変わっている。これは、あれだ。

『神様?』

「その通り。あーあ、慣れちゃって、もう驚いてくれなくなっちゃったわねぇ」

想像通り、神様の降臨だった。相変わらずのエキゾチック美女、混沌の女神様である。

『転生した時から数えて、もう何度目か分からないですからね』

「ま、いいわ。今回私が来た理由、分かってるわよね? あ、答えなくていいわ。どうせ話せばわかるし」

『あ、はい』

あ、相変わらずマイペースな神様だぜ。

「とりあえずおめでとう。自己進化の限界へと到達したわ。もう、魔石を吸収しても、意味がないところまで来たわ。本来はここでフェンリルの魂が完全に癒えるはずだったのだけれど、色々とイレギュラーが重なったから仕方がないわね」

『あー、なるほど』

現在の自己進化ランクは20。そこから更に魔石を吸収し続けた結果、カンストに至ったらしい。RPGで言えば経験値が99999まで到達したようなものだろうか?

「そこで、新たなシステムを用意したわ。今まではフェンリルを癒すことを目的としたシステムだったけれど、これからは師匠の成長と、安定を目的としたシステムよ」

『おー! ありがとうございます!』

以前にも、そんな感じのことを言ってたけど、本当に新しい成長システムを用意してくれたんだな! これで、まだまだフランの役に立てるぞ!

「とは言え、今まではフェンリルの助けもあったけれど、これからは師匠が自力で強くなる必要がある。今までよりも、より苦労することになるわ。そこは頑張ってね」

『強くなれるなら、いくらでも頑張れます』

「うんうん。いい気合だわ! 今後とも、使徒として私を楽しませてね?」

え? 使徒? いや、加護貰ってるし、言われてみたら使徒的な存在なのか?

「目が覚めたら、システムを確認してみなさいな」

『は、はい!』

「ちょっと色々と問題もあるけれど、一つ忠告よ。神は神よ。それ以下でもそれ以上でもない。それは忘れずにね」

『?』

混沌の女神様は楽し気に不吉な台詞を告げると、お決まりのセリフを残して姿を消すのであった。

「今後も、良い混沌を」

『え? 問題って? 神様っ! どういうことですか!』