軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1186 ホルナ村

半蟲人たちに連れてこられたホルナ村は、レイドスのイメージを覆す穏やかな村であった。

魔獣に襲われてもパニックにならず、理性的に避難するし、少ない食料をフランたちに分けてくれようとしたりもしたのだ。

こちらが食料提供しようとすれば、しっかりと対価を払うというし、誰もが真面目に生きている。

言っちゃ悪いが、レイドスへのイメージががらりと変わったね。ここに来る前は、もっと酷い村を想像していたし。

人心は荒み、物資を奪い合う世紀末のような村。もしくは、武力によって抑えつけられた、社会主義末期のような抑圧状態。そんな想像だったのだ。

村の大人に話を聞いてみると、彼らにもレイドス王国の上層部がおかしいことは分かっているようだった。

普段から威張り散らして税金を多く奪っていくくせに、碌な手助けはしてくれない。自分たちは最低限の配給しか受けられないのに、村長たちは明らかに贅沢をしている。

赤騎士たちには感謝しているが、村長や代官は敵だと考えている人も多いのだ。

そんな状況で、レイドス王国の素晴らしさを説かれたところで、信じるわけがない。むしろ、お前らなんかを野放しにしてる国なんか、素晴らしいわけないだろって思うわけだ。

実際、クランゼル王国と戦争をしているという話も、村人たちはあまり気にしていなかった。勝とうが負けようが、知ったことかと思うらしい。

元々、ナイトハルトたちが介入するまでは酷い暮らしをしていたし、彼らがきたというクランゼル王国に対して、悪い感情をあまり抱いていないようだった。

村の中を歩いていても、悪意を向けてくる者はいなかった。

それどころか、近寄ってくる者もいる。

「おねぇちゃん、誰?」

「初めて見たー」

「か、かわいいじゃねぇか」

村の子供たちだった。子供の旅人が珍しいのか、向こうからガンガン話しかけてくる。後、最後のやつはもう少し強くなってから出直すように。

「なんで子供なのに剣持ってるのー?」

「子供じゃない。もう13歳」

「子供だよー! お父ちゃんが、15歳からが大人だって言ってたもん!」

「でも、私は冒険者。だから一人前」

あ、普通に冒険者って言っちゃったじゃん! レイドス王国じゃ嫌われてるから、名乗らないようにしてたのに!

こっちの国じゃ、盗賊と同列に扱われるらしいのだ。クランゼル王国出身というよりも、冒険者と名乗る方が嫌われるそうだ。

だが、子供たちの反応は予想外のものだった。

「ぼうけんしゃ?」

「あれだよ! 隣の国にいる、すんごい怖いっていう戦士!」

「違うよー。豚公爵がそう言ってるだけで、傭兵みたいな人だって」

クランゼル王国だけではなく、冒険者に関しても他の地域とは認識が違うらしい。しかも、豚公爵って……。

「冒険者って強いのか?」

「ん。超強い」

「赤騎士よりも?」

「つ――」

『フラン! ちょい待ったぁぁ!』

(?)

俺は思わずフランを止めていた。フランが首を傾げるが、今のは我ながらファインプレーだったんじゃないか?

『フラン。今、赤騎士よりも冒険者の方が強い的なこと、言おうとしただろ?』

(ん。だって、冒険者の方が強い)

マレフィセントやイザリオみたいな、神剣使いもいるし、フランは赤騎士たちに勝利している。冒険者の方が強いという認識は正しいのかもしれないが……。

さすがに、ここでそれを言うのはマズいだろう。レイドス王国に対しては負の感情を抱いていても、村を守ってくれる赤騎士には感謝しているようなのだ。

『せめて、互角とか言っとけ』

「ん。同じくらい強い」

だが、これでも子供たちの反応はいまいちだ。

「えー! 嘘だー!」

「赤騎士様は超強いんだぞー!」

「同じはないよー」

「む」

小さな少女が、自分は英雄と同じくらい強いって言ってるようなものだ。そりゃあ、嘘つき扱いされるわ。

フランは悔し気だが、さすがに子ども相手に模擬戦をするとは言い出せない。そこで、違う方法で自分の強さを見せつけることを思いついたらしい。

「これ、投げる」

「石? 投げるってどういうことだよ」

「私に向かって、投げる」

落ちている石を拾って子供たちに手渡すと、自分に向かって投げつけるように告げた。

「えー? そんなのできないよ!」

「怪我しちゃうよー?」

「へいき」

フランはそう言って、子供たちから5メートルほど距離を取る。普通の子供が投げる石であれば、フランなら問題なく躱せるだろう。しかし、子供たちはそうは思わなかったらしい。

「当たっちゃうよ!」

「もっと離れて!」

「む?」

そりゃあ、一般人の感覚だと回避不可能に思えるよな。

仕方なく10メートルほど離れるフラン。ようやく子供たちが石を投げ始めるが、それは非常にゆっくりとしたものだ。完全に手加減している。

ただ、段々とその速度が上がってきた。フランが、彼らの投石を余裕で回避しまくっているからだろう。

遠慮気味だった投石速度が段々と速くなり、どんどん本気になっていく。さらに、フランに対して近づき、両手投げなどもし始めた。お、3つ同時に投げるとは、いい機転だ。

それでもフランにはかすりもせず、最後は子供たちが負けを認めたのだった。

「ぼ、冒険者スゲー!」

「かっこいい!」

「やるじゃん!」

「ふふん。冒険者は最強」

こうして、フランは村の子供たちに受け入れられたのだった。