軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1185 道中

目的地に近づけば近づくほど、魔獣の襲撃は増えていった。ウルシの気配を浴びせてやれば逃げていく魔獣も多いが、中には怯えなどのせいで正常な判断力を失い、半狂乱で突っ込んでくるものもいる。

強くはないが、何度も襲われるのは面倒だった。

「ふぅぅぅ。この森でこれ程凶悪な魔獣に出会うとは……」

「珍しい?」

「私たちも数度しか通ったことはありませんが、その時は戦闘なしで抜けられました」

マレフィセントの気配に怯えたのか、多くの魔獣が北へと――レイドス王国側へと逃げ出したのだろう。北へと進めば進むほど、魔獣の密度が上がっていた。

魔力が非常に薄く、弱い魔獣しか出没しないはずの森で、大型の蜥蜴や、巨大な蜘蛛の魔獣が立て続けに現れたのだ。

マレフィセントが暴れてからたった数日なのに、生息域への影響が大分広がっているのだろう。

「俺のスキルも、あまり効果がないみたいっすね」

そういえば、ホッケンには魔獣除けのスキルがあるんだったな。それでこの頻度ってことは、なければさらに多かったか?

俺と同じことを、ララーたちも考えたらしい。そして、顔を青くする。

「村が無事か不安ですっ! 魔獣がこんな多いなんて」

「確かに。少し急ぐとしましょうか」

「うす!」

それから半日。

道中で魔獣を倒しつつ、俺たちは村へと急いだ。足の遅いホッケンをウルシの背に乗せての強行軍だ。

マレフィセントの攻撃跡からかなり離れているんだが、まだ影響は消えない。むしろ、逃げ出した魔獣がこの辺に集まっているようだ。

「村の周囲に魔獣がいますね」

「だ、大丈夫ですかねぇ!」

ララーが心配そうだが、まだ村の外壁は無事なようだ。それに魔術や矢で応戦している様子も分かる。

陥落はしていないだろう。

(師匠!)

『フランは門前の魔獣を魔術でやれ。ウルシは、空を飛んでるやつだ!』

「ん!」

「オン!」

俺は、木製の外壁に取り付いている虫型の魔獣を狙う。

こっちに気付いてもいないし、奇襲ができれば俺たちの敵ではなかった。外壁に影響が出ないように、風魔術で魔獣だけを切り裂く。

フランたちも、同じように魔獣だけを倒していた。

「さすがです。黒雷姫殿! ウルシ殿!」

「ん。このまま村に入る!」

「オンオン!」

ただ、フランが単騎で村に近づくのはマズいだろう。

いきなり現れた俺たちに対しても、警戒している様子があるからな。

どこまで情報が伝わっているかは分からないが、冒険者がクランゼル王国の関係者だってことは分かっているだろう。

冒険者風の恰好をしたフランは、下手したら攻撃されるかもしれない。

「ララー、先導を!」

「はい!」

皆で固まって村へ近づくと、外壁の上に立っていた男性が歓声を上げた。

「おお! ララーちゃん! 助かったよ!」

「みんなは無事ですか?」

「ああ! 村には侵入されてない!」

ギリギリではあったが、間に合ったらしい。開けてもらった門をくぐり中へ入ると、そこはどこにでもありそうな村である。

事前に聞いた話だと、村人の数は200人くらいだそうだ。

「おかえりララーちゃん!」

「はい、ボンディスさん! ただいまです!」

ボンディスと呼ばれた40歳ほどの兵士が、この村の防衛の責任者であるらしい。昨日から魔獣が増えてきて、ずっと戦っていたのだと教えてもらう。

ボンディスはほとんど眠らずに戦っていたというのに、あまり疲れた様子がない。鍛えているお陰なのだろう。明らかにクランゼル王国の雑兵たちとはレベルが違っていた。

話をしている間に集まってきた兵士たちも、同じである。20人ほどいる全員が、かなり強かった。冒険者に頼らず、自分たちで魔獣を狩っている結果なんだろう。

それに、この規模の村にしては、兵士の数が結構多い。見張りなどを残しているはずなので、ここにいるのは半分程度のはずだ。

村で手に負えない魔獣が出たら赤騎士を呼ぶっていう話だったが、これだけの戦力なら赤騎士を呼ぶ必要なんかほとんどないんじゃないか?

多分、脅威度Eまでなら村で危なげなく狩れるし、脅威度Dの魔獣でも相手によれば撃退できるんじゃないかね?

考えてみれば、クランゼル国内で捕らえた大地魔術師も警備隊の人間だったと言っていた。彼クラスの人材も、珍しくないのかもしれない。

「そちらの彼女は、初めてだよな?」

「ん。ぼ――黒猫族のフラン」

「私たちの協力者です」

「なるほど。それじゃあ、あまり素性は聞かない方がいいね」

ボンディスの言葉に、周囲の兵士たちも頷いている。驚くほどあっさりと受け入れられたな。本当に協力関係にあるらしい。

「じゃあ、宿の奥の部屋に逗留する感じかい?」

「はい」

「オッケー、おやっさんに言ってくるよ」

兵士の一人がどこかへ走っていった。宿の奥?

「ああ、宿の奥というのは、私たちの関係者であるという隠語ですよ。宿の奥に泊っていると言えば、この村の人々には通じます」

冒険者がいないレイドス王国にも、旅人はいる。旅行や武者修行、行商など、様々な理由があるのだ。

この村では旅人であったナイトハルトたちに救われたことで、宿の奥に泊っている人間に関しては素性を詮索しないという暗黙の了解ができたらしい。

「またしばらくお世話になりますね」

「魔獣が急に増えて困ってたんだ。大歓迎だよ」

嘘偽りなく、歓迎してくれているようだった。それだけ、魔獣の増加が馬鹿にならなくなっているんだろう。

マレフィセントは、ここまで想定していたのかね?