軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1020 再びの援軍

球体となった巨大抗魔が、凄まじい速度で転がってくる。

どうやら、脆い手足をなくしつつ、移動速度を上げることが可能な形態ってことらしい。城に向かう途中にも似た敵と戦った。抗魔にとっては、珍しい形態ではないのかもしれない。

「ルウオオオォォォ!」

「はぁぁぁ! 燃えておけ!」

突っ込んでくる巨大抗魔に対して、メアが火炎を放った。しかし、表面であっさりと弾かれ、その巨体を止めることはできなかった。想像以上に、防御力が高い。

やつの変態中、邪魔をするために攻撃を放ったときは、普通にダメージが入っていた。まあ、即再生されてしまうので、多少遅らせる程度の効果しかなかったが。

それが、今はほぼノーダメージだ。障壁と装甲がかなり分厚くなったのに加え、その凄まじい回転力が触れるものを砕くのだろう。

ただ闇雲に攻撃を仕掛けても無駄だと悟ったのか、メアは先程とは少し違う攻撃を放った。本体を直接狙うのではなく、地面と抗魔の間辺りに魔術を発動したのだ。

巨大な爆発が発生する。攻撃力よりも、爆風などでバランスを崩すことを主体に置いた攻撃だった。

だが、体の真下で大爆発が起きたにもかかわらず、巨大抗魔に変化は訪れない。凄まじい突進力と重量のせいで、多少の衝撃ではビクともしないのだろう。

「ならば、横からだっ!」

正面からでは如何ともしがたいと理解したヒルトが、横合いから攻撃を加えた。回転力の影響が少ない、真横から殴ったのである。

反発するように弾かれてしまったヒルトに対し、抗魔はほんの少しだけ進路がズレたように見えるだけだった。

そうして対処法を探っている内に、巨大抗魔がフランたちに追いつき、追い越していってしまう。なんと、巨大抗魔はこちらを無視して、逃げていくオーファルヴたちを狙うつもりであるらしい。

このままでは、ジェインの軍勢隠密能力を発動する前に追いつかれ、蹂躙されてしまう。

フランは全力で巨大抗魔に追いすがると、天断を放った。

「らぁぁぁぁ!」

「ウオオオォォ!」

『すげぇ衝撃だっ!』

ギャリガリという甲高い音を響かせながら、俺の刃が巨大な球体の表面に深い傷を付ける。巨大抗魔の動きは僅かに鈍るが、その代償に俺の刀身にひびが入り、耐久値がゴッソリと減ってしまっていた。

刀身を再生させる間に、抗魔は再び転がっていってしまう。ただ、動きが遅くなっていた間にメアとリンドが接近し、上空から突撃を行っていた。ソフィの持つハープから強烈な魔力が発せられ、メアの持つリンドが大きな輝きを放つ。

どうやら、使用者の魔力を糧に、武器の攻撃力を上昇させる魔曲であるようだ。

かき鳴らされるアップテンポな舞曲をBGMに、メアが大上段からの斬撃を叩き込む。今まで以上の大きな爆炎とともに、巨大抗魔の動きが完全に止まっていた。

さすが神剣の一撃だな。悔しいが、単純な攻撃力では俺も負けている。しかし、抗魔もやられっぱなしではなかった。

全身から衝撃波のようなものを放ちメアを吹き飛ばしたのだ。いや、その反動を使って再び動き出したのを見るに、重い体を動かすために勢いを付けただけか?

しかし、それだけでメアが大きく弾かれ、大ダメージをくらってしまっている。あの巨体を動かすための反動なわけだし、凄まじい威力があったらしい。

クイナが救出に向かったので、任せておけば大丈夫だろう。

それよりも、巨大抗魔をどうにかせねば、デカい被害が出てしまう。ヒルトとウルシ、フランで攻撃を仕掛けるが、やはり巨大抗魔を止めるには至らなかった。魔族たちの魔術が放たれるが、それも完全に無視される。

このままでは本当に――。

「潰れろ」

「ウウウウウウァァァァ!」

突如、巨大抗魔の肉体が捻じれ、ひしゃげた。まるで、見えない巨大な手によって、握り潰されたかのようだ。

『今の大地魔術は……!』

「あそこ!」

「オン!」

フランが指さす先には、1000人ほどの軍勢と、その先頭に立つ大柄な男性の姿があった。その手には武骨な大剣を提げ、鋭い視線で抗魔を観察している。

「硬いな」

「アースラース!」

「よぉ。フラン。俺も交ぜてもらうぜ?」

見たものを震え上がらせるような威圧感を身に纏った鬼人の男は、この大陸の最強の一角。ランクS冒険者のアースラースであった。

「あれほどの抗魔、初めて見たぞ」

音もなくスーッと地面を滑ってきたアースラースが、フランの横に降り立つ。そして、厳しい表情で抗魔を観察していた。倒せないどころか、すぐに再生を始めたことに驚いているらしい。

やはり、ランクS冒険者の予想を上回るほどの、強敵だったようだ。

「なんで、アジサイたちと一緒?」

「まあ、成り行きでな」

アースラースが引きつれているように見えたのは、ハガネ将国の軍勢であった。紫の障壁のせいで閉じ込められてしまい、その元凶をアースラースと共に探りにきたらしい。

「ありゃあ、ぶっ倒すのは中々骨が折れそうだな。イザリオとアドルはどうした?」

「イザリオは、わかんない。あのお城の下……」

「マジかい」

「アドルはあそこ」

「気配がほとんど感じられないほど、神剣騎士が弱ってるのか?」

アースラースが苦々しい顔だ。当てが外れたからだろう。

「俺だけで倒し切れりゃいいんだが……」

「だいじょぶ。私たちもいる」

「そうだな。頼りにしてるぜ?」

「ん!」

先ほど、アドルがこちらと連携してくれていれば、巨大抗魔を倒せただろう。なら、あいつと同等のアースラースが手を貸してくれれば、今度こそ倒せるはずだ。今はメアもソフィもいるしな。

「まずは、全軍を合流させるぞ」

「わかった」

ようやく、本当に勝機が見えた。

『反撃開始だ!』

「ん!」