軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1章-21 災いの終焉

何が起こったのかわからなかった。

倒したと思ったドラゴンゾンビが生きていてブレスを放ってきた。

ブレスは父さん達を飲み込み集まってきていた人達をも消し去った。

少ししてブレスが俺から離れた場所に、もう一度放たれる。

またも悲鳴が上がる。

塀はもうボロボロになっていた。

俺は堀の中に落ちていたみたいだ、ゆっくりと体を起こし外へと這い上がる。這い出た場所からはドラゴンゾンビが見える。ふと、ドラゴンゾンビと目があった。 距離は300mを切るくらいだろうか、やつは笑っているみたいだった、ぬけぬけと這い出し自分の前に現れた獲物とでも思っているのだろうか。

ドラゴンゾンビは体の向きを変え俺に照準を合わせたみたいだ。今にもブレスを吐こうとしている。

動けなかった。いや、動く気力がなかった。

死んでもいいと思った。父さん達が目の前で死んだのだ、この世界で親と言える存在と過ごせて幸せだったと考えていた。

しかし、父さん達が言った「生きろ」という言葉を思い出した。

思い出したらドラゴンゾンビが、下卑た笑みを浮かべていることに気がついた。

その瞬間ブレスが放たれようとした、俺は自然と手を振り上げていた。

それに合わせるように厚さ2m、縦横5m程の壁が俺とドラゴンゾンビの間に100枚程せり上がってきた。

ドラゴンゾンビは構わずにブレスを放つが、50枚も破壊しないうちにブレスは消えた。

「殺してやる……」

「殺す、殺す、殺す、殺す、コロスコロスコロスコロスコロス……」

「殺してやるぞぉーーー!この腐ったトカゲがぁぁーーーっ!」

俺は走り出していた。

やる事はただ一つ。俺の正面に居る『 ドラゴン(腐った) ゾンビ(トカゲ) 』を消し去ること。

ドラゴンゾンビは驚いていた。目の前に突然壁が現れブレスの邪魔をし、さらに獲物と思っていた俺が声を上げて向かってきているのだ。予想外の連続なのだろう。

しかし、さすがは元ドラゴンといったところか、すぐさま迎撃の為のブレスを放とうとする。

それを見た俺は、ドラゴンゾンビの顎を目掛けて特大のアースニードルを放つ。アースニードルはブレスを放とうと開いた顎を直撃した。

ブレスを放とうとしたところに下からの強い衝撃で、ドラゴンゾンビは口を強制的に閉じさせられる事となった。

その結果ブレスは行き場を失い、ドラゴンゾンビの下顎を破壊した。

悶絶するドラゴンゾンビ。その間に俺は近寄りながらファイヤーバレットを連発する。

1発…5発…10発…20発…30発…………百は食らわせただろうか、目前まで来たところで俺は飛び上がり刀を取り出した。

刀に魔力を乗せてドラゴンゾンビの背中めがけて振るう、魔力を乗せたひと振りは巨大な斬撃となりドラゴンゾンビの背中を切り裂く、せいぜい体の四分の一程の深さの切れ目を入れたくらいだったが、ゾンビの大きさを考えればかなりのものだった。

しかし、徐々にだが傷口が塞がっていった。最初にファイヤーバレットで付けた傷はほぼ塞がっている。

「くそっ、再生能力を持っているのか!」

着地する俺に向かってドラゴンゾンビの尾の一撃が襲いかかってくる、浮遊でタイミングをずらし躱してから着地したが今度は前足が襲ってくる。

俺は背中を裂いた要領で刀を振るう。

ドラゴンゾンビは右前足の肘から先を失うこととなった。

「アギャァアアアー!」

悲鳴をあげるドラゴンゾンビに、俺は顔目掛けて刀を振るったが、ゾンビの右目を裂いた時に刀は折れてしまった。

刀が折れたせいでバランスを崩した俺に、残った右前足を叩きつけてくるドラゴンゾンビ。咄嗟に俺は魔法で障壁を張ったが勢いまでは殺せずに、地面に叩きつけられてしまった。

そのまま2~30m程先まで転がったところで勢いは止まったが、障壁で緩和したとは言えかなりのダメージだ。

すぐにポーションを使いケガと魔力を回復させる。ドラゴンゾンビは顎の回復が間に合っていないようで、ブレスは吐かずにこちらに向かって突進してくる。

俺はアースニードルを左前足目掛けて放つ。するとドラゴンゾンビはバランスを崩し顔から地面へと突っ込んだ。

その隙に俺は森まで走り身を隠した。

ドラゴンゾンビは怒りで俺しか見ていなかったようですぐに追いかけてきた。

俺を探し出そうと暴れまわり木々を破壊していく、それを見ながら俺はある魔法を練り上げていく。

5分ほど暴れまわったところでドラゴンゾンビが空中に浮かぶ俺に気付く、俺はそのままドラゴンゾンビの前方200m程先の森の中へと降りる。

怒り狂ったドラゴンゾンビは俺の方へと木々を粉砕しながら向かってくる。

ドラゴンゾンビとの距離が100m程になったところで、俺はある魔法を発動させた。

「『テンペスト』」

その瞬間、天馬を中心として巨大な竜巻が発生する。ちょうど竜巻の外周部にいたドラゴンゾンビは飛ばされまいと踏ん張ながらも徐々にこちらに近づいてきている。体には無数の切り傷ができ始めていた。

「まだまだぁ!『テンペストF3』」

魔法を強める天馬、ドラゴンゾンビは進むのを止め今にも飛ばされそうになっており、体中から血が噴き出し始めたがそれでも耐えている。

「『テンペストF4』」

ついにドラゴンゾンビの体が浮き上がりもがいている。巻き込まれた木々がドラゴンゾンビにぶつかり傷を広げていく、天馬の体にも傷が出来始めていた。

「止め、『テンペストF5』」

完全に舞い上がったドラゴンゾンビの体は暴風に耐え切れずに、バラバラに裂かれていく、

「グギャギャギャギャァァアアアアァァーーーーー」

『テンペストF5』を唱えて十数秒後、竜巻はドラゴンゾンビの断末魔の叫び声と共に消え去り、天馬は血まみれになりながら膝をつき気を失った。

砦で生き残っていた人たちは巨大な竜巻に驚き恐怖していたが、不思議なことに竜巻が収まると、砦に迫ってきていたゾンビ達は、半数程がその場に崩れ落ち絶命した。まだ動いていたゾンビ達も襲いかかってくる様子もなく、フラフラと歩き回っており大多数は森へと向かっていき、残ったモノの中には壁にぶつかったり、ゾンビ同士でぶつかり崩れ落ちているモノまでいる。

天馬の作り出したゴーレムも崩れ落ちていた。それを見たマークが天馬を探しに行こうとしたが、南門を出ようとしたところで、瓦礫に埋もれたシーリアたちを見つけた。

「シーリア!誰か手を貸してくれ!」

マークの呼びかけに無事だったマーサを含めた十数人が集まってくる。

「瓦礫を慎重に除けるんだ、回復魔法を使えるやつを連れてこい。大至急だ!」

マークの指示で瓦礫が取り除かれていく。十分ほどでシーリアは瓦礫から出された、近くからはマーリンとリカルドもいた。

マーリンは重体であったが、リカルドはすでに息絶えていた。

「シーリア、おい、聞こえるか?シーリア、目を開けるんだ」

マーサに抱かれながらマークの声に反応し、うっすらと目を開けるシーリア。しかし、誰が見ても危ない状態だった。

「マーク、マーサ…テンマは…」

マークはまさか天馬が行方不明だとは言えず咄嗟に、

「テンマがドラゴンゾンビを倒したんだ。すごかったぜ!ただ、森の奥の方まで追い込んでいたからまだここに戻ってきていないんだ。もうそろそろ来るはずだ」

と嘘をついた。ドラゴンゾンビを倒したことは疑っていなかったが、生死については確認が取れていなかったからだ。

「そう…あの子頑張ったのね…褒めてやらなきゃ…」

次第に言葉に力がなくなっていくシーリア、マークとマーサは必死にシーリアへと声を掛ける。

「気をしっかり持て、もうすぐテンマが戻ってくるんだぞ!」

「そうだよ、あの子を笑顔で迎えるのは母親であるあんたの役目だよ!」

しかし、シーリアはゆっくりと首を振り、

「もう私は長くないわ、だからマーク、マーサ私の代わりにこれをテンマに渡して、そして褒めてあげて…」

そう言って懐から自分のギルドカードを取り出しマーサに渡す。

「縁起の悪いことをいうな!」

しかし、シーリアは意識が混濁し始めており聞こえていないようだった。

「テンマだ!シーリア、テンマが戻ってきたぞ!ほらこっちに走ってきている!」

とマークが言い出した。それを止めるものは誰もいなかった。

「ああ…テンマ…来てくれたのね……よく頑張ったわね、偉いわ…リカルドもそこにいたの……これでまた家族で平和に暮らせるわね………」

そう言ってシーリアの体から力が抜けていく、

「シーリア?ちょっと、シーリア!しっかりおし!」

マーサが体を揺さぶるがシーリアは、

「大好きよ…テンマ…」

と呟き息を引き取った。