軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1章-16 黄泉返りの大群

兵士達に報復をした後、天馬は1時間程飛び続けて徐々に暗くなり始めた頃、村の方角から煙が見えてきた。

「なんだ、あの煙は!」

嫌な予感を覚えながら飛び続ける、やがて見えて来る光景に天馬は愕然とした。

---時は遡り、天馬が戻って来る数時間前---

「シーリア、マーリン、合図をしたら門に向かっている奴らに火の範囲魔法を放ってくれ!その後は撃ち漏らした奴らを戦士、剣士で叩く」

と指示を出しタイミングを計る。

「いまだ、放て!」

「「『ファイヤーストーム』」」

火の上級魔法がゾンビ達の襲い掛かる。しかしゾンビに魔法を避ける術など無く、集団のほとんどを焼き尽くす。

500体程のゾンビは前の方に居た2~30体を残し炭になった。

それを見て俺は30名の戦士や剣士達と共に飛び出していく、

「いいか、一撃で戦闘不能にするんだ!それが済んだら直ちに撤収だ!」

さすがに前衛は強い奴らで固めたので皆一撃で屠っていく。相手が武器の無いゴブリンやオークのゾンビだとは言っても順調だ。

問題は駐屯地に武器、特に矢の備蓄されている数が少ないといったとこか。

本来なら50人以上の兵士が詰めているため、武器も食料もある程度は備蓄されているはずなのに、今回は30人もいなかったからな。くそっ、経費削減ならよそでやってくれってんだ!

最初の1年半程は駐屯地には常に5~60人程が詰めていて、交代要員が来た時などは100人を超える事も珍しくは無かったのだが、森に探索に入ってもゴブリンやたまにオークを見かけるのが精々だったので、段々と人数が減っていき、最近では2~30人、多くても40人いるかどうかといった感じになっていたのだ。

さらには逃げた兵士達が馬車に詰めるだけの食料や武器を持って行った為に、備蓄庫に残っていたのはわずかな量しかなかったのだ。

そのため村人たちは各々のから持ち込んだ武器で戦っていた。

「よし、撤収しろ!」

応!と返事して門の中へと駆け込む仲間たち。

このまま行けば応援が来るまで粘れるが無理だろう。現にテンマが飛んで行ってから今回の襲撃は6回目だ。倒した数は三千を超えるだろう。

あのくそ 兵士(やろう) 達は数まで誤魔化してやがったな、明らかに千とか間違う数じゃねぇ。

ストレスのせいか口調が冒険者時代に戻ってきているが、気にしてはいられないだろう。

「おい、リカルド!」

「どうした、マーク」

見張りをしているマークの声が厳しい。

「やばいぞ、今度はオーガだ!それも三十体程、その後ろには推定で千程のゴブリンとオークだ!」

確かにそれはやばい。

オーガはBクラスの高さ3m程になる大型の魔物だ。そんなのが三十もいたらこんな即席の砦など5分と持たずに侵入されるだろう。

「シーリア、マーリン!」

「はい!」

「まかせろ!」

二人はすぐに理解し返事をする。

「「『ファイヤーアロー』」」

少し遠いが二人はファイヤーアローを連続して放っていく。

魔力の消費が少なく飛距離のでる魔法でオーガのみを狙う、それでもオーガは止まらないので近づいて来たところにファイヤーストームをそれぞれ2回放ち、ゴブリン達ごと攻撃する。

さすがに全滅は無理だったが全体の十分の一以下まで減り、オーガは残り5体だった。

「突撃ー!」

俺の掛け声に仲間たちは駆け出す。魔物達はもう満身創痍なので楽に殺せた。

波が切れ一息つく、その隙に水を飲みしばしの休憩をとる。シーリアとマーリンはまだ余裕がありそうだったが、念のためか魔力ポーションを少し飲んでいる。

その後も数回襲撃があり、ついには一回の襲撃数が千匹を超えてきた。

これが敵の作戦なら実にいやらしい攻撃だ。

初めは少数の弱い敵から始まり、徐々に数を増やし強い魔物を投入してくる。

おそらくゾンビを操っているのはかなり知恵の回る奴なのだろう。

「リカルド、敵が引いて行くぞ」

「逃げたのか?」

そうであって欲しいとの願望を込めて俺はマークに尋ねる。

「残念ながら違うみたいだ。森の中に引っ込んだだけみたいだ」

「そうか…だが休憩する時間ができたな」

そう旨い話は無いか、と思いながらも皆にいつでも動けるようにしながら休憩を取るように指示を出す。

軽い食事をとり、武具の点検をしながら俺は、順調ならテンマはこちらに向かっている事だろう、出来るならばテンマにはこのまま帰って来ないで欲しいがあいつは帰って来て共に戦おうとするだろう、と考えていた。

あと一時間もすれば暗くなり始めるだろう、そう思い後方に控えている者達に火を焚き始めるように伝える。

燃料は馬小屋などを壊して出た木の板を使う。

その時、森の方から再びゾンビ達の雄たけびが聞こえて来た。

「た、たいへんだー!リカルドー!」

マークの叫び声と共に塀の上で待機していた者の悲鳴が聞こえる。

俺は塀の上に駆け上がり森の方角を見た、そこには、

「何だ!あの数は、どう見ても五千…いやその倍近くいるんじゃないか!」

俺は森から次々と出て来るゾンビ達をみてそう叫んだ。

ゴブリンにオーク、コボルト、オーガにドラゴンスネークなどといった様々な種類のゾンビが森から湧いて出てくる。

それはゾンビによる災害だった。

全部が森から出て来ているわけでは無いので、この大群がどれほどの数になるのかが分からない。

見えるだけでも一万近いのだ。森の中にもいる事を考えると絶望にも似た感情が湧いてくる。

だが、逃げる事は出来ない。生き残るためには少しでも時を稼ぎ、応援を待つしかない。

「絶望的な戦いだな…」

前面には数えるのも嫌になる程のゾンビが群れており、徐々に砦を囲むように広がっている。

しかも、夜が近い。ゾンビは昼夜関係なく動くことができ、反対に人間は暗闇では動きが制限されてしまうため圧倒的に 人間(こちら) が不利だ。

「火をガンガン焚け!少しでも明かりを確保するんだ!」

この調子で燃やしていけば、明日の夜に使う分の木材は無くなるだろう。

しかし、今を生き延びなければ次は無い。少しでも生きる可能性を上げる為には賭けに出るしかない。

立ち上る煙を見ながら俺はそう思うのであった。