軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1章-12  シーリアの想い

国王の馬車に乗りおよそ2時間程で天馬達はククリ村へと到着した。

馬車の中で聞いて分かった事なのだが、この国王とんでもない男だった。

Q,なぜククリ村へ行くのか?

A,(建前)最近、大老の森がおかしいと王都にまで噂が流れてきた。折よくハウスト辺境伯領への十年に一度の視察が行われるので、王自らが赴いて視察するほど王は国の事を思っていると国民に分かってもらうため。

(本音)最近大臣がうるさくて、いい加減ストレスがたまってきたところだったから気分転換の為。

Q,ハウスト辺境伯経由の報告でも良かったのではないか?

A,(建前)辺境伯領に王が視察するだけでも辺境伯にかなりの負担をかけてしまう。ならば視察の後、帰還の道すがら少人数でいった方が気を遣わなくていいであろう。

(本音)気分転換の為行くのに辺境伯の手下が付いてくるなんてめんど臭い。

Q,後々問題になるのでは?

A,(建前)迅速な対応ができるようにするため、王自ら直に確かめる必要がある。

(本音)面倒な事は大臣たちがするんじゃね。

Q,国王がそれでいいんですか?

A,(建前)周りが優秀な者達ばかりだから余も国王としてやっていけているのである。

(本音)王様だからいいんだよ!

以上、質疑応答より一部抜粋

よくクーデターとか起きないな。

一番驚いたのは、

「リカルド!」

「アレックス!」

ガシッ、と抱き合うおっさんとおっさん…もとい、父さんと国王。

2人は若いころに母さんとクライフさん、今回は来ていないが現在王様の近衛隊で隊長をしている人と共に、5人パーティーを組んで冒険者をしていた時期があったらしい。

現役時代はかなり有名なパーティーだったらしく、竜を退治した事もあったそうだ。ちなみにじいちゃんは一人で退治した事があるそうだ。

この世界では王族が若いころに、社会勉強の意味も込めて冒険者になることは珍しくないらしい。

ちなみに国王はじいちゃんに師事していた時期もあったらしい。

「頭の出来も並で、魔力も並しかなかったが、時々バカな事をしでかすので見ていて退屈はしなかった」

との事だった。

その間俺はと言うと、

「テンマ、危ないことはしないでって言ったわよね」

シーリア火山を再度爆発させていた。

「シーリア、テンマは俺たちを助けてくれたんだ。許してやってくれ」

ギロッ

「何でもないぞ」

はい、国王役立たず!

というより、お母様、あなたは何者ですか!

「シーリア様はマリア様…国王様の正妻であられる、マリア・フォン・ブルーメイル・クラスティン王妃様の『魔法学校小等部』からの御友人で、王妃様が無二の親友と呼ぶお方です」

後ろからクライフさんが教えてくれる。

「はあ」

「更に王様はマリア様に弱く」

「尻に敷かれてるんですか?」

「左様です。またシーリア様とマリア様は、現在もよく手紙の交換をしておりますので」

「ここでの事をチクられると困ると」

「そうなった方が私的には面白いのですが」

この執事いい性格してやがる。

「テンマっ、何を話してるの!」

「いやっ、クライフさんが……いないっ!」

あの執事いつの間に、

「テンマ、まだ分かってなかったようね」

ヤバイ!シーリア火山が力をためている、神は居ないのか……いや、会った事はあるけど…

「シーリアそろそろ許してあげなさい。勝てないのに戦いに介入したなら蛮勇じゃが、勝算があってのことならそれは勇気じゃ、それはほめてやらねばならん」

「おじさん」

じいちゃんの言葉に怒りを収めていく母さん。

おお、じいちゃんあなたが私の神か!

「お久しぶりです。マーリン殿」

王様があいさつをする。

「うむ、久しぶりじゃの」

鷹揚に頷くじいちゃん、立場逆じゃね。

「陛下はマーリン様を父のように尊敬してますので」

また出たクライフ、無視だ無視。

「陛下は小さなころかなりの悪ガキで、家庭教師を付けても陛下のいたずら等についていけずに辞める方が多かったのですが、マーリン様の授業に感動したらしく、徐々に大人しくなっていったのです」

へ~、じいちゃんすげえな。

「効率よく人を苦しめる方法やら効率よく授業をさぼる方法等々」

「碌でもねぇ」

「それが楽しかったようで、他の人が教えてくれない事を教えてくれるので懐いたようです」

まあどうでもいいやそんな事は。俺の周りには変わった人間が多いという事で納得しておこう。

「テンマ様も変わっていらっしゃいますしね」

心を読むな変わり者執事、あとお前に言われたくないわ!

王様達は明日一日ククリ村と大老の森の様子を見て、明後日に王都へと帰る予定だそうだ。我が家には王様とクライフさんが泊まり、じいちゃんの家に残りの4人が泊まることになった。

今日は遅くまでうるさそうなので、早めに寝ることにした。おやすみ。

その夜

「しっかしアレックスは変わらんな~」

十数年ぶりの再会にしみじみと語るリカルド。

「そうそう変わってたまるか!いくつになろうと俺は俺だ!」

「成長して無いというのと同じですよ、権力を得ただけたちが悪いんですけれどね」

「クライフさんの毒舌も相変わらずね」

アレックスにクライフ、シーリアと続く。

「権力とは使うためにある!」

堂々と言い切るこの国の 王(トップ) 。

「そのせいでテンマが巻き込まれたけどな」

「マリアにはしっかりと伝えておくわね」

リカルドは笑っていたが、シーリアの目は笑っていなかった。

「お願いします、シーリア様」

「それだけはやめてくれっ!クライフ、お前は俺の執事だろ!」

「マリア様の執事でもありますので」

「あらあら、大変ね」

このような掛け合いも懐かしいものだった。

「と、ところでいつの間に子供が出来たんだ。手紙に書いてよこしてくれてもよかっただろ」

劣勢を悟ったアレックスが話題を変える。

「マリアには知らせたけど?あとテンマが15歳を過ぎたら一度遊びに行くって」

「聞いていないぞ」

アレックスにとっては寝耳に水だった。

「おそらくは王様が知ったら、政務を投げ捨ててでも遊びに行くと思ったのでは?」

「そうかもな、アレックスならやりかねん、現にここに居るし」

「そうね、アレックス様だし」

クライフの言葉に納得する3人。アレックスに味方はいなかった。

「ま、まあそれはさて置き。テンマはかなりのものじゃないか、一対一の戦いなら王都でも勝てる奴はそういないんじゃないか?」

「でしょうね、魔法無しなら今回連れてきた中ではジャンが何とか食らいつくくらいかと。魔法を使われたらディンですら負けるでしょう」

言い切るクライフ。ディンと言うのはリカルド達のパーティーメンバーだった剣士であり上級の魔法も使い、 王(アレックス) の近衛隊の隊長で王国軍最強と言われる男である。

「ほう、お前がそこまで言い切るか」

クライフは冒険者時代パーティーの斥候をしており、相手の力量を見抜く目は王国一と言われていたほどである。

「俺の息子か孫の近衛にしたいな」

「…あの子が望めば…ね」

シーリアの顔に影が差したのをアレックスたちは見逃さなかった。

「テンマの事で何かあるのか?」

王としての顔になったアレックスにシーリアは、ぽつぽつとしゃべり出した。

天馬が捨て子である事、

オオトリと言う家名が記されていたので貴族と関係があるのではないかとの事、

自分たちが本当の親ではないと知ったら、この家を出て行ってしまいそうで不安な事、など

シーリアの話を聞いて、アレックスとクライフだけでなくリカルドも驚いていた。

「シーリア、お前はそんなに悩んでいたのか、気付かなくてすまなかった」

男親と女親の違いもあったのであろうがリカルドは、天馬とのこの10年の絆は血より濃いと思っていた。

もし今、天馬の本当の両親が現れても、天馬は自分たちを選ぶであろうと楽観視している、とも言えるのだが。

シーリアは違っていた、

男と違い苦労してお腹の中で子供を育て痛みに耐え、時に命を懸け子供を出産する女として、

もしかしたら天馬は自分よりもひょっこりと現れた産みの母を選ぶのではないか?

もしかしたら自分は本当の母親に対し一歩譲ってしまうのではないか?

そんな考えがシーリアにはあったのだ。

それゆえに天馬に対して過保護なところがあったのだ。

見たことも無い『 天馬(我が子) を生んだ女』から守るために、

むろん無意識のうちにやっていた事だが、シーリア自身はそう思っている。

女親の苦悩に男たちは何も言えなかった。

重い空気の中沈黙を破ったのは扉を開けて入って来たマーリンだった。

マーリンはそっとシーリアの肩に手を置き、

「ばかもの、おぬしは紛れもなくテンマの母親じゃ。テンマを見ていれば分かる」

マーリンは優しい声でそう言う、続けて

「母さん母さんと呼び、怒られれば悲しそうにし、ほめられればうれしそうに笑う。確かに最近では言う事を聞かずに困らせる事もある。だがそれはおぬしに遠慮をしていない事ではないか、母親と思っているから遠慮をしないのではないか」

言い聞かせるように少し間を取りそして、

「もっとテンマを信用しなさい。そして信頼してあげなさい。おぬしはテンマの母親なのじゃから」

と言った。

その言葉にシーリアは涙を流しそして、

「…はい」

とだけ呟いた。

リカルドはシーリアを抱きしめ髪をなでている。

アレックスは少し考え、

「オオトリと言う家名は聞いた事が無いが気に留めておこう、何かわかったら知らせよう」

クライフも、

「確かに聞いた事は無いですね、発音的に近いのは『オードリー家』ですが、あそこは王家縁の家ですから…そう言う事は考えにくいですし」

と言っていた。

この後は話を続ける雰囲気ではなくなった事と、シーリアの疲労の色が濃かった為、お開きとなった。