軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

71話 もう一周!

昼前には森を抜け、一行は草原で早めの昼食を取っていた。このあとは草原をひたすら進めば、ゆっくり歩いても日没までには砦につくそうである。

「蛇美味しい?」

香ばしく焼けた蛇肉をかじっているティリカに聞いてみる。

「……うん」

返事までの微妙な間。まあそうだよね。まずくはないけど、特に美味しいかって言われるとそうでもない。

「もう蛇は取って来ないでね。ティリカももう満足したでしょ」

普通の焼いたオーク肉を食べながらエリーが言う。

「うん。ありがとうマサル」

「どういたしまして」

おれとしては蛇なんかより野うさぎが気になるんだが。さっきも野うさぎらしき反応があったんだ。

「野うさぎなんかは食べたくない?」

「アイテムボックスにいっぱいあるでしょう」

「そうだよね……」

移動中にちょっと離脱して狩りでもって考えたけど、おれが見てないとゴーレムの移動速度が落ちちゃうんだ。どうにかできないかと思ったが、ゴーレムの作成原理が全くの不明だ。魔法でプログラミング的なことをやってるみたいなんだけど、何がどう作用してるのかさっぱりわからない。エリーも教えてもらった通りやってるだけで、詳細は知らないという。

「ゴーレムでもっと色々できればいいんだけどなあ」

そしたら、自動で移動させて、その間に野うさぎ狩りもできるのに。

「ゴーレムは役に立つ」

そう、ティリカが言う。ティリカの決闘の時とかどらご召喚の時とかは結構活躍してたしな。

「確かにな。あんまり高望みもよくないか」

「そうよ。だから野うさぎに気を散らさないで、ゴーレムの操作に集中しておきなさい。今日はなるべく早く砦に着きたいわ」

くっそ。釘をさされたか。もう1週間以上野うさぎ狩りをしていない。森とか地下室にいると気にならないが、草原で目の前に野うさぎらしき反応があるとすごく気になるのだ。

「なんか悪いね。僕が歩こうか?」

そんなに表情に出ていたのだろうか。アルビンに気を使われた。

「いやいや。アルビンは安静だし、今日もゴーレムで移動しなよ」

「そうだよ。大怪我したあとは無茶はしないほうがいいよ。今もそんなに体調はよくないでしょ?ほんとは昨日の見張りもやらないほうがよかったのよ」

「楽させてもらってるから見張りくらいはやらないとね。それに見張り中もほとんど動いてないから」

「とにかく一週間くらいは安静よ。いいわね?」

「はい、アンジェラさん」

「じゃあそろそろ出発しましょう。さっさと砦に戻って休養するのよ!」

エリーの掛け声でみんなが出発準備を始める。おれもアイテムボックスに色々しまい込みながら、ふと気がついた。今の休憩中にとっとと行っておけばよかったんじゃないのか!?

「どんだけ野うさぎ狩り好きなのよ……だいたい寝不足でしょうに。草原もまだ安全ってわけじゃないのよ。自重しなさい」

次の休憩中に野うさぎ狩りに行ってもいいか聞いたら、エリーに怒られた。

休憩を短めに、移動も急いだので日が高いうちにゴルバス砦にたどり着く。早く着きたいのはみんな一緒だったのだ。

門の前でゴーレムを土に返し、アルビン達とともに門を抜ける。辺境の砦なので、通行人は少ない。アルビンは門番と顔見知りらしく、おれたちもカードを少し見るだけですぐに通してくれた。

とりあえずはギルドに行ってアルビン達の分の獲物を売り払う。おれたちの分は一旦保留だ。何せ分量が物凄いんだ。アイテムボックスには倒した獲物がぎっしりで、カードにもすごい数の記録がある。ちょっとした騒ぎになるのは間違いない。

「君達はこの後の予定は?」

アルビン達の獲物の引渡しも終わりギルドホールでアルビンが尋ねてきた。

「まだ決めてないんだ。今日はもちろん宿を取るけどね」

砦に着く前に相談する予定だったのだが、アルビン達と合流してできなくなった。聞かれたら都合の悪い話もあるし、そのあたりは今日か明日にゆっくりやることになるだろう。

「そうか。僕らはギルドの宿舎にいるから、時間があったら訪ねてきて欲しい。お酒くらいならおごるから」

アルビンが安静なのでしばらくは休養せざるを得ない。それにオークの報酬で今回の狩りの稼ぎはそこそこな額にはなったし、今後のことなどもじっくり相談するのだとか。おれたちと二日ほど過ごして思うところがあったというが、うちはあまり参考にしないほうがいいと思うんだけどなあ。どう考えてもうちは特殊なパーティーだ。

「じゃあ、元気でな、アルビン。時間があったらそっちに顔を出すよ」

アルビンと別れ、冒険者ギルドを出たあとはエリーのすすめる宿屋に部屋を取った。辺境の砦なので高級というわけではないが、五人でゆったりと泊まれるほど広く、お風呂もついている。ギルド運営の宿舎はお風呂はないし、部屋も小さく壁も薄い。お金のない冒険者にはとてもありがたい施設なんだが、今のうちのパーティーには向かないだろう。

「今日はゆっくり休むとして、明日からはどうするんだ?」

「さすがに明日出発ってわけにもいかないわね。とりあえず明日も一日休みでいいと思うのだけど」

こういうときに真っ先に意見を言うのはエリーである。そして大体は真っ当な意見を述べてくれる。

「それはいいけど、今回の獲物とか討伐報酬はどうするの?」

「ここじゃ売れないわね。買取拒否される可能性もあるわ」

砦では肉は供給過多だし、辺境だから売れるところに持っていくのも大変なのである。いまアイテムボックスに入ってる分全部売るというのは無理があるだろう。

「じゃあ町に戻ってからってことか」

「いっそ王都まで持っていってもいいわね。ちょっとは高く売れるわよ?」

「でもおれのアイテムボックスも容量の限界があるよ」

実は先日、アイテムボックスに大岩を大量に収集していたんだが、突然何も入らなくなった。かなり焦ったが、理由はすぐに判明した。容量の限界だ。数ではない。重さで制限がかかったようなのである。なんとなく無制限に入るものと考えていたが、単に限界がでかかっただけだったのだ。

その時は泣く泣く大岩を半分くらい捨ててきた。でも無駄にするのが悔しかったから遺跡風に意味ありげな配置にしておいた。大岩が五〇個積み重なった塔を中心にストーンヘンジっぽい感じに。地面にがっつり埋めて錬成しておいたから台風ごときじゃびくともしないだろう。森の中にぽつんとある謎の遺跡。ロマンだな!

「まだ全然余裕でしょうに」

「でも大岩が……」

「そんなのポイしちゃいなさい、ポイ。大岩を出せばいくらでも入るでしょ」

「だめだよ、そんなの!大岩はすっごく役に立つのに!」

盾にしてもよし、爆撃してもよし。攻防兼ね備えた高性能な質量兵器なのだ。それを捨てるなんてとんでもない!

「別に全部捨てろって言ってるわけじゃないわ。必要ならまたそこら辺の土を掘って作ればいいでしょ?」

「そうなんだけどさ」

実際問題、大岩×99が重すぎるのだ。一セット放出するだけで、モンスターなど入れ放題なんだが、せっかく作った大岩がもったいないじゃないか。ちゃんと規格を統一してサイズも形もばっちり揃えてあるんだぞ!

「野うさぎとか大岩とか、どうしてマサルは変なものにこだわるのかしら……」

エリーにため息をつかれた。でもどっちにも愛着があるんだよ!ちゃんと理由もあるんだよ!この2つに関してなら一時間でも語れるけども、引かれそうな気がしたのでぐっと我慢した。

「獲物とかでアイテムボックスがいっぱいになったら、大岩は捨てるよ」

「当たり前じゃない!」

エリーに怒られた。

今度伊藤神に日誌で相談してみるかな。ポイント消費でアイテムボックスの容量アップとかいいかもしれない。そしたら大岩をもっと増やせるな。どうせだったらもっと巨大な岩石とかもいいかもしれない。超高空から隕石大の巨大岩石を投下すれば町の一つも消し飛ぶんじゃなかろうか。これはすごくいいアイデアだな!魔王がいて、魔王城の位置でも判明したら是非ぶちかましてやろう。現状のアイテムボックスの容量じゃ無理だけど。

「魔王城に探知スキル持ちがいたらどうするの?空で何にもできないまま好き放題にされるわよ。それに無事投下できても、レヴィテーションで受け止めるか、魔法で落下点を逸らせばいいのよ。ただの岩の塊で魔王を倒そうとか甘い。甘すぎるわ!」

「エリー、エリー、話がそれてるよ。今は明日以降どうするかって話でしょ」

なおも魔王の強さについて語ろうとしていたエリーをアンが止めた。

「そうね。そうだったわ。ええっと?」

そう言ってエリーが首を傾げておれ達を見る。

「ゲートでぱぱっと家に帰ろう」

「私もそれがいいな」

おれがすかさず主張し、アンが賛成に回った。ここのところ働き過ぎだと思う。がっつり休むべきだと思うんだ。それに軍曹殿に剣の修業をつけてもらいたくもあるし、町に帰りたい。

「ゲートはダメよ。普通に時間をかけて帰らないと不自然でしょう。それよりも森をもう一周するわよ!砦から町まで別ルートで森を帰りましょう」

「私もそれがいい。レベルアップをもっとしたい」

エリーとティリカは経験値がもっと欲しいようだ。珍しく二対二に意見がわかれた。

「ゲートがダメなら町行きの馬車でも捕まえればいいだろ」

町は砦から王都に行くための中継地点でもあるし、馬車を捕まえるのには困らないはずだ。

「サティはどっちがいいと思う?」

唯一意見を表明していないサティに聞いてみる。

「ええと……」

おれとティリカどっちの意見を取るべきか迷ってるようだ。ちょっとオロオロしている。

「森に出てもどうせ毎日家に帰るじゃない。パーティーの戦力をもっと強化するべきだわ。お金もこれくらいじゃ全然足りないし」

「一度家でゆっくりするべきじゃない?魔法の修行とかもしたいし、エリー、あなた料理の練習さぼってるでしょ」

「唐揚げとプリンはもう作れるわよ」

「それだけじゃない」

そう。まさにそれだけなのだ。そして料理スキルは0のままである。とりあえず本人の希望を聞いて練習してみたらこんな事態になった。そしてこの二つを作れるようになったとたん、エリーが満足してしまったのである。それ以来、料理の練習は滞りがちだ。

「それは、ほら。地下室じゃ料理とかできないじゃない?」

「地下室でも包丁の練習くらいできるわよ。じゃあそうね。エリーが料理の修行をきちんとするっていうなら、帰りも森を通ってもいいわ」

「わ、わかったわよ。料理の修行もがんばるわ……」

「マサルもそれでいい?」

「うん、問題ないよ。おれも経験値は稼ぐべきだとは思ってるし」

肉体強化系のスキルを取っておけば戦闘も楽になるはずだ。もっと休みを取りたいが仕方がない。

「決まりね。さあ、家に帰ったらみっちりやるわよ、エリー。いいわね?」

「うー。わかったわよ……」

何がそんなに嫌なんだろうか。プリンと唐揚げはちゃんと作れるようになったのに。

「じゃあ夕食を頼んで来るよ。マサルはお風呂を入れておいて」

「りょうかーい」

「人間向き不向きがあると思うのよ。だいたい料理は私以外全員できるんだし、必要ないじゃない」

アンが出て行った途端、エリーがぶつくさ言い始める。だが異世界でも家庭で料理を作るのは女性の仕事であるとの認識らしく、必要ないから覚えなくていいというエリーの発言も弱々しい。

「往生際が悪いぞ」

「エリザベス様、私も手伝いますからがんばりましょう!」

「たいが、出してもいい?」

ティリカは手伝う気はないらしい。

「うーん、入り口の扉から見えない位置でならいいんじゃないかな?ベッドの陰とか」

「わかった」

ティリカがベッドの横でたいがを出したので、それを入り口のほうに行って確認する。

「そこなら見えないし大丈夫だな」

消すのは一瞬で済むし、ばれる心配もないだろう。ティリカは床に座り、たいがにもたれかかる。エリーもとことこと歩いて行ってたいがに抱きついた。

「よし、がんばるわ。料理スキルがレベル1になればいいのよ。それでアンを納得させるわ」

たいがに抱きつき顔をうずめてもふもふしながらそんなことを言うエリー。

「私もレベル1」

ティリカがそう言う。

「そうよ。ティリカにできて私にできないわけがない。できる。できるわよ」

「そうだな。できるといいな」

というか、普通できるものなのだ。レベル1くらいは。

とりあえずお風呂を入れて、部屋に戻るとアンが丁度戻ってきた。

「すぐに持ってくるって。部屋で食べましょう」

「お腹がすごく空きました」

「多めに注文しておいたから、たっぷり食べてもいいわよ」

「はい!」

注文すれば料理が出てくるシステムはとても楽である。エリーの料理がしたくない気持ちってこのへんにあるのじゃないだろうか。貴族だし、冒険者になってからも全くやってなかったから料理をすること自体に心理的抵抗でもあるのかもしれない。その割には唐揚げとプリン作りはさっさと習得したのだが。

「エリー、実を言うと唐揚げの作り方には別の方法がある。味も違う」

もちろん唐揚げのレシピなどいっぱいある。ただおれの好みの問題で一種類しか教えてなかっただけなのだ。

「どういうこと!?」

たいがに抱きついていたエリーががばっと体を起こした。

「教えて欲しいか?」

「ええ!」

「料理のレベルを1にあげるのだ。そうしたら伝授すると約束しよう」

「やるわ!やってやるわ!料理スキルをレベル1にして新しい唐揚げを作るのよ!」

やはり好物で釣るのが一番だな。それともエリーがちょろすぎるのだろうか?とにかく、とりあえずはエリーの機嫌も直って、やる気も出してくれたのでとても結構なことだと思うことにしておいた。