軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

63話 晴天に霹靂

うちのパーティーだが、パーティー名サムライといいつつ、遠距離砲撃に特化している。構成は魔法使い寄りの魔法剣士、剣も使えるメインは弓の戦士、回復魔法と攻撃魔法を使える神官、魔法使い、それに攻撃魔法と召喚魔法を使える魔眼持ち。

火力は豊富にあるけどなんかバランス悪いね。とりあえず戦闘時にはゴーレムを出して前衛にすることにした。普段はおれとサティが前と後ろを固めることになるだろう。いざって時は白虎さんもいることだし。

休暇中の話し合いで、エリザベスは魔境に行こうと主張したが、おれはまずはこの街周辺で地道にやったほうがいいと反論した。

こういう時に成否を決めるのはアンジェラになる。サティはおれの意見には絶対賛成する。そしてティリカはサティの意見におおむね賛同するから、この2名をいれて多数決をすると、常におれの意見が通るという事態になるのだ。サティとティリカはもっと自己主張してもいいと思うんだが、決まったことに従うというスタンスだ。それで自然とおれ、アン、エリーで決めるってことになる。

「うちの火力なら魔境でも問題なくやっていけるわ。ちゃっちゃとレベルをあげて新しいスキルを取るのよ」

「レベル上げならこの周辺で出来るだろ?慣れないアンとティリカがいるんだから最初は慎重にやったほうがいい」

「魔境なら稼ぎも全然違うわよ。結婚式とかでだいぶお金が目減りしたでしょ」

「お金より命が大事だよ」

「魔境はちょっと怖いかな。しばらくはこっちでやろうよ」

最後のアンの一言で話は決まった。いずれ魔境には行くことにはなるだろうが、今はまだ早い。

今のランクは、おれとサティがC、エリーがB、アンとティリカがE。アンとティリカは冒険者以前の実績が認められてEランクでのスタートとなる。筆頭がBとはいえ実績は皆無。パーティーとしての評価はCランク相当だろうというのが、軍曹殿の評価だった。実際うちのパーティーの全能力を開示すれば、Cなんてものじゃないのは確定的だけど、エリーはSランクを目指すって息巻いていて、落ち着かせるのに苦労した。おれのことがあるからあまり目立つわけにもいかないのだ。

エリーは結局空間魔法レベル5は諦めた。スキルは最終的にこんな感じになった。

魔力感知Lv1 高速詠唱Lv2 MP消費量減少Lv2

魔力増強Lv4 MP回復力アップLv4

回復魔法Lv1 空間魔法Lv4

火魔法Lv1 水魔法Lv1 風魔法Lv5 土魔法Lv2

【風魔法Lv5】①風弾 ②風刃 風壁 ③雷 風嵐 飛翔 ④豪雷 烈風刃 ⑤荒天 霹靂(へきれき)

【空間魔法】①アイテムボックス作成 ②短距離転移 ③長距離転移 ④転送魔法陣作成

空間魔法も結構レアだとは言え、転移術士はそれなりにいる。まあバレても平気だろう。ただ、転送魔法陣は隠しておこうということになった。このレベルになると、国家管理されるレベルで知られると厄介なことになる可能性がある。

転送魔法陣ならパーティーごと転送できる。転移ポイントは長距離転移と同じ登録した地点。レベルがあがったことにより4箇所できるようになった。現地に行かないと転送地点を登録できないので、今のところはこの家しか飛ぶことはできない。

魔法陣をテストしたところ、やはりアイテムボックスの中身ごとは無理なようだ。ただし、おれのアイテムボックスは除く。

「ずるいわ!」

はい、そうですね。ごめんなさい。でもおれが悪いんじゃないんです。そんなに睨まないで下さい。

おれのアイテムボックスは特別製なようで、転移に影響を及ぼさないようだ。自然、みんなの荷物を持つことになる。枠は100なんだが、袋か箱に入れてしまえば1個の扱いなので、それほど圧迫もしない。本当に便利である。恩恵を受けているんだから、エリーさんはそんなに睨まないでいただきたい。

風のレベル4,5の試射もした。烈風刃はウィンドストームの強化版と言っていいだろう。強力ではあったが理解できる範疇だった。だがレベル5の2種はまさに天変地異。威力も消費する魔力も破格のものだった。念の為に火魔法レベル5を試した場所よりもさらに1時間ばかり距離を取ったのだが、それでも街から見えたらしい。門番の兵士におれ達のいたほうの天候が悪化して見えたそうで、大丈夫だったかと心配された。

そんな感じで結婚式から一週間が過ぎ、発注していた防具も揃い、おれ達のパーティーは始動した。

早朝から冒険者ギルドで依頼を物色していると副ギルド長がやってきて頼みがあると話しかけてきた。どうやら以前に街を襲撃したハーピーがわずかに生き残って、北方の森の街に近い場所に巣を作っているらしく、それをちょっと偵察して、ついでに潰してきてくれないかという。

依頼を出さないのかと尋ねたが、それほどの被害があるわけじゃないとのこと。さすがにあれだけやられては街を再び襲撃しようとは思わないのだろう。だが、巣を作って繁殖されては後々面倒になる。

それにハーピーは樹上に巣を作るので、通常の冒険者の弓だけでは潰すのは厳しい。依頼を出しても受けるパーティーがいるかどうかと言う話だ。その点、おれ達なら遠距離攻撃はお手のものだ。それにもちろんあの時の借りを返したかったというのもある。今のパーティー、スキルなら万が一にも遅れは取らないだろう。

「そうね。依頼報酬はいらないから、討伐報酬を倍にしてちょうだい」

「おいおい、倍はないだろう」

「あら。街への襲撃の時は倍出したって聞いたわよ」

「そりゃあ緊急事態だったからな」

「その時の生き残りなんでしょう?だったら同じ報酬でもいいはずよ」

「うーむ。じゃあこうしよう。巣を全滅させてくれれば倍だそう。一匹でも逃せば通常の討伐報酬のみだ」

「それでいいわ」

判定は真偽官がいればごまかしようがない。そしてエリーはとても頼りになるな!

■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■

「どうだ?」

「ん。今のところは何も見えない」

おれ達はいま、街の北方にある森に分け入っている。先行偵察はティリカの召喚獣である鷹のほーくが担当だ。周辺を警戒しつつ、森の細い道を進む。既に半日以上は歩き、今は午後の半ばくらいだ。冒険者だったエリーはともかく、ティリカもアンも文句ひとつ言わずついて来ている。道中はここまでオークに1匹だけ遭遇した以外は平和なものだった。そいつはのこのこと近づいてきたところをアンとティリカの魔法の餌食となり、アイテムボックスに収納されている。

そしてティリカが突然立ち止まって告げる。

「ハーピーがいた。ほーくが追いかけられてる」

「こっちまで逃げてらっしゃい。迎え撃つわよ」と、エリーが言う。

「ハーピーは3匹。ほーくのほうが速度が速い」

「あまり速度を上げてハーピーを振り切らないようにするのよ」

「わかった。誘導する」

こちらも準備を始める。少し森の中を引き返し、多少なりともスペースのある場所に陣取る。

「メイクゴーレム!」

3mクラスのゴーレムを3体作成。盾代わりにして待ち構える。一体のゴーレムの後ろにティリカとサティ。もう一体のゴーレムの後ろにおれとエリーとアンが立ち、最後の一体を後方に配置する。

「いい?アンとティリカはいけると思ったらどんどん撃ちなさい。撃ち漏らしは私達でフォローするわ。サティも分かってるわね?」

「はい。ギリギリまで引きつけて、羽を狙います」

アンとティリカには経験値を稼いでもらわないといけない。

「来ます」と、サティが言う。

続けておれの気配察知にもハーピーとほーくの反応が来た。

「アン、詠唱を」

使うのはレベル2の氷弾だ。少々詠唱時間が必要なのでタイミングを見て合図をする。

「う、うん」

剣を構えて、ゴーレムをいつでも動かせるようにする。多少の自律行動も可能だが、やはり直接操作をするほうが確実だ。

バサバサッと音がして、ほーくが木々の上から森の中の細い道に飛び出してきて、低空飛行でこちらに突っ込んでくる。続けてハーピー達が視界に飛び込んできた。

ほーくがゴーレムの間をすり抜ける。ハーピーはこちらを発見して即座に逃げることにしたようだ。上方に方向転換しようとする。だが、もう遅い。こちらに突っ込んできた勢いはそう簡単には殺せない。飛行速度が遅くなり、さらに方向転換のために無様に全身を晒すことになった。

「アイスショット!」

アンジェラの氷弾がハーピーの胴体に突き刺さり、ハーピーは落下する。ティリカのほうも首尾よく一匹を倒し、もう一匹はサティの矢で羽を射抜かれて地面でもがいている。

ティリカが地面に落ちたハーピーに手際よく止めをさしていく。

「まだ生きてるよ」

アンジェラが撃ち落としたハーピーは瀕死なものの、まだわずかに動いている。きちんと止めをさしておかないと経験値にはならない。ここは心を鬼にしてやってもらわないと。

アンジェラはゆっくりとハーピに近づくと、メイスを構え、頭に容赦のない一撃を食らわした。殺すのをちょっとくらいためらうかと思ったがそうでもないようだ。そういえば最初に会った時、笑顔で手のひらナイフでぶっすりやられたものな。Sの気があるのかもしれん。

ハーピーの死体をアイテムボックスに収納する。

「初戦にしては上出来よ。特にティリカ。よくやったわ」

エリーがそう言って、ティリカの肩にとまっているほーくの頭をくりくりとなでる。ティリカの召喚魔法、思ったより役に立つ。

「それでどうする?巣が近いみたいだけど」

「もう一度偵察をしましょう。巣の規模を確認しないといけないわ」

「おれが行こう。コソコソするのは得意技だ。ここはひとつ、おれに任せておいてもらおうか」

「そんなこと自慢気に言わないでちょうだい。でも任せるわ」

ティリカにねずみのぱにゃを出してもらい、肩に乗せる。召喚獣はティリカと感覚がつながっているから、これで連絡がつく。あとは状況に応じて臨機応変にやろうと言うことになった。

「気をつけてね」と、アンジェラ。

「ああ、行ってくる。サティ、みんなの護衛、任せたぞ」

「はい、マサル様」

ゴーレムも置いていくが、作成者がいないと案山子よりましという程度にしか動かない。まあ盾か囮くらいにはなるだろう。

ティリカに教えてもらった方向にゆっくりと進んでいく。さっきまで歩いていた獣道のようなところと違い、完全に道がない。木々の間隔は広めで歩くのにはさほど苦労しないが、それでも多少の物音はする。忍び足のレベルは2。もうちょっとレベルを上げておくべきかもしれないな。

ほどなく巣は見つかった。樹上にいくつか、木や枝で作った、いかにも鳥の巣といった感じのものがいくつかみえる。気配察知によると、ハーピーはざっと20匹近くいる。樹上の巣はある程度固まっているものの、範囲はそれなりに広く、全てを殲滅するとなるとやっかいそうだ。偵察結果をねずみを通して報告する。

一通り聞き終えるとねずみは肩から降りて、来た道を少し戻ってこちらを振り向く。戻って来いってことか。

再びねずみを拾い肩に乗せて、慎重にみんなのところへと戻る。

「そろそろ日が落ちるわ。あいつらは夜目が効かないから全部巣に戻ってくるはずよ。そこを一撃で仕留めましょう」

「一撃って、おれかエリーがやるの?」

「私ね。森で火魔法は危ないわよ」

「風のレベル5も結構危ないと思うけど」

「雷なら範囲を調整すれば大丈夫よ。それとも他に何かいい案でもあるの?」

アンとサティのほうを見るが首を振られる。おれも特に案があるわけでもないが、レベル5魔法で一掃しようとか乱暴すぎると思うんだ。

「決まりね!さあ、時間がないから移動しましょう。暗くなると面倒だわ」

エリーはすごく嬉しそうだ。だがまあ最強魔法を実戦でぶっ放したい気持ちはすごくわかる。

ゴーレムを土に返し、おれを先頭にエリーが続く。他の3人は距離を取ってついて来ている。ハーピーに見つかってはまずい。隠密も忍び足も持ってないエリーが心配だったが、さすがに冒険者生活が長いだけあって物音をほとんど立てずについて来た。

見つかることもなく、無事に偵察ポイントに到着する。

「ここだ。あのあたり。見えるか?」

「わかるわ」

「あのあたりが巣の中心部で、端があそこと、あそこあたりだな」

巣の配置を説明していく。エリーの顔をちらりと見ると、神妙に聞いている振りをして、ニヤついている。

「おい、頼むぞ。あれすごい広範囲なんだから、下手したらこっちまで巻き込まれるんだぞ」

「わかってるわよ。でもそうね。もっと後退しましょうか」

本気だ。本気でぶっ放すつもりだ、こいつ!練習の時に最小の威力でやらせたのがきっと不満だったんだ。

「威力を抑えて敵を逃しては元も子もないわ。よし、ここでいいわね」

エリーは杖を構え仁王立ちをする。おれはアイテムボックスから大盾を出して隠れる。雷だからこちらまで届いた場合、木の影ではかえって危険だ。盾には防電の処理が施してある。エリーの黒ローブはもちろん防電仕様だ。

エリーの詠唱が進むにしたがって、夕闇が迫る森の上空に暗雲が集まっていく。

それに気がついたハーピーが数匹、巣から出てくる。だがすでに呪文は最終段階だ。ハーピーの巣の上空に巨大な雷雲が形成され、時折漏れだした雷が光って見える。風系雷撃最強呪文【 霹靂(へきれき) 】が発動しようとしているのを、おれは魅入られたように見ていた。練習の時とは桁違いのでかさだ。やっぱり全力でやるつもりだ!

「来たれ、来たれ。全てを貫く最強の雷撃、神なる雷よ、天より轟き敵を打ち砕け!テラサンダー!!」

その瞬間、視界が閃光で染まり轟音が響き渡る。

目がああああああ、耳がああああああああああ。

予想以上の威力だ。耳が痛い。盾の影でうずくまっていると、目はようやくうっすらと見えてきた。

「マサル様!」

後方からサティ達がやってきた。耳がキーンと鳴っていて声がよく聞き取れない。自分に【ヒール】をかけると、ようやく耳が聞こえるようになった。エリーはと見てみると、倒れていてアンが介抱していた。盾を放り出して慌ててエリーに駆け寄る。

「ふふふ。どう?私の最強呪文は……」

どうやらただの魔力切れのようだ。やり切った、満足気な顔をしている。

「確かにすごかったけど、やり過ぎだ」

「魔力が足りないわ。魔力を分けてちょうだい、マサル」

「はいはい」

だが、その前にハーピーはどうなっただろう。あれで生き残りがいるとは思えないが、確認はしないと。

「ほーくで偵察をした。生き残りはいない」

「はい。探知できる限りではハーピーは全滅してると思います」

「当然よ。全魔力をつぎ込んだんだから」

アンに支えられて立ち上がったエリーが言う。

「全力でやるならやると言って欲しい」

「まあまあ。依頼は無事完了したんだし、いいじゃないか」と、アンが擁護する。

「エリザベス様すごかったです!」

「悪かったわよ。でも一度全力でやってみたかったのよ。今日のは手頃な相手だったしね。次からはちゃんと抑えるわ」

奇跡の光でエリーの魔力をチャージしてやる。

「いいわね。この魔法。安心して全力を出せるわ。ありがとうね、マサル」

「次からはちゃんと加減してよね。毎回ぶっ倒れられても心臓に悪いぞ」

「ごめんってば。ほら、ハーピーを回収しましょう」

あたりは暗くなり始めている。早くしないと夜になってしまう。

何匹か落ちてるのを回収したあとは、木の上の巣をエリーと2人でレヴィテーションを使い覗いて回る。黒焦げになってるかと思ったが死体の状態は良好だ。これならいい値段で売れるだろう。木も雷で火がつくとかそういうこともない。自然の雷と何か性質が違うんだろうか?

「じゃあゲートを開くわ。集まってちょうだい」

エリーが転送魔法陣を発動し、おれ達は家に帰還した。転送地点はおれの部屋に設定してある。ギルドへの報告は明日でいいだろう。今日のところはご飯を食べてお風呂に入ってぐっすりと寝よう。