軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

343話 ミズホ攻略戦 その3

三つ目の拠点、中央砦では魔物の邪魔は砦の防壁建設が終わっても入らなかった。周辺地域では魔物の動きが活発だったが、メテオで始まった火事が邪魔で俺たちが何をしているか、まだ気がついてもいない様子だ。

俺たちの動きが迅速すぎるのもあるが、火事の中心部に直接転移して拠点を建設中とは想定外なのだろう。もちろん俺たちもあえて発見されるような動きはせず、砦の中は暗いままで、各自が静かに作業や警戒、待機をしていた。

「延焼がまだ外に広がっておる。当分ここは安全じゃな」

防壁の建造も途中からアンやティリカ、イオンにルチアーナたちまでが来てくれて一気に終わらせてしまった。時間はまだ真夜中過ぎくらいだ。

エリーは北部砦に常駐している。魔物が向かってくる動きが見えて警戒しているのだ。最初に作った東部砦のほうはまだ敵に気が付かれていないようだ。

「ここまでは思ったより早く終わったな」

やはり土魔法使いが増えたのと、配置する兵力をふんだんに使えたお陰だろうか。

だがここまでは前段階。拠点を作っただけだ。

「じゃあさっき話した通り、ミズホをぐるっと偵察してくる」

そういい置き、一旦ゴルバス砦に転移し再びプロペラ機を用意して乗り込み、飛び立った。新しい探知魔法でミズホ中を高高度から偵察して、魔物をみつけたらメテオで爆撃していくのだ。リリアやエリーの大規模攻撃魔法が届く高度からでもそう簡単に敵に迫れられる心配もないが、一万メートル以上の高高度からともなると到達できる存在自体が極稀だ。極めて安全で一方的な攻撃となるだろう。

「大丈夫ですか?」

そうサティが聞いてくる。疲れたは疲れたが……まだ平気なはずだ。

「うん、たぶんまだ余裕がある」

ヒラギスの時と比べれば疲労感はだいぶマシだ。

「偵察してメテオを何発か打って、そこで魔法は打ち止めにしよう」

ちゃんとセーブはしないと、俺が倒れると影響がでかいからな。

そう思ったのだが、まあ居るわ居るわ。ミズホ上空をぐるっと巡回しつつ探知波で探ってみれば、大きな集落もあったのだが、小さな集団がそこら中にある。それを全部叩いて回るわけにもいかず、大きな集団に絞って一〇カ所ほどメテオを落としてまたゴルバス砦に帰還した。

高高度からなのを抜きにしてもハーピーくらい気がついてやってきそうなものなのだが敵の反撃は皆無だった。

「オークが平地、ハーピーは山岳地帯って棲み分けてるのかもな。これだけオークが居たらハーピーの普段の食料確保も難しいだろうし」

一度山岳地帯近くでそれらしい集団が探知にかかったのだ。ただミズホ外の山岳地帯まで殲滅するとなると手間が増えすぎるとリリアに止められたし、ハーピーだけなら真の脅威にはなり得ないからとりあえずは放置した。危険は危険であるが、ハーピー単独では地上では兵士の部隊や騎士団の敵ではない。オークと組まれると厄介ではあるが、ハーピー単独なら拠点防衛に徹すれば攻め落とされるなどということもないのだ。

そしてオークの大きな集団はあらかた俺が潰してしまった。

「領外のハーピーの処置は我らでやろう。マサルはしばし休んでおれ」

ハーピーの対処はリリアたちがやるそうだ。航空機は予備を含めて三台使える。一台はエリーが使っている。俺の使っていた航空機をリリアに渡して、俺がまた必要になったら予備をゴルバス砦に取りに戻ればいい。

ここまで転移ばかりでさほど魔法を使ってないメンバーがいるし、高度を落とせばウィルたちの気配察知は普通に届く。反撃されても航空機ならハーピーを簡単に引き離せる。

「じゃあお言葉に甘えて、軽く仮眠を取っておく」

俺がそういうとリリアが軽く魔力を放った。

「どうじゃ?」

「んー、まだ違うな。こうだぞ」

「なかなか難しいのう」

俺もお返しに魔力を放つ。リリアは新しい探知魔法を習得したいのだ。こいつがあれば偵察がグッと楽になる。

さて、どこで寝るか。ゴルバス砦にも宿舎は何個かあるが……

「とりあえず中央砦にも家を建てるか」

仮の宿舎はすでに作られているはずだが平屋の宿舎に兵士に混じって寝るのも俺も兵士も落ち着かないし、まさかミズホから離れるわけにもいかない。やはりメインとなる拠点は早めに作っておいたほうが楽だろう。

サイズはそれほどでなくてもいい。三階建てのちょっとしたお屋敷程度。あまり魔力も使いたくない。

中央砦に転移して適当な場所を選定。土魔法が発動させ、飾り気のない豆腐ハウスが立ち上がった。それに気がついたエルフたちがわらわらとやってきて、屋敷の外観内装に手を加えていく。俺の手伝いで散々やらせて、家作りはもはや土魔法系エルフの得意技にまでなっている。

「屋敷ができている……?」

「さっきまではなかったぞ」

「これはマサル様がいま作ったのです」

ぞろぞろと観戦武官の面々もやってきた。

「何か不便はありませんか?」

そう一応聞いてみる。聞いたところで俺が世話を焼くつもりもないのだが、様子くらいは聞いておかないと。俺の問いに帝王陛下がいつもより他人行儀な雰囲気で答えた。

「不便はないな。不便などあるものか。マサルも疲れたであろう? 我々のことは気にせず、ゆっくり休むといいぞ」

「そうですか? とりあえず夜明けまでは動きはないと思いますから、皆さんも休みたければゆっくりしていってください」

そう言って仮の屋敷に入った。俺の部屋は三階に用意してくれたようだ。部屋は馴染のある間取りで、あとは俺の持つベッドは設置すれば今しがた建設したばかりの家とはわからないほどだった。

「なんか帝王陛下、よそよそしかったな?」

「あれはマサル様の力に怯えていたのです」

そう観戦武官と一緒に居て、俺と合流したイオンが教えてくれた。

「マサル様の放つメテオは、ここからでもすごくよく見えたんですよ」

闇夜の空。突如メテオが生まれ地上に降り注ぐ光景。そして実際に歩いて見たメテオの破壊痕。もしまかり間違ってその力が自分たちに向けられたら? 今更ながら帝王陛下は自分たちがいかに危険な綱渡りを演じていたか、理解できたのだろう。

逆に皇帝陛下はご機嫌だったようだ。なかなか手放さなかったイオンを皇帝陛下《義兄》自らこうして俺の下へと送り出してきたほどだ。

「……とりあえず一眠りでもしておくか」

何かやるべきこと、考えるべきことはある気がするが、今は少しでも休息して疲れを取らないと。何かあっても装備くらい付ける時間はあるだろうと、下着姿になって馴染んだベッドに潜り込んだ。サティとイオンが両側にそっと寄り添って来たのを感じながら、静かに目を閉じた。

三時間ほどは眠れたようだ。シャワーを浴びてすっきりしたところで、朝食の用意ができているというので向かうとみんなが揃っていた。いつもの家族会議をするようだ。

「妾たちとエリーでハーピーの巣を五カ所ほど見つけて殲滅しておいたぞ」

まずはリリアがそう報告してくれた。

「砦の建設作業と部隊の配置は順調ね。各拠点に魔物が襲ってくる様子も今のところないわ」

俺が首を傾げると続けて答えてくれた。

「マサルがミズホ中の魔物の集落を破壊して回ったから、混乱してそれどころじゃないみたいね」

小さな集落は見逃していたが、指揮官クラスは壊滅だろう。動こうにも敵の姿はまったく見えないし、どこからともなくメテオが降り注いでくる。各地で火事も発生していて生き延びる、逃げ惑うだけで精一杯。こんな感じだろうか。

「各部隊の出撃準備はできておる。あとはマサルの号令を待って、第二次殲滅戦の開始じゃな」

「私は一度王都に報告に戻ろうと思うのだが」

そうフランチェスカが言う。観戦武官のうち、引き続き戦場を見学したい者は残して、戻りたい者は一緒に連れて帰る。それで王様への報告と、追加部隊の招集。ミズホへの移住計画の発動などを予定通り始めさせる。

「俺は……」

どうしよう。王都への報告は面倒だから殲滅部隊のどこかにでも入るかと思ったのだが、休んでおけと止められた。

「もはやただの残党狩りじゃ。マサルが出るまででもあるまい」

「そうそう。それよりその後の農地作りとか治水をがんばってもらわないとね」

今日は俺は休みらしい。動き回るのはいいが、魔法の使用は極力控えるようにとのエリーたちからの要請だ。

「今ミズホの詳細な地図を作らせておる。マサルにはデランダルと今後の領地運営計画を立てて欲しいのじゃ」

休みでもないらしい。まあ平和で結構。

「わかった。じゃあ何かあったらいつでも報告を寄越してくれ」

あとは細かい報告、各地の砦の建設状況やメンバーの予定を聞きながら朝食を手早く済ませた。

装備を付けて仮屋敷を出るともう部隊が勢揃いしていた。ここは俺が何か演説をする場面か。

ゆっくりとレビテーションで後方まで見通せる高さに体を持ち上げる。ぐるっと兵士たちを見回した後、演説を始めた。

「諸君、ミズホは一夜にして人族の手中に入った!」

おぉぉぉぉぉーと怒号にも似た歓声が上がる。

「ここに王国の新たなる領土、ミズホの地の建設を宣言する。兵士たちよ! 我らが領土から残った魔物たちを駆逐せよ!」

大きな歓声、ガチャガチャと剣が打ち鳴らされ、ダンダンと兵士たちの足が踏み鳴らされる。

「各部隊の準備ができ次第、出撃!」

俺の号令で各部隊が動き出した。それを見送りながらエリーに尋ねた。

「他の砦はどうするんだ?」

「東部砦は魔物の気配がないから待機ね。北部もわたしが周囲は殲滅しておいたから、周辺の警戒のみにしておいたわ。こうやって一カ所からまとめて動かしたほうが部隊の運用も楽でしょ?」

そう言ってエリーたちも出撃の準備を始めた。二台の航空機で敵の位置の偵察と先制攻撃をするのだという。

「一応気を付けてな」

「うむ。マサルはここでドンと構えて吉報を待つが良いぞ」

さて、とやってきていたデランダルさんを見て言う。

「俺たちも働きましょうか」

「うん。まあだいたいの計画はもうできてるんだけどね?」

「詳細な地図を作るって話では?」

仮屋敷に移動しながら話をする。

「おおよその地形は事前に把握してるから、そう大きな計画の修正はないと思うよ。あとは北と東の先の状況次第だね」

ミズホの南側は王国。西側は海だ。北と東に大陸が続いており、当然魔物が住んでいると考えられている。

仮屋敷の一階居間に移り、デランダルさんの立てたミズホ建設計画を拝見する。町はここ。道路に各地の村。人口に対する適正な農地の広さ。砦からの連絡網。河川の治水に領地に必要な兵士の確保計画。文官は当面は王様からレンタルして、学校を作って住民から優秀な者を集めていく。

「ばっちりじゃないですか」

俺の能力ではぱっと見、瑕疵は見つけられない。

「もちろんその時の状況で計画の調整は必要だし、詳細はもっと詰める必要はあるだろうけどね。それでなんだけど……マサル君今日はもう暇になっただろう?」

おずおずとデランダルさんが言う。デランダルさんが修正不要の計画をぽんっと出してくれたから俺はもうすることがないので頷いた。みんなからは魔法は使うなって言われてるし、剣の修行も体力はともかくとしてかなり精神をすり減らすので良くはない。

「久しぶりに曲を作ってみたんだけどね?」

「オリジナル曲を作ったんですか? いいじゃないですか。ぜひ聞かせてください!」

「いやマサル君に聞かせるまでもないというか、でも誰かに評価を聞きたいっていうか……」

ふむ。これまで散々な評価だったから、なかなか表に出す勇気が出ないのか。俺も聞かせてもらったことがあったが、師匠の言う駄作はひどい言い方にせよ、実に平凡で五分くらいしたら忘れそうな曲ばかりだったのだ。

「じゃあこうしましょう。君たち、部屋から出て出て。師匠もですよ」

そう言ってエルフの護衛たちや師匠までも全員追い出し、俺とサティだけになった。

「ほら、これならいいでしょ。もう俺たちだけしか聞いてません」

「じゃあやってみようかな。でも本当にマサル君に聞かせるほどの曲でもないんだけどね?」

そう言いながらもリュート風ギターを出して、ようやく準備を始めた。

ゆったりとしたメロディーが奏でられ始める。バラードか。

歌が始まる。英雄譚のバラード。完全に現代風のバラードだな。そこに異世界音楽のテイストが絶妙に混ぜられている。って俺の英雄譚か。俺の活躍を詩にしたのをバラード風の曲に仕上げたようだ。

そうしてほんの一分ほどの短い曲が終わった。サティが拍手し始めたので、俺もパチパチと手を叩いた。

「いいんじゃないですか? そのまま劇場でやっても受けますよこれ」

「そ、そう? かなりの部分マサル君の曲の真似でどうかと思ったんだけど……」

「いやいや。曲調は似てますけど、これは完全にオリジナルでしょう。誰も真似なんて言いませんよ」

「そうですよ。すごく良かったです!」

「 換骨奪胎(カンコツダッタイ) という言葉が俺の祖国にあるんです。外形を取り替えたり、中身を変えたりするって言葉で、他人の詩や発想を利用しながら、自分独自の創意工夫を加えることで新しい作品をつくるって意味なんですけどね。いまのはまさにそんな感じでしたよ」

「なるほど、カンコツダッタイか……」

「デランダルさんもずっと音楽をやってきたんです。やっと覚醒したってことじゃないですか? ほら、剣術でも遅咲きの人とか居るでしょう? デランダルさんにもちゃんと才能があったんですよ」

俺の言葉にデランダルさんが目を赤くしている。いつもひょうひょうとしているデランダルさんのこんな顔は始めて見た……

「……ありがとう。マサル君の、マサル君の提供してくれたたくさんの曲で、音楽の自由さを教えてもらったお陰だ」

「俺の知っている曲はまだまだあんなものじゃないですよ。ラップって曲の種類がありましてね?」

完全に言語依存だからどう出していいかわからなくて出し渋っていたが、デランダルさんの今の日本語理解力ならどうにかこちらの言語にも翻訳できるはずだ。

覚えているラップ曲を二曲ほど歌ってみる。こうやって曲を出していて最近気がついたことがある。案外ちゃんと覚えてるものだと思っていたのだが、明らかに記憶力が増している。細かいところまでしっかり思い出せる。

最初は何曲も何時間もやっているうちに楽譜の書き方や音楽の理屈に精通したせいかと思ったが……

レベルアップや加護のお陰? それとも探知スキルやゾーンで頭をフル回転させることで、何かの鍛錬になったのだろうか?

「じゃあサティ、今の曲をそのまま歌ってみてくれ」

そうサティに突然振った。日本語の歌詞だ。サティも少しは日本語が理解できるようになったとはいえ、歌うには完全に耳コピが必要だ。しかも初めて聞くラップで、覚えろとも何も言ってない状況でだ。

しかしサティは一回歌ってみせただけの日本語ラップの曲を怪しげな部分は有りながらもほぼ再現してみせた。これはサティの元からの能力か? やはり俺みたいに脳の力が増大したってことなのだろうか? 文字を習得した時は普通に時間がかかっていたし、読書しながらゆっくり難しい言葉も学んでいってたから、今みたいに一発で記憶とかはなかったはずだ。これは他のメンバーにも時間があれば聞いてみたいところだな。

そうして時間を忘れて新曲作りをやっているうちにお昼になったようだ。恐る恐るといった感じで、エルフ三姉妹が俺を呼びに来た。いや、もう入っててもらっても良かったんだけど、すっかり忘れてた。

再びの昼食を兼ねた家族会議が始まる。

「魔物の殲滅は順調ね。王都への報告も問題なさそうよ。観戦武官は半数くらいが帰還して、残った人たちは砦に残ったり部隊に随伴したりして好き勝手動いてるわね」

俺が席についたところでエリーが開口一番、簡潔に報告してくれた。しかしその表情はどこか晴れない。続いてウィルが話し始めた。

「北と東の偵察結果なんすけど……」

北にはミズホの半分くらいの平野部があった。当然魔物は相応の数が住んでいると思われる。その先も大陸は続いているが山岳地帯があって、どうなっているかは今後の偵察となるだろう。

そして東だ。

「軽い偵察では果てが見えないっすね。たぶんエルフの里やヒラギスへも続く領域なんだと思います」

それでウィルは多少の危険を犯して低空偵察もしたのだという。

「おそらく出陣の準備をしているものと思われるっす」

隣接する地域とはいえ、なかなかに動きが早いな。ハーピーからか、それとも別の連絡手段でも持っているのか?

「ミズホの状況を把握しての、魔物側の反抗作戦?」

「そこでマサルの出番ね。また今日の深夜に出撃してメテオで叩く。北を全部と東のミズホに近い場所の魔物の領域を焼け野原にしてほしいの」

そうエリーがさらっと言ってきた。それはできるだろうが……

「北と東まで獲っても手が回らんぞ?」

「緩衝地帯とするのじゃ。もし焼け野原に再び魔物が集結するようならその都度叩く。そうすればミズホは安全であろう?」

確かに隣接する地域に魔物の大集団が居れば、ミズホのリスクが高くなる。

「叩く価値はあるな。よし、やろう」

「じゃあマサルは深夜までお休みね。今度はなんにもしないでいいからゆっくり休むのよ?」

昼から深夜までとなると、さすがに暇になるな。しかし加護組は後衛はむろんのこと、探知を持っていて戦闘力が飛び抜けて高い前衛組も今は引く手あまたである。それにみんなが働いてる間にエロい行為もはばかられる。

午後はサティと二人、部屋で静かに本を読んだ。それに退屈したら適当に外を散歩して、エルフや兵士と話したりした。エルフは変わらず俺を敬い、兵士たちは俺を恐れていた。

夕食後は出撃に備えて仮眠を取った。

そして深夜に出撃した俺は、北部及び東部の魔物の居住地域を完膚なきまで焼け野原にした。これで後は防衛に徹し、ミズホを発展させ、千年計画を完遂させる。すべて順調だ。

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【魔境、魔王居室】

「そうか。オークがもう抑えきれぬか」

「はい、我が王。勇者の攻撃で二つの列強氏族が消滅し、二つが半壊。多くの仲間をやられたせいでオークどもが吹き上がっております。オークの王たちでももはや配下の暴走を止められません」

勇者がその圧倒的な力で攻め込んで来たのだ。明日は我が身という恐怖もオークながらもあるのだろう。ハーピーも相当数死んだが、あいつらは自分たちの巣の集団以外への仲間意識が薄い。

「しかし王のご意思に背いての攻撃など。オークどもにも一度わからせてやれば良いのです」

興奮したオークの何割かでも叩き潰せば、オークも誰が真の王か、その鈍い頭でも理解しよう。

「この際だ。攻め込むか」

「え?」

「せっかくかわいい臣下たちがやる気になっておるのだ。オークたちの本気、見てやろうではないか」

「しかし計画では……」

「計画など勇者が出てきた時点で立ちいかぬようになっていたのだ。まずはエルフ、王国。そして帝国――今度はどこまでいけるであろうな?」

しかし勇者の力は並外れたもの。一地域のオークが全滅したところで、穴埋めは難しくもないし我が王、我が神はたくさんの血にお喜びになるのだろうが……やはりやるからには勝たねばなるまい。

「エルフを攻めるならアレを使っても?」

「そのために準備したモノであろう? 使えるものはすべて使え。それで勇者とエルフをまとめて倒せるのならお釣りがくる」

「では多少の準備はさせねばなりませんね」

勇者とエルフ、まとめて倒すなら作戦も考えないと。時間が必要だが戦うための準備、勝利のためということならオークどもも待つことくらいはできるはずだ。

「エルフの里が陥落したのちは海龍王と獣王にも出陣させよ。もちろん周辺地域外のオークたちにも号令をかけるのだ」

「はっ! 仰せのままに」

遠方のオークに海龍王と獣王まで動員するとは、王は此度ですべてを終わらせるおつもりだ。そしてエルフも勇者共々、アレでなすすべなく死ぬ。

ククク、楽しみだ。ああ、とても楽しみだ!!!

「笑ってないでとっとと行け。急がぬとオークどもが先走ってしまうぞ?」

「は、はい! ただいま、今すぐ!」

詠唱開始――オークどもの本拠地へと――【転移】――