軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

245話 帝都王城騒乱

転移術師の罠があるから召喚獣の高度は落とせない。塔が高い場所にあるから普通に空を飛ぶ分には平気だが、地上に降りてしまって万が一、助けを求める前に召喚獣とのラインが切れてしまえば万事休すだ。

罠に関しては、空からの侵入は考慮されていないという前提で行動するしかない。塔には罠は設置されてないようだし、侵入者の防止用途なら王城の城壁あたりにぐるっと配置されていると考えるのが妥当で、上からの侵入に備えるのは無駄だろうから、二階程度の高さならなんとかセーフだと思うしかない。

まあ本当に転移にしか効果のない罠で、召喚には何の影響もない可能性もないではないが、ここは慎重に動いたほうがいい。

エルフ屋敷の二階の窓が開いていたので人がいるのを確かめてからそこに侵入すると、すぐに部屋に居たエルフたちが気づいてくれた。

「フクロウ?」

「これってもしかしたら守護者様の召喚獣じゃないかな?」

そうだという風に鳴いて首を縦に振る。

「急いでリリア様たちを呼んで!」

屋敷が騒然とし、すぐに皆が集まった。全員帝都に詰めていたのか。

「マサル! 無事なのね!?」

無事かどうかは疑問が残るが、アンの言葉に軽く頷いておく。言葉が通じないのがもどかしい。

ほっとしたのはサティたちは無事だったことだ。一緒に捕まっていたらさらに事態が面倒になるところだった。

「砂盤を持ってくるのじゃ!」

お盆に庭の砂を入れるだけのどこでも用意できる文字練習ツールである。サティが文字を書く練習によく使っていた。

『捕まった。帝国。城。塔。隷属の首輪』

帝国に捕まっていたのは想定内だったようで、やっぱり、などの声が漏れ聞こえたが、隷属の首輪との文字で皆が殺気立った。だが静かにしろと鳴いて筆談を続ける。フクロウの足はそこそこ器用なのだが、文字を書くのに適しているとはとても言えず、単語を一つ綴るのにも結構な時間がかかる。それでも単語当てゲームのように、書いている途中で正解を言ってもらえたりして短縮はできるのだが。

『転移術師への罠。アンチマジックメタル? 目的は転移術師』

「罠……怪我とかはないのね?」

アンの問いかけに頷く。

『里への方角。偶然王城を横切るライン。罠は城壁?』

「確かに転移地点からエルフの里への方角を考えると、王城を横切ることになるな」

そう師匠が言う。

『王城への侵入嫌疑。冤罪と知っても解放する気はなさそう。隠匿されてる。奴隷紋の用意がある』

「王城の侵入ともなれば重罪よ。最悪死罪だけど奴隷にするつもりなら、当面は命の心配をする必要はなさそうね」

エリーの言葉に頷く。冤罪だけどな。

『尋問薬』

「ジンモンヤク?」

聞き慣れない言葉にエリーが首をかしげ、ティリカがそれに答えた。

「隷属の首輪では発言まで強要できない。だから薬で無理やり話をさせる。それが尋問薬」

『転移に興味。一〇〇人運べると知られた。実際に転移のテスト。他の魔法は興味がなさそうだった』

「一〇〇人運べる転移術師よ。貴重すぎて他の使いみちなんて最初から考えてないんでしょうね」

エルフのヒラギス戦での戦果も、俺たち優秀な転移術師による大規模な戦力の投入がなければ成り立たなかっただろう。後方の戦力を送り込めるなら、俺ほどの攻撃魔法があっても、転移魔法に専念したほうが効率がいいのだ。

『俺が勇者だとは知らない。マサルを知っているかと聞かれたが、知り合いだと誤魔化した』

俺の顔はほとんど知られていない。比較的親しいエルド将軍ですら、エルフの守護者として対面していたから見てもわからないはずだ。

『勇者パーティの転移術師だと思われてる。エルフの関係者だと知っている』

「舐めたことを!」

リリアが激怒した。

「ウィルは? ウィルは何をしておるのじゃ!」

『呼べと言ったら、必要ないと言われた』

「もう一度連絡を入れましょう。前の手紙はマサルが行方不明だってだけの連絡だったし」

「手ぬるい。すぐに奪還に動くのじゃ!」

あ。なんか呼び出しがかかった。軍人が付いてこいって。寝ているベッドから起き上がることを命じられ、頭から袋を被せられ、手錠を引っ張られて部屋から出される、俺のことを隠したいようだから、顔を見られるとまずいとの判断なのだろうか。

『呼びださ……』

まずい。めっちゃまずい。階段を降りたところで召喚獣とのリンクがあっさりと切れた。焦って筆談も途中までしか書けなかった。それなら空に退避しておくべきだったか?

しかし最低限のことは伝わった。リリアがかなり怒っていた。奪還に動くと言ってたな。エルフから正式に申し入れがあって、素直に返して貰えるだろうか?

呼び出しはまたあの上司だろう。俺を手駒にしたいならそろそろなにかしらの提案があるはずだ。リリアたちの動きは気になるが、まずはその交渉次第だな。

「座り給え」

移動した先でそう上司に促されたので大人しく座る。王城に相応しい飾り立てられた豪華な部屋に、目の前には豪勢な食事の用意。食べてもいいと言われたので、お腹も空いていたことだし、手錠はされたままなのでもたもたと食べ始める。

「美味しいかね? 宮廷料理人が手掛けた最高級の料理だ。材料も普通ではお目に掛かれんものばかりだぞ」

フレンチのフルコースといった雰囲気で美味いことは美味い。上品な味付けで、好みとは少し外れるが、たまに食う分には悪くないだろうか。だが同席相手が、俺を捕まえたまま解放してくれないおっさんで、相変わらずの軍人の監視付きなのが最悪である。

しばらく上司が話す料理のうんちくを聞きながらもくもくと食べる。

コースが終わり、お茶が運ばれて来たところでようやく上司が本題を切り出した。

「私の部下にならんかね? 美味い料理。手厚い報酬。仕事はたまに転移で人や手紙を運んでもらうくらいだ。希望するなら綺麗どころの世話係も何人かつけよう」

そう言って、給仕を終えて部屋から出るメイドさんを見る。

「奴隷紋をつけてか? 御免だな」

それに好き放題してもいい専属メイドなら今も八人ほどいる。しかも言えば即座に、いくらでも増やせる。こんな名も名乗らないおっさんに世話をしてもらう必要は欠片もないのだ。

「君が大人しく仕事をしてくれれば不便はほとんどないはずだ」

家族と会えない時点で不便は大有りだ。

「ご馳走をありがとう。そろそろ家に戻りたいんだが?」

お茶を飲みながらそう要求してみる。

「君には王城侵入の罪状がかけられている」

「冤罪だ。いますぐ解放するなら、美味いものの礼に拘束されていたことは不問にしてやってもいい」

「経緯はどうあれ、実際に城壁の内部に侵入したのだ。そんなことを要求できる立場だとでも?」

罠をしかけておいて、かかったら侵入の容疑をかけるとかひどいマッチポンプだ。

「俺はウィルフレッドの友人だぞ。あいつが俺のことを知れば怒るだろうな」

「私はそのウィルフレッドの父親だ」

偉そうだとは思ったが、ウィルの父親か。帝国軍の総司令官。次期帝王。確かにどことなくウィルと似た顔だ。名前は聞いた覚えがあるような気がするが忘れた。ウィルパパと呼ぶことにしよう。

「知っているとは思うが、私はまもなく王位を継ぐ。そうしたら君は王直属の転移術師として思う様に贅沢ができるぞ? 希望するなら私の右腕にしてやってもいい。そうすれば有能な転移術師として、地位も名誉も思いのままだ。エルフに使われているよりよほどいいと思うが」

エルフに使われてる? どちらかといえば俺がエルフを使っているんだ。そのエルフも最近は転移を覚えて、俺がエルフの雑用をすることも少なくなったし。

「悪いがいまの生活がとても気に入ってるんでね」

「帝都にはあらゆる物が揃っている。王国の辺境よりよほど楽しいぞ?」

「転移術師がほしいなら、仕事として受けてやってもいい。俺としても帝国とは事を構えたいとは思ってないんだ」

だがそれには答えず、ウィルパパは冷徹に告げた。

「君には選択肢が二つある。死罪か、私の部下として帝国のために働くか」

どっちもないな。

「嫁がいるんだ。身重でね」

ティリカの妊娠はまだ未確定だが。

「働き次第で家族もここに呼んでやろう」

人質かな?

「勇者が黙っていないぞ?」

「君がここにいることは誰も知らない」

もう連絡済みなんだけどな。だがそれを知らせて帝国に本気で隠されると探し出すのは非常に困難になる。

「俺が居なくなったのは王城のすぐ側だ。当然帝国の関与は疑っているはずだ」

「たとえ勇者が本物だとしても、疑惑だけで帝国に何かできるとでも?」

勇者の名で非難声明でも出してもらうか? 一旦協力する振りをして、また召喚獣を出す。

監視があるうちは同じ手は難しいな。軍人も寝るだろうが、その時間に魔法がフリーで使えるように誘導するのはちょっと無理がある。

隷属の首輪が強力すぎるんだ。だからこそ不法使用に関しては厳罰があるのだが、王城への侵入の罪はあるし、不法だと糾弾したところで次期帝王に対してどれほど効果があるのか。

「しばらく考えさせてほしい」

これ、さっさと名乗ったほうが良かったかね。だがそもそも俺は勇者じゃないから、そう名乗ったこともないし、名乗ることには抵抗があるのだ。それに勇者じゃないと色々説明するのも面倒だったのだ。それに捕まった最初のうちは相手の目的が不明瞭だったこともあって、なるべく情報は渡したくなかったのだ。

「あまり長くは待てぬぞ?」

そう言ってウィルパパは去っていった。俺はこのまま部屋に滞在してもいいらしい。居間と寝室にお風呂付きの豪勢な客間だ。綺麗どころのメイドさんも一人付けてくれて、なんなりとお申し付けくださいときたもんだ。かなりの待遇改善であるが、相変わらず軍人が監視に付いているのが台無しである。

寝室にまで付いてくる軍人を無視してベッドに寝転がる。リリアたちがすでに奪還に動いている。まずはそっちが上手くやってくれることを祈ろう。

■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■

「戦力を集めよ! 帝都を焼き尽くしてもマサルを取り戻すのじゃ!」

「落ち着きなさいリリア。戦力を集めるのはいいけど、まずは交渉よ。武力行使はそれが失敗してからでいいわ」

武力行使はマサルも嫌がるだろう、そうエリーは思った。帝国との関係が拗れてしまうと今後の活動に影響がでかねない。

使徒であり勇者であることを告げるのも最後の切り札だ。もしそれで帝国がマサルの解放を拒否したり、あくまで居ないとシラを切ったりした場合、帝国としても後には引けなくなる。

勇者を捕縛して隷属の首輪まで付けたのだ。おおっぴらになっては他国からの反発は当然大きなものになるし、さらに帝国もかつて勇者に救われ、その子孫も貴族の血脈としてしっかりと続いている。国民はもとより、貴族ですら敵対しかねない。

最悪知らぬ存ぜぬを通して、マサルは闇から闇へと葬られる。そこまでするかと思わないでもないが、帝王の、身内ですら切り捨てるという評価を考えると可能性を除外できないのだ。

「必要なら神殿から……聖女からの申し入れもする」

「真偽院からも」

「エルド将軍は協力してくれるかしら?」

エリーの問いかけに剣聖バルナバーシュ殿が首を振る。

「ある程度はワシに協力してくれるだろうが、奴は帝国に剣を捧げておる」

ウィルもさほど当てにはできないだろうとエリーは考えた。所詮はたくさんいる王子のうちの一人。帝国が、帝王がマサルを解放しないと決めたならどうしようもないだろう。

「里ではヒラギス戦並の動員準備はできておる。何人でも送り込めるぞ」

「とりあえずオレンジ隊のみで行きましょう。あまり帝国を刺激したくないわ」

オレンジ隊の正規隊員は二〇〇名。それにわたしたちも加えれば、帝都を焼き尽くすには十分すぎる火力だ。

「リリアの護衛って名目ならなんとかなるかしらね?」

それにあまり増やしてはいざという時の撤退が難しくなる。マサルを奪還してすぐに逃走、なんてことも考えられるのだ。

「うちからも手練を用意しよう」

バルナバーシュ殿がそう提案してくれた。もし王城に突入したり、帝国と戦争したりする事態になれば、前衛戦力は必須だろう。

しかしと、マサル奪還の手筈を整えながらエリーは考える。なんでまた捕まったのがよりにもよってマサルなのかしらね? ウィルを送っていくくらい、わたしがやれば良かったのだ。そうしたら捕まったのはわたしで……

それでもダメね。召喚が使えなくて隷属の首輪をされた状態で連絡する方法なんて思いつかないけど、それでもマサルなら必ず見つけ出して取り戻そうとしてくれる。そうしたら今とほとんど変わらない事態となるだろうか。

それともマサルなら単身王城に乗り込むくらいはしかねない。

「必ずマサルを取り戻すわよ」

世界には、わたしたちにはまだまだマサルが必要だ。たとえ相手が帝国だろうと、一歩も引かない。

どんなことをしてでも、どんな手を使っても絶対に取り戻すのだ。

■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■

王城、謁見の間。

帝王と帝国軍総司令官に、巨大な帝国を動かす文武百官が見守る中、一人のエルフが帝王の御前に進み出た。エルフの特命大使であると、文官の一人が説明をする。

「ガレイ王陛下におかれましては、このように突然の謁見の栄誉を賜りましたこと、感謝の言葉もございません」

そう言ってエルフにしてはとても珍しい、年経た容貌の人物が恭しく頭を下げる。

「ふん。王城前に軍を展開しておいて何を白々しい」

エルフの軍は少数であったが、突如王城の真ん前に現れ、王城とその周辺は騒然となったものだ。おそらく転移での移動。あの転移術師と同クラスの者がいるのだろう。帝国ですら瞬時に王城前に他国の軍の展開を許してしまう。もしエルフに攻撃の意図があれば、今頃王城は壊滅していたことだろう。

やはりあの転移術師は手放したくないと、改めて司令は考えた。

「リリアーネ王女殿下のための最低限の護衛でございます」

「そのリリアーネ王女とやらの用件はなんだ?」

「さすがはガレイ王陛下。お話が早い」

「さっさと申せ」

「はい。先日、そちらのウィルフレッド殿下を送り届けた我が方の転移術師が、何かの間違いでそちらで捕縛されていたのを確認したのです。すぐに返還して頂きたいとリリアーネ王女殿下はおっしゃっております」

「知らぬな」

王の横に立つ司令は、どこからその情報が漏れたとエルフの言葉にわずかに動揺したが、エルフが来た時点で用件は察していた。表情を表に出さない程度のことはできる。

誰か知っておるかとの帝王の問いかけにも、口々に知らないとの返事が返る。

「ここ王城の塔の一室で、隷属の首輪をかけられ幽閉されているはずです」

「すぐに人をやって調べさせよ。もし居たらここへと連れてくるのだ」

エルフの特命大使が帝都の発展ぶりを褒めそやすのを、つまらなそうに帝王が聞きながら待つことしばし。

「やはり居ないようだが? そもそも隷属の首輪をして閉じ込めてあったというなら、なぜそれがわかった?」

「エルフの秘術ゆえ、話すことはご勘弁を。しかし間違いなくいるはずなのです」

「おらぬものはおらぬ。帰れ」

「謁見はこれにて終了でございます」

そう帝王の近くに立つ文官に告げられ、エルフは仕方なしに頭を下げ、退出していく。それを見送ってから、司令は軽く人払いをして話を切り出した。

「父上、内密にお話が」

そう言って司令は帝王とともに謁見の間の裏にある執務室へと移動すると、事情を説明する。むろん勇者の関係者である部分は伏せてだ。

「面倒だ。返せば良かろう」

「王城への侵入は重罪です。それに一〇〇名を一度に運べる転移術師など、帝国にも存在しないのですよ?」

人を運べる転移術師の一人は高齢で、いつまで働けるかもわからない。若い転移術師が手に入ったのは僥倖だ。それに今の王城前の状況。帝国がその転移術師を手に入れればどれほどのことができるだろうか。そう王に力説した。

「だが勧誘は不首尾に終わったのであろう?」

「まだまだ若者です。女を宛てがって、酒と薬に溺れさせればすぐに言いなりとなりましょう」

「とりあえずそやつに会おう」

「賓客用の客間で休ませております」

「ではここに連れてまいれ」

だが司令が部下に命じた直後、慌ただしい伝令が入る。

「王城に侵入されました!」

「エルフが動いたか。軍の包囲は完了しているな? 帝国の威信にかけて、徹底的に叩きのめしてやれ!」

司令が再び謁見の間へと移動し、そう命ずるも、伝令が言った。

「そ、それが、たった一人でして」

「一人?」

「はい。単身、門を突破し、王城へと向かっております!」

「さっさと引っ捕らえよ。殺しても良い」

エルフの動きは逐一報告するように命じたとはいえ、たったの一人を現場で処理できないとは、前線の指揮官は雁首揃えて何をしているのか。帝都の軍の半数は王城と周囲に集まってきている。城内にも軍と、精鋭の親衛騎士団たちが多数いるのだ。

だが待てど暮らせど捕縛したとの報告は上がらない。それどころか謁見の間に慌ただしく騎士団が入り、守りを固めだした。

「城内にまで侵入されただと!? 騎士団は何をしておる!」

「止まりません! 止められません!」

「守りを固めよ! 謁見の間へは絶対に通すな!」

だが謁見の間の王座に座る帝王にすら騒ぎが徐々に近づいて来るのが分かった。目的はあの転移術師か。そうこうしているうちにその転移術師も執務室へと到着したようだ。念の為、何かあれば転移で脱出するように命じておくか。使えそうな転移ポイントは朝方、牢屋の近くに設定してある。

「ここは危険かもしれません。ご避難を」

そう黒の親衛騎士団団長、オルグへッグ・マーカスが帝王に進言する。

「たった一人を相手に帝王が逃げられるか。物笑いの種になるわ」

「ご心配にはいりませぬ。相手が誰であろうと、我が剣にかけて撃滅致しましょうぞ」

そう言って赤の親衛騎士団団長、エルド・サバティーニが帝王を守るように謁見の間の中央に立つ。

ついに騒ぎは謁見の間の扉の前にまでやってきた。もちろんそこには多数の、帝国でも最精鋭の騎士たちが守りを固めている。

その上、謁見の間の扉は人の身長の倍ほどもある重く頑丈な鉄の扉である。一度閉ざしてしまえば強力な魔法か破城槌でもなければ破壊は不可能だ、そう司令は考えたのだが、扉の前の叫びや剣戟音が収まるや、巨大な鉄の扉は紙のように切り裂かれ、帝王と重臣たちが見守る中、ゆっくりと地響きを立てて倒れた。

「我が主、返してもらおうか!」

世界最強の国家、ガレイ帝国の王城にただ一人乗り込みそう叫んだのは、年端もいかぬ獣人の少女だった。