軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

234話 当たって砕けろ

「いまの話はあんまり信用するなよ。所詮は敵の言い分だ」

ダークエルフとの会談内容についてフォローしておくべきだろうと思って、屋敷に戻ってから少し話をすることにした。

「そうじゃな。ダークエルフの言うことなぞ、欠片も信用できぬ」

リリアがそう力強く同意してくれる。欠片もってことはないだろうが、話半分くらいに思っておいたほうがいいだろうな。

「永遠の闘争だとかイトゥウースラ様が血を流すのを喜んで見ている? 馬鹿馬鹿しい。そんなこと、邪神の側が勝手に言ってるだけだ」

永遠の闘争というのはなくもない話だとは思う。もともとゲームっぽい誘い文句でハロワで釣られたのだ。この世界がゲーム盤だというのもそれなりに納得できる話ではある。

ただ、ゲームというには手間も時間もかかりすぎているし、ガチで争っているというほどにはルール無用といった感じもない。そのどこか中間あたりが正解なんじゃないか?

たとえばオリンピックやサッカーのワールドカップみたいな、一種のゲームではあるが、巨大な利権も絡んでいる大会。

この世界で得られる、神様のほしがる利権、利益ってなんだろうな? それこそ観客が居て血を流すのを見て楽しんでるのだというのもそれなりに説得力のある話なんだが、そんなに簡単な話なんだろうか? 単に娯楽的に楽しむのなら、前回の勇者と魔王の戦いは五〇〇年ほど前。期間が開きすぎている。

それに血を流すのを喜んで見ているというのもな……

俺の見た伊藤神は常識のある立派な社会人として映った。まあ俺のやってることを面白がっている様子はあったが、それでも対応はちゃんとしていて、仕事としてやってる感じがあった。イメージがまったく合致しない。

そもそもがアンによるとそのような教義は神殿には伝わってないそうだ。たとえ俺たちを争わせる意図があったとしても、強制するつもりはないのじゃないだろうか。

「一対一〇〇〇っていうのはどうなの?」

そうエリーが聞いてくる。

「それはどこから出てきた数字だ? ウィル、ガレイ帝国の人口ってわかるか?」

「かなり大雑把なら……」

「じゃあリシュラ王国は? 東方国家や南方国家群は? ヒラギスの今の人口なんかわかるわけがないし、人族全体ともなれば尚更だ」

魔族側の人口にしてもそうだ。人族よりかなり広大らしい領域に、下っ端の魔物とか知るか、勝手に殺しとけというトップで、人口を把握をしているなどとは到底考えられない。

「あっちのほうが多いのは確かだろうが、一〇〇〇倍とかはない。ハッタリだな」

ダークエルフは信じているようだが、切りが良すぎて怪しすぎる数値だし、なんにせよ確認のしようもない。

「人族の領域は広がってるんだろ? 人口差があっても、俺たちのほうが確実に優勢だ」

たまにヒラギスみたいに滅ぼされそうになる国が出たり、エリーの参加した開拓団みたいに失敗して逃げ帰ってきたりするものの、魔境への進出は地道に進んでいるらしい。少なくとも一方的にやられているというわけじゃないのだ。

魔族側からみるとじりじりと領土を削られていることになる。それで危機感を覚えての人族殲滅計画?

まあこっちはこっちで魔物が常に侵入して襲ってくるような状況で、どっちが被害者だって話でもないのだろうが。

「優勢だった」

珍しく俺の発言を訂正したティリカの言葉に頷く。勇者のときも帝国は首都まで攻め込まれていた。俺の力を見てなお、本気を出せばいつでも潰せる。そうあのダークエルフも考えているのだろう。

いやほんと、どうしたものだろうかね?

「我々に与えられた加護は強力。適切に使いこなせれば、状況は覆せる」

その適切にが難しいし、何をすればいいのかわかんねーって話ですよ、ティリカさん……

「すべてはわたしたちの肩にかかってるのね!」

この状況でエリーはなんだか嬉しそうだ。俺がとうとう諦めて勇者だって認めたとか思ってんだろうなあ。まあその通りなのだが。

魔王が居て人族滅亡を画策してるし、ダークエルフが勇者勇者言うのも、あの場で訂正するのもややこしいことになると思って黙って受け入れた。

「まあそう気張ることもないぞ。時間はまだまだあるし、人族全体の問題だし」

俺たちだけで背負うには大きすぎる問題だ。その問題の問題はいつ頃、他にも教えるかなのだが、まあ時間はまだまだある。じっくり考えればいいだろう。

「さっきも言ったけどこの件は一旦脇において、まずは目の前の仕事を地道にやっていくんだ。いいな?」

「まずは対策会議をするぞ! ああ、わかっておる。あのダークエルフのことじゃ。やつには二度と好き勝手やらせはせん!」

まあそれはそれとして。

「とりあえずお昼にするか」

みんな多かれ少なかれ動揺しているだろうが、美味しいご飯を食べて時間が経てば、多少は落ち着いてくるだろう。

「まずは胃袋から掴んだ」

午後、ヒラギス公都。エルフ屋敷の庭の片隅で、俺とウィルは真面目だか不真面目なんだかわからない話をしていた。テーマはハーレムをいかに作ったか。俺の話を参考に、明日来るフランチェスカ対策を考えようという場である。

男同士の話にしたかったが、いくら屋敷内とはいえ護衛なしでは動き回れないし、サティとミリアムが同伴である。

他は各自のお仕事に向かった。アンとティリカは一緒に出かけている。魔物はまだまだ周辺にいて治癒術師の需要はいまだ減らないし、戦争が終われば今度は人間同士のトラブルが増える。ヒラギス担当の真偽官が来るまで、ティリカも当分忙しいようだ。

エリーは城壁の修復作業や、転移。魔物の集団がいれば殲滅の手伝いと常に多忙だ。俺も明日からそっちの手伝いだな。

エルフ組はダークエルフの件で緊急対策会議である。俺も参加するか聞かれたが、出ても話を聞くだけになるだろうし、結論だけ教えてもらうことになった。

ティリカの護衛にはシラーちゃん。エリーの護衛にはウィルが付く予定だったが、ウィルが俺に話があるというので師匠に代わってもらった。アンの護衛はいつもどおりの騎士団である。

「故郷の味を食べたくてな。色々作って食べさせたらティリカとエリーが釣れた。もちろんサティやアンにも大人気だった」

膝にのせたサティがコクコクと頷いた。

「あー、兄貴の料理、本当に独特で美味しいですもんね」

他で食べることは不可能な料理だ。俺のところへ来るしかない。

「それとは別にアンには付け届けは欠かさなかった。養育院はいくら食べ物があっても困らなかったし、俺は狩りは得意だったし」

ふむふむとウィルが頷く。

「ただ下心はあんまりなかった気がする。もちろんアンの気を引きたいってのはあったけど、肉を持っていって子供たちが大喜びするのを見るのは俺も楽しかったしな」

そろそろ一度シオリイに戻って子供たちが元気か見に行きたいな。もちろんお土産をたっぷりと持って。

「俺は駆け出しの冒険者で、アンは神官であの容姿だろ? ファンは多かったらしいし、釣り合わないから付き合うとかあんまり考えられなかった感じだな。ちょっと仲良くなれてラッキーくらいに思ってたわ」

「でも使徒だったんすよね?」

「隠してたし後付で俺の実力ってわけじゃないし。お前だって王子ってだけでモテてもそんなに嬉しくないだろ?」

「まあそうっすね」

「しばらくして町へハーピーの襲撃があって、俺とサティがこっぴどくやられてな」

聞いたことあるっすとウィル。

「死にかけて、めっちゃ凹んでるところをアンにすごく慰められて関係を深めた。弱みを見せたのが良かったのかもしれないな」

ウィルも弱みは結構見せてるけど、だいたい俺たちの前だったか。フランチェスカと会ったあとはもう加護は持ってたし。

「エリーとは戦いで絆を深めた。やっぱ一緒に修羅場をくぐると仲良くなるな」

「ドラゴンの討伐っすね」

ウィルはフランチェスカとは一緒に修行したし、ヒラギスでも一応同じ戦場で戦ってきた。それでなんで未だに仲良くなれてないのか。

「好意は伝えたんだよな?」

「言ったんすけど、まじめに修行しろって怒られたっす……」

それで言われるがままにまじめに修行だけしてたのか。まあ修行が馬鹿みたいに厳しくて、余裕がなかったというのもあるのだろうが。

それとやっぱ王子とバラすタイミングが悪かったのもあるのかね。もっと仲良くなってからなら、ちょっとしたスパイスになったかもしれないのに、早まったから関係に溝ができてしまった。

フランチェスカも高嶺の花なところがあるしな。人間として比べた場合、フランチェスカのスペックは人として最高位じゃないだろうか。容姿、実力、人望、血統。すでに部隊も率いてるし、剣闘士大会での優勝実績もある。

対してウィルだ。実家では無能扱いされ無職。しかも家出中。冒険者も最初からつまずく。釣り合うのは容姿くらい。弱気になるのも致し方ない面もある。

家柄に関してはエリーたちに言わせればウィルのほうが格が一段も二段も上で、しかも二人の国が隣国で外交関係が深く、交友や恋愛を一個人として終わらせられないことが、むしろ障害となっているようだ。

「サティは最初に会った時から好意が高かった。な?」

「はい、マサル様はとってもいい匂いがしたんです。それに目が悪いと聞いてすぐに回復魔法をかけてくださったし、食べ物や服やベッドも与えてくれて、売れ残ってた役立たずのわたしを買い取ってそれはもう親切にしてくれたんです!」

ほっとけばいくらでもしゃべっていそうなサティの口を手で塞いで止める。

「俺の居ないところで、エリーもアンもティリカも俺がどんな感じか尋ねたんだよな?」

口を塞がれたままのサティがうんうんと頷いて、もごもごとまだ話したそうにする。

「サティは俺のことならいくらでも話してくれるからな。それはもうものすごく好意的に」

紳士的で英雄的で穀潰しの奴隷にも分け隔てなく親切で、いい匂いがして料理も上手くて家庭的なところまである。どこの完璧超人だ。

「最初に冒険者ギルドに登録したときティリカが居て、冒険者になったら何がしたいって言われてハーレム作りたいって答えたんだよ。真偽官には嘘を吐いたらダメなだけって知らなくて、隠し事もダメだと思ってさ」

あれは相当冷たい目で見られてたな。

「それが食事に来てみたら、サティに手も出してない。サティに聞いてみるととてもやさしくて紳士的だ」

ティリカのマイナス評価が反転する。アンもエリーもそこそこ程度だった評価が一気に爆上がりしたことだろう。頼りなく見えるけど、魔法は優秀で将来性は豊かだし、サティがこんなに褒めるほどなのだ。これは買いじゃないだろうかと。

「真偽官って敬遠されがちなんだけど、サティは誰とでも仲良くできるからな。ティリカともすぐに打ち解けた」

職業柄もともと友達と呼べる存在がいなかったティリカだ。自身も売られて真偽官となった境遇もサティと似て同情的な部分もあった。一晩で親友と呼べるくらいまで仲良くなっていた。

そこに俺たちがゴルバス砦に行っている間に結婚話が持ち上がった。相手は会ったこともない貴族の子弟である。結婚すれば当然シオリイからは離れることになる。サティとは会えなくなる。俺の作るご飯も二度と食べられない。ならいっそ俺と結婚しよう。ハーレム希望だったんだし、すでにアンとエリーとサティと結婚することは決まっていた。一人くらい増えても大丈夫なはずだ。

「まあ最初はその程度の動機だったんだけど、結婚相手として認識して付き合ってみると、案外相性が良かったみたいだ」

リリアと以降のメンバーの話はあんまり参考にならんからカット。

でもハーレムの鍵はやっぱりサティだな。奴隷としてのサティの存在感。サティの俺への好意は明白。手を出すのは時間の問題。

そんな状況ではアンもエリーも俺への好意は、喫緊の問題として考えざるを得なかったはずだ。

「サティは家事が得意だからな。よく気がつくし、よく動く」

はあ? とウィルが要領を得ないという風に答える。

「だからってことはないが、俺はとにかくサティを大事に大切に扱った」

女の子との付き合いなんて皆無だったから、おっかなびっくり接しただけだったんだけどな。昔のことを思い起こしながら、膝のサティの頭をなでなでする。

「みんなサティに世話されてたからな。サティが一番好きって言っても納得してくれたんだ」

なんならティリカもサティが一番好きだし、エリーもサティをお世話係にほしいとか言っていた。アンは優しいからサティを追い出すなんて欠片も考えなかっただろう。だから誰と付き合うことになっても絶対に二人以上になるのは確定だったから、ハーレム化への抵抗は少なかったはず。

「ハーピーの時はサティがまだ加護が弱かったこともあって体を張って戦った」

ちょっとくらいダメなところがあっても、いざとなれば命がけで女の子を守れる。この危険な世界では最高の評価だ。

「つまりだ。いざという時には戦える。普段から紳士的に行動する。特に女の子には分け隔てなく親切に。あと好意ははっきりと伝えたほうがいいな。エリーとかよく褒めろとかムードを出せとか言うし、かわいいとか美人だとかちょくちょく口に出すのはいいかもしれん」

「でも兄貴、俺にも結構親切っすよね?」

「そりゃまあ、人を見て露骨に態度を変えるやつなんか、信用できるか?」

別に考えてやってるわけじゃないけど、男も女の子の半分くらいは親切にしてもいいし、命くらいは助けもする。

「あー、たしかに。上にへつらって、下に態度悪かったりしたらドン引きっすもんね」

「そうそう。そういうところは結構見られてるからな」

しかし話してはみたものの、ウィルにどれだけ役に立つ情報だったか。そもそも胃袋を掴むって時点で無理があるものな。

「今度はお前の利点を考えてみるか」

「利点っすか?」

「まずは結構気が利くな」

空気は読めるし、使いっぱしりとしても便利だ。

「それに器用なところがある」

何をやらせても卒なくこなす。普通なら器用貧乏みたいなことになりかねないが、こいつには加護という突出した武器がある。

「それから? 他にはないんすか!?」

後が続かず黙った俺に、ウィルが焦ったように言う。あとはこいつの生まれ。血統と顔か。王子らしからぬ腰の低さは……利点か?

「剣士としての腕と、王子で顔がいいこと」

案の定、しぶい顔をした。実力で勝ち取った部分じゃないしなあ。

「お前、自分の最大の武器を封じて勝ち目があるのか? そんなに余裕がある状況か? 使える武器は全部使って勝ちに行くんだよ!」

俺だって加護がなければサティを買えなかっただろうし、他の嫁にも見向きもされなかっただろう。だが加護があるからってだけで、ここまでの人間関係を築けたわけでもないのだ。

「結局、どう自分の武器を活かすかって話になるんだ」

「俺の武器っすか」

剣の腕はフランチェスカにはそれほど効果はないだろうが、王子としての部分はどうだろうか? 普段チンピラみたいなこいつが突然カッコいい王子様として登場したら?

「ちょっと王子様っぽく行動してみせてくれ」

「いや、突然そんなことを言われても……」

いきなりじゃ無理か。

「お前の兄貴とか親類で、王子様っぽくて女の子にすごくモテてたのとか居なかったか?」

「居たっす」

「その真似をしてみろ」

少し考えたウィルは立ち上がって軽く髪を整えると、キザな動きでスッと手を差し出して言った。

「素敵なお嬢さん、一曲ダンスはいかがですか?」

「おお、なかなかいい感じだぞ。けどもっと芝居がかった感じでもいいかもしれない」

俺の言葉に今度は膝をつくと、少々大げさすぎる感じの動作で喋り始めた。

「ああ。この哀れな美の下僕にどうか、貴方とのダンスという栄誉をお授けください」

「いけるいける。な?」

「はい。ウィルさん、すごくかっこいいですよ!」

ミリアムもぽかんとした表情でウィルを見ている。いまのはガチで王子様っぽかった。かなりキザったらしかったけど。

「しかしお前の兄貴にこんな感じのがいるのか……」

「いるんすよねえ……」

だがこの路線でいけそうな気はするぞ。

「確かにキザったらしくて、同性から見るとあまり好ましい感じではないけど、お前には剣士としての腕がある。ただキザなだけじゃない、剣聖の弟子で実戦経験も豊富な実力者がやることに価値があるんだ」

「確かに! その兄貴も仕事はそこそこできるんで、キザすぎるくらいキザでも許されてる感じなんすよね!」

「よし、じゃあ明日はいまのでやってみろ」

「えー」

「そのままやれってんじゃない。王子様っぽい部分を自分らしくやればいいんだ。剣でもそうだろ? まずは真似をして、それを自分の物にする。ああ、どうせなら明日は剣の修業に充てるか。剣の修業をする王子様。これでいこう」

そこにフランチェスカがやってきて、いつもと違う様子のウィルにドキッとするという寸法である。

「大体いきなりそんなに態度が変わってたら不自然っすよ?」

確かにそうだな……

「こうしよう。そろそろ実家に戻るつもりだから、言葉遣いを元に戻すことにした」

本当の話だし、実にいい口実だ。

「決め台詞は実家の家族に紹介したい。付いて来てくれますか、だ」

「で、できますかね?」

「できるかできないかじゃない。やるんだ! 当たって砕けるんだ!」

「砕けちゃダメなんじゃないですか?」

サティが実に真っ当なツッコミをする。なんか言葉の使い方違ったっけ?

「砕けないように当たれ?」

なんか違うな。日本語の慣用句を異世界言語に直すのって難しい。

「当たって砕ける……くらいの勢いでいけ」

これだ。

「当たって砕けろっていうのはそういう意味の言葉だ。お前に足りないのはそれだな。勢い。フランチェスカを好きだって熱い想いを、気持ちをぶつけるんだ!」

「当たって砕けろっすね!」

「よーし、慣れるために今からやってみろ」

「フランチェスカさん、貴方の愛を得るためなら、この身が砕け散っても構わない!」

「いい感じじゃないか」

いいアドリブだ。咄嗟にこういうことが出来てしまうあたり、やっぱり器用だわ。

「うあー。やっぱ無理っすよー」

他人事だと俺も平気だけど、自分がやれってなったらやっぱ相当恥ずかしそうだ。だが他にいい作戦も思いつかないならやってもらうしかない。

「当たって砕けるんだろ?」

ダメならダメで早めに次の恋を見つけたほうがウィルのためだし、俺はどっちに転んでもまったく構わん。

でも望むらくは、物語はハッピーエンドで終わるほうがいい。

「今日はずっと王子様の練習だな。剣のほうは調整がてら、今から俺が相手をしてやろう」

ウィルに足りないのは修羅場だな。死線を越えた経験がない。剣聖のもとでの修行はそれに近いものがあったが、それでは足りなかった。だから告白くらいでオタオタすることになる。

ちょっと本気で鍛えてやるか……

「俺から一本取ってみろ」

突然の俺の殺気にウィルがぎょっとした顔をする。

「一本も取れなければ……フランチェスカとは二度と会わせない」

「え? 本気じゃないっすよね?」

「お前のフランチェスカへの想いはその程度なのか? ならば手合わせするまでもないな。フランチェスカは諦めろ」

立ち上がって準備を始める。革鎧で剣闘士ルールでいいかと、アイテムボックスから装備ボックスをいくつか放出する。

「フランチェスカはいい女だ。俺が貰ってやる」

「本気じゃないっすよね?」

ウィルの表情が厳しく、声も低くなった。そんな凄みのある顔もやればできるじゃないか。

「俺がフランチェスカをモノにできないと? あいつは俺の力をつぶさに見ている。俺を王国から出さないためならなんでもするさ」

「兄貴……」

「俺が女の子のことで冗談を言うとでも? 俺は本気だぞ」

ウィルもようやく剣を手にし、準備を始めた。

「フランチェスカに加護が付けば、さぞかし強くなるだろうな。そうなったら、ウィル。お前の居場所はないぞ?」

「兄貴!」

「世界が滅亡するかもしれないんだ。覚悟もない人間に、俺の横に立つ資格はない」

ウィルの問題は俺たちだ。強すぎる俺たちと居たお陰で、こいつは死線といえるものを経験する機会がなかった。

「さあ、準備ができたら構えろ」

偽物の修羅場だが、経験しないよりはマシだ。ウィルもずいぶんと腕を上げてきていて、俺が剣の師匠面ができるのもきっとそう長いことではないだろう。ならば今のうちに、できる限りのことはしてやろう。

ふと思う。軍曹殿も俺を鍛える時、こんな気持ちだったのだろうか?