作品タイトル不明
18層 夜の海以前に普通に見えにくいやつら
クラゲオアクラーケンに襲われた俺氏。食事系モンスターに絡みとられる展開に!? 八百枝南ちゃん、どうなっちゃうの〜!!(ポロリもあるよ)
――は始まることなく、というか需要無いので普通に食うか食われるかの決闘。もし絡みとられていやーんなことになったらダンジョン側を訴訟してやる。
「隠れてないで出てこいやっ!」
ミナミのちょうはつ。しかしうまくきまらなかった!
警戒してモンスターがいるであろう場所をしばらく見つめていたが、横側から墨の矢が飛来した。
後ろまで回り込むほど辛抱強くなくて助かった。ギリギリ視界の端に映ったそれを回避し、出処へ走る。
転移なら即カウンターを決められるが、勝てるのは当然なので真っ当な攻略のために砂を踏みしめる。
次々と飛んで熱烈な歓迎をしてくる墨の矢を潜り抜け、“何か”が居るところに縄を投げる。勝手に長さが伸びた縄でぐるぐるに巻いてやろうとしたものの、ついうっかり手癖で亀甲縛りしてしまった。
そしてようやく視認できた巨大なイカ。
縄の隙間から大きめの船をへし折るくらいにはデカイ触手を叩きつけたきた。
「んー、タコならまだよかったんだけどな」
好みの問題だが、イカって食感のクセが強くてあんまりななのだ。タコなら……いや、タコの生食は無いな。茹でたものかたこ焼きとかならいいけどかぶりつくのは嫌だ。タコとイカは生で食べたくない。
魚類なら別に気にならないんだが、この違いは一体。
「オオオオォォ!!!」
「わっ、うるせぇな」
バカでかい奇声を上げながら、ジタバタと縄の隙間から触手を乱暴に振り回している。
一撃一撃はとんでもない威力だが、俺という一人の人間の当たり判定はあまりに小さい。よく昔からクラーケンがどうのとか伝説もあるが、船で戦うから危険なのだ。単身でタイマンはればなんてことはない。
軽く避けてイカ野郎の足を駆け上が――れなかった。
流石は軟体動物。表面までツルツルだ。
「こういう山こそ登りがいがあるってもんよ! 登山部(ゲーム) の底力見せてやる!」
滑らした足を無理やり踏ん張らせ、剣で突き刺す。
登る系のゲームをことごとくクリアしてきた俺にとって、ちょっとヌルヌルなイカ足くらいどうってことはない。
左手で剣を杖代わりにしてよじ登る。
「オオオオォォ!!!」
「ぬぬぬ……」
足場のイカ足が持ち上げられた。
そのまま叩きつけてぺちゃんこにするつもりなのだろう。だが、持ち上げられた時点でヤツの頭部に接近するという目的は達成している。
力の向きが持ち上げから振り下ろしに切り替わる瞬間、俺は剣を抜いて登山を中止した。言わば登山中にクレーンで頂上より上へ持ち上げられた気分だ。
つまりどういうことかというと――
「勝手にヌルゲーにすんなや!!」
唯一俺を縛ることのできる重力に従い、クラーケンの目ん玉にかかとを入れた。これは嫌がらせ、本命は突っ張り棒だ。剣を突っ張り棒に持ち変え、棒を眼球と皮膚(?)の隙間に差し込んだ。
「くらいやがれ! てこの原理! てこてこー!」
グイッと蹴って眼球を持ち上げた。
グロい神経みたいな糸が眼球から伸びている。そういうのは規制かかるからやめてほしい。中身は空洞だというのに、どこの何に繋がっている線なのだろうか。
「オオオオォォ!!!」
「 同じ反応(コピペ) やめな。ぶっコロコロするぞ」
ハナからそのつもりではあるが、方針を変えることにした。だって違う被ダメボイス聞きたいじゃん?
「まずは足、それも刻んでいくパターンと根っこで切り落とすパターン、そんでイカ特有の三角巾って順番でやるからなー覚悟しとけよー」
「オオオオォォ!!!」
刻む。
「オオオオォォ!!!」
切り落とす。
「オオオオォォ!!!」
三角巾をさばく。
「オオオオォォンン!!!」
甲高い悲鳴が水中なのに響いて聞こえる。
最後に変化形だけ披露して黒い霧となって消滅したようだ。
「喘ぎ死にすな」
うちは全年齢でやってるんだからいい加減にしてほしいものである。ドロップは無し。また別日に周回しよう。平日が差し迫っているので今はとりあえず目指せ20層&マッピングのみコースだ。
真っ暗(と思われる)海の中を、鼻歌混じりで小走りし始める。
1時間ほど経った頃だろうか。ノリに乗って生足魅惑のマーメイドと熱唱していた時に階段を発見した。マッピングも完了したのでサクサク次の階層へ下りる。
階段の途中で水中を抜けた。今更ながら、俺にとっては大した変化は無いが物理法則を無視して下向きに空気があるのって変だよな。
水中と地上の反転した境界線上で棒立ちして再確認する。
「これが水陸両用車の気分なのか……」
この万能感、ヤツらは神でもなった気分だったことだろう。だが人間様の俺にその座は奪われることになる。
――何が言いたいかって?
「イカとかクラゲ、好み的に食えんかったし、次は美味しい海鮮系、それも刺身系来ますように! できれば鯛! あるいは鮪! 可能ならサーモン&いくら!」
そうして俺は後に 伝(・) 説(・) の階層と呼ばれるその地に、足を踏み入れたのだった――。