作品タイトル不明
14層 極上うな重
てなわけで、懐かしの半ライスさんのせいで行き場を失った、10代のフレキシブルでエキサイティングなハッスルエナジーを発散すべくダンジョンへやって参りました。道中ウナギ攻略用のアイテムも調達したので、数分後の俺に乞うご期待。
ライブ配信は機材も壊れたし、いちいち買い換えていたら面倒だからごく稀にやることにする。
ので!
俺の本領発揮ができる。
ほら、配信だと猫かぶってニャンニャンしてたからな。
やはりソロで何も気にせずまったり攻略するのが一番楽しい。
「お前との因縁も何年だろうな……昨日か。っしゃあ! ウナギ出てこいや!!」
俺はここに転移する前に購入したての滑りにくいゴム手袋を装着してある。水が中に入って気持ち悪くならないよう、根元で輪ゴムをつけている。これで触れる。
「おっとウナギ発見!」
軽く水中を歩いているとヤツを見つけた。こちらには気付いていないようだ。俺はヤツの傍に転移――は再現性がないので攻略サイトに書くためにも普通に走って本命の対策札を取り出した。
鳶口(とびぐち) 、歴史か何かで聞いたことある、昔の人が火事の対処法として家を壊す際に使ったらしい、見た目鎌に近い武器である。
俺はウナギに飛びついて上に乗った。身体に武器の先を当て、思いっきり突き入れた。持ち手は金属製で、一部だけ買ってすぐに親方に軽く片刃の形に研いでもらった。
突き刺して、持ち手と突き刺したところの付近に刃がある――やることはひとつだ。
俺はウナギの背中を、滑らないように 鳶口(とびぐち) をしっかり入れて踏ん張り、走った。
前回攻撃は逸らされたものの、モンスターの特性として外皮の内側は脆いというものがある。俺はそれを利用して解体ショーを行うのである!
苦しみ、ぐるぐるともがくウナギから振り落とされないようにしながら、何とか首元からしっぽ? のところまで切り裂くことができた。
少しすると、黒い霧が出過ぎたのか消滅した。
こいつらも出血死みたいなものがあるんだな、なんて考えていると、水に揺られながらドロップアイテムが落ちてきた。
「なん、だと……!?」
透明なパックに入った、大量の蒲焼きだった。
“徳用蒲焼き1kg”と書かれていても不思議ではないくらいの量である。
色々ツッコミどころはあるが、すべてを飲み込んで俺は無言でパックを四次元枕に仕舞った。
こうなったらやることはひとつ。
「乱獲じゃあああああ!!!」
◇
深夜3時。丑三つ時っていうのかな、分かんないけど。
まあそんな感じの夜更け。
俺は合計100体近くのウナギを狩り、最初の合わせて5つの ドロップ(蒲焼き) を手に入れた。5%、悪くない。
あとは味だけが問題だ。
1層の 人気(ひとけ) のない所へ転移してそのまま退出の手続きへ。深夜なので新人の子ではなく、新調したばかりの水着を見せることはできなかった。
シャワーを浴びてアイテムを出しに ロリきょぬー(司條) さんの窓口へ……あ、深夜だから居ないや。
「すみませーん。査定と買取でおねしゃーす」
何回か顔は見た事のある受付の人に蒲焼きパックを提出した。残りは俺が楽しませてもらうとしよう。
げへへ……俺に食欲は無いが美味いものは大好き&食欲の限界も無いのが仇となったな!
学校の時間までうな重パーチーじゃい!
うな重ハンターに狩られることなく無事帰宅。
査定結果は後日らしいので、現状値段のつかないうな重を食することに。
ほっかほかのパックご飯を温め、大きめのどんぶりに入れて、その上にとれたての蒲焼きを20個ほど贅沢に乗せた。
ひとつのパックに市販のそれと同じくらいのサイズのが50近く入っている。大富豪にでもなった気分である。
実際結構ダンジョンで稼げてるから小金持ちなのだが、心はいつも小市民、 八百枝(やおえだ) 南(みなみ) です!
「うん、なにこれうんんっま! なぜかタレもついてるのに、そのタレが身に染み込んでいて噛むとまろやかなコクを舌にアピールさせてくる。それにそもそも身を口に入れた途端、帰る場所はここだと言わんばかりに自然に溶けるような食感。 美味(うま) い。スライムの次に 美味(うま) い」
気が付いたらどんぶりを平らげてしまった。
毎秒食べたい。しかし、ずっとあの階層で周回だけするわけにもいかない。前に進まないと、俺の息子は未来永劫日の目を見ることがなくなってしまう。
一旦ラストにして、三杯目は学校で食べよう。見せつけるようにうな重弁当持ってってやる!
そう息巻いて、内なる主夫魂が深夜に火を吹いたのだった。