軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

0層 はい論破ァ!!

「ふっ、俺が誰かだと? ドミナスブラックだ――あっ、違います。不審者じゃないです。子供のごっこ遊びでかくれんぼの鬼してるんです」

ふう、危ない危ない。

意気揚々と借金をふっかけている会社へ向かったのはいいものの、隣町なもので道中何回か警察に声をかけられた。まったく、正義を成すヒーロー相手に不審者とか、ホントお疲れ様っす。ちゃんと仕事してるようでなによりっす!

というわけでターゲットの会社のビルへやってきた。真面目に対話で解決したいので、ひとまず正面の入口から堂々と侵入を試みる。

「おいお前! 誰の許可を得て入ろうって――」

「とう!」

ガラが悪くて話が通じそうにないのでジャンプして最上階の窓を蹴り破って侵入した。

結果的に話し合いになればいいのであって、そこに至る過程は些末なことだ。

「ドミナスブラック、参上!!」

侵入した部屋では、高そうなソファにイカつい強面男性とその護衛、外国人の少女とフードを被った護衛らしき人物が向かい合っていた。

男性と外国人は座っていて、他は立っているので座っているどちらかがここの親玉なんだろう。

シーンと気まずい空気が流れ、状況を理解したのか男が立ち上がって部下に指示を出した。

「チッ、どこの組のモンだ! やれ、お前ら!」

どうやら彼がここのボスらしい。指示に従って部下がこちらに拳銃を向けて躊躇なく撃ってきた。

俺は初めて見たその暴力的な武器に――

「キャッチキャッチっと! やっぱ銃ってかっこいいよなー」

男心をくすぐられていた。

思ったより実弾は遅く軽く、指先で摘んでキャッチできてしまった。これもダンジョンの恩恵というやつだろう。

「ふざけやがって……テメェら、下の階のヤツらも呼べ!」

慌てた様子で部下の一人が無線に叫ぶ。

黒いスーツで怪しい男達はともかくとして、気になるのは笑顔を崩さず眺めているだけの外国人少女とフードの護衛だ。

「先に聞いておくが、そっちの二人は人質とかそういう立場ではないんだよな? 随分と浮いた格好だけど」

「格好はそちらの方が浮いて……コホン、挨拶が遅れてしまいましたね。はじめまして、わたくし、カレラ・ヤングと申します。こちらはわたくしの護衛をやって頂いているリーフです」

金髪碧眼でゆるふわなパーマを軽くかけた、膝下まである長い髪の少女は、優雅にお辞儀をしてみせた。フードの方は軽くぺこりだけ。

「日本語うまいっすね!」

「ありがとうございます。あ、立場としては彼らの客、といったものでしょうか。お話があると聞かされてやって参ったのです」

どっちにしろ裏社会的なあれなのだろう。

「あー、先にこいつらに用を済ませていいっすかね?」

「ええ、構いませんよ」

先客の許可も得たことだし、と男の方へ視線を向ける。男は大量の部下を呼んで銃口を既にこちらに向けていた。

「まあ落ち着けよ。俺はアンタらと話し合いにきたんだ。不当な借金の――」

「撃て!!」

あ、問答無用で攻撃してきやがった。これだから蛮族は。人間なら人間らしい対話をするべきだろうに、と内心口を尖らせて回避しようとした瞬間、外国人少女のなんちゃらヤングさんがフードの方に視線を向けた。

「――承知した」

フードの方から凛とした女性の声がした直後、男とその部下全員の銃が真っ二つになった。

「!? 何を!」

「彼は話し合いを求めているではありませんか。せっかく口があるのですから、それを活用しませんと」

おー、良かった、意外と良い人そうだ。フードの方は何をしたのかすら見切れなかったのが 面(・) 白(・) い(・) ところだけど。

たぶん標的が俺だったら為す術なく首が飛んでいただろう。少しの緊張感と、俺より上がいたことに対する高揚感が同時に生まれる。

「ま、そーいうこった。じゃあまずは俺の訴えから開始する! アンタらは色んな人に不当に、本人の許可なく印鑑すら捏造して法外な利率に変更した! それももとの借主が失踪してから! はい死刑!」

蛇字丸さんのことと明かすのはリスクがあると思い、どうせ他の人にもやってるし複数にしておいた。流石俺、天才!

「証拠はあんのか!」

「証拠はある! これがもとの契約書! そんでこっちが最新の契約書! 印鑑のところを触れば分かる通り、利率を改竄したものと契約書の署名欄を合成している!」

「ぐぬぬ……」

それっぽいことを言ってるだけだが、相手の親玉 も(・) 馬鹿――じゃない、俺は天才だが、相手は馬鹿だったようだ。上手いこと言い含めることができた。

「くそが……テメェら、やっちまえ!」

「ふふ、それではわたくしたちはこの辺で」

しょぼい議論もどきを見て満足したのか、少女とフードは、スキルか何かで扉を作り出してその先へ行ってしまった。転移系のスキルだろう。

そんな訳で残されたのは、議論(笑)に圧勝したドミナスブラックと、それを取り囲む悪漢たち。

殺したらマズイのは百も承知、ということで首トン実践演習百人組手が始まった。

――――結局首トンは普通に危なそうなので気絶する力加減でぶん殴って勝利した。山場なんてなかった。ソシャゲの周回と一緒だ。作業でしかない。

数十分ほどで心までボキボキにして、親玉に借金チャラの書面を書いてもらい万事解決したのだった――。

それで終わればどれほど楽だったろう。

蛇字丸さんに褒められるのを期待してルンルン気分で帰還すると、彼女らの家は炎に包まれていたのだった。