軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

12層 B級映画じゃねえか!

階段の出口は12層全体の高さの半分ほどの位置にあった。

今までとは雰囲気も構造もまるで異なる、ここからが本番だと言わんばかりの環境の暴力。

高さはおよそ数十メートル、部屋を直方体とみなし、その側面が現在地として、幅は高さより広いくらい、長さつまり正面の奥行は見通せない程の距離。深海のように光がなく、壁や天井、床にこびり付いた小さなコケのようなものがうっすら光っているだけで、そこから遠くに行くと光は届かない暗黒が広がっていた。

まあ俺は普通に見えるんだけどね。

光が無くても見える――【平常運転】くんはこの世の法則をねじ曲げガチだ。特に俺の聖剣を亡きものにする辺りねじ曲げ過ぎで絶許。

何だか怒りとやる気がふつふつと湧いてきた。

「よし、まずはマッピングだな」

水中なのに何故か喋れるのは置いといて、水没防止用の袋に入れたスマホ片手にマッピングを開始した。

浮力が俺に適用されないため、まずは海の底を探索する。しばらく歩いているが、12層は遮る壁や道は無く、ただの直方体な空間なので何も書くことがない。

「お? なんかすごい速さでこっちに――サメやんけ!」

三メートル近い巨大なサメが、人を縦に丸呑みできそうなほど大きな口を開けて突っ込んでくる。

本来なら暗闇から無音でこの脅威が迫るのだろうが、お生憎俺には丸見えである。

余裕を持って回避した。持ち歩いている枕は防水性のものだが、俺のように浮力や水中の抵抗力を無視したりはできないので、水による抵抗を手で感じた。

この感覚には慣れる必要がありそうだ。

「シャアアア!!」

「そこまでいったら“シャーク”って言えよ!」

本来なら音も聞き取りづらいのだろうが、俺には地上と何ら変わらない環境である。こういう差があると攻略サイトを作る時に他の人の目線も入れる必要があるから面倒だ。

目の前のサメとテレパシーでも繋いでいるのか、頭上にはサメがわんさか泳いでいた。俺という獲物を取り合おうとしているようだ。

「おいおい、いつから俺がエサだと勘違いしていた? おやつになるのはてめぇらだぞ」

頭上に転移、枕からジェット機能付きの大剣である相棒を取り出した。

「お、これ軽い。……浮力か! これすげええ! これなら片手で振り回せる! らぁ!」

地上では重たくて仕方なかった“ 塵舞(じんぶ) ”を片手で薙いだ。水中でのジェットが如何様なものかは試す必要はあるが、この程度の相手なら温存でいいだろう。

俺にとっては空中を泳ぐサメを、転移して首を斬ったり、スマホで調べながら解体ショーをして楽しんだ。

集まってきたサメを一網打尽にして気付いたことがある。

「モンスターだから血が出ないし内臓も無い。だが 身(・) はある。そして何より新鮮――ここから導き出される答えは一つ! 真実は、いつもひとつ!」

そうと決まればと思い、今までのと色の違う魔石を回収して引き続き探索を再開した。

「う〜ん……俺の口には合わないか」

見つけたサメのモンスターにかぶりついてみたのだが、俺の好きな味ではない……というかそもそも刺身醤油無しで刺身を食べない派なのでそれのせいかもしれない。

かといってこの食材を持って帰れる訳でも、水中の階層で醤油をつけれるわけでもない。

醤油が充満した状況を思い浮かべ、新戦術を閃いてしまった。水没した階層だからこそできるかもしれない最強の戦術だ。しかし、今は必要なものがないのでまた今度試すとしよう。

一通りサメをしばき倒しながら水中散歩(地に足つけて)をしていると、ちょうど余所見をしたタイミングで床の小さい段差に躓いてしまった。

「なんだこれ」

段差ではなかった。落とし穴の要領で、小さな空洞がある。その中には――木製の古びた宝箱があったのだった。