軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1層 初ダンジョン、初戦闘

「あーあー、テステス、よし」

合格をもらったのが水曜日、それから金曜日の放課後に俺はスポーツブランドのジャージに登山用のリュックを背負い、自撮り棒片手にスマホで撮影していた。

ちなみに全部中古品だ。仕送り高校生の懐事情ですもの。しかし、ダンジョンに潜る間は我が悲願が果たされていないことの証左であり、飲食代が浮くのでその分で用意したのだ。

民間解放された週末ということもあってか、時たまスーツの人が仲間と歩いているのを見かける。

おおかた会社内で資格をとった人らで、一回見てみるかと覗きに来たのだろう。

他にも、どうやらダンジョン内にも電波が繋がるようで生配信している人もチラホラ。

画面写りを気にしてか着飾っているが、そんな装備で大丈夫なのだろうか。学校指定ジャージの俺が言うのも 憚(はばか) られるが。

俺は生配信ではなく、サイトに掲載することも今後あるかもと思い記録用に録画の試運転を始めた。

やはり週末というのもあってかダンジョンに潜る人――通称探索者も多く、入ってから一時間弱もマッピングしているが未だモンスターと出くわさない。

ただの格子状の1層を踏破した頃には、時刻は21時。ミーハー共が帰っていったのを確認して再度徘徊する。

どうせなら隠し部屋とか無いかなーなんて壁をツーと触りながら歩いていると、前方に、手のひらサイズの薄いブルーのゼリーが踊っていた。

スライムである。

第一村人ならぬ第一モンスター。お生憎様正式名称は分からないので、勝手に君を“ブルースライム”とさせていただこう。今後のモンスター次第では随時変更するので仮称だけれども。

何はともあれブルースライムは、その愛らしいフォルムを謎の踊りで変幻自在に変えていた。あれはきっとラジオ体操だろう。 目覚め(リポップし) たてで踊っているのだから間違いない。

「さて」

俺はリュックの横のポケットに入れていたトンカチを抜く。

「その悪魔召喚の舞、俺が許しても、コイツ……漆黒双終破が許すかな? どりゃあ!」

――バシャ。

「……」

――バシャ。プルッ?

「……馬鹿なッ! 貴様まさか物理攻撃が効かないのか! ダンジョンがここまでハードモードだとは……!」

「あー、君。スライムは中にある一円玉サイズの核を潰せば倒せるよ」

俺が初戦闘でノリにノッていると、横から余計なお世話おじさん……ゲフンゲフン、親切な男性が耳寄りな情報を教えてくれたー。服装からして初週だから見回りをしているであろう、先行して潜っている自衛隊の方だー。

「スーッ、ありがとうございます。やってみます」

「あ、ああ。うん。1層のスライムの液体は金属だけ少し溶かす程度のものだから、よっぽど大丈夫だとは思うけど、攻撃的じゃないモンスターだから無視して進むのもいいよ」

「あざます」

「それじゃあ、お気をつけて」

朗らかに去っていく ネタバレクソ野郎(親切な自衛隊さん) にタンスの角で小指をぶつける呪いをかけて、俺は再度スライムと向き合った。

「待たせたな、我がライバルよ。今度こそ、この……暗黒以下略の一撃で沈めてくれる!」

市販のトンカチをスライムの核目掛けて振る。

――バシャ。

「……いやムズくね?」

液体の中にある一円玉にピンポイントで殴って当てるなんて難しすぎる。

トンカチちょっと溶けてきてるし、リュックに入れてあるティッシュをスライムに乗せる。

普通に乗った。水分とはまた別の何かなのだろう、ティッシュ側に変化はない。

そのまま端を持ってスライムの中に沈ませ、核を捕えてからこちらに引っ張った。

核だけを取り出すことに成功した。ジワジワと残されたスライムボデー(ネイティブ)が寄ってくる。そのまま核を軽く握り潰すと、核とボデーは薄黒い霧となって消えてしまった。ボトッと地面に宝石のようなものが落下した。

探索者資格の勉強で写真で見た“魔石”とかいう代物だろう。これを協会に提出することで報酬を得ることができるとか。色ごとの量り買い取りらしく、この薄紫の魔石は確か一番安いやつだ。

大きさも河原に混ぜたら見失う程度の小石サイズなので、子供のお小遣いにもならない金額だろう。夕方から夜にかけてでこれ一つなら、金稼ぎ目的ならスルーが安定だろう。

折角夜になって人も減ることだし、俺は少しだけ実験することにした。

え? 睡眠? 未成年外泊?

眠くないし、探索者は謎の法律でダンジョン内なら色々優遇されているんだ。エロい人……じゃない、偉い人が言ってたらしいから多分きっと大丈夫なのだ。知らんけど。