軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

10層 こんなこともあろうかと、テッテレ〜お茶請けぇ〜!

推定ボス部屋の中には、またもやスライムがいた。しかし今までのものとはひかくにならないほどの大きさ。およそ三十匹分くらいの量だ。

ぷるんと震えるのと同時に勢いよく体液が射出された。いつも通り顔面で受け止めて味を確認。見た目から似ていると思っていたが、ついさっきまで飲んでいた抹茶味だった。

まさかボスがこいつだけなんてことはないだろう。真のボスをチラ見するために再び食べることにした。今までのサイズのようにひっ捕まえて抱えながら味わえるサイズでも無さそうなので、体で行くことにした。旅行先のホテルのベッドに飛び込むように魅惑的なスライムボデー(ネイティブ)にダイブした。

「 ぶぽぽぽぽ(溺れる) ……」

だが幸せ。惜しむらくは 別のスライム(夢ある双丘) での溺死ではなかったこと。その気になれば抜け出せるスライムにうずめたまま――ん?

苦しくなったら食べようと戯れていたのだが、全く苦しくならない。

――というか俺呼吸してなくね?

「はむはむ……まあ人間やめてんのは今更だけどさ」

果たして人間の定義から考え直すべきだと思う。一応俺も自認人間だからな。昨今はそういう自認が強いとかそういうアホな風潮だから声を大にして人間宣言していこうと思う。

「にしてもうめぇ」

10層のスライムだけあって上のノーマル抹茶スライムよりコクが深い、気がする。そうであれ。

しばらく無言で飲んでいたが量が量なので飽きてきた。色んな個体のスライムを食べていた方が味の差異も楽しめた。

仕方なく今日の夜食予定のクッキーも食べ始めた。

しばらく抹茶ゼリーはいいかなと食べていると、ついに薄黒い霧となって消えた。と同時に奥の扉が開いた。先には下へ続く階段が見える。

「あれ? ボスは?」

大きめの魔石を回収して階段を降りてみる。ここから先が真のボス部屋だ。

階段の先は扉もなく出口の光が――

「は?」

あるはずの無い太陽光、それが燦々と輝いて雪のような砂浜とそこまで透き通った海を照りつけていた。

ボス部屋……の割には向こうに国旗の掲げられた拠点が見える。チラ見だけのつもりだったが気になるのでマッピングを開始。あえて拠点のような場所を避けて歩き回る。

一時間ほどかけて歩き尽くした。階段は見当たらない。地上に階段が無いのだ。まさかまさかだ。さっきまでの陰鬱とした下水流れる洞窟からガラリと変わったのだからきっとそういうことなのだろう。

冬とは思えない日照りの下、俺は勢いで全部脱いだ。

「10層まで踏破じゃい! そして海! ヒャッホーイ!!」

フル〇ンで魚の一匹も居ない海にダイブしたのだった。

しばらく海の底を 歩(・) く(・) こと数時間。どうやら【平常運転】の影響で呼吸も浮力もナッシングになった俺は海中徘徊を楽しんでいた。重力はあるから、地上での活動が平常として固定されているのだろう。カナヅチになったから逆説的に能力者ってことか。腕が伸びたりしたら面白かったんだけどな。

「お、階段みっけ」

水中マッピングも完了。濡れるから地図はいちいち地上に戻ってから入力してるけれども。次からスマホでやれるように防水の袋のやつ買おう。

拠点を覗きに行こうと海から這い出ていると見回りの自衛隊と出くわしてしまった。

「「……」」

目が合い、緊張と沈黙がこの場を支配する。なんてったって、俺はマッパだ。猥褻物陳列罪とかでしょっぴかれたり……自衛隊にその権限があるか?

ましてやここは例外溢れるダンジョンの中。こういう時こそ、大胆に。

「きゃあああ! 〇び太さんのEDGEッ(ネイティブ)!」

「えぇ……」

「へぇ、安全地帯とかあるんすねー」

「あ、ああ。今のところモンスターが湧いていないから拠点を展開しているんだ。……切り替えこわ」

どうやら本当に11層らしく、しかもどういう訳かモンスターが湧かない領域らしい。ダンジョンも行き来の手間とかを考えてくれたのだろうか。あるいは別の理由でもあるのか。

ま、知りたいことは知れたし一度親方のところに武器の相談しに戻ろっかな。それとキリもいいから攻略サイトを進めたい。

「というわけなので俺は帰りますね」

「いや、一気にここまで来たんだろう? 少し休んでいかないと帰りの戦闘で――」

俺はここの層のマーキングだけして転移したのだった。もちろん転移先は親方のところ。

「親方親方てぇへんだ!」

「……うるせぇ。何時だと思ってやがる!」

「えっと、深夜2時!」

「だからうるせぇってんだ!」

親方もうるさいぞ。まったく、近所迷惑になったらどうするのだろう。昨今の騒音トラブルはめんどくさいと聞く。まあ親方のご近所トラブルはいい。顔怖いから親方が睨めば大抵勝てる。

「実はくれたジェットスラスターくんが一回でガス欠になっちゃってさ」

「……あれはお前さんの魔力ってやつを使って発動してるやつだ。ガス欠というよか冷却期間だ。あの大きさにかなりの出力出るようにさせたから大体一日一発が限界だ」

ロマン砲たる所以といえばそれまでだがそんなに燃費悪いのか。

「俺なら毎日二、三発はいけるのに……」

「てめぇの下半身はしばらくお眠だろうが」

「ポテンシャルの話っすよ! ……ところで四次元ポ〇ットとかありません? あれめっちゃ重いんですけど」

「あるぞ」

だよね。ロマン砲なだけあってそれを背負って動き回ることもデメリットの一つとして受け入れるべきだろう。

「じゃあ今度は金払うんで日用品をダンジョンで使える材質にして売ってくれません? 俺以外にもそういうの使ってるヤツ増えたら面白いでしょ? ……エエェ!? 四次元なポケッツあるんすか!!!?」

「話題が大混線してるぞ。依頼については承った。今度協会本部に納品しとくからそっちで支払いと受け取りしといてくれ。安くしとくぞ。ポケットに関してもまだ実験段階のって感じだがある。どういう形にする?」

おー、これが年の功というやつか。話が早くて助かる。しっかし四次元なポケットの形ねぇ。お腹につけるタイプは絶対危ないとして、どうせならオリジナルスタイルがいいな。武器も日用品だしポシェットとか……あ!

「枕で!! 枕から色々出てきたら面白いんで!」

「なるほど……確かにアリだな。枕を振り回すバカの姿は面白そうだ」

なんかバカと呼んでいた気もするが、誰のことだろう。ほら、俺って知性が溢れすぎてこぼれ落ちてるくらいだし。

そんなこんなで武器の相談を終え、来週には全部納品すると言われてダンジョンに戻った。

今から何するかって?

周回だよ周回。攻略サイト管理者として全部のドロップを集めたり、隠されたレアモンスターを見つける責務があるのだ。今こそ、世界の真実を明らかにするのだ――。