軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

204.

『ふむ、ではもうエルドラシア王国は出たのだな』

『ああ、今はどこの国にも属していない山脈の麓だな。エルドラシア王国は海路を使ってこの山脈の向こうの国と交易をしているが、山脈のせいで随分と遠回りしているそうだ。周辺の国の設立当初の資料に山脈を国に取り込もうとするなと書かれているらしく、入るのは自由だが、どこの国にも属していないらしい』

『ならば 妾(わらわ) が転移しても問題ないな。そちらへ行こう』

『わかった』

王都から馬車で街道を二時間、エルドラシア王国最西端の村から徒歩で約一時間移動し、大陸でエルドラシア王国を陸の孤島状態にしている山脈の麓までやってきた。

魔塔主だったフレデリクの死体が発見された場所の近くだ。

ジャンヌとの念話を終わらせると、遊んでいるジェスとシモンに声をかける。

「ジャンヌが今からこちらに合流すると言っていた。到着したら山に入るぞ。フレデリクを殺した奴を見つけなければ……」

「おお、ジャンヌが来るなら心 強(づえ) ぇな! なぁ、ジェス?」

「うん! お母さんと一緒だ~! わーい! あっ、でも寂しかったわけじゃないからね! ボクもう大きいもん!」

「本当か~? そんな事言って夜はジャンヌと寝るんじゃねぇの~?」

「そ、そんな事ないもん!」

微笑ましいジェスとシモンとのやり取りを聞きながら、俺は己の考えに集中する。

あれから日が経つごとに、なぜか真の黒幕を見つけなければならないという気になっていた。

そういえば、神殿長が聖女は本能的にすべき事や行くべき所がわかるから、行動を制限しないと言っていたな。

もしかして俺もそういう状態なんだろうか。

「 主殿(あるじどの) 久しいな」

声をかけられ、顔を上げると、花がほころぶように微笑むジャンヌがいた。

「ずっと待機させて悪かったな。だが、向こうにいた方がゆっくりできるんじゃないのか? 黒も文句を言いそうだしな」

「ふふっ、確かに黒は文句を言っていたな。定期的に戻るという約束までさせられたわ。仕方のないやつよの」

仕方のないやつと言いながらも、ジャンヌはどこか嬉しそうだ。

「定期的に戻るというのは、数日に一度か? まさか毎日戻って来いとか?」

「まさか! 月に一度ほど戻れば文句も言うまい。第一、会いに来ない事を文句を言える立場でもないではないか!」

ムッツリと拗ねた顔をするジャンヌ。やはりジェスの卵を産む時にいなかった事を怒っているのか?

山の中でジャンヌの探索能力はとても助けになるから、いてくれるとありがたい。

移動しながら俺達は離れていた間の事を色々話した。

邪神戦の時といい、今回のフレデリクとの戦闘時といい、途中でジャンヌ達の魔力が供給された事なども話すと、あっさりと当然の事だと言われてしまった。

主を守るために自然とそうなるらしい。しかも俺が必要とした魔力は、ドラゴンからしたら微々たる量なせいで気付いてすらいなかったなんて。

本当に死にそうなほど生命力が低下すると気付くらしいが。

「あちらの方に認識阻害の魔法……、いや、この規模であれば結界というべきか。かなりの広範囲で張られているようだの。今日中に到着は……難しいくらいの距離か」

フレデリクの死体があった場所も通り過ぎ、更に一時間ほど歩いた時にジャンヌがそんな事を言い出した。

展開的にはやはりエルフの集落があると考えた方がいいだろう。

「山の中に広範囲の結界となると、エルフの可能性が上がったな」

「やったね! 本当にエルフに会えそうだなぁ! ついて来た甲斐があるぜ! なぁジェス」

「シモンはエルフにどうして会いたいの?」

「そりゃあ……、美人が多いからだよ!」

「うん? シモンよ、黒はエルフの女は少ないと言っていたぞ。長寿で女が少ないからドラゴンほどではないが、全体的にエルフの数が少ないとか」

ジャンヌの言葉に、シモンはお前の分のおやつはないと言われた時と同じ顔をした。

もしかしてエルフを口説くつもりだったのか?

イメージ的にエルフは人族を見下しているから、相手にされないと思うぞ。

山のせいか、陽が落ちるが早く、俺達は早々に野営の準備を始めた。

張ったテントは三つ、ジェスが俺と寝ようとしたら、ジャンヌが入って来たので親子二人で寝てもらう。

少し寂しい気もするが、ジャンヌもジェスと離れていたし、一緒にいたいだろうから仕方ない。

眠っていると、悪夢を見た。

まるでノイズが入ったような画像。

大きな樹がある場所で、悪役だった頃のような 俺(ジュスタン) が、笑いながらエルフ達を殺している場面。

血に染まっていく澄んだ水、泣いているジェス。

そして泣いているジェスが俺を殺し、俺は血に染まった水に落ちて見えなくなった。

「ッ!? ハァハァハァハァ……。はぁ~……、なんだったんだ今のは……」

飛び起きた俺は汗をびっしょりとかいていた。

百歩譲って俺が何かの拍子に前世を思い出す前に戻る事はあっても、さすがにエルフを惨殺して回ったり、ジェスに殺されたりするわけない……よな?

一抹の不安を拭いきれないまま、清浄魔法を自分にかけた。