軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第68話 Aランクパーティになったら

「ちょっと光一! これ見て!」

寝ぼけながら一階に降りてくると、母さんが俺に新聞を見せてきた。

栃木県の地方紙である「栃の葉新聞」である。

「ほらほら! ここ、ここ!」

「朝から騒いで……」

母さんに急かされるまま紙面を見る。

1面には、次のような記事があった。

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本県初Aランクパーティ誕生

佐野市出身の4人

ダンジョン管理省は29日、新たなAランクパーティを登録したと発表した。メンバーは、夏目光一さん、 思川(おもいがわ) 環(たまき) さん、宮の原まなみさん、 笹良橋(ささらばし) 志帆(しほ) さんの4人であり、全員本県佐野市の出身。代表の夏目さんは「仲良しの4人で楽しみながら探索し、日本一の探索者チームを目指したい」と語った。なお、県はこの快挙に対して、知事表彰を授与することを検討している。

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「おお……!」

先日、国の告示前に取材を受けたやつだ。

俺たち《チーム・秘密基地》4人の写真も載っている。

しかも、新聞の一面記事だ。

俺たちのことがネット掲示板などで話題になっていたことは知っていたが、紙の新聞でも大きく取り上げてもらえるとは。

感慨深(かんがいぶか) いものがあるな。

……って。

「うう、ぐす、ぐす……」

「母さん?」

気づけば、母さんが泣いていた。

「どうしたんだよ?」

「ごめん、ごめんね、光一……。だって、光一がこんなに立派になって嬉しくて……」

「昇格試験に受かった日に言ったじゃん」

「やっぱり新聞に載るとね、実感が違って……。私たち、インターネットはあまり見ないから……。光一が立派になってよかった……。ぐす、ぐす……」

「母さん……」

「それに、知事表彰まで……。知事表彰ってね、オリンピック選手とかがもらっているやつよ。光一も県に表彰されるようになるなんて……」

「そうなのか……」

全然知らなかった。

表彰なんてもらうのは面倒くさいと思ったが、母さんがここまで思い入れがあるのなら、素直にもらっておくほうがよいのかもな。

「私、これからコンビニに行って新聞買い占めてくるね。知り合いに配らないといけないから。光一はちょっと留守番してて」

「え、やめてくれよ……。それはさすがに恥ずかしい」

「20分で戻るから!」

「お、おい!」

母さんは「売り切れちゃ大変だから!」とか言いながら、軽自動車で近くのコンビニに向かった。

「……ううむ」

大騒ぎである。

正直、Aランクパーティになるという意味を理解していなかった。

オリンピック選手レベルの扱いを受けるんだな。

試しに、スマホでインターネット掲示板を見てみると、探索者板じゃないところにも、俺に関連するいろいろなスレッドが立てられていた。

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探索者の夏目きゅんと結婚したい人あつまれー

1:匿名

(*´▽`)ノ ハーイ♪

2:匿名

(*´▽`)ノ ハーイ♪

3:匿名

(*´▽`)ノ ハーイ♪

4:匿名

こーきゅんにハンバーグつくってあげたいな

おいしそうに食べてくれそう(*´ω`*)

5:匿名

私のことも探索していいよっ(*´艸`*)

6:匿名

(*´▽`)ノ ハーイ♪

誕生日いつかな? プレゼント贈りたい!

7:匿名

今からでも間に合うのかな?

立候補しまーす!(〃∇〃)

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チーム秘密基地の経済への影響を考えるスレ

29:ななしのトレーダー

空間転移が使えるなら補給のことは考えなくてもよさそうだな

深層の探索ができれば高純度魔石も採れるだろうし、エネルギー自給どころか輸出できるのかもな

30:ななしのトレーダー

やはり商社株か、郵船株か

31:ななしのトレーダー

普通にダンジョンフラッグス株じゃねーの?

配信のときの服装からすると、夏目くんの愛用品みたいだし

32:ななしのトレーダー

ダンフラ既に上がってるぞ

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こーちゃんと虫取りをするだけのスレ

1:ななしさん

(´∀`)ノжカブトムシ

2:ななしさん

(´∀`)ノжカナブン

3:ななしさん

(´∀`)ノжアゲハチョウ

4:ななしさん

(´∀`)ノ≡жニゲラレタ

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「うーむ……」

正直、ここまでみんなに注目してもらえた経験はない。

前に車を買ったときには、店長が俺のことを知っていたけど、あれは地元だけの話だ。

探索者業界関係なく、全国的に知られているのかな……。

そう思うと、むずがゆい気持ちになる。

それに……。

「俺と結婚したい人のスレか……。冗談なのかな……。それとも探索者の収入目当てで……」

お金の面もあるだろうけれど、俺はそこまでイヤな相手ではないってことなのかな。

モテとは無縁で、ずっとイジイジしてたから、感覚がよくわからない。

でも……。

「……きっと、自信を持っていいんだろうな」

俺も一流と呼ばれるレベルに達しつつある。

必要以上に自分のことを駄目だと思ったり、 卑下(ひげ) することもないんだ。

そう思うと、気持ちが晴れやかになってくる。

俺の人生を、ここから新しく始めてもいいんだと思える。

「……ふ」

つい笑みをこぼしてしまう。

「母さんが帰ってきたら、プライベートダンジョンに行くか」

俺はまだ進める。

どんどん前に行ける。

その感覚が、うれしかった。

それに明後日には、また幼なじみのみんなと会える。

大好きなみんな。

その「好き」が、友情なのか恋愛なのかは、ここ数日いくら考えてもわからなかったけれど。

みんなと会う中で、ゆっくりと自分の気持ちに気づいていきたい。

探索者として活動を行いながら、自分をやり直していきたい。

俺は、自分を大切にしてもいいんだ。

そんな気分になっていた。