軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

本日も平常運転でした

本日も騎士学院との合同訓練……には参加せず、俺達は単独で魔物討伐に当たる。

今日もジークにーちゃんとクリスねーちゃんが引率として来るのかと思ったら、今日現れたのは、ルーパー=オルグラン魔法師団長だった。

突然現れた、アールスハイド王国魔法使いのトップに、魔法学院の生徒達は戸惑い、畏縮していた。

それはそうだろう。自分達は、まだひよっこにもなっていない、いわば卵だ。

そんな卵達の前に、親鳥のボスが現れたのだ。畏縮するなって方が無理だろう。

「あれ? オルグランさん? ジークにーちゃんはどうしたんですか?」

「あいつは本来、陛下の護衛だからな。ウォルフォード君の訓練にだけ、特別に引率してきてたんだよ」

「へえ、そうだったんですか」

「先日の訓練に同行して、護衛を伴う引率は不要だと判断がされたんだが……隔絶した実力を持っているとは言っても学生だからな。引率は必要だってことになって、今日のところは俺が来たってわけだ」

護衛は必要ないけど、学生だけで魔物討伐に向かわせるのは、無責任過ぎるってことかな?

どちらにしても、大人は付いてくるのか。

「でも、付いてくるだけなら、オルグランさんでなくてもよかったんじゃないですか?」

「まあ、確かにそうなんだけどよ、俺が君達を見たかったってのもあってな」

「そうですか? そんなに面白いものではないと思いますけど」

「何言ってんだ。チーム全員が叙勲を受けるような集団だぜ? 興味が湧かねえ方が無理ってもんだろ」

「そんなもんですかねえ……」

「そんなもんだ」

まあ、俺達の行動に制限をかけるとか、そんな話ではなさそうだし、別にいいかな。

「オルグラン。お前は、私やシンがいるから錯覚しているかもしれんが……この中で、お前とまともに話せるのは、私とシンだけだからな? 学生の中に組織のトップが入るとか、十分非常識な行動だと自覚しろよ」

「それは分かっているのですが……」

オルグランさんが声を潜め、オーグと小声で話し出した。

(ドミニクから、アルティメット・マジシャンズの戦力を、直に見極めてくれと言われているのですよ。今度の連合会議での、作戦立案の為に)

(そういう事か。それは了解したが、あまりでしゃばるなよ?)

(分かっております)

「何話してんの?」

「いや、何でもない」

「ああ、ちょっとした打ち合わせだよ。それじゃあ、そろそろ行こうか? 君達の戦闘を見てみたい」

『は、はい!』

案の定、皆は、オルグランさんがいることで緊張してる。

俺は……オルグランさんが、ばあちゃんに頭の上がらない所とか見てるし、組織のトップとは思えないほど、フランクに話し掛けてくれるので、あんまり緊張しないな。

将来、魔法師団とは別系統の組織になる事だし、今回の引率で距離が縮まるといいな。

そんな事を考えてる内に、先日と同じ場所までやってきた。

「はあっ! はあっ! ちょっと……ペース早くねえか?」

「そうですか? ……ああ、皆これ使ってるからじゃないですかね」

「これ?」

俺が指した先は、皆の足もと。

靴が、全員ジェットブーツになってる。

「それって……確かウォルフォード君が履いてる、相手との距離を詰めたり、空中で方向転換したりできるやつか?」

「そうです。そういえば、シュトロームと対戦した時に使いましたね」

「で? 全員がそれを履いてるって事は……皆、近接戦もやるって事か?」

普通はそう思うよなあ。でも、皆がジェットブーツを履いてる理由は違うんだよ……。

「バレー……」

「ん? バレー……ってあれか? ウォルフォード君達がリッテンハイムリゾートでやってたっていう、遊びの?」

「……そのバレーで……ジェットブーツを使えば、面白い事になるからって、皆が履きだして……」

「……まさか、その扱いに慣れる為に……」

「基本、俺達は固定砲台ですからね。戦闘中には使いません。ただ、普段近接戦もやる、俺やトニーのジェットブーツの扱いが上手いって言い出して……やっぱり、実践で使わないと上達しないから、移動は、これを使おうって事になって……」

「……先日行った場所なのに、ゲートを使わないから不思議に思っていたんだ。そうか……ジェットブーツに慣れるためか……」

「……すいません」

「いや……正直、訓練中に何をしていると言いたいところだが……これも実戦で役に立つと考えると、頭ごなしに怒る事もできんな」

実際そうなんだよね。

ジェットブーツを使いだしたのは、マジカルバレーの為だけど、使いこなせれば、戦闘が有利になる。戦闘だけでなく、さっきみたいな移動も、体力を消耗しないで移動できる。

実際、身体強化で付いてきたオルグランさんは、息があがってたし。

皆もゲートは使えるけど、浮遊魔法は使えないから、個別で移動する時には活躍すると思う。

「移動用の魔道具か……ウチはモヤシが多いから、導入を検討してみるか……」

「そういえば、騎士団から大量の発注が入ったって言ってましたよ」

「何? 騎士団が?」

「ええ、突進力が上がりますからね。剣を使う人には、戦闘用として有用なんですよ」

「……ドミニクの奴、そんな事は一言も言ってなかったのに……」

「でも、騎士団って事は、騎馬に乗ってるんですよね? ジェットブーツを使うと、騎馬、要らなくなるんじゃ……」

「人相手の戦争なら、騎馬は大きな武器になるんだがな、魔物相手となるとそうでもないんだわ」

「馬を降りて戦った方が、戦いやすい?」

「そうらしい。ま、俺は移動用にしか馬は乗れねえから、詳しくは知らんがな」

言われてみればそうか、魔物は動きが俊敏なのもいるし、馬上からは攻撃し辛いか。

「で? これからどうするんだ? 魔物が寄ってくるのを待つか? それとも探しに行くか?」

「ああ、それは……」

昨日と同じ要領で魔力を集め、魔物を誘引する。

さて、本日も、素材収集の狩りを始めようか。

「……ジークが唖然とする訳だぜ。なんだこりゃ?」

都合四回、魔物を誘引し、先日と同じ組み合わせで魔物を討伐した。

今日は元々の心構えが違ったのか、慌てる事もなく、先日より素材として収集できるものが増えていた。

「うーん。まだ成功率は四割ってところかなあ?」

「トニーはまだいいよ! あたしなんて二割位だよ!」

「それは自慢にならない」

トニーが四割、アリスが二割って言ってるのは、傷を付けずに、綺麗に討伐できた割合だ。

そんなに綺麗でなくても、ある程度の状態なら、もっと高い確率で討伐できてる。

先日とは大違いだな。

「こ、これで満足してねえってのか? 十分素材として買い取ってもらえるぜ。極上品まで混じってやがる……」

「私達の目標は、全て極上品で狩る事だからな。それを考えると、全然ダメだ」

「全て極上品って……何を仰っているのですか? そんな事……」

「シンが討伐した魔物を見ろ」

「……」

「極上品、十割だ。こんなものを見せられてはな。私達はまだまだだと思う」

的、デカイからね。

「ふう……はあ……やっぱりシン君は凄いですね。目標が見えていると、訓練にも気合いが入ります!」

今日は、四連戦だったシシリーが、息を切らせながら言う。

シシリーも、今日は全ての討伐に参加する事が事前に分かっていたので、先日ほど息は切れていない。

ただ、魔法を使う事は集中力を必要とするので、長時間持続させると、やっぱり息切れしてしまう。

しかし、そのお陰か、シシリーの攻撃魔法は、以前より少し精度と威力が上がっていた。

「大分、攻撃魔法もうまくなってきたね。威力がまだ足りない感じだけど、この調子で頑張ろうか」

「はい!」

攻撃魔法が上達したので、もっと頑張ろうと言うと、笑顔で返事をしてくれた。

「その娘、聖女……だよな? 治癒魔法が得意で攻撃魔法もスゲエって……どういう事だよ……」

オルグランさんが、不思議そうに言うのには訳がある。

この世界の魔法に、ゲームなんかによくある属性はない。イメージできれば、どんな魔法だって使う事ができる。

なら、治癒魔法とは何か?

治癒魔法は、怪我や病気をした人を癒してあげたいと、強い慈愛の心で念じる事で発動する。この世界では発動条件のよく分かっていない魔法なのだ。

だが、実際に治癒魔法は存在し、治療された患者さんも多数いる。

おそらく、強い『癒しのイメージ』に魔力が反応し、治癒魔法として発動しているんだと思う。

だから、治癒魔法が得意な人は、優しく、慈愛に満ちた人が多いため、攻撃魔法が苦手な人が多いのだ。

ところが、俺の治癒魔法は、人体の構造を理解した上での魔法なので、慈愛の心とか関係ない。

攻撃魔法も同じだ。攻撃的な性格をしているから、攻撃魔法が強力になってる訳じゃない。

シシリーは、俺から、人体……というか、生物の構造を学びながら治癒魔法を練習している。

時々、狩りに連れて行ったりしてね。

最初は、よく吐いたりしていたけど、それにも慣れ、治癒魔法の腕も大分上がってきている。

俺の魔法は、オーグから『チームの人間以外に教えるな』と言われているから、オルグランさんからすると、シシリーは不思議な存在なんだろうなあ。

「オルグランさん。とりあえず、今日のところはこれで戻ろうと思うんですけど、良いですか?」

「あ、ああ。これだけ狩ってれば、文句を言う奴もいねえだろ。まあ……実際のところは、狩った数よりその中身の方がスゲエんだがな……」

「そうですか? まだまだですよ」

「……目標が高過ぎる……」

そんな事ないと思うけどな。

実際、ベテランハンター達は、そうしてるって聞いてるし。

「ところでシシリー、今日もおぶって帰ろうか?」

「それは、凄く魅力的なんですけど……私も、この靴を使いこなしたいので、今日は自分で帰ります」

「そっか、残念だなあ。シシリー、柔らかいから、背負って帰りたかったのに」

「え? あ! もう! シン君のエッチ!」

むう、凄く残念だ。

「これが、あれだけの魔物を討伐した後の雰囲気なのか……?」

「オルグラン、あの二人について深く考えてはダメだ。いつでも、どこでもがモットーの奴らだからな」

「真のバカップルですよ」

「バカップルの鑑」

「キング・オブ・バカップルだね!」

なんか、凄い称号を頂いてしまったな。

勿論、シシリーは、俺の後ろで羞恥に悶えていた。

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アールスハイド王国魔法師団長たる、ルーパー=オルグランは、今しがた自分が見た光景が信じられなかった。

高等魔法学院生という、本来なら魔物を討伐させるなんて考えられなかった年代の少年少女達。

その子供達の放つ魔法に、自分の自信が、ガラガラと崩れていくのが分かった。

自分も、相手に隙を与える詠唱は好きではなく、無詠唱にこだわっていたが、彼らの魔法は、自分のものとは一線を画していた。

詠唱なんて、一切聞こえてこない。そのくせ、放たれる魔法は全て強力で、しかも正確だ。

彼らには、この討伐で目標があるという。それは、魔物素材を極上品として採取するという事だ。

極上品という事は、体には一切傷を付けずに、頭部のみを攻撃して仕留めるという事である。

ベテランハンターでも滅多に出来ないそれを、この子供達は、何回かに一度成功させる。

ベテランハンターと同じ考え……とは言っても、それを 心掛けて(・・・・) いるだけで、実際に出来るかというと、それはまた別の話である。

いわゆる心構えの事を、彼らは実践しているのだ。

その中でも、シン=ウォルフォードの魔法は、次元が違う。

何せ、十割。魔法を放って魔物を討伐すれば、確実に極上品が手に入る。

彼の凄さは、その途轍もない魔法の威力に目が行きがちだが、特筆すべきはこの正確性ではないか? とルーパーは考える。

どんな魔法も、当たらなければ意味がない。

極小の魔力で、最大の成果をあげているシンは、ルーパーの目には、同じ人間として見ることができなかった。

「魔王……魔法使いの王か……」

あながち誇大な表現でもない。むしろそう言われてしっくりくると、そう感じていた。

十二人という人数での成果としては、信じられない位の数の魔物を討伐し、帰路についた。

そして、その光景を見たルーパーは、軍務局長であるドミニクのところへ、報告に訪れていた。

「ご苦労だったなルーパー。それで? 魔法師団長の目から見て、彼らはどうだった? どこに配置すればいいと思う?」

クリスティーナから報告は受けていたが、騎士であり、魔法の事は専門外の彼女からは、作戦立案に十分な情報を得る事ができなかった。

『あの子達は凄いです』

という報告だけでは、作戦を決めきれなかったドミニクは、魔法のプロであるルーパーに、視察を依頼したのだ。

そのドミニクからの催促に、ルーパーはすぐに答えられない。

少し考えたルーパーは、彼らの運用について、こう答えた。

「……どこでもいいんじゃねえかな?」

「……何? ルーパーお前、どこでもいいとか、そんな適当な事を……」

「適当じゃねえよ。実際にこの目で見て確信したわ。あの子らに俺達の支援は邪魔。むしろ、俺達をあの子らにフォローしてもらいたいわ」

「……そんなに凄かったのか?」

「凄いなんてもんじゃねえよ。殿下や陛下が、必死であの子らをウチの固有戦力にはしない。戦争の火種にはしないって言ってる意味が分かったわ」

大国たるアールスハイド王国の王が、彼らを取り込まない。世界の共有戦力にしようと提言している意味が分かったというルーパー。

「あれは凄すぎる。あの子達だけで……いや、ウォルフォード君だけで、世界を簡単に征服できちまうわ」

「そ、そんなにか?」

「だから、どこでもいい。どこに配置したって、最高の結果を出してくれるよ。あの子達は」

作戦立案者としては、強力過ぎる戦力をどこに配置するか、非常に悩んでいるところであったが、どこでもいいと言われると、さらに悩んでしまう。

「はあ……連合会議まで日がないというのに、どうしたものか……」

「各国に何人かずつ派遣して、そのフォローをしてもらえばいいんじゃねえか? 大型の魔物までは各国軍が討伐して、災害級や魔人が出たら、あの子らにお願いするってことで」

「……やはり、それが一番か」

「そう思うぜ」

「分かった。ありがとうルーパー、参考になった。今日はもういいぞ」

「おう、じゃあ俺はこれで……って、思い出した! おい、ドミニク! テメエ、ウォルフォード商会にあのブーツ大量に発注したって?」

「ん? ああ、言ってなかったか?」

「聞いてねえぞ!」

「そうか、それは悪かったな。まあ、これで我が騎士団も更にレベルアップができる。お前達、魔法師団には負けんぞ」

皆の足を引っ張ることを恐れるドミニクは、これで魔法師団に大きい顔をさせないと、自信たっぷりに言った。

「フン、生憎だったな! 今回、ウォルフォード君達に同行した事で、俺達魔法師団も、ジェットブーツの購入を決めたからな!」

負けじとルーパーも返した。

実際は、魔法師団長といえども、独断で装備品を揃えることなど出来ないので、帰ってから会議にかけるのだが、既にルーパーの中では、ジェットブーツの購入は、決定事項であった。

「な! ズルいぞ! お前達は、マーリン様式訓練法で、力を上げているというではないか! その上、ジェットブーツまで購入するだと!?」

「へっ! あれは、移動手段としては秀逸だからな。お前らだけに使わせてたまるか!」

「……フッ、モヤシの集団だものな、お前達は」

「……なんだと? テメエ……」

「なんだ? やるか?」

「上等だ! 表に出ろ!」

その日、突如巻き起こった、騎士団総長と魔法師団長の模擬戦で、騎士団の練兵場の一部が破壊され、作戦立案書と装備品購入申請書の前に、始末書を書かされる騎士団総長と魔法師団長の姿があったらしい。