軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

授業参観みたいになりました

麦畑を盛大に吹き飛ばしてしまった……。

その事をオーグに本気で怒られ、事の説明の為に伺った王城で正直に話した。

気分はまるで、先生に怒られるのを待つ学生の気分だ。

高等魔法学院の学生だけどね。

そうして神妙な心持ちで沙汰を待っていたのだが、クルト王は俺達が魔人を撃退した事を称賛し、被害が麦畑の一部だけで良かったと言ってくれた。

正直ホッとしたが、オーグの方はそういう訳にはいかず、貸与している魔道具の賃貸料の大幅な値下げと、麦の大量購入を約束していた。

完全に無料にしないのは、魔人の討伐は俺達に任せた上に魔道具の賃貸料を無料にされてしまうと、クルト王国の方が精神的に負担を感じるかららしい。

クルト王から、それだけは止めてくれと逆に懇願された。

「はあ……来期の麦の値段の調整が大変だな……」

「……スマン」

クルト王国の王城から引き上げ、王都の外に向かっている時にオーグがそう呟いた。

「強いのは良い事だがな、お前は力の振るい方をもっと知った方がいいな」

「……本当にスマン……」

「はあ……まあ良いさ、これからの事を考えて少し愚痴りたくなっただけだ。麦の値段の操作位、お前から発生する面倒事の予想に比べたら可愛いものだ」

「ちょっと待って……一体何を想定しているのかな?」

「それはお前……誤って街一つを消し飛ばすとか、国が無くなるとか、世界が滅亡するとか……」

「俺は破壊神か!? そんな事しねえよ!」

『え?』

「え?」

皆からまさかの疑問の声が上がった。

「自分は、正直あの程度の損害で上出来だったと……」

「殿下の説明に妙に納得しちゃったよ! あたし!」

「あ、あの! ウッカリ世界を滅ぼさないで下さいね!」

「俺は魔王か!」

何故俺の評価が魔王寄りなんだよ!?

「魔王……言い得て妙ね……」

「魔法使いの王。ウォルフォード君にピッタリ」

「魔王シン殿で御座るか……」

「止めて! それだけは本当に止めて!」

この世界に、前世のゲーム的な勇者だの魔王などというものは存在しない。

だから魔王という言葉も存在しない。

だから皆が魔王と言われて連想するのは、魔法使いの王という事になってしまう。

ウッカリ突っ込んだ言葉のせいで、このままだと俺が初代魔王になってしまう! これ以上恥ずかしい名前が増えてたまるか!

「フム、シンの二つ名は決まったな」

「決めないで! お願いだから!」

「何で? いいじゃない、魔法使いの王で『魔王』シンにピッタリじゃない」

「そうだねえ、これ以上の二つ名は思い浮かばないかな?」

「思い浮かべて! 何かある! 何かあるからあ!」

諦めんなよ! 諦めたらそこで終了だぞ!

「まあ、いくらシンが否定しようと二つ名とは自然に広まるものだからな。すぐに定着するだろう」

「終了した!」

ウソだ! そんな簡単に魔王なんて二つ名が受け入れられるなんて!

なんでこの世界には過去に勇者も魔王もいなかったんだ!

いればそんな二つ名なんて付けられなかったのに!

「そんな事より、早くゲートを開いてくれ」

俺の一大事をそんな事で片付けられ、ゲートを開くように求められる。

こんな悲劇的な事があるだろうか?

皆帰らなきゃいけないから、その要求を突っぱねる事など出来る筈もなく、いつもの警備兵の詰所にゲートを開いた。

「おお! 殿下達がお戻りになられたぞ!」

「お帰りなさいませ! 再びの魔人討伐おめでとうございます!」

「アウグスト殿下万歳! アルティメット・マジシャンズ万歳!」

詰所に着くなり駆け付けていた兵士さん達に万歳されてしまう。

「なんだ、もう報告が入っているのか」

「ええ、先程我が国のクルト王国駐在大使より連絡が入りました。アルティメット・マジシャンズがクルト王国に現れた魔人を人的被害ゼロで撃退したと。もう既に市井にも触れを出しました。アウグスト殿下の王太子就任の祝賀も合わさり、街は大変な騒ぎでございます」

「そうか、街に出るのは止めた方が良さそうだな」

街に出るのを止めとこうというオーグ。

っていうか、街に出るつもりだったのか? 元はオーグの王太子襲名の祝賀祭のはずだろ。本人が現れたら大騒ぎになるじゃないか。

最近、俺らと一緒にいてオーグの感覚がおかしくなっている気がする……。

「当然でございます! この騒ぎの中街に出るなど……アルティメット・マジシャンズの方々も自重してください」

「え? あたし達も?」

「人の口に戸は立てられぬもの。もう既にアルティメット・マジシャンズの方々の名前も素性も知れ渡ってますよ」

『えええ!?』

俺やオーグだけでなく、他の皆まで素性が割れてんのか?

個人情報どうなってんだ?

……まあ、そんな概念はまだないんだけども。

「じゃあ、私とエリー姉様は大丈夫です!」

「そんな訳あるか!」

珍しくオーグの突っ込みが入った。

メイちゃんも感覚がおかしくなってる……。

ひとまずディスおじさんに今回の諸国訪問の顛末を報告した。

エルスとイースに連絡を付け、色んな調整を経て三国会談が実現するのは長期休暇明けになるだろうとの事だ。

今回訪問した小国と違い、大国三国で一緒に会談をするとなると色々と時間が掛かるらしい。

ディスおじさんに報告をした後は、結局オーグの部屋に集まっていた。

「折角こんな大きなお祭りがあるっていうのに参加できないなんて!」

「まさか私達まで名前が知られてるとはね……」

「私……普通の街娘……」

「オリビア諦める。アルティメット・マジシャンズにいて、平然と魔人を討伐出来る街娘はいない」

「よくよく考えたら凄いッスね。全員が魔人を討伐出来る集団なんて……」

「魔人の討伐ねえ……」

「シン君? どうしたんですか?」

「いや……前回も今回も……魔人弱すぎないか? 行動も腑に落ちないし」

前回と今回と、魔人を討伐して感じた事。

以前に相対した『魔人化したカートに比べて弱い』という事。

「魔人化したカートの魔法を防ぐのは結構苦労したんだ。多少のダメージも負ったし」

手を火傷したな。

「それに比べて……今回の魔人の魔法は魔力障壁で簡単に防げた。攻撃も単調で連携もない。何なんだろうな?」

「フム……そう言われても、魔人化したカートと実際に相対したのはシンだけだからな。我々にはよく分からんが……シンがそう言うのならそうなんだろう」

「確かに魔人達の行動は腑に落ちません。魔人の力を過信して策を持たずに正面から攻めてきたと考える事も出来ますが、最初はともかく二回目も同じとは……」

「誰か、シュトロームの魔力は感じたか?」

「私は感じませんでした」

「私もだな。シンや索敵が得意なクロードが感じていないのなら、今回もいなかったんじゃないか?」

「そうだよなあ……」

本当に何なんだろう? シュトロームは本気でこんな方法で世界統一を狙っているんだろうか?

それに、魔人に強さの違いが出ているのはなぜだ?

腑に落ちない。まったく腑に落ちない。

「まあ……今のところ、我々は魔人共の行動にリアクションを取るしかない。連合が締結出来れば今度はこっちから打って出られる。謎の解明はそれまでお預けだな」

それしかないか。旧帝国周辺の小国には、連絡が入ればすぐに向かえるようになったし、ひとまずは様子を見るしかない。

そもそも、こちらから旧帝国に攻め込むには人員が足りないし。

旧帝国領は魔物の巣みたいになってるから半端な人数では進軍する事も難しい状況になってる。

俺達だけで強引に突破する事も出来るだろうけど……それをやると、前にオーグが言ったみたいに勝ち過ぎるし、そもそも魔人共の拠点が分かってない。

元四大大国に数えられていただけあって領土は広大だし、俺達でしらみ潰しに進撃したとして……どれくらいの期間が掛かるのか想像もつかない。

なんとか二国に協力してもらって、大軍をもって一気に攻め込まないと取り逃がすかもしれない。

帝国から魔物が溢れて、各国共その対応に多く兵力を割かれているので、全戦力を集結させる訳にもいかない。

なので今は魔人の行動にリアクションを取る事しか出来ない。

そうしないと機を逃すかもしれない。

色々なジレンマを抱えている為、連合の締結待ちなのだ。

だけど三国会談は休み明けだ、やる事が無くなってしまったな。

「殿下、この後って何か行事ありましたっけ?」

「シンとクロードの婚約披露パーティも、私の立太子の儀も終わったからな。もうこれといった行事は無いな」

「じゃあ、皆で遊びに行きたいです!」

アリスが今後の予定として、皆で遊びに行きたいと言い出した。

「長期休暇に入ってから、合宿して訓練して魔人と実戦して……全然遊んでないじゃないですか! 折角の休みなのに!」

「旅行行ったじゃん」

「あれは殿下とシン君の用事のついででしょ! そうじゃなくて純粋に遊びに行きたい!」

確かに、訓練の合間に息抜きなどはしていたが、純粋に遊んだかというと、してないな。

「そうだな、確かに休暇という意味では休んでいないか」

「行きたい行きたい! どっかに遊びに行きたい!」

「アリスお姉ちゃん子供みたいです」

「うぐっ! 純然たるお子様のメイ姫様に子供と言われるなんて……」

アリスとメイちゃんのやり取りで空気が和んだな。

「であるなら、拙者の実家に来ると良いで御座るよ」

「え! 良いの!? リッテンハイムリゾートに行って良いの!?」

「良いで御座ろう。今は魔人の連続討伐で皆浮かれているで御座る。リゾート地に行っても何も言われんで御座るよ」

ユリウスの言葉に皆から歓声が上がった。

そんなに凄いのか? 武士のリゾート。

「シンは知らないか。リッテンハイムリゾートは貴族ですら垂涎の的だからな。かくいう我ら王族も、リゾートと言えばリッテンハイムに行く事が多い」

「そうなんだ。前に簡単な説明を聞いただけだからな。どんな所なのか知らなかったわ」

「海に山に何でもあるです! 楽しいです!」

「ああ……山はもういいかな……?」

「あ、シン君、山育ちですもんね」

「イヤと言うほど山は知り尽くしてるよ。キャンプとか温くて楽しめないかも……」

多分、一生を山で過ごせるだけのスキルを持ってるぞ。なので今さらキャンプはなあ……。

「じゃあ海にしましょう。それならシン君も楽しめるでしょう?」

「おっと、やるわねシシリー」

「なにが?」

「海って事は水着よねえ? シシリーったら、シンに水着姿を見せてどうするつもりなのかしらあ?」

「あぅ! そ、そんなつもりじゃ! ただシン君が楽しめた方が良いと思って!」

「シシリー、ありがとう」

「シン君、分かってくれましたか?」

「うん……水着、楽しみにしてる」

「もう! もう!」

ポカポカ叩いてくるシシリーは可愛いから放置しとこう。

それにしても、魔人の話をしてたはずなのに、いつの間にかボーナスタイムに入っていたな。

魔人に対してはリアクションしか取れない以上、ずっと気を張ってるのも無駄に疲れるし、ひとまず対抗策は完成したし、ここは息抜きするかな。

「そういえば、合宿には保護者がいたけど旅行は? 今日までのは外国だしお忍びだから良かったんだろうけど、国内はどうなの?」

「む……」

「……忘れてたな?」

「アウグスト様……最近本当にお立場を忘れすぎですわよ?」

「シンが悪い」

「免罪符みたいに使うな!」

「皆の家族を連れて来れば良いで御座るよ。幸か不幸かこの魔人騒ぎでキャンセルが多く出たで御座るからな」

『良いの!?』

ユリウスの剛毅な発言に皆声を揃えて叫んでいた。

「今回は流石に料金は支払うよ。合宿じゃなくて純粋に遊びに行くんだし」

「別に気にしなくて良いで御座るよ」

「それだと気兼ねして、思い切り遊べないだろ? それに、キャンセルが多くて大変だって言ってたじゃないか」

「それはそうで御座るが……」

「ユリウス、私もシンの意見に賛成だ。これは修業や訓練じゃない。なら、相応の対価を支払うのは当然だ」

「あたしも良いよ! 合宿中の魔物狩りで結構稼いだから!」

「自分も良いッス」

「私も良いです」

皆も料金を支払う事に異存は無いようだ。無料だと遠慮しちゃうからな。

「はあ……分かり申した。ですが割引はさせて頂くで御座る。そうでないと今度は拙者が心苦しい故」

「まあ、そこが妥協点か。あ、シシリーは良いよ、俺が出す」

「え? そんな、良いですよ」

「私も出そう」

「私も」

「クロード家の人達には無償で合宿のお世話をしてもらったからね! これくらいさせてよ!」

これにも皆異存はないみたいだ。

「という事で、合宿地の提供をしてくれたお礼にクロード家の皆さんをご招待、かな?」

「そんな、悪いですよ。実家を提供しただけですし……」

「じゃあ、将来の夫から奥さんの実家の皆さんにプレゼントってのは?」

「奥さん……」

お、ちょっと軟化したかな?

「私達は婚約祝いという事ですね」

「それで良いんじゃない? あ、セシリアさんとシルビアさんも呼びなよ? でないと拗ねちゃうからね」

ロイスさんもな……。

「……お祝いという事ならこれ以上固辞するのは失礼ですね。分かりました。では有り難くご好意をお受けします」

「よし、じゃあ日程とか決めようか。行きはどうする? 飛んで行く?」

「今回は駄目だな。結構な人数での移動になる。途中の街での経済効果も考えると、行きも帰りも馬車だな」

「あ、セシルさんが言ってたやつか。分かった。で、いつから行く?」

「そうだな……」

こうしてユリウスの実家へ遊びに行く事になり、今回は皆準備に時間を掛けたいというので三日後の出発という事になった。

「なんだって? リッテンハイムリゾートに遊びに行くって?」

「ほっほ、それは豪勢じゃの」

そのまま歩いて帰ると騒ぎになるからと、ゲートで各自の家に送り届けた。

シシリーはウチに挨拶してから帰りたいと言うのでマリアと共に連れて帰ると、温泉上がりと思われる爺さんとばあちゃんがいたので、さっき決まった事を伝える。

「長期休暇に入ってから遊んでなかったからさ、ユリウスが割引してくれるって言うから遊びに行く事にしたんだ」

「時代は変わったもんだねえ、学生がリッテンハイムリゾートで休暇なんて……」

「あ、家族も一緒にどうぞだってさ」

「アンタは良い友達を持ったねえ!」

家族も一緒に連れて来て良いという話をすると、ばあちゃんは急にテンションが上がった。

「そうと決まれば早速用意をしないとねえ。シシリー、マリア!」

「はい」

「なんでしょうか?」

「今から水着を買いに行くよ! 着いてきな!」

「「は、はい!」」

そう息巻くばあちゃんにシシリーとマリアが連れ出されてしまった。

「……ばあちゃんの水着姿はちょっと……」

「諦めるんじゃ。そんな事言うてみい……」

その後に起こる事態を想像し二人で身震いをしていた。

結局、三日間の準備期間はほぼ買い物で終わってしまった。

ちなみに女性陣の水着はナイショなのだそうだ。見てのお楽しみって事らしい。

そして迎えた出発当日、家族全員が集まるのはさすがに無理があったらしく、何組かは揃っていない。まあ、仕事もあるししょうがないけどね。

「やあ! 久しぶりだねシン君!」

「あ、お久しぶりですグレンさん」

そんな中話し掛けて来た男性がいる。

アリスのお父さんで、グレン=コーナーさんだ。

「まさか、もう娘にリッテンハイムリゾートに連れていってもらえるようになるとは夢にも思ってなかったよ!」

「魔物狩りで相当稼いでましたからね」

「そうらしいね。私もこれから頑張って働いて娘に稼ぎで負けないようにしないとね!」

「そういえば、商会の件引き受けて下さってありがとうございました」

「何言ってるんだい! 新しい英雄の作った商会の取締役なんて大出世だよ! その話をトム代表から聞いた時は心と体が震えたね!」

グレンさんは決意に燃えた表情をしていた。

「グレン、そんなに気張らなくても良いよ」

「こ、これは導師様! おはようございます!」

「はい、おはようさん。あんまり肩に力が入ってると思わぬ失敗をするよ」

「はあ……そうですね」

「そんなに気張らなくても、この子が創る魔道具は誰にも真似できやしないよ。勝手に売れていくさ」

「それはそれで、商売人としてはどうかと……」

ばあちゃんはグレンさんと例の商会の件で何回か会ってるらしいから、多少は気安くなってるな。他の家族は中々近寄って来ないけど……。

「おはようございます、シン君」

「おはようシン君! 今日はありがとう!」

シシリー達クロード家の皆がやって来た。

今回はクロード家全員招待だから、結構な人数になってる。

「家族揃ってリッテンハイムリゾートに招待なんて、素晴らしい義弟ね」

「本当にそうねお姉様」

「フフ、二人共、シシリーから取っちゃダメよ?」

「はう! だ、駄目ですよ!」

シシリーが俺の腕を掴み、必死に抗議している。

「取らないわよ……」

「ひょっとして、休暇中ずっとこの光景を見せられるのかしら……」

お二人共彼氏さんはいないみたいだ。美人なのにな。

「ジークにーちゃんとかどうなんですか?」

魔法師団に所属してるっていう話だし、ジークにーちゃんとか彼氏にどうだろうと聞いてみた。

「ジークフリード様はねえ……」

「格好良いし、お強いし、スペックは素晴らしいんですけど……」

「女癖がね……」

「というか、団長がアレですからね……魔法師団の男はチャラいのが多いんですの」

何やってんだ、アールスハイド魔法師団! チャラ男の集団になってるじゃないか!

なんて話をセシリアさん、シルビアさんとしていたけど、ロイスさんは?

「マーリン様……どうすれば存在感を出す事が出来るのでしょうか?」

「それはワシらの永遠のテーマじゃて……」

離れた所で寂しい話をしながら溜め息を吐いていた。

……なんとも哀しい光景だな……。

皆が集まったので、家族毎に分かれて馬車に乗り、一路リッテンハイム領に向けて出発した。

シシリーは家族の馬車に行こうとしたが、アイリーンさんにウチの馬車に乗るように言われてこっちに来てる。

リッテンハイム領は王都から大体二日の旅程との事だ。

魔道具を身に付けた馬が快調に走り続ける。

それにしても、馬車にはサスペンションらしき物も付いてるし、道も整備されてるからそんなに揺れないんだけど……これは板バネなのかな? 若干揺れが長いんだよな。

どうにか四輪独立のサスペンションとスプリングを作れないかな?

「シン……アンタ、またろくでもない事考えてるんじゃ無いだろうね?」

「……俺の周りには心を読む人間が多すぎると思うんだ」

「アンタは顔に出るんだよ。それより、やっぱり何か企んでたね!?」

「企むって人聞きの悪い。馬車の乗り心地をもう少し良く出来ないかと思ってさ」

エンジンによる駆動じゃなくて馬による牽引だからデフギアとか考えなくて良いし、何とかなると思うんだよね。

今日は来てないけど、帰ったらビーン工房の親父さんに相談してみようかな?

あ、自分の商会を立ち上げるから、先にロイスさんとグレンさんに相談した方が良いのか。

そんな事を考えていると、やっぱり今回も出ました。

「おっと、おいでなすったな」

「中型ですね。あ、大型もいますよ」

「そんじゃあ、また例の……」

「クジ引きですか?」

「それが一番後腐れ無いだろ」

シシリーとそんな会話をしながら、停まった馬車から降りた。

「ほっほ、大型の魔物をクジ引きとはの……」

「……シシリーまであの子に毒されちまったかい……」

爺さんとばあちゃんの会話が聞こえたけど、皆の相手は災害級に量産型魔人だからなあ……本来相手にならないんだけど、今日は皆の家族がいるから……。

「あたし! あたしやりたい!」

「ここは僕にやらせて欲しいねえ」

「今回も私がやる」

「クジ! ウォルフォード君、クジ出して下さい!」

オリビアまで自分がやりたいと主張している。普通の街娘はどこに行った?

そして魔物だが……さっきより増えてきてるな……。

最初に確認した時より数が多い。それに、この反応は……。

「この規模の集団ですからね、魔物にとってはごちそうに見えるんでしょう」

「という事で今回はクジは無しだ。全員で迎撃な」

『了解!』

「私も出るぞ」

「殿下! お待ち下さい!」

「なんだ? この程度の魔物など、討伐の内にも入らんだろう?」

「何を仰いますか! 後ろから……後ろから災害級が迫っているではありませんか!」

正直、俺達の旅に護衛とかいらないんだけど、王族や貴族の移動に護衛を付けないとか意味が分からないと言われ、護衛の騎士や魔法使い達も同行している。

まあ、飾りだけどな。

その護衛の人達も気付いたようだ。

中型の集団に大型が混じり、更に災害級が現れた事に。

それにしても本当に魔物が増えたな。災害級なんて滅多に出るもんじゃなかったのに。

護衛達は緊張と絶望が入り交じった表情をしており、チームの家族達はその言葉に顔を青くし、ガタガタと震えている。

「そんな……災害級が現れるなんて……」

「楽しいリゾートの筈だったのになあ……」

セシリアさんとシルビアさんはまだ災害級と戦った事は無いみたいで、半ば諦めの表情をしている。

「……私も出よう」

「そんな、アナタ……」

こっちは確かトニーの両親だな。騎士だって言ってたから、自分も戦うと言い始めたみたいだ。

「父さん達はそこで見てて良いよ」

「な! 何を言う! 息子だけ死地にやる事など出来るか!」

「うーん、そんなに大した事ないけどねえ」

「な、なに?」

「まあ、そこで見ててよ」

そう言ってトニーはバイブレーションソードを構えた。

「みんな、災害級……あれは獅子かな? アイツは早い者勝ちな。行くぞ!」

『おおお!』

まずは中型の魔物の掃討だ! 各々無詠唱で一気に魔法を叩き込んだ。

中型の魔物の集団に魔法が着弾し、地面を揺るがす程の衝撃を与えた。

これで中型と、大型の魔物も一部間引けたな。

まだ魔法が着弾した土煙が上がってるけど、魔力探知で魔物の位置は分かる。

俺とトニーはジェットブーツを起動し、獅子に向かって飛び出した。

「あ! ズルイ!」

アリスの抗議が聞こえるけど、早い者勝ちだから!

「オッシャア! 貰った!」

「こっちが先に貰うよ!」

俺とトニーで同時にバイブレーションソードを振ろうとして……。

「「うおわ!」」

目標だった獅子の魔物に突如複数の魔法が着弾した。

慌てて回避した俺達が後ろを振り向くと、アリスとオリビアが魔法を放ったと思われる格好をしていた。

「危ねえな!」

「早い者勝ちですよね?」

「二人だけズルイよ! あたしもそれ欲しい!」

「剣が使えないとあんまり意味無いぞ?」

「むうー、でもあたしの魔法が先に当たったよね!」

「何を言ってるんですか? 私ですよ」

「あたしだよ!」

「私です!」

「どっちでも良いよ」

皆、家族の目があるからいつも以上に張り切っちゃって。

魔物とか吹き飛びすぎて、跡形も残ってないじゃないか。

「ま、とりあえずお披露目できたかな?」

「家族に見せる事なんてないからねえ」

トニーと二人で皆の所に戻り、それから皆で家族の所に戻った。

皆、口を空けて呆然としている。

「ナニ……コレ?」

「シシリーが……シシリーが熊を一撃で吹き飛ばしましたわ……」

「アリスが……獅子を倒した?」

「ウチの娘が……少し前までウエイトレスをしてたウチの娘が……」

「トニーの動きが見えなかった……」

「獅子の魔物に怯まず、あんなに果敢に攻めるなんて……」

中型、大型、災害級とあっという間に討伐してしまった事に驚愕している家族達。

トニーの母親だけは、獅子の魔物に突っ込んで行ったトニーを見て感激して泣いてる。

さすが元騎士の母親だな。感動するポイントがちょっとずれてる。

「ね? 大したことないでしょ?」

「お前達……こんなに強くなっていたのか……」

「まあ、魔人を相手にするにはコレくらい出来ないとねえ」

「コレくらいって……」

「どう! お父さん! 凄いでしょ!」

「凄すぎて、なんて言って良いのか分からないよ……」

「お姉様? どうしたんですか?」

「シシリー……アナタ治癒魔法が得意で攻撃魔法は苦手じゃなかった?」

「そうなんです。皆の中では一番苦手で……」

「あ、あれで……?」

「はい」

家族から色々と問い掛けられ、皆ちょっと得意気だ。何というか、授業参観みたいだな。

「……皆済まないねえ……ウチの孫が皆をこんな風にしちまって……」

「い、いえ! とんでもございません! むしろウチのドラ息子をこんなに鍛えて頂いて、感謝の言葉もございません!」

「本当にそう思ってるかい?」

「勿論ですよ導師様! この実力なら世界を救う集団だという世間の声も納得出来るというものです!」

グレンさんの言葉に他の家族の皆も頷いてる。

「自分の子が英雄への道を歩んでいる……何と素晴らしい事なんでしょう!」

トニーの母親の一言が皆の気持ちだそうだ。

家族へのお披露目も兼ねた魔物討伐が終わり、また出発しようとして、周りにいた護衛さん達が目に入った。

「アルティメット・マジシャンズ……なんて凄い集団なんだ……」

「ハッキリ言って俺ら本当に飾りだけど……皆さんの戦闘が見れただけでも付いてきた甲斐があったな……」

「実力が隔絶し過ぎてて、嫉妬の念も湧いてこないな……」

「俺……アルティメット・マジシャンズのファンになるわ」

「俺も!」

「私も! ていうかファンクラブ作ろう!」

『賛成だ!』

変な事が決定していた。