軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

冤罪を掛けられました

ダーム大聖堂での結婚式を見学した後は、ダーム王国王都を散策し、いくつかの教会も見て回った。

どの教会も歴史ある教会って感じで、皆満足したみたいだ。

「はあ……素晴らしかったわ」

昼食の為に入った食堂で食事を取り終えた俺達は、さっき巡って来た教会についての感想を述べていた。

「この国は教会が有名なんだよな。他の国は何が有名なんだ?」

アールスハイドすら知らなかったからな、他の大国はともかく、小国なんてまだ魔法学院で習っていないので、名前すら知らなかった。

「そうですわね。次に伺うカーナン王国は織物が有名ですわ」

「牧畜が盛んなのよ。王国の人口より羊の数の方が多いらしいわ」

「時々その羊が魔物化するから、羊飼いは強くないと出来ないって聞いた事あるよ!」

「マッチョな羊飼い……」

何やらリンのツボに入ったらしく、笑いを堪えきれず肩を震わせている。

「魔物化した羊の毛は魔力が籠ってるから防具として使われるッスよ」

「羊が沢山いるから羊料理も多いですよ」

「へえ、皆よく知ってるんだなあ」

「シンが知らなさ過ぎだと思うけどねえ」

「ホラ、ウォルフォード君は最近までボッチだったからぁ……」

「……何か皆の同情の視線がウザイんですけど……」

合宿中にばあちゃんから色々と話を聞いたらしい。小さい頃、独り遊びに熱中してたとか……その頃は何とも思って無かったけど、こうして同情されると寂しい子供時代だった気がしてしまう。

「別に寂しい思いなんてしてないからな」

「その代わり、こうして世間知らずが誕生したって事ね」

「今はこうして皆とお友達になれたんですからいいじゃないですか」

「そうだな、もう学院生活における目標の一つは達成しちゃったな」

「目標?」

「友達作り」

『……』

あれ? また同情の視線が……。

「どうした? まるで葬儀に参加しているみたいな顔をして」

皆からの憐れむような視線にいたたまれない気持ちになっていると、会談を終えたオーグが現れた。

「おう、お疲れ。会談はどうだった?」

「スイード王国の件が既に情報としてもたらされていたからな、私の提案に飛び付いて来たよ」

「そっか。なら他の二つの国も似たようなもんかな?」

「恐らくな。アールスハイドにいる大使達から通信機で情報を得たと言っていたから、間違いなく他の二か国にも情報は入っているだろう」

「じゃあ、そんなに苦労は無いな」

「ああ、所で皆はどうしたんだ?何かあったのか?」

「いや……俺の学院生活における目標を聞いたらこんな状態になった」

「目標? 常識を知るってヤツか? 常識を知るどころか打ち破ってばかりだが……」

「そっちじゃねえよ!」

「じゃあなんだ?」

「友達作り」

「……」

あれ? 俺と同じで友達のいなかった筈のオーグにまで同情の視線を向けられたぞ?

「お前と一緒にするな。対等の友人という意味では確かにいなかったが、トールにユリウス、他にも知り合いは沢山いるぞ」

「シン殿みたいに完全なボッチは……」

「流石に同情するで御座る」

トールにユリウスまで!

「い、言っとくけど魔法の練習とか魔道具造りに没頭してたから寂しくなんか無かったんだからな!」

「独りで……」

「シン君! 私はこの先ずっと一緒にいますから!」

シシリーが一生懸命そう主張するけど……寂しく無かったのは本当なんだけどなあ……。

「じいちゃんから魔法を教わって、ばあちゃんから魔道具造りを教わって、ミッシェルさんにボコボコにされて、合間に狩りに行ってたんだぞ? おまけに帰って来たらジークにーちゃんとクリスねーちゃんが喧嘩してるし。寂しがる余裕なんて無かったよ」

「何その夢のような環境!」

「確かに……そんな環境じゃ寂しがる暇なんてありませんわね」

「はわあ……シンお兄ちゃん凄いです!」

ようやく理解してくれたみたいだな。

これで俺が寂しがってたら、爺さんとばあちゃんが悪いみたいだからな。それだけは認められないんだよ。

「皆理解してくれた所でこれからの事を決めようか。オーグ、俺達もう観光名所とか回っちゃったんだけど、どうする? エリーと街を散策してくるか?」

「フム……エリーどうする?」

「是非! お願い致しますわ!」

「お、おう、じゃあオーグとエリーはそういう事で。護衛は?」

「今の私に必要だと思うか?」

おっと、自信ありげに言ってきたな。

「オッケー、じゃあ、お二人で楽しんできて」

「ウフフ……デート……初めて二人きりのデート……ウフフフ」

おおう、エリーがニヤニヤしてる。そういえば王子様と公爵令嬢だもんな。普段なら二人きりとか有り得ないか。

「他の皆は?」

「私達は女だけで街を回って来るわ。お土産も買いたいし」

「あの……私は……」

「オリビアはマークと回りたいんでしょ? 邪魔なんてしないわよ」

「ゴ、ゴメンね?」

「謝らないでよ……いたたまれなくなるから……」

別のドンヨリが発生してしまったな……

「トールとユリウスは?」

「殿下は護衛の必要がないって言うし、男同士で回るかい?」

「いいんですか? フレイド殿」

「フレイド殿ならナンパに向かわれると思っておったで御座る」

「団体旅行でナンパしてどうするのさ。夜には宿に戻らないといけないし」

つまりトニーは個人旅行ならナンパすると。

そして夜は帰って来ないと。

「メイちゃんは俺らと一緒に行こうか」

「いいんですか? その……お邪魔じゃないです?」

「子供が何気を使ってるんだよ」

「そうですよメイ姫様。一緒に行きましょう」

「ハイです!」

この後は自由行動にして、夕方に宿に戻るという事で話は纏まり、後から合流したオーグ達が昼食を取り終えると各々街へ繰り出して行った。

「じゃあ俺達も行こうか」

「はい」

「ハイです!」

街を再度散策する。さっきは教会ばっかり回ったから今回はお土産屋とか露天とか色々と見て回る。

その間メイちゃんは俺とシシリーの間で手を繋ぎ、実に楽しそうにしていた。

「フフ、楽しそうですねメイ姫様」

「ハイです! こんな風に手を繋いで街を歩いた事無かったです!」

王族だもんな。気軽に街歩きなんて出来ないよな。

「メイちゃんは学院の友達とかと王都を回ったり出来ないか」

「ハイです。他の皆も貴族の子ばっかりです。街を自由に散策するのが夢だったです。皆に自慢できるですよ!」

「そういえば、オーグと初めて王都を歩いた時も似たような反応してたなあ」

「手、繋いだですか?」

「気持ち悪い事言わないでくれる!?」

「プッ……アハハハ」

「アハハハ!気持ち悪いです!アハハハ!」

概ねこんな感じで、俺達は楽しく街を散策して回ったのだが……

「あれ? 何か人だかりが出来てますね?」

「本当だ。なんだろう?」

散策している途中で何やら人だかりが出来ていた。

こういう場面に出くわすのも散策の醍醐味だよなあ、と思って近寄ってみると……。

「テメエ! こっちが下手に出てりゃイイ気になりやがって!」

「はあ? どこが下手に出てんの?」

「その顔でナンパとか……有り得ないよね!」

「そうねぇ、いくらなんでもコレはねぇ……」

「論外」

「て、テメエら……」

ウチの女性陣が騒ぎの中心にいた。

何をやっているのかと思ったが、どうやらナンパをされて、それを断ったら男達が逆上したらしい。

「はわわ! お姉ちゃん達がピンチです!」

「お姉ちゃん達っていうか……」

「……あの男の人達がピンチですね……」

アールスハイドの王都でもそうだけど、基本街中で攻撃魔法は撃っちゃいけない。

けど、自衛の為なら……。

「さて、惨劇を見る前に俺達は別の所を回ろうか?」

「そうですね。お爺様達のお土産も見て回りませんか?」

「そうだね。メイちゃんもディスおじさんとかお母さんにお土産買っていくだろ?」

「え? あの……放っておいていいんです?」

「いいんです」

『ギョエエエ!!!』

あ……強行手段に出ようとしたな……絡んでた男達のものと思われる悲鳴が聞こえてきた。

「はわわわ……」

「マリア達も、もうちょっとお淑やかにすればいいのに……」

「はは……」

皆可愛いからナンパされる事も多いだろうけど、あの断り方はねえ……そりゃ逆上もするわ。

女の子ばっかりの集団だから声を掛けると余計なトラブルが起きそうだったので、そそくさとその場を離れた。

「お、あれはマークとオリビアか」

「仲良さそうですね」

「腕組んでるです!」

今度はマークとオリビアの二人を見掛けた。

街中にいる他のカップルと同じように腕を組んで街を回ってる。

正に王道のデートだな、幼馴染みで付き合いも長そうだから自然に振る舞ってる。実に参考になりそうな付き合い方だねえ。

「あ! お兄様とエリー姉様です!」

「あら、フフフ、エリーさん嬉しそうですね」

「そうだな」

オーグとエリーも見掛けたが、エリーが実に楽しそうだ。二人きりにしてやって正解だったな。

こっちも幼馴染み同士らしいし、自然な振る舞いなんだけど、中身が異常だからな……あの二人が他国の王太子と公爵令嬢だと知れたら大変な騒ぎになるんじゃないだろうか?

各々楽しんでるみたいなのであえて声は掛けず、俺達も街を色々と散策し爺さん達のお土産も買い、そろそろ宿に戻ろうかと思っていたら、また人だかりを発見した。

「まさか、またマリア達か?」

「私達がどうしたって?」

またマリア達が絡まれてるのかと思いきや、そのマリアから声を掛けられた。

「あれ? マリア?」

「じゃあ、あの人だかりって?」

マリア達でなければ誰だ?

そう思って近寄ってみると……。

「ちょっと! 私達が先に声を掛けたのよ!?」

「何言ってんのよ!? アタシ達よ!」

「フザけんな! アタイ達だよ!」

「ちょっと……あの……喧嘩は……」

「僕達、宿に帰りたいんだけどねえ……」

「もういい加減にするで御座るよ」

「「「アンタ達は黙ってて!」」」

「「「はい!」」」

トニー達が騒ぎの中心にいた。

そんで、街娘っぽいグループとお姉さんっぽいグループとハンターっぽいグループの代表が喧嘩してた。

……代わる代わる何でこうもトラブルに巻き込まれるんだ……。

どうやらトニー達も、いわゆる逆ナンをされたらしいのだがどのグループが先に声を掛けたかで揉めているらしい。

それにしても、各グループの狙いが分かりやすい……、

「……あれは放っておこう」

「そうね……女九人とか手に負えないわ」

「狙いは分かってるんだからそれぞれのグループに一人ずつ分かれればいいのに」

「そんな事出来る訳ないじゃない」

「何で?」

「女のプライドよ」

何そのプライド……。

「その内逃げて来るでしょ。先に宿に戻りましょ」

「そうだな」

すまない、トニー、トール、ユリウス。

俺には……お前達は救えなかったよ……。

「「「置いて行かないで!」」」

くっ……!すまない……すまない三人共……

俺には……女の戦いに割り込む勇気はない!

俺達に気付いたトニー達の叫びを、身を切る思いで振り切った。

「シンお兄ちゃん達といると面白い事ばっかりです!」

メイちゃんがこんな事言うようになっちゃった。

……ディスおじさんになんて弁明しよう?

そんな事を考えながら宿へ向かっていると……。

「おい、何だよアイツ……」

「可愛い子ばっかり……」

「ろ、六人だとお!」

今の俺達は、俺を除けば女の子が六人いるわけで……。

しかもそれぞれタイプの違う美少女ばっかりなわけで……。

まるで俺が彼女達を侍らしているように見えるわけで……。

「くふふ!」

「ちょっ! アリス!」

お独り様の男性陣から向けられる視線を面白がったアリスが、空いていた俺の左腕に抱きついてきた。

「クソ! クソお!」

「死ね! 爆発して死ね!」

「ああいう奴がいるから俺達に女が回って来ないんだ!」

いや……最後のは違うような……。

「アリスお姉ちゃんもシンお兄ちゃんと腕を組みたかったですか?」

「違いますよお。周りの反応が面白かったからつい」

「アリスさん? おふざけはその辺にして下さいね?」

「ひぅ! わ、わかりましたあ!」

シ、シシリーの笑顔がコワイ……。

「シン君?」

「な、何でもないよ?」

「そうですか。じゃあ早く宿に戻りましょう」

なんか……段々アイリーンさんのあの迫力が出てきたな……。

俺もセシルさんみたいになる日が来るのだろうか?

「シンお兄ちゃん、お母様に怒られてるお父様みたいです!」

……的確な事言うのは止めようか、メイちゃん……。

結局、色んなトラブルに巻き込まれながらダーム王国の散策は終了し、皆で宿に戻った。

「遅かったな。何してたんだ?」

「あら、皆さん御一緒だったのですか?」

「お帰りなさいッス。もうすぐ夕飯が運ばれてくるッスよ」

「あれ? フレイド君達は一緒じゃなかったんですか?」

先に帰っていたオーグ達から声を掛けられた。

宿の食事は併設されている食堂で食べるシステムになっている、もうすぐ夕飯なのでオーグ達はそこにいたのだ。

「ああ、俺達は帰りに合流しただけで、途中は別行動だったんだよ」

「トニー達は……そのうち帰って来るでしょ」

マリアがそう言った時、トニー達三人が宿に駆け込んできた。

「ちょっと! ヒドイじゃないか! 僕達を見捨てるなんて!」

「そうですよ! 皆さん非道いです!」

「大変な目に合ったで御座る……」

俺達を見付けたトニー達が捲し立てて来るが……。

「ならお前達は……女が九人で争っている中に飛び込んで行けるのか?」

「う! そ、それは……」

そうだろう。出来ないだろう。

「……俺にはムリだった……」

「……そうだねえ……怒って悪かったよ……」

「いや……俺も助けたかったんだが……すまなかった……」

「そんなシン殿、自分も言い過ぎました……確かに、あれは無理です……」

「拙者、心底恐ろしかったで御座る……」

俺達は、さっき遭遇した恐ろしい出来事の傷を舐め合うように互いを慰めあった。

「そんな所でたむろしていないでさっさと座れ。他の客に迷惑だろう」

あの場にいなかったオーグから制止の声が掛かった。

クソ、コイツはあの場面を見てないから……

「それより、シンの手にも負えない事とは一体何だ?」

「ああ、さっきトニー達が逆ナンされててな……」

そう言ってトニー達を見る。

「僕達は三人で、屋台を食べ歩いたり、家族や彼女へのお土産を選んだりしてたんだけどねえ」

「そろそろ帰ろうかと言うときに声を掛けられたんです」

「三組同時で御座った」

「で、それぞれ三人連れの女の子達でねえ……どのグループが先に声を掛けたかどうかで言い争いを始めたんだ」

「それが凄い迫力で……そのうち女性同士で殴り合いが始まって……」

「……女性とは、かくも恐ろしいもので御座るなあ……」

殴り合い!? あの後そんな事になってたのか!?

「よ、よく逃げて来られたな……」

「殴り合いが始まったその隙に……」

「シン殿に教わった閃光の魔法を使って……」

「身体強化を全力で使って脱出したで御座る」

だ、大脱出だな……。

「……大変な目に合ったな……」

「シン殿に魔法を教わっていて心底良かったと思いましたよ」

こんな事の為に教えたんじゃ無いんだけどね……。

「女の子は大好きなんだけど……ああいう姿は見たくなかったねえ……」

溜め息を吐きながらしみじみと呟くトニー。

「でもフレイド君なら、ああいう修羅場の一つや二つ、経験してると思ってた!」

「それは誤解だよコーナーさん」

「あ、ゴメン……勝手に思い込んでた……」

「そうならないように上手く立ち回ってるからねえ」

「あたしの謝罪を返して!」

その内刺されるぞ……本当に……。

「はあ……どうしてこうもトラブルに巻き込まれるんだ? お前達は」

「マリア達もナンパされてたよね」

「う! み、見てたの?」

「撃退したとこは声しか聞いてないけどね」

「そっちもか……シンのトラブル体質が伝染してるんじゃないのか?」

「……そうかも……」

「私、今までこんなトラブルに合った事ないですよぉ」

「あたしも!」

「私も。色々と刺激があって楽しい」

「え? 嘘だよね? 俺のせいじゃないよね?」

『……』

え? 何? マジで? っていうかマリアは初対面の時、おんなじようなトラブルに巻き込まれてたような気が……。

「さっきも言ったけど、僕もこういうトラブルが起こらないように気を付けてるからねえ……偶発的とはいえこんな事が起こるのは……」

「自分も初めての体験です」

「拙者、逆ナンパ自体初めてで御座る」

あ、あれ? 益々そんな空気になって来たぞ?

「フム、どうやらシンのせいでトラブルに巻き込まれ易くなっているみたいだな。皆もこれからはそのつもりで、気を付けるようにな」

『はい!』

……泣いていいかな?

「だ、大丈夫ですよシン君。私はそんな事思ってませんから」

「シシリー……」

シシリーの優しさが心に染みるね……。

「シンお兄ちゃんといると面白い事ばっかりですよ?」

そしてメイちゃんの無邪気な感想が心を抉るね……。