軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

汚職議員捕縛作戦

「いやあ、怖かった……」

「そんなに怖かったのかい?」

今俺は、ダームの汚職議員捕縛のための作戦会議に参加している。

さっきのエカテリーナさんの姿を思い出して思わず呟いてしまうと、隣にいたトニーが不思議そうな顔をしていた。

そっか、トニーってニコニコしてるエカテリーナさんしか見たことないのか。

「そりゃあもう、ニッコリ笑顔で「害虫駆除」とか言うんだもん。駆除される汚職議員たちにちょっと同情したわ」

「へえ、やっぱり、一国を治めるとなると優しいだけじゃダメなんだねえ」

「そうだな」

一般的には宗教のトップということで、優しく慈愛に満ちた人という印象が強いエカテリーナさんだけど、創神教の教皇はイース神聖国のトップでもある。

優しさと厳格さを持ってないと駄目なんだろうな。

それに、宗教って優しいだけじゃない。

罪を犯すと、大体の宗教では地獄に落ちる。

その地獄での責め苦ってのが、どの教義でもエゲツないものが多い。

まあ、悪いことをするとこんな目に遭うから、ちゃんと生きましょうっていう戒めなんだろうけどな。

「ところで、これから各街の汚職議員を捕まえに行くわけだけど、議員ってその街のトップなんでしょう? 素直に捕まってくれるかな?」

「絶対抵抗するだろうな。なんせ、これから捕まえるのは裏社会の人間ばっかりだし」

「だよねえ。もしこちらの言い分……ダームの主権はイースに譲渡されたって信じてくれなかったらどうするの?」

「それはもちろん、強硬手段に出てもらうわ」

「「!」」

俺とトニーで話していたところに、突然エカテリーナさんが割り込んできた。

いつの間に来てたんだ?

「こちらで、罪状の書かれた逮捕状、ダームからの委任状を用意しました。これを見せてなお抵抗するようなら……」

そこまで言ったエカテリーナさんは、ニッコリと笑った。

「か、かしこまりました。迅速に捕縛します」

「よろしくね」

エカテリーナさんはにこやかにそう言うと、この場を離れて行った。

「こ、こわ……」

「な? 言ったろ?」

「うん……女性の笑顔があんなに怖いなんて初めて知ったよ……」

「そう? アンタは今まで何回も経験してんじゃないの?」

「お、いつ来たんだよ、ゼニス夫人」

俺が揶揄うようにそう言うと、ゼニス夫人……マリアは顔を真っ赤にした。

「う、うるさいわね! そういうこと言うんじゃないわよ!」

「ええ? だってホントのことだろ? ゼニス夫人」

「そうだよ、どうしたの? ゼニス夫人」

「あ、あんたらねえ……」

カルタスさんと新婚ほやほやのマリアは、まだ自分の苗字が変わったことと『夫人』と呼ばれることになれていない。

なので、本当のことだとはいえ『ゼニス夫人』と呼ばれると盛大に照れてしまうのだ。

それが面白くてつい揶揄ってしまうんだけど、これ以上やるとマリアが爆発しそうなのでこの辺でやめとくか。

「今回、マリアも参加するのか。新婚なのにいいのか? もしかしたら血生臭い現場になるかもしれないぞ?」

「あっさり引いたわね……別に構わないわよ。結婚しようがどうしようが、私は変わらないもの。それより、エリーやシシリーを狙った輩を許しておくなんてできないわね」

自分の親友たちを害そうとした輩に対してマリアの怒りが凄い。

目の前にいたら縊り殺しそうだ。

「……言っとくけど、今回は捕縛だからな? 相手は魔人じゃなくて人間だからな? ちゃんと手加減しろよ?」

「分かってるわよ。まあ、もしかしたら手元が狂う可能性も……」

「なしでお願いします!」

「ちっ……分かったわよ」

……なんでマリアが輩みたいな顔して舌打ちしてんのよ?

怖えよ、なんで俺の周りの女性は皆怖えのよ?

「マリアさん、怒ってるッスねえ」

「だなあ。っていうか、お前も怒ってるんじゃないの? マーク」

「そりゃあ怒ってるッスよ。巻き込まれたとはいえマックスの命を狙われたんスから。これで怒らない親はいないでしょ」

普段はニコニコしてることの多いマークだが、今回限りはかなり厳しい顔をしている。

こっちにも釘を刺しておかないとな。

「それより、ウォルフォード君が落ち着ているのが不思議。もっと怒り狂ってるかと思った」

そう言いながらリンも会話に参加してきた。

「怒ってるよ。でも、オーグと相談して死ぬよりもっと苦しい目に遭わせてやろうって決めたから。簡単に死なれちゃ困る」

俺がそう言うと、トニーとマークはドン引きした顔をした。

リンは、なぜかグッと親指を立てた。

「どうやら緊張はしていないようだな」

そんな話をしていると、オーグも会議室に入ってきた。

今、ここダーム城の会議室に、オーグ、エカテリーナさん、アルティメット・マジシャンズの実働可能人員(新人を除く)、各国選りすぐりの精鋭たちが集結している。

これから、ダームの害虫……汚職議員の一斉捕縛が行われる。

「まず、各街の責任者をアルティメット・マジシャンズの皆さんにしてもらいます。各街に一人。異論は?」

エカテリーナさんが会議室を見回すが、誰からも異論は出ない。

「結構。それでは、責任者に各街の議員の罪状が記載された逮捕状を渡します。それと、ダームの全権がイースに委任するという委任状も。これを提示して、素直に捕縛されるならそれでよし。もし抵抗するようなら、死なない程度に痛めつけて構いません」

「逮捕にはこの手錠を使ってくれ。アールスハイドで使っているものだが、使い勝手がいいのでな」

オーグはそう言うと、自分の異空間収納から大量の手錠を取り出した。

これは、この世界での捕縛は縄で縛るのが普通だったので効率が悪いと思い作ったものだ。

当然、前世の記憶の流用だ。

これを作ったとき、警備隊員さんたちから凄く感謝されたな。

各国の精鋭さんたちも、アールスハイド製の手錠を見て感嘆の声を漏らしている。

中にはオーグに、うちでもコレを使いたいのであとでサンプルを貰ってもいいかと交渉している人もいる。

そればまあさておき、今回の作戦は各街を一気に制圧することになっている。

これは俺のせいなんだけど、アールスハイドで固定通信機が一般家庭にも普及した。

そしてそれは外国にも波及。

今や、どの家庭にも一台は固定通信機がある。

それは、領主館もそうだ。

ダームの政治形態は前世とはちょっと違っていて、各街の代表を選挙で選出する。

そして、その街で選出された議員がそのまま領主になる。

知事とか、地方議員という制度はまだできていなかった。

この辺が雑だったんだよな。

その結果、選出された議員が各街において絶大な権力を持つことになってしまったんだから。

そういう街を一個ずつ潰していくと、固定通信機であっという間に情報が回ってしまうので、逃げおおせる輩がでることが予想できる。

それを防ぐために、各街一斉検挙ということになったのだ。

「それでは、各担当の街を確認したら、強襲班同士で集合。合図と共に責任者はゲートを開き、一気に制圧します。よろしいですね?」

『はっ!』

エカテリーナさんの、静かならがも有無を言わせない言葉に、全員が揃った返事をした。

「それでは……作戦開始! ゲートを開きなさい!」

号令と共に、俺たちは各街にゲートを開く。

アルティメット・マジシャンズの活動で、各街に行ったことがあってよかった。

お陰で、今回こんなにスムーズに作戦を実行できるもの。

こうして開いたゲートに、精鋭たちが雪崩れ込む。

最後に俺もゲートを潜った。ゲート閉じないといけないからね。

ゲートを閉じた俺は、そのまま領主館の門に向かった。

そこでは、突然大量に表れた兵士たちを見て門番が震えていた。

「ダーム首相より全権を委任された、我々はダーム暫定政府の者である! 本日をもって議員制度は廃止! よって特権も全て剥奪されることとなった!」

俺はそう言うと、強引に門を通ろうとした。

すると、震えていた門番が、慌てて俺の前に出てきた。

「なんだ!?」

「なんだ? って、急にそんなこと言われても信じれるわけないだろ!」

「これがその委任状だ! 時間がない、詳しく見たければ終わった後に見ろ!」

「はあ!?」

「行くぞ!!」

「ちょ! ちょっと待て!」

これは犯罪者の捕縛なので、おれは敢えて上から目線で偉そうに捲し立てた。

案の定、門番はその勢いに押されて精鋭たちの侵入をいとも容易く許した。

慌ててあとを追いかけてくるが、もう後の祭りである。

俺は、後ろからなにか叫んでいる門番を無視して、領主館の扉を蹴破った。

「なっ!? なんだあ!?」

領主館の中は、およそ役人とは思えない風貌の人間で溢れていた。

本当に、議員という立場を私物化していたんだな、これは国が荒れるのも納得だわ。

「我々はダーム暫定政府の者である! 本日をもってダームの全権は我々に委任された! よって議員制度は廃止、特権も全て廃止となる! なお!!」

俺は、突然乱入されて戸惑っているゴロツキたちに反論の余地を与えないために、一気に言い放った。

「ここの議員には数々の罪により逮捕状が出ている! 大人しく投降しろ!!」

俺が声高にそう言うと、最初はポカンとしていたゴロツキたちだったが、次第に怒りを滲ませ始めた。

「突然現れてふざけたこと言ってんじゃねえ!! お前ら! やっちまえ!!」

『おう!!』

ああ、上手く煽れたみたいで良かった。

ここに集まっているゴロツキたちの逮捕状までは用意されていない。

なので、強引に逮捕することができない。

そこで俺は、彼らを煽って公務執行妨害で逮捕することにしたのだ。

一般市民にとっては途轍もなく威圧感のある彼らも、戦闘のプロである精鋭たちにとって敵にもならない。

俺たちに歯向かったゴロツキたちは、あっという間に捕縛されていく。

俺は、この蹂躙劇には参加せず、真っすぐ領主の執務室を目指した。

途中、執事やメイドとすれ違ったが、彼らは俺の歩みを全く妨害しなかった。

むしろ、執務室まで案内してくれた。

さっさと逮捕してくれってことなんだろう。手間がなくてありがたい。

そんなわけで、スムーズに執務室に辿り着いた俺は、ノックもせずに執務室の扉を蹴破った。

「なんだテメエ!? さっきから騒がしいんだよ!!」

「私はダーム暫定政府の者である!! 貴様には逮捕状が出ている! 大人しくしろ! 抵抗するようなら容赦しない!!」

「はあっ!? なに訳分かんねえこと言ってやがんだ!! ふざけんじゃねえぞ!!」

執務室にいた議員は、およそ政治家とは思えない口調で反論したあと、剣を抜いて切りかかってきた。

しかし、裏社会の人間とはいえ、所詮は素人である。

余裕をもって剣を避けると、手首を手刀で打って剣を叩き落とす。

痛みにうめいているところを、すかさず後ろ手に手錠をかけて捕縛完了だ。

「放せこの野郎!! ふざけんな!!」

捕縛されてもうるさいままだったので、猿轡を噛ませた。

眠らせる魔法とか使えないしな。

こうして、俺の担当している議員は、あっという間に捕縛された。

ちなみに、コイツはエリー襲撃の黒幕じゃない。

そっちはの担当は……。

オーグの奴、やり過ぎてなきゃいいんだけどな。