軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

王太子サマは悩んでいます

「アルマさんが不審な人物と接触した?」

「ああ」

オーグとエリーの中等学院時代の話を聞いた翌日、話があるということでパートナーをマークからオーグに変更してもらった。

その依頼先に向かう道中で、オーグから昨日の諜報員からの報告を聞かされたのだ。

「それで、どう不審だったんだ?」

「ビエッティが帰ってくるまで、その男はずっと部屋の前で待っていたらしい」

「隠れもせずにか?」

「そのようだ」

そんな堂々とアルマさんに接触するなんて……。

「ビエッティが帰ってきたらすぐに部屋に通されたらしい。その後、部屋から出てきたのは随分経ってからだ」

それって……。

「彼氏じゃねえの?」

「そうかもしれない。だが……」

「いつ知り合ったのか、ってことか?」

「そういうことだ」

オーグから、アルマさんは事務所と家の往復、それと生活必需品の買い物のみの行動だと聞いた。

そんなアルマさんの元を訪れる人物となると……。

「元々の知り合い。ダームの人間ってことか」

「そういうことになる」

そりゃ確かにオーグからしてみたら不審人物だろうけど……。

「けどさあ、もしなんらかの密命を帯びていたとして、隠れもせずに堂々としてるもんか? やっぱり遠距離になったアルマさんに会いに来た彼氏なんじゃねえの?」

マリアの誘いも断腸の思いで断ったみたいだし、彼氏が遠いところから会いに来てたっていう方が自然なんじゃないのかな。

「恋人に見せかけるためにあえて、という可能性もある」

はあ、もうオーグは最初からダーム出身のアルマさんを疑いの目で見てるから、なにをしても不審な行動にしか見えないんだろうな。

アルマさんと会ったという人物が誰なのかが分からなくてイライラしているのが分かる。

「ああ! くそっ! 一体部屋の中でなにをしてどんな会話をしていたんだ!」

「え、そりゃあ……ナニをして、愛の言葉を囁いてたんじゃないの?」

俺がそう言うと、オーグはジト目を向けてきた。

「お前……最近婦人方と一緒にいることが多いから、思考が恋愛方面に偏っているんじゃないか?」

「そんなことねえよ! っていうか、普通に考えたらそうだろ? アルマさんに興味のありそうな話をマリアがしてくれるっていうのにそれを断ってまで会ってた男性。特に姿を隠すでもなく、部屋に何時間も一緒にいた。普通、遠くに引っ越した恋人に会いに来たって考えるのが自然なんじゃねえの?」

「それは確かにそうなんだが……」

オーグはそう言うと、ガシガシと頭を掻いた。

「どうにか部屋の中の会話が聞ければ全て解決するのに!」

憶測でしか話せないのがよほど癪に障るのか、珍しくイライラしている。

部屋の中の会話か……。

「なあシン。前世ではそのような道具はなかったのか?」

「あるけど……」

「あるのか!」

部屋の中の会話を聞く、所謂盗聴器だ。

無線通信機が出来ているのだから、それを応用すれば簡単に作れる。

けど……。

「俺は、それを使うことには反対だな」

「……なぜだ?」

盗聴器を使うことに反対の意見を出すと、オーグが目を細めた。

「オーグの言う道具……盗聴器って言うんだけど、確かにそれを使えばオーグの懸念はすぐに払拭されると思うよ」

「なら!」

「けど、それを個人宅に設置するのは賛成できない。それって、アルマさんのプライバシーを全部覗き見するってことだぞ」

「それは……」

俺がそう言うと、オーグはさすがに気まずそうな顔になる。

「アルマさんが本当にダームのスパイだって確証があるならいいよ。けど、もし違ったら? お前は、無実の事務員に嫌疑をかけてプライバシーを覗き見した奴ってことになるんだぜ?」

「……」

「もし昨日来た人が本当にアルマさんの恋人だったら? それこそ、恋人同士の睦みごとを盗み聞きすることになる。その上で、今まで通り普通に接せられるか?」

「……そう、だな。悪かった。今のは聞かなかったことにしてくれ」

「了解」

もしかしたら、アルマさんが本当にダームのスパイって可能性もある。

けど、今のところアルマさんにそんな素振りは見られないし、仕事ぶりだって昨日のアンリさんの報告にもあるように非常に優秀だ。

オーグはその立場上、ダームの不穏な噂をよく耳にしているから、ダームに疑心暗鬼になっているんだろうな。

とりあえず、アルマさんの家に盗聴器を仕掛けるという考えを改めることができたのは良かった。

あ、けど。

「犯罪捜査には有効だから、一応作るだけ作っておこうか?」

明確な嫌疑がかかっていて証拠が掴めない場合などに、盗聴器をつかった捜査は非常に有効だ。

あとは、録音できる装置と一緒に開発できれば、犯罪捜査に十分役立てられると思う。

ということをオーグに説明すると「頼めるか?」と盗聴器と録音機の開発を依頼された。

「それにしても、ここ数日で警備局の装備が急に充実したな。魔法の痕跡を辿れる道具に、秘密の会話を盗み聞きして残しておける道具とは……」

「盗聴器は無線通信機があるからすぐにできるけど、録音機はちょっと時間くれ。一から作んないといけないから」

「分かった。さて、そろそろ依頼のあった村に着くな。まずは仕事を終わらせよう」

「了解」

オーグとの会話を切り上げ、俺たちは目的地である村に辿り着き依頼をこなした。

そして、この会話から数日後、まずは盗聴器が完成し、続いて録音機も完成した。

テープとかCDとかHDとかがないのでどうしようかと思ったが、魔石そのものに『録音』という付与をするとすぐに機能した。

魔力紋の測定装置といい録音機といい、魔石ってそれそのものが優秀な魔道具なんじゃないだろうか?

これは、クワンロンとの魔石貿易が始まるのが楽しみになってきたな。