軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

空の落とし物

トールの言葉にショックを受けていたオーグだったが、すぐに立ち直って俺たちの方を向いた。

「よし。それでは行くぞ」

『はい!』

オーグの言葉に皆が返事をして砦から飛び降りようとしたんだけど、そこで待ったが掛かった。

「ちょ、ちょっと待ってくれ! ここから飛び降りるつもりか!?」

「そうだが?」

「無茶だ! こんなところから飛び降りて無事で済むはずがない!」

え? あー、そうか。

リーファンさんたち、ジェットブーツ履いてないもんな。

じゃあしょうがない。

「俺が浮遊魔法をかけますので大丈夫ですよ」

「ま、また浮遊魔法か……」

別に今回は高速で移動する訳じゃないから大丈夫だと思うんだけどな。

「ゆっくり降りるだけですから、大丈夫ですよ」

「そ、そうか……」

俺がそう言うとリーファンさんは諦めたようにガックリと肩を落とした。

そんなに嫌か、浮遊魔法。

ともかく、アルティメット・マジシャンズの皆はジェットブーツがあるからいいとして、リーファンさんを始めとした兵士さんたちには浮遊魔法をかけないと。

ただ、急に浮遊魔法をかけると驚かれちゃうから説明しておかないと。

リーファンさんにその説明してもらおうと思っていたら、肩を落としている彼に砦の兵士さんが話しかけていた。

二言三言、言葉を交わしたかと思うと兵士さんたちがギョッとした顔をした。

「シン殿。彼らには話をした。やってくれ」

「あ、そうなんですか。じゃあ……」

リーファンさんの了解が得られたのでリーファンさんと兵士さんたちに浮遊魔法をかける。

『------!?』

『-、----!?』

兵士さんたちが驚いた顔で何か言っているけど、なんて言ってるかは分からない。

まあ、大体予想はつくけどね。

何だこれは? とか、浮いてる? とか言ってるんだろう。

ともかく、浮遊魔法はただ物体を浮かすだけの魔法なので風の魔法が使えないと移動できない。

なので、このまま壁の向こうへと移動させることをリーファンさんに説明してもらった。

リーファンさんの説明を聞いている兵士さんたちはぎゃあぎゃあ言っている。

「リーファンさん?」

「あ、ああ。とりあえず説明はしてあるからやってくれ」

「はあ。それじゃあ」

俺は砦の兵士さんの一人の腕を掴んで、塀の向こうへポイっと投げた。

『ぎゃああああああ……あ?』

放り投げられた兵士さんは、一旦凄い悲鳴をあげたけどその後すぐに不思議そうな声を出した。

自分が宙に留まっていることに気が付いたんだろう。

他の兵士さんたちはその光景をみて唖然としてる。

まあ、唖然として騒いでないならこの方が面倒がなくていいや。

俺は次々と兵士さんたちの腕を取るとポイポイっと塀の向こうへと投げて行った。

『おわあああ!』

『ひいいい!』

そんな悲鳴をあげながら塀の向こうへと投げられていく兵士さんたちを見て、マリアがポツリと呟いた。

「えげつな……」

「そう? 変に気構えるより、有無を言わさず投げた方がいいでしょ」

「そう……なのかしら?」

「そうそう」

今一釈然としない感じのマリアは放っておいて、俺はオーグに声をかけた。

「オーグ、準備できたぞ」

「ああ。それでは、今度こそ行くぞ!」

『はい!』

オーグの号令に、アルティメット・マジシャンズの皆はジェットブーツを起動し塀の上から次々と飛び降りていく。

俺は兵士さんたちを下まで下ろさないといけないから、皆より遅れる形になるな。

「じゃあリーファンさん、下ろします」

「ああ。『------』」

俺の言葉を他の兵士さんたちにも伝えたのを確認したところで皆を地面に向かって降下させる。

説明はしたけど、下に向かって落ちていくという現象に兵士さんたちの顔は強張っている。

……しまったな。

もしかしたら、竜との戦闘の前に余計な体力を使わせてしまったかもしれない。

そう思いながらも降下していき、皆さんを地面へと下ろした。

浮遊魔法を解除すると、皆あからさまにホッとした顔をしていた。

そして腰に下げている剣を抜くと、何かを叫びながら竜に向かって突撃していった。

「ん? なんて言ったんですか彼ら?」

なんか、兵士さんたちの表情が嬉しそうだったのが気になったんでリーファンさんに訊ねてみた。

すると、こんな言葉が返ってきた。

「ああ……『地面って素晴らしい』とか『今ならどんな動きでもできる』とか……そんなことだな」

「ん?」

どういうこと?

「まあ、俺も気持ちは分かるな」

「そうなんですか?」

「ああ。こう……地面に足が着いていない感覚は……不安でしょうがないのだ。だから地面に降り立った時は大地の有難さを感じることができる」

「へ、へえ……」

「それに、空中では自由が全く利かないからな。地面に降りて自由に動けるようになると、自由自在に動けるような気がするんだ」

そうなのか……。

アルティメット・マジシャンズの皆は風の魔法が使えるからすぐに自由に動いていたけど、それが使えないとそんな状態になるんだな……。

「そんなことより、シン殿も行かなくていいのか? なんか……さっきから派手な音が聞こえてくるんだが……」

あ。

先行してった奴らか!

あーあー、あっちこっちから魔法が炸裂してる音が聞こえてくるよ。

「まあ、別に討伐数を競ってる訳でもないですし、出遅れたんなら皆のサポートにでも回りますよ」

戦闘大好きって訳でもないしな。

「そうか。俺は行くぞ、でなければここまで来た意味もないしな」

リーファンさんはそう言うと、剣を携えて走って行った。

さて、それじゃあ俺は上空からサポートでもしましょうかね。

今回はそうすると決めて、もう一度浮遊魔法で上空へと浮かび上がった。

さて、それじゃあまずはオーグたちの様子でも見るか。

そう思って視線を移すと……。

「おりゃああ!!」

「的が大きくて当てやすい」

「コーナー! ヒューズ! 竜の革は素材になるのだからもう少し綺麗に倒せ!」

「「はーい」」

あっちではアリスとリンが、竜を魔法で滅多打ちにしてオーグに怒られてる。

「よっと」

「わぁ。トニー君、前より剣の腕上がったんじゃない?」

「はは、そうかな? ユーリさんも、その魔道具、新作かい?」

「そうなのぉ。ビーン工房の人が土台を作ってくれたのよぉ。素材を採取したいときに重宝してるわぁ」

「確かに……綺麗に斬れてるね」

「うふふ」

こっちではトニーとユーリがなんか会話しながら竜を狩ってる。

「ぬううん!」

「ユリウス? そのガントレットは新作ですか?」

「そうで御座るよトール。今までのガントレットだと相手が爆散してしまうで御座るからな。シン殿に作って頂いていたので御座る」

「……なんか飛び出してるんですか?」

「インパクトの瞬間に杭が飛び出すで御座る」

「……魔法使いの武器として、それはどうなんですか?」

「拙者にはこれが向いてるで御座るよ。トール、後ろ来てるで御座る」

「分かってますよ」

向こうでは、最近俺があげた新しい武器であるパイルバンカーを使ってユリウスが竜を狩り、トールがそれを呆れた目で見ながら淡々と竜を狩ってる。

「やあっ!」

「はぁ……普通の竜とか、張り合いがなくてつまんないわね」

「もうマリア。相手は人間を襲うとはいえ生き物なんだよ。そんなこと言っちゃ駄目でしょ」

「シシリーあんた、言動がお母さんみたいになってきたわね……」

「? 私はシルバーのお母さんだよ?」

「そうだったわ……」

シシリーとマリアも、雑談しながら竜を狩ってる。

……。

うん。

コイツら大丈夫そうだ。

なら俺はリーファンさんたちのフォローに回ろうか。

そう思ってリーファンさんと砦の兵士さんたちが向かった方へと飛んで行った。

するとそこでは、兵士さんたちが各々武器を振り回しながら数匹の竜と戦っていた。

今回村を襲ったのは、魔物化していない肉食の竜ばかりだ。

人間の肉を求めて村を襲ったのだから、それは当然だろう。

そして、魔物化していない肉食竜はそんなに大きくはない。

ただ、人間を食い殺せるだけの牙を持っているので兵士さんたちも迂闊に飛び込めないらしい。

そこで俺は、兵士さんたちのフォローに回ることにする。

兵士さんたちと睨み合っている竜の足を狙って細いレーザーのような魔法を発射。

足を撃ち抜かれ、悶絶する竜。

突然魔法が放たれ、驚いてこちらを向く兵士さんたちに、竜を指差し早く倒せと指示を出す。

すると兵士さんたちは慌てて竜に向かっていき、倒れて悶絶している竜に止めを刺す。

竜を倒し、こちらに向かって剣を掲げてくる兵士さんたちに軽く手をあげて応え、次の竜をさがす。

近くにいた竜を見つけた俺がその方向を指で指し示すと、兵士さんたちはすぐに理解したのかそちらへ向かって行く。

新しい竜と向き合った彼らは、先ほどの戦闘の反省を生かし先に矢を放った。

草食竜に比べて小さいとはいえ、竜の身体の大きさは人間以上だ。

弓矢では牽制程度にしかならないから、そのあと剣で斬りかかるんだろうなと思っていると、竜に当たった矢が小さな爆発を起こした。

そうか!

あれ、当たったら爆発する呪符が先端についてたのか。

あれなら牽制だけでなく、十分なダメージを与えることもできる。

呪符、凄いな。

あの技術があればなんか色々できそうだ。

改めて見せられた呪符の可能性を考えていると、リーファンさんが竜に止めを刺すところだった。

あれは……青龍刀っていうのかな?

肉厚で反り返った大きな剣で竜の首を一撃で刎ね飛ばした。

この分だと、リーファンさんたちの方もフォローはいらないかな?

そう思っていると、急速に俺に向かってくる魔力の反応があった。

「っと!」

「シン殿!!」

リーファンさんが焦った声を出しているけど、こちらは索敵魔法で位置が分かる。

後ろからの不意討ちを避け、その姿を確認した。

そこにいたのは……。

「翼竜?」

の群れだった。

「こんなのもいたのか」

ざっと見るだけで数十匹はいるな。

「シン殿! すぐに降りてくるんだ! 空にいると狙われるぞ!!」

リーファンさんがそう叫んでいるけど、こいつらは魔物化している訳じゃない。

なので、まあ、大丈夫じゃないかな?

俺はそう判断し、翼竜の群れに向かって飛んで行った。

「なっ! シン殿ぉっ!!」

リーファンさんの悲痛な叫びが聞こえるけど、翼竜たちはそんなに身体の大きい竜じゃない。

むしろ小さくないと空なんて飛べないしな。

これが、ファンタジー小説なんかで出てくる龍の大きさで、この群れの数だったら大変どころの騒ぎじゃないけどね。

世界が終わるんじゃないかな?

そんなことを考えながら翼竜の群れに突っ込んで行くと、翼竜たちは敵意を剥き出しにして俺に群がってきた。

だが、竜にしては小さめとはいえ、空を飛ぶ生物としてはかなりの大きさがある。

小回りが利かないのか、急に方向転換をした俺に付いてこれない。

それでも翼竜たちは、俺を狙うのを止めない。

俺は、翼竜たちをギリギリ振り切らない程度の速度で飛んでいく。

すると翼竜たちは、俺の後ろに付いて飛んでくるようになった。

よしよし、全員付いて来てるな。

時折後ろを振り返りつつ、俺はかつて狩りでよく使っていた魔法を翼竜の一匹一匹にかけていく。

翼竜たちは魔法をかけられていることなど全く気にする素振りもなく俺の後ろを付いてくる。

そして、全員に魔法をかけ終わった俺は後ろを振り返った。

「全員、落ちろ!!」

俺はそう叫んで小さな炎の弾丸を放った。

翼竜たちにかけた魔法は、かつてつかった『マーキング』の魔法。

そのマーキングされた的に向かって、小さな炎の弾丸は放物線を描いて飛んで行く。

その光景はまるで、ロックオンした戦闘機に向かって行くミサイルのようだった。

寸分違わず翼竜たちの額に炎の弾丸が吸い込まれていくと、翼竜たちは一匹残らず墜落した。

ふ。気分はまるでトップガ……。

「うわ! なんか降ってきたあ!」

え? アリスの声?

「こらあっ、シン! お前、なにやってるんだ!!」

あ、やべ。

いつの間にか、オーグたちの真上に移動していたらしい。

「わっ! っと!」

「やあぁん!」

「ちょっとシン! あんた、なにやってんのよ!?」

地上では、落ちてくる翼竜たちを必死に避ける皆がいて……。

こ、これは怒られる……かな?