軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

前線の村にて

クワンロンの首都イーロンを出発した俺たちは、竜に襲われた村を目指して飛んでいた。

「地図だとこの辺りだが……ん?」

シャオリンさんから預かった地図を見ながら辺りをキョロキョロ見渡していたオーグが、ある一点を見つめた。

俺たちも釣られてそちらを見ると、丘の向こうから煙が立ち昇っているのが見えた。

「リーファン殿! あれか!?」

オーグがリーファンさんにそう尋ねるが、返ってきたのは首肯だけ。

返事はなかった。

「よし、全員全速力で行くぞ!」

『はい!!』

オーグがそう言うと、全員が返事した。

リーファンさんだけは、真っ青な顔をして目を見開いていたけど。

「リーファンさん、行きますよ!」

「こ、これ以上の速度はぁああああっ!!」

あ、さっきまで言葉を発しなかったのに急に叫んだ。

生身で空を飛ぶのがよっぽど怖いみたいだ。

ただまあ、気の毒だけど一刻も早く村に着かないといけないので、リーファンさんの訴えは無視して速度を上げた。

リーファンさんの悲鳴を聞きながら村に着くと、そこは悲惨な状況だった。

村にあった建物はほとんどが壊され、路上には人体の一部と思われるものがあちこちに散乱していた。

「うぷっ……」

「……これは非道い」

その光景に、アリスは吐き気を催したらしく口を押さえていた。

リンも眉を顰めて村の惨状を見ている。

正直、この光景には俺も言葉がなかった。

過去に、シュトロームの手によって壊滅した帝国の街を見たことがあったけど、こんなに死体が散乱したりしていなかった。

恐らくシュトローム配下の魔人たちが徹底して死体を処理していたんだろう。

まるでゴーストタウンのようだった。

ところが、この村を襲ったのは野生の竜。

死体を処理するなんてことはしない。

結果、食い散らかされた人体の一部があちこちに散乱する結果になった。

……これが野生の竜に襲われた村の末路……。

こうなる可能性が十分に予見できるのに、まるでそれを増長させるような法案を、自分の欲のために押し通したハオに対して怒りが込み上げてくる。

とはいえ、ハオに怒りを向けることよりまずはこの村のことだ。

村のあちこちにはまだ竜たちが沢山いる。

索敵魔法で魔力を探ってみると、魔力のほとんどがある一点に集まっていた。

そこは、砦のようで壁に取り囲まれている建物だった。

竜たちはその壁を壊そうと体当たりを繰り返し、それを壁の上にいる兵士たちが必死に追い払おうとしていた。

良かった、まだ生き残ってる人がいた!

「シン! 壁の上に降りるぞ!」

「了解!」

俺はオーグの指示に従い、浮遊魔法を調整し壁の上に降り立った。

『-----------!』

空から突然現れた俺たちに対して、兵士たちは殺気立って俺たちに武器を向けてきた。

「リーファンさん!」

「はぁ、はぁ、うぷっ……ちょ、ちょっと待て……」

壁の上に降り立つなり四つん這いになったリーファンさんに声をかけるが、リーファンさんはアリスとは別の意味で吐きそうになっていた。

『------。-----』

リーファンさんは息を整えながら何か言うと、兵士さんたちは訝し気な表情をしながらも武器を下げてくれた。

「リーファンさん、大丈夫ですか?」

まだ荒い息のリーファンさんに、シシリーが近寄って治癒魔法をかける。

すると徐々に息が整っていき、ようやく立ち上がれるようになった。

「ありがとう天女様。おかげで楽になりました」

「あ、あの、その天女様ってやめませんか?」

「?」

シシリーのことを『天女様』と言いながら礼を言うリーファンさんに、その呼び方は止めて欲しいというシシリー。

だがリーファンさんは、心底意味が分からないという風に首を傾げた。

これはもう、リーファンさんの中では天女様で固定されてるな。

主であるスイランさんがそう言っていたし。

「ところでリーファン殿、今なんと言ったのだ?」

「え、ああ。我々は援軍だから怪しい者ではないと、そう伝えた」

「そうか、では……」

オーグがそう言った途端、壁が震えるほどの衝撃がきた。

竜が突進してきたのだ。

「ちっ、話の邪魔だな」

オーグはそう言うと、壁の上から竜たちが集まっている下を見つめた。

「少し、大人しくしていろ」

何気なくそう言うと竜たちの目の前に特大の雷を落とした。

『うわあああああっ!!』

今のは通訳されなくても分かった。

悲鳴だ。

「って、おいっ!! だからいきなり雷落としてんじゃねえよ!!」

目がチカチカすんだろうが!

「ん? ああ、そうか。この国の兵たちがいたか」

「俺らもいるよ!」

「お前たちは今更だろう? この国の兵たちへの配慮が足りなかったのは反省だな」

そりゃそうだけど。

突然目の前に雷を落とされると、視界に変な光が映るんだよ!

そんなやり取りをオーグとしていると、トールが溜め息混じりに言ってきた。

「はあ……殿下、最近益々シン殿に似てきましたね……」

「な……なん……だと……」

オーグの顔は、今まで見たことがないほど驚愕に包まれていた。

……オーグが俺に似てるってのもちょっと嫌だけど、ここまで絶望されるとこっちまで凹んでくるわ。

「あの……殿下、じゃれ合ってる場合じゃないと思うんですけど」

「おっと、そうだったな。すまないメッシーナ」

「いえ」

「さて、竜たちは今の攻撃で大分こちらを警戒して大人しくなったな。今のうちに情報収集といこう。リーファン殿、通訳をしてくれるか?」

「ああ」

さっきまでの絶望の表情はどこへやら。

すぐに真面目な表情になって兵士さんたちと話をし始めた。

「ここはどういう施設なんだ?」

『ここは竜の襲撃に備えた避難所だ。この村は竜の生息地に近いからな。こういった設備がある』

「ということは、後ろの建物には生き残りが?」

『ああ。だが、今回の竜の襲撃は今までとは比べ物にならない規模だった……村人の大半が竜にやられたよ』

「そうか。ちなみに、どの種類がどれくらい襲撃してきたのかは把握しているのか?」

『数は……沢山としか分からない。種類は、細かくは分からないけど、ほぼ肉食竜だよ』

「ほぼ?」

『……魔物化した草食竜も交じっていたから……』

「なるほど」

『魔物化した竜さえいなけりゃ、もうちょっと戦えたのに……』

そういう兵士さんの顔は非常に悔しそうだ。

そんな兵士さんから話を聞いたオーグは、少し考えたあとこちらを向いた。

「皆、今聞いた通りだ。魔物化した竜は私たちで対処しよう」

「え!?」

オーグの言葉に、リーファンさんが驚きの声を上げた。

「リーファン殿と兵たちは、他の竜をお願いしたい。頼めるか?」

「わ、我らは大丈夫だが……殿下たちは大丈夫なのか?」

リーファンさんにそう言われたオーグは、フッと笑ったあと言った。

「魔人王戦役の際、魔物化した竜の討伐はシンたちに譲ったからな。私も試してみたいのだよ」

そう言うオーグの顔には不敵な笑みが浮かんでいた。

随分とまあ、好戦的になったもんで……。

そう思っていたら、トールから追撃があった。

「やっぱり……シン殿に似てきましたね……」

そう言われたオーグの顔は、非常に嫌そうに歪んでいた。

だから、なんでだよ!