軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

治療と新たな事実

『一体なにごとですか!?』

揉み合いに割って入ったシャオリンさんは、兵士に向かってなんか叫んだ。

すると、兵士はこちらを睥睨したあと、舌打ちしてどこかへ行ってしまった。

なんだったんだ?

「一体なにごとですか?」

「分かりません、家の者に聞いてみないと」

「あ、やっぱり、この人たちはシャオリンさんの家の人たちなんですね」

「ウチの使用人です」

『あなたたち、一体なにがあったの?』

俺たちに説明したあと、すぐに使用人さんになにかを話しかけた。

そして、しばらくやり取りをしたあと、こちらにも説明してくれた。

「なんでも、突然兵士がやってきて家の中を改めさせろと言ってきたらしいです」

「おいおい、ここまで実力行使にきたのかよ」

「それは分かりません。もしかしたら、狙いはウチの倉庫に保管されている竜の革かもしれませんし……」

「それはありうるな。私たちに持っていかれるのならいっそ……と思っても不思議ではない。それを我々が着く前に実行しようとしたが失敗したと。そいうことじゃないか?」

「あの刺客たちは、その足止めか?」

「そうかもな。あわよくば討ち取って、私たちがここに来た痕跡を消してしまえばいい。もし問い合わせがあっても、そんな連中は来ていないと言い張れば済む話だしな」

「……シャオリンさん。シャオリンさんには悪いけど、この国のことが嫌いになりそうだよ」

「構いませんよ。私は大分前から嫌いです」

思わず出た本音に、シャオリンさんがまさかの同意だ。

でも、それも仕方ないのかも。

ずっと前から、国に理不尽を押し付けられているんだから。

「それはそうとして、皆さん是非上がってください。おもてなし致しますので!」

シャオリンさんはそう言うと、使用人さんになにかを話した。

すると驚いた顔をしてこちらを見たあと、深々と頭を下げてきた。

そして、腰の低い態度で俺たちを案内しだす。

「さ、付いて行ってください。個別に部屋は用意できないので、大部屋に男女が分かれるくらいですけど……」

「全然構いませんよ。夜露が凌げるだけでも十分です」

「そう言って下さると助かります。それでその……お荷物を置かれたら、お願いがあるのですが……」

シャオリンさんのお願い。ということは。

「お姉さんの治療、ですか?」

「……はい」

俺の言葉を肯定したシャオリンさんは、縋るような目でシシリーを見た。

そのシシリーは、にっこり微笑んでいる。

「分かりました。すぐに伺います」

「ありがとうございます! それでは、荷物を……って、シシリー殿は荷物などお持ちではないですな」

「ええ。すぐに向かいましょう。皆さんはお部屋に行っておいて下さい。すみませんがシン君の付き添いは認めて下さいますか?」

「姉には、シシリー殿の夫君だと説明しますので大丈夫だと思います」

「それでは、案内をお願いします」

「分かりました」

こうして、俺とシシリーだけ皆と別行動を取り、シャオリンさんのお姉さんの部屋に向かった。

シャオリンさんの家は、イーロンの他の家と同じく二階建てで、足元はフローリングだった。

部屋の扉もドアで、襖とかじゃなかったな。

そうしていくつかの部屋を過ぎていき、ある部屋の前で止まった。

「この部屋です」

シャオリンさんはそう言うと、緊張した面持ちでドアをノックした。

すると中から返事をするような男性の声が聞こえた。

『シャオリンです』

シャオリンさんがそう言うと、部屋の中からガタッっという音が聞こえ、すぐにドアが開けられた。

部屋の中から現れたのは、二十代中盤くらいの男性。

少し長めの黒髪で、ちょっと優男風な人だな。

『ーーーーー?』

『ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー』

出てきた男性とシャオリンさんがなにやら話をしているけど、始めに『シャオリン』って聞いたのは分かった。

少しの間、興奮した男性と話をしていたが、こちらを振り向き、手を向けながらまた何か話した。

「失礼しました。こちら、姉の夫のユンハ義兄様です」

『-----! -----!』

「ユンハです、よろしくお願いしますと言っています」

男性が頭を下げながらなにか話していたけど、自己紹介だったか。

では、こちらも。

「俺はシンです。こちらは妻のシシリー。今回、あなたの奥さんの治療を担当します」

「よろしくお願いします」

「今回治療をするのはシシリーですが、俺はシシリーの治癒魔法の師匠にあたります。なので今回、同席させていただくことをお許しください」

『そうなんですか。もしものときはよろしくお願いします』

シャオリンさんの通訳と仲介で、お互いの自己紹介と今回の治療に俺の同席を認めてもらうように伝え、それも了承された。

『それでは、中へお入りください』

ユンハさんに促され俺とシシリーは部屋の中に入った。

そこには、シャオリンさんをもっと色っぽく年上にした女性がベッドの上にいた。

とはいえ、上半身は起こしており全く動けないという状態ではなさそうだ。

その女性は、シャオリンさんを見るなり目を潤ませて手を広げ、近付いてきたシャオリンさんを強く抱きしめた。

そして、二言三言言葉を交わすと、二人そろってこちらを見た。

「シン殿、シシリー殿、こちらが私の姉、スイランです」

「スイラン、デス、ヨロシク」

「え……スイランさん、言葉が……」

「姉も私と同じく、西方の言語を勉強していましたから。多少は話せるんです」

「そうですか。俺はシンと言います。こちらは妻のシシリー。今回治療はこちらのシシリーが担当します」

「シシリーです、よろしくお願いします」

「ヨロシク」

たどたどしいが、通訳なしで言葉を交わせた。

俺たちは西方の共通語しか喋れないから、これは凄いことだと思う。

『-----』

『------』

シャオリンさんとスイランさんがなにか話してるけど、少ししてもう一度こちらを向いた。

「シシリー殿の治療の件と、シン殿の付き添いに了承してもらえました。早速治療を開始して頂きたいのですが……」

「あ、はい! 分かりました」

シシリーはそう言うと、スイランさんの寝るベッドに近付き掛布団をめくろうとした。

掛布団に手をかけた時点でこちらを見てきたので俺とリーファンさんは、身体の向きを変えそちらを見ないようにする。

ユンハさんはスイランさんの夫なので、そのまま見ているらしい。

しばらくすると、シシリーの「凄い」や「これでこんな……」などの声が聞こえてきた。

「どうシシリー、いけそう?」

しばらく診察していたシシリーに、一応声をかける。

「あ、はい。この呪符のお陰ですかね、治療院に来られた方とほぼ変わりない状態が保てています」

とのこと。

呪符ってそんなに凄いのか。

そう思って、一緒にいるリーファンさんに声をかけた。

「呪符ってなんであれだけで起動するんです? あと、持続するんですか?」

「ああ、あれは、魔石を細かく砕いたものと墨を混ぜ合わせているんだ。起動するのに魔力がいるが、一度起動してしまえば魔石の魔力がなくなるまで持続する」

「ほええ、魔石をそんなことに使ってんのか」

「この地域は割と魔石が採れるからな。エルスにいたとき魔石が市場に出たのを見たことがあるが値段を見て驚愕したぞ。こちらではもっと安価に買える」

「そうですか。ってことはこの国って火山とか断層とか多いのか」

魔石は、高温、高圧がかかるところで多く産出されるからな。

そう思っての独り言だったのだが、リーファンさんがその独り言を聞き疑問を呈してきた。

「あるにはあるが、そんなに多くはないぞ? 魔石鉱山というのがあってな、そこで結構な量の魔石が採れる」

「……え?」

魔石鉱山?

それ専門に採掘してる鉱山があるってこと?

「それって、どういう……」

『--------!!』

俺が魔石鉱山について聞こうとした際、後ろから大きな声が聞こえてきた。

一瞬そちらを向こうとしたけど「まだこっち見ちゃ駄目です!!」というシシリーの大きな声で、なんとか踏みとどまった。

しばらく待つと振り向いてもいいという許しが出たので振り向くと、目に入ってきたのは涙を流して抱き合うスイランさんとユンハさん、そしてそれを見て泣いているシャオリンさんの姿だった。

「シシリー?」

その三人の横で、椅子に座ってホッとした表情のシシリーに問いかけると、シシリーはこちらを見てニコッと微笑んだ。

「治りました。これでもう大丈夫ですよ」

「そうか。よく頑張ったね、シシリー」

「いえ、シン君のお陰です。シン君が教えてくれたお陰で、スイランさんの病気を治すことができたんですから」

「でも、頑張ったのはシシリーだよ。だから、胸を張っていいよ」

俺はそう言って、シシリーの肩に手を置いた。

するとシシリーは俺の手に自分の手を添えた。

「はい。ありがとうございますシン君」

そう言うシシリーの顔は、ちょと照れくさそうにしつつも嬉しそうだった。

スイランさんの病気も無事に治すことができたし、シシリーの自信にも繋がった。

こっちは良い感じで収まったな。

そう思い、俺はリーファンさんにさっきの話の続きを聞こうと思った。

「そういえばリーファンさん、さっきの話なんだけ……」

そう途中まで聞きかけたとき、スイランさんとユンハさんが興奮した様子で話し始め、ユンハさんが慌てて外に飛び出していった。

な、なんだ?

「すみませんシン殿、お姉様とお義兄様がどうしても皆さまにお礼をしたいと言っていまして、夕食を祝いの席にして歓待したいとお義兄様が飛び出して行ってしまったんです」

ああ、そういうことか。

なにごとかと思ってびっくりしたわ。

そう思ってユンハさんが出て行った扉を見ていると、スイランさんが話しかけてきた。

「シシリー、サマ。シン、サマ。アリガト、ゴザマス」

そう言って、深々と頭を下げた。

そんなスイランさんを見て、シシリーは椅子から立ち上がり、スイランさんの肩に手を置いた。

「頭を上げて下さいスイランさん。私は、私の出来ることをしただけですから」

そう言って微笑んだ。

そんなシシリーを見たスイランさんが、なにかをポソッと呟いた。

その呟きを聞いたシャオリンさんが、おかしそうにプッと噴き出した。

なに?

「あ、すみません。今お姉様がシシリー殿のことを『天女様』と言ったものですから。どこに行ってもシシリー殿はそういう風に見られるのだなと思ってしまって」

「天女?」

「クワンロンでは、そちらで言う聖女様のことを天女様と言うのです」

「ああ、そういう」

「神様に愛された女性や、神様のような女性という意味です。そういえば、シン殿は魔法使いの王だけでなく、神の御使いと呼ばれているとか。そう考えると、シン殿とシシリー殿は本当にお似合いですね」

シャオリンさんはそう言うと、スイランさんに何かを呟いた。

スイランさんはシャオリンさんの言葉を聞くと、俺とシシリーを見てコクコクと頭を縦に振った。

ああ、今の話をスイランさんにしたな。

っていうか、そういう話は広めないで欲しいんですけど。

そうして少しの間スイランさんと話していたけど、病気が治ったとはいえまだ病み上がり。

体力も大分消耗しているみたいなので、しばらく休んでもらうことにして、俺たちはスイランさんの部屋を出た。

シャオリンさんとリーファンさんは引き続き部屋に残るそうだ。

部屋を出ると、さっき皆を案内した使用人さんが部屋の前に待機しており、俺たちを案内しだした。

っていうか、シャオリンさんかリーファンさんがいないと話が通じないんだけどな。

まあ、部屋に案内するだけなら大丈夫か。

そう思って、使用人さんのあとを付いて行く。

程なくして、宿泊のための部屋ではなく応接間のようなところに通された。

そこには、すでに皆が普段着に着替えて寛いでいた。

「あ、シン、シシリー、終わったの?」

マリアが出されたジュースを飲みながら、話しかけてきた。

「ああ、無事スイランさん……シャオリンさんのお姉さんの病気は治ったよ」

「はい。無事に治療することができました」

俺とシシリーがそう言うと、皆から、おお、という声が聞こえてきた。

特にエルスの使節団の人たちは、あからさまにホッとした表情をしていた。

「それはそれは、なによりですわ。それで、お姉さんと詳しいお話しとかはできそうですか?」

「そうですね。まだ体力の消耗が見られますが、よく食べてよく休めばすぐ回復すると思いますよ」

ナバルさんの質問にシシリーがそう答えると、ホッとした表情から今度は嬉しそうな顔に変わった。

「それはそれは。そしたらあとは、竜の革の取引についての相談ということですな。今回聖女様が頑張ってくれたおかげで、こちらに有利に話が進められそうですわ」

「お役に立てたのなら幸いです。でも、スイランさんはようやく病気が治って嬉しそうですので、できるだけ無茶な要求はしないであげてくださいね?」

「あ、あははは。そらもう、分かっとりますがな!」

ナバルさんはそう言ってるけど、口元がヒクヒクしているのを見逃さなかった。

……するつもりだったな。

シシリーと話したあとのナバルさんは、急いで使節団の人たちと打ち合わせを始めたから、ちょっと要求の内容を変更しようとしてるんだろうな。

ホント、利益が取れると思ったらどこまでも搾り取ろうとするんだか……。

「あ」

取れるで思い出した。

さっき、リーファンさんに話を聞こうと思ってすっかり忘れていた。

「どうしたシン」

「いや、実はさっきリーファンさんから凄い話を聞いたんだけど」

俺がそう言うと、話しかけてきたオーグだけでなくナバルさんたち使節団もこちらに興味を示してきた。

凄い話、に食いつきすぎだろ。

「で? で? 凄い話ってなんですの?」

ナバルさんは儲け話の匂いを嗅ぎ付けたのか、満面の笑みだ。

「実はさっき、この国で使われてる呪符について聞いたんですけど」

「……なんや、魔法の話ですかいな」

儲け話かと思いきや始まったのが魔法の話だったので、ナバルさんは途端に興味を失くしたような表情になった。

露骨すぎ。

「実はあの呪符ってさ、一度起動したらしばらく効果が持続するんだってさ」

「たしかに、私が剥がしたときも、まだ魔力の動きが感じられました」

「へえ」

シシリーの言葉に返事したのはアリスだ。

あまり分かってないっぽい。

けど、その事実に気付いた人もいた。

「ちょ、ちょっと待ってぇ! 張ったあとも効果が持続してたぁ? それって人の手を離れてもってことぉ!?」

ユーリが珍しく興奮した様子で食いついてきた。

やっぱり、ユーリなら気付くよな。

「それっておかしいッスよ! あれって魔道具なんすよね? 魔道具なら人の手を離れたら起動しなくなるはずっス!」

実家で魔道具の制作もしているマークもその異常性に気付いた。

「確かに、人の手を離れても魔道具が起動し続けるのは、魔石を使用した場合の……み」

そこまで言って、オーグは気付いたらしい。

「まさか……その呪符とは」

「ああ、墨に砕いた魔石を練りこんだもので書いているらしい」

その言葉にいち早く反応したのは、ナバルさんだった。

「魔石を墨に混ぜるうっ!? なんちゅう勿体ないことしよるんや!!」

その顔はマジで激おこだった。

その顔は、アールスハイド王都にあるウォルフォード商会で、洗浄機能付きトイレを発見したとき以来だ。

なんで話してくれなかったのかと、問い詰められたときと同じ顔してるよ。

そんなナバルさんに、魔道具を制作する側の人間であるユーリとマークも同意している。

「本当よぉ。そんなことしたら、あのお札一枚で幾らになるか想像もつかない値段になるわよぉ?」

「それが用意できるほど、シャオリンさんの家は裕福なんスか……」

確かに、俺も最初はそう思ったよ。

けど。

「それがさ、どうも違うらしい」

「「「え?」」」

ナバルさん、ユーリ、マークの三人の声が重なった。

「さっき、リーファンさんが言ってたんだよ、エルスで魔石を見たとき、その値段に驚いたってな」

「値段に……ということは!」

さすが、オーグはいち早く気付いた。

「ああ。高すぎてビックリしたそうだ」

俺の言葉に、皆の、特にナバルさんの息を呑む音が聞こえる。

「なんでも、魔石鉱山というのがあるらしい。そこから結構な量の魔石が採掘されるらしくて……」

そこまで話したときに、ナバルさんに「ガッ」と肩を掴まれた。

「ナ、ナバルさん?」

「魔王はん! そらとんでもない話やないですかああああっっ!!」

今まで見たことがない表情で絶叫した。

「こらえらいこっちゃ! 竜の革もそうやけど、安価で魔石が仕入れられるなんて情報、誰にも漏らしたら……あ」

ナバルさんはそう言うと、ギギギとオーグの顔を見た。

オーグの顔は……ニヤッと笑って、悪そうな顔をしていた。

「スマンなナバル外交官。しっかりと聞かせてもらった。当然、うちも魔石の買取に参加させてもらうぞ?」

その言葉を聞いたナバルさんは、ガックリと膝をついた。

「魔石の独占販売ができたら、大儲け間違いなしやったのに……」

そう言って絶望に打ちひしがれるナバルさんだったが……。

「いや、別に独占でなくても、魔石交易の販路を築いたとなれば相当な功績だぞ? それこそ、次期大統領の座すら狙えるのではないか?」

そうだよな。

安価で売られるほど魔石が発掘される鉱山と取引することができれば、独占でなくても大儲け間違いなしだ。

そんな西側諸国初の快挙に携わったのなら、とんでもない功績だろ。

それに気付いたのか、ナバルさんはすぐに復活し使節団の人たちを集めた。

「こら、ぼやぼやしとる間はあらへんで! すぐに魔石の交易に関しての打ち合わせをせな!」

そう言うや否や、ナバルさんは使節団の人たちと打ち合わせを始めてしまった。

「やれやれ、こんなことがあるとはな。竜の革の取引については、最初に話を聞いたエルスに優先権があると思って主張しなかったが、魔石の話を聞きつけたとなるとそうはいかん。ウチも噛ませてもらうぞ」

「まあ、それを決めるのは俺じゃないけど。結局、交渉もこっちの……なんだろ、魔石商とかっているのか? その人たちとの話だろ?」

「いや、できれば魔石鉱山と直接取引したい。それはどこにあるのだ?」

「まだそこまでは聞いてないんだよな。それに……」

「それに?」

「ちょっと、気になることがあるんだ」

俺がそう言うと、オーグは黙り込んでしまった。

「なんだよ?」

「いや……お前の気になる話ってのは碌なことがないからな……聞くのが怖いな」

とは言ってもな。

それにこれ、俺じゃなくてオーグが聞いても気になった話だと思うぞ。

「実はな、そんだけ魔石が採れるなら、さぞかしこの国には火山や断層が多いんだろうなと思ったんだよ。でも……」

「おい、まさか違うのか? それとも、お前の説が間違っていたのか?」

「それはない。実際に実験して実証したし、魔石に高温高圧が必要なのは間違いない」

「では……」

「ああ、この国には、それほど火山も断層も多くはないってことだ」

その話をしたら、皆黙り込んでしまった。

「え? どういうこと?」

アリスは、分からなくて沈黙してただけらしい。

そんなアリスを見て、リンははあっと溜め息を吐いた。

「あのねアリス。ウォルフォード君が言った条件で魔石が精製されてないってこと」

「え? なんで?」

「だからおかしいってことだよねえ」

リンの説明でも分かってないアリスに、トニーが追加で説明した。

「魔石の精製にはシン殿の発見した条件が必要なのは間違いないはずです」

「しかし、そうでないのに魔石が採れるってことはどういうことだと思うで御座るか?」

トールとユリウスの質問に、アリスは少し考えたあと、こう言った。

「誰かが埋めた、とか?」

そう言ったあと、自分でもそれはないと思ったのか「なんちゃって、あははは」と笑いだすアリス。

けど……。

「あながち、間違いじゃないかもな」

「はえ?」

言った本人のアリスは、まさか肯定されるとは思ってなかったのか、間抜けな顔して固まってた。

そして、オリビアが決定的なことを言った。

「つまり魔石鉱山には、魔石を生み出す遺跡があるかも……ってことですよね?」