軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

シャオリンの質問

女性陣がお風呂から出てきたあと、俺たちも続いてお風呂に入った。

いつもならわいわいと騒がしくしながら入るのだけど、このあとに控えていることを考えると気分が重い。

女性陣と入れ違いでお風呂に入る際、リーファンさんがシャオリンさんにさっきのことを話し、風呂あがりにさっきの話の続きをすることに決まってしまったからだ。

シャオリンさんは、リーファンさんの言葉を聞いた際、少し驚いたような表情をしたあと、決意を込めた表情で俺を見てきた。

その際に二人で話していた言葉は聞き取れなかったので、あれがクワンロンの言葉なのだろう。

なので、なにをどういう風に伝えたのかも分かっていない。

はあ……一体なにを聞かれるんだろうな。

もしかしたら、リーファンさんも転生者で、前世の言葉を使うのはズルいとか卑怯だとか言われるんだろうか?

憂鬱だけど、いつまでもグダグダと風呂に入っていても仕方がない。

俺は覚悟を決め、風呂からあがった。

風呂からあがり、俺、オーグ、リーファンさんでシャオリンさんを呼び出す。

すると、一体なにごとかとゾロゾロと他の皆まで付いてきてしまった。

その中にはシシリーもいる。

「あれ? シルバーは?」

「もう眠ってますよ。それより、シャオリンさんとリーファンさんがシン君に話があるって聞いたんですけど」

「シャオリンさん?」

「あ、す、すみません……リーファンとの会話を問い質されて、ついシン殿に確認したいことがあるって言ってしまって」

「そう、ですか」

「なんの話か気になってしまって……私たちも聞いてはいけませんか?」

はあ……マジか?

え? もしかして、皆の前で告白しないといけない流れになっちゃうの?

どうしよ……。

そう思ってリーファンさんを見ると、リーファンさんは腕を組んだまま表情を変えずに言った。

「別に構わない。できれば、皆さんの意見も聞きたいしな」

退路絶たれた。

これは、皆の前で前世の記憶とか言わないといけない流れだ。

はあ……これ話しちゃったらどうなるんだろ……。

皆に白い目で見られたりするのかな?

……やだなあ。

俺のそんな思いとは別に、話はどんどん進んでいって、結局女子だけでなく男子も一緒にシャオリンさんたちの話を聞くことになった。

集まったのは、男性用のテント。

出してあったベッドを一旦異空間収納にしまって、円になって座った。

ちなみに、万が一のためにシルバーの寝ているベッドもこのテントに運び込んである。

そして、皆が座ってからシャオリンさんが話し出した。

「シン殿には時間を取らせて申し訳ありません。実は、どうしても確認しておかなければいけないことがありまして」

「……文字、のことだとか?」

「はい。そうです。単刀直入に聞きます。シン殿、あの文字はシン殿のオリジナルだと聞きましたが、間違いないですか?」

「そう、です」

シャオリンさんの質問に、俺は最後の足掻きとして嘘を言った。

「そうですか……ただ、そうなると、どうしても腑に落ちないことがあるのです」

「腑に落ちない?」

シャオリンさんの言葉に、オーグが反応した。

「はい。というのも、あのシン殿の用いた文字は……」

そこで一旦言葉を切り、シャオリンさんは俺を見た。

「私たちが、以前に見たことがある文字だったからです」

『え!?』

皆と一緒に、俺まで叫んじゃったよ。

え? 漢字がこの世界にあるの?

「えってお前、あれはお前のオリジナルではなかったのか?」

「そ、そのはずだけど……どの本にも使われてなかったし」

「ならばなぜ……」

「そう、それが疑問なのです」

オーグが問い詰めようとしたところを、シャオリンさんが引き継いだ。

なぜ、書物にも載っていない文字を、俺が知っていたのかと。

ここにきて俺も混乱してきた。

そんな偶然があるか?

この星は地球じゃない。

それは星座が違うことから確定だ。

星座が違うということは、仮に同じ宇宙だったとしても座標が違うからだ。

確かに、この星は生態系が地球に酷似してる。

ひょっとしたら、人間が住める星というのは同じような進化を辿るのかもしれない。

けど、文化まではどうなんだろう。

地球でも、地域が違うだけで言葉も文字も違う。

それが星単位で違うのに文字が一緒だった?

そんな混乱している俺に、シャオリンさんは続けて言葉を放つ。

「シン殿が用いた文字は、今はもう使われていません。いわゆる古語と呼ばれるものです」

「今は使われていない?」

「ええ。しかも、それが文字だということは分かるのですが、意味までは解明されていないのです」

それが漢字ってことか。

俺はそういう感想を持っただけだったけど、オーグは違った。

「なっ!? 解明されていないだと!?」

「お、おい、オーグどうした?」

「どうしたもこうしたもあるか! いいか? 我が国でも古い言葉はニュアンスが伝わりにくいから古語などと呼ばれているのは知っているな?」

「ああ、あれな。正直、あれって授業でやる意味あんのか?」

「そういう話じゃない。今は使われていない古語とはいえ、なにが書かれているかは分かる。なぜだか分かるか?」

「そりゃお前、言葉が急に変わった訳じゃないんだから、徐々に変わって行けば前の言葉の意味くらい分かるだろ」

「そうだ。だが、解明されていないということは……」

「あ……」

そういうことか。

「歴史が繋がっていない。つまり……」

オーグはそう言うと、驚愕の目でシャオリンさんを見た。

「はい。今日、あなた方が飛行艇内で話していたことです。私たちの文明が始まる前に、前文明があったのでないかと」

「まさか……」

シャオリンさんの言葉に、オーグは呆然としたように呟いた。

「前文明は……本当にあったのか!?」

その言葉にチーム全員が驚いた。

まさか、今日の昼間にゴシップの類だと思って話していたことが本当だったなんて夢にも思わなかった。

「私たちの国では、時々非常に古い遺跡が発掘されます。それは、どう見ても私たちが知る歴史よりも古い時代のもの。そして、そんな遺跡の中に……」

「言わなくても分かる。つまり、シンが使っていた文字が書かれていたと」

「その通りです」

これはまさしく衝撃的だ。

まさかそんな話だとは思ってもみなかった。

なんというか、歴史ロマンにあふれる話ではある。

けど……。

「なあオーグ、幻の前文明があったかもしれないってのは分かったけどさ、なんでそんな深刻そうな顔してんだよ」

「お前……今日の会話を忘れたのか?」

「今日の会話?」

「……この砂漠についてだ」

「砂漠……」

『なんでも、前文明っていうのがあって、その戦争の跡地だとか』

『前文明?』

『なんでも、高度な魔道具を作成することができてたらしいよ。その魔道具の行きついた先が前文明の崩壊とこの砂漠地帯なんだってさ』

「あ」

「ようやく理解したか」

「あ、ああ」

シャオリンさんが真剣な顔をしていた理由、それは……。

「前文明は、非常に高度な魔道具制作の技術を持っていました。それはすでに立証されています」

「立証?」

「これを見て下さい」

シャオリンさんがそう言って懐から取り出したもの。

それは……。

「……!」

思わず大きな声を出しかけたけど、どうにかこらえた。

だって、それは。

どう見ても銃だったから。

「これは武器です。一年に及ぶ長い旅程。リーファンだけでは対処しきれない場面も当然ありました。ですが、これのお陰で私は危機を脱することができました。付いてきてください」

シャオリンさんはそういうと、立ち上がってテントから出た。

寝ずの番をしている護衛の人たちが、何ごとかとこちらを見ている。

「これは、このように使います」

シャオリンさんは、そんなこと気にもせず、近くに合った岩に向かって銃口を向け引き金を引いた。

すると、その銃口からレーザーのようなものが発射され、岩を貫通した。

その光景に、護衛の人だけじゃなく、皆も呆然としていた。

「このように、敵に攻撃することができます。そしてこれは……」

「……遺跡から出土したもの……」

「そうです。もちろん、こうした遺跡の出土品は高価なものですが、割と出土します。それこそ私が手に入れられるくらいには」

つまり、これは量産品だったってことだ。

ということは……。

「国として見た場合、当然あるでしょうね。これ以上の武器が、それこそ……」

シャオリンさんはそう言って周囲を見渡した。

「この砂漠が生まれてしまうほどに強力な兵器が」

『……』

沈黙が痛い。

「そこで最初の話に戻ります。遺跡からは、シン殿が使っていた文字が見つかっている。そして、おそらくこの魔道具にもそれと同じ文字が使われている」

そう言ってシャオリンさんは俺をじっと見た。

ああ、ここまでくれば言いたいことは分かる。

「つまり、俺がその兵器を作れるんじゃないか……って言いたいわけか」

「はい。本来の依頼とは全く関係のない話で本当に申し訳ないのですが……知ってしまった以上はどうしても確認したいのです。シン殿、あなたは……」

少し、言うか言わないか逡巡したシャオリンさんだったが、結局口を開いた。

「この世界を滅ぼすほどの兵器を作れますか?」

そう言うシャオリンさんの言葉は、真剣そのものだった。