軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

リーファンの疑念

急遽、シルバーも参加となった今回のクワンロン訪問。

今はその道中で野営中なのだが、初めての野営にシルバーのテンションがヤバイ。

「きゃー!」

もうすぐ二歳ということで、ダッシュはできないまでもよちよち歩きであちこち歩きまわるので、ひと時も目を離せない。

特に焚火のそばには絶対に一人では行かせられない。

使節団の人たちも協力してくれて、休むはずの野営なのに全然休めてない。

「すみません……ゆっくり休んでもらわないといけないのに……」

申し訳なさでいっぱいだった。

だが、使節団のひとたちは気にするなと言ってくれた。

「道中、身体動かさんとジッとしとったからな。丁度エエ運動になるわ」

とナバルさんは笑いながら言ってくれた。

それにしても……オーグから、三国会談のときは結構無茶な要求をされたと言っていたけど、会談のあとの態度とか今の言動からも、そんな風には見えない。

商人さんだから、色んな顔を使い分けてるんだろうか?

そんな話をナバルさんたちとしていると、シシリーが野営中を動き回っていたシルバーを捕まえた。

「ほらシルバー、そろそろお風呂に入りますよ」

「や!」

「嫌じゃありません! 行きますよ!」

「うー」

そろそろお風呂に入れて寝かしつける時間か。

いつもなら、夕飯を食べ終わったあとにお風呂に入れて、しばらくしたら自然と寝てしまう。

お風呂も、俺が入れたりシシリーが入れたり、一緒に入ったりするのだが今までシルバーがお風呂の誘いを断ったことなどない。

今日は、普段と違う野営という珍しいシチュエーションなので、テンションが中々下がらないんだろう。

もっと遊びたいと、シシリーの腕の中から抜け出そうともがいている。

「あはは、かーわいー。ねえ、シルバーくん、おねえちゃんたちと一緒に入ろ?」

普段夜まではシルバーと一緒にいないアリスが、一緒にお風呂に入ろうと誘っている。

他の女性陣も興味津々だ。

シルバーは、しばらくアリスの顔を見ていると、今まで一緒にお風呂に入ったことがない人とお風呂に入ることに興味を惹かれたのかコクリと頷いた。

「よーし、じゃあ今日は、ママの代わりにマリアおねえちゃんが洗ってあげるぞ!」

「おねえちゃん?」

「おばちゃんなんて言わせるか!」

卒業式でも言ったけど、両親の友達はおじちゃんとおばちゃんなのでは……。

実際、オーグは「おーちゃ」ってアーロンさんと同じ「おじちゃん」って呼ばれてたしな。

王太子をおじちゃん呼ばわりって……。

あ、でも、俺もディスおじさんのことおじさんって呼んでるわ。国王なのに。

シルバーも、将来俺と同じような感じになるのだろうか?

……まあいいか、オーグだし。

結局、女性陣皆でお風呂に入るらしく、野営用のお風呂用テントにゾロゾロと入って行った。

そのあとに男性陣が入るということになっているので、まとめて一度にということでシャオリンさんも同行している。

当然、リーファンさんが残った。

「いやはや、騒がしくてすみません」

「いや。元気な子だな」

「はは、元気過ぎて困ってます」

そういえば、リーファンさんと二人で話すのは初めてだな。

ちょっと緊張してしまう。

なので、とりあえず無難な話題で話しかけてみた。

「そういえば、リーファンさんご結婚は?」

「いや。俺はミン家に拾われた身だ。俺の命はミン家に捧げている、結婚などするつもりはない」

「そうなんですか」

……。

か、会話が続かない……。

あ、でも、シャオリンさんとは一年も一緒に旅を続けていたし、その後もずっと一緒にいた。

そういう関係ではないのか?

「あの、シャオリンさんとは……」

「あの方は俺の主君だ。ミン家に拾われたと言ったが、実際はシャオリンお嬢様に拾われたのだ。その恩に報いるだけであり、邪な感情など持ち合わせていない」

「邪って……」

まあ、主と従者の恋って、なんか障害とか多そうだけどね。

話的には盛り上がりそうなのになあ。

「ところでシン殿」

「はい?」

シャオリンさんとリーファンさんの関係を考えていると、不意にリーファンさんから話しかけられた。

「少し聞きたいことがあるのだが……」

「なんですか?」

「その……」

ん? リーファンさんが言い淀んでる。

武人気質なリーファンさんは、割とハッキリものを言う人だと思っていただけに、こうして言い淀んでいる姿は珍しく感じてしまう。

そんなに聞きづらいことなんだろうか?

「……さっきは秘密だと言っていたのだが、付与魔法のことだ」

「ああ……」

俺が秘密だって言ったから言い出せなかったのね。

それにしても、わざわざその秘密を知るためにしては随分とストレートに聞いてきたな。

普通、コッソリ探ったりするもんなんじゃないの?

とはいえ、俺の答えは一つだ。

「すみませんが、それは秘密で……」

「俺が聞きたいのは、付与の方法ではない」

「え?」

「使用していた文字についてだ」

「文字……ですか、それは、俺のオリジナルで……」

「本当にそうか?」

「え?」

「あの文字は、本当にシン殿のオリジナルの文字なのかと聞いている」

「え、その……」

「なんだ? なんの話をしている?」

俺がリーファンさんの質問に戸惑ってしまったとき、オーグが会話に入ってきた。

た、たすか……。

「王太子殿か。貴殿にも伺いたい。シン殿が使っている魔法付与の文字に心当たりはないか?」

ちょ、オーグにまでその質問するのかよ!

リーファンさんの質問を受けたオーグは、何を言っているのかという感じで眉を顰めながら答えた。

「あれはシンが独自に開発した文字だ。故にシンにしか意味は理解できないし他の者には使えん」

それは、俺が今まで周りに話していた内容そのまま。

文字の意味を自分で理解していないと魔法は付与できない。

あれは俺が独自に作った文字だから、他の人には使えないんだと、そう言っていた。

だが、リーファンさんは納得しなかった。

「そういう認識か……」

「? どういうことだ?」

そのリーファンさんの言葉に、オーグが食いついた。

え?

どういうことだ?

リーファンさんはなにか知ってるのか?

も、もしかして……この人も転生……。

オーグの問いに答えず、しばらく考え込んでいたリーファンさんだが、やがて顔をあげてオーグを見た。

「私の一存では話すことができない。シャオリンお嬢様が入浴を終えられたら、そのときに話そうと思う」

「ふむ、どうにも気になるが……まあいい、話してはくれるのだな?」

「もちろんだ」

リーファンさんはそう言うと、俺を見て言った。

「あれは……危険なものだからな」