軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第81話 夜這い?

ふと、朝日をまぶたに感じ、パチリと目を開けます。

寝過ごしました!

……あ、知らない天井です。私は謹慎処分中なので、早起きしなくていいのでした。

二度寝をするために寝返りを打ちます。

が、視界に黒いものが映り込んでくるではないですか。

レクスが私のベッドの中に……そう! 寝過ごした原因はコイツです。

昨日寝る前から外から音が聞こえ始め、誰かが訓練をしているのだろうと思っていました。

ですが、夜中になっても音が止まないので、窓を開けて訓練場に向かって冷気を放って閉めました。

私の安眠を妨害するなと、訓練場を凍らせたのです。

すると窓からその張本人が侵入してきたではないですか!

さっき窓に鍵をかけたにも関わらずにです。

ファングラン家は人の暮らすところではないのかもしれません。

「何か御用でしょうか?」

「レクス。何も用はない。さっさと寝ろ。あと私の安眠を妨害するな」

そう、夜中に訓練場にいたのはレクスだったのです。

それはこの屋敷の主ですから、いつ訓練場を使っても使用人たちはなにも文句は言わないかもしれません。

ですが、常識として安眠を妨害するような爆音は駄目でしょう。

「しかし、寝るのは好きではなく……」

「だから! 睡眠は好き嫌いではなく必要なことだ!」

これ、いったいいつ寝ているのですか?

まさか、気絶するまで寝ないとか言いませんわよね?

「さっさと出ていけ」

私は手を布団から出して、部屋から出るように言います。これ不法侵入ですよね?

でも、この屋敷の主だとならない?

いやいやいやいや、客室に勝手に入っては駄目に決まっています。

「しかし、気がつけば隊長が居なくなっているかもしれません」

「意味がわからないことを言うな。謹慎処分を出したのはレクスだろう。早く寝ろ!」

「寝て起きたら、今までの幸せが夢という現実を突きつけられるのではと……」

「うざい!」

私はベッドから飛び出して、意味がわからないことを言い出したレクスの首元に手刀を落として、レクスを黙らせました。

床に崩れ落ちるレクス。

そして床に放置したまま、布団に潜って私は寝たはずですが、何故にレクスが私のベッドの中にいるのでしょうか?

そのレクスの片目が開きました。

「隊長が私のベッドに……もしかして夜這い……」

「するか! 勝手に客室に入ってきたのはレクスのほうだ。私のほうが聞きたい。床に転がせておいたのに、何故にベッドにいるのかと」

私は身体を起こして、レクスを蹴り落とそうと足を出したところで、どこからともなく声が聞こえてきました。

「それは私が旦那様をベッドに戻しました。おはようございます。訓練場が凍りついていると、庭師からクレームがきてございます。マルトレディル様」

私は気配がなく声が聞こえたほうに視線を向けると、トレイに何かを乗せて入ってくるアリアの姿がありました。

この状況、絶対に慣れないと思います。

私はパチンと指を鳴らして、訓練場を凍らせた魔法を解きました。

ええ、すぐに氷が溶けると、再び訓練を始められたら私が寝られないので、朝まで凍るようにしておいたのです。

「アリアさん。その言い方はおかしいです。元々レクスはこの部屋にいませんでしたので、戻すのはレクスの部屋です」

というか、その時間までアリアも起きていたということですか。

「客人の要望をお聞きするのも我々の仕事でございますが、旦那様の希望を叶えるのも我々の仕事です」

「ちょっとその辺り話し合いましょうか。これ以上変な噂が広まるのは困るのですよ」

アリアの意見は使用人としては真っ当です。しかし、常識的に考えて、客人のベッドに主を寝かせるのは如何なものなのでしょうか?

「隊長。寝起き姿、凄くかわいいです」

「レクス。部屋を出ていけ、あと早く騎士団に行って仕事をしてこい」

「メリーナのときのふわふわの髪もいいですが、ストレートの髪のほうが隊長らしいです」

部屋を出ていくように言うも、レクスは近づいてきて私の髪を触ってきました。

ちょっと近いです!

今の私の姿はダボッとしたワンピース型のナイトシャツしか着ていないのですからね!

「隊長と一緒に朝食をとってから行きたいです」

「……それ、いつもより遅い時間になりますよ?」

既に朝日が昇っているので、今の時間帯ぐらいにいつも騎士団に出勤していますよね?

というか離れてください。

私の髪の毛を指でくるくるして遊ばないでください。

「騎士団か隊長かを選ぶなら、迷うことなく隊長を……」

「さっさと行け!」

私はレクスの手をパシッと叩いて、髪から離します。

というか、アリアも注意してください。

いつまで、客の部屋に入り浸っているのかと。

「旦那様。今日はお休みでしょうか?」

「そうしよう」

「レクス! 今は暇をしているときではないだろう!」

そう言って私は思いっきりレクスのみぞおちを蹴ったのでした。

「マルトレディル様。一つ確認させていただきたいことがございます」

レクスを追い出して、アルバートの私服に着替えているところで、アリアから神妙な面持ちで声をかけられました。

今更、女か男か確認されるのでしょうか?

それぐらいエストから聞いていますよね。

「マルトレディル伯爵夫人の教育方針はどのようなものなのでしょうか?」

「は?」

思ってもいないことを質問されました。

「一部では崇高な信者と言われるマルトレディル伯爵夫人の教育をぜひ参考に聞かせて欲しいのです。教本はやはり氷姫全集ですか? それに……」

「あの?それを聞いてどうするのです?」

確か結婚されていないと執事のハイヴェーラが言っていましたので、子どもの教育ということではないでしょう。

「甥っ子の教育の参考にいたします」

すると、遠くのほうで何かが破壊される音が聞こえてきました。訓練場ではなく、建物の中からです。

「ちっ!」

そして何故か舌打ちをするアリア。

「地獄耳のお兄様がくる前に、お教えいただけませんでしょうか?」

地獄耳? まさか! この建物内での会話は全部筒抜けなのですか!

遠くのほうから『アリア! 止めなさい』というハイヴェーラの叫び声が聞こえてきます。

あと二日、このレクスの屋敷で私は無事に過ごせるのでしょうか?