軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第73話 最悪だ

「あと何箇所ですか?」

「ここで三十箇所目です。だからあと二十箇所ですね」

やる気がないグレンバーレルの横でタバコを吹かす私。

だいぶんイライラが溜まってきました。

しかし、人の目があると怪しまれるので、隠蔽の魔法を使いながら、三十個も魔法陣を作るグレンバーレルは凄いのでしょう。

「面白くないです」

この単純作業に飽きてグチグチと言わなければです。初めから飽きていましたけど。

「はい。次だ」

「はぁ。本気で昼までに終わらせるのですか。三日に分けてもいいのでは」

「暇なら貴様がまだ隠していることを話せ」

光に満たされて次の場所に到着しました。

体勢が変わらないまま魔法陣を施すグレンバーレル。

動くのも面倒だというのをひしひしと感じます。

「何をですか?」

「サイバディラだったか? 内密に魔導師団長が動かなければならない理由がわからないのだが、私に魔導生物の疑いをかけた理由がそうだったりするのか?」

前任の魔導師団長が内密に動かなければならない理由。それを考えていました。

普通のスパイであれば、特殊部隊に情報を与えて探して捕まえてもらうのが筋というものです。

それを行わなかったのは相当な理由があるとおもわれました。

そして先日汚部屋で会ったときに私を魔導生物扱いしてきたのです。

普通であれば思いつかないことでしょう。

あ、グレンバーレルの脳内補正は私には理解できないので、そこは省きます。

「はぁ、魔導生物というのは表向きです。本来の研究は 人工生命体(ホムンクルス) です」

「何が違うのか、さっぱりわからない」

「天と地ほど違います。魔導生物は造った者に忠実です。造った者の魔法で作られていますから」

「……」

私が魔力を魔法陣に流せば、次を促さなくても転移で移動するグレンバーレル。

話をふる選択を間違ったかもしれません。

これ、話が長くなるパターンです。

思考と行動が別になっています。

そう、飽きているという行動が無意識化しているのです。

「これの用途は使い魔が多い。忠実に主の命令を聞く雑用係です」

それなら、あの汚部屋を綺麗にする命令を出して欲しいものですね。

「 人工生命体(ホムンクルス) は核の素体から人を造り上げることです」

「で何が問題なんだ?」

これだとただ単に人型のモノが出来上がるだけに聞こえます。

「個別の意志を持ち、己で考えて行動を起こすのです」

「ん? 造った者の命令を聞かないなんて不具合の塊じゃないのか?」

「そうでしょうか? 騎士たちに同じ行動をさせるのに、魔術の契約は必要ないですよね」

それは人だからです。……あれ? さっき人を造り上げると言いましたか?

「例えば幼い内に、君は国のために戦う兵士だと教え込ませれば、一人の兵ができあがると思わないですか?」

「あ……多くの兵を無尽蔵に作れると?」

これは、大問題です。

死を恐れない兵を作ることが可能ということです。

あれ? 感情はあるのでしょうか?

「それは、どこまで人と同じなのだ?」

「そうですね。サイバディラは記憶以外まったく同じの自分自身を作るまで至っていましたね」

あ、だから私を魔導生物と言ったのですか。フェリランの行動パターンをするモノだと。

「ただ、核の素体と肉体を構成する力の親和性が悪ければ、成長過程で瓦解するという欠点がありましたね」

「今、思ったが、欠点まで知っているとはどういうことだ?」

研究ということは、普通はそういう欠点は他人に言わないでしょう。

魔術師は自分の魔法にプライドを持っていますから。

「色々相談されていましたからね。何か焦っているようでした。成果を上げなくても、あの魔導師団長からは何も言われないというのにです」

帝国側から指示を受けていたということですか。兵の増員として。

しかし、成長過程ということは、それなりに育つ必要があると聞こえます。時間がかかりそうなもののようですね。

「それで、魔導師団長と私が懸念していることは、戦場の死神の復活です」

「は?」

「千人の兵より、一人の英雄ですよ」

その言葉に血の気が引いてきます。

今までいた戦場の死神が現れれば、この国など一瞬にして滅んでしまうでしょう。

「フェリラン。貴女の死体はどうなりましたか?」

「え? それを本人に聞くのか?」

「素体。フェリランの死体があれば、もう一人の貴女が存在できるのです」

ああ、それを心配しているのですか。

私は白煙を吐き出します。そして青い空を見上げました。

「私の身体は氷になって砕けだだろう。限界まで戦った結果だ」

「肉体の魔力化ですか。無茶をしましたね」

「ふん! 部下が命をかけてくれたのだ。隊長の私が命をかけなくてどうする」

私には待つ家族などいないのです。待つ家族がいる部下たちに死ねと言った私が、生き残る理由などないのです。

「だったら烈火のアディフィールはどうですか?」

……その言葉に私は手に持ったタバコを落としてしまいました。

首は回収して通りすがりの衛生兵に渡したが、仁王立ちした身体はそのままでした。

敵ではありましたが、死した肉体を更に痛めつけようとは思いません。

彼の死には敬意を払わねばと思ったほどです。

「もしアディフィールの 人工生命体(ホムンクルス) が存在していたらどうです?」

「最悪だ」

「そうですよね。これが魔導師団長が単独で動くことになった理由です」