軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第72話 仕事ができない馬鹿は嫌いです

「思ったのだが、私が魔力を込める意味があるのか?」

隣の敷地の塔の地下まで、物を壊さない程度に本気で走り、物置部屋に入ろうとしていたグレンバーレルを引きずって、騎士団本部の門の前まで戻ってきました。

その門の前でしゃがみ込んだグレンバーレルは魔力で魔法陣を描き、その隣で私が魔力を更に込めるということをしているのです。

無駄ですよね。

これはそのままグレンバーレルが魔力を込めたらいいのではないのですか?

「これ、あと何回繰り返せばいいのでしょうね。飽きました」

「飽きるのが早い。あと王都周辺で五十箇所だ」

五十箇所というのは王都周辺にある中隊の隊舎です。流石に本部だけでは人で溢れかえってしまいますからね。

王都周辺に中隊の隊舎が点在しているのです。

「はぁ、部下にまかせていいと思います。私がわざわざ行う必要などないですよね?」

「一日で終わらせられるのか?」

「はぁ……五十人出せば……いけますかね?」

この魔法陣一つ作るのに、一人必要と言っていますよね? どれだけ複雑な魔法陣を組んだのですか?

「それよりも、その魔力量の底を見るためには、妥協すべきでしょうか?」

「やはり、人の魔力を枯渇させようとしているのか。かなり魔力を消費すると思っていたが」

そのとき、殺気を感じて騎士団本部の入口を見ると、何やら怪しいオーラをまとった人物が出てきたではないですか。

あれ、サボりですよね。絶対にサボりですよね。

この数分であれほどの書類の山を全部捌いたとは思われませんから。

「ファングラン団長閣下! 如何なさいましたか」

門番の騎士がレクスに向かって敬礼しました。ですが、膝がガタガタと震えています。

殺気がだだ漏れですものね。

昨日から本当におかしいですよね。グレンバーレルを敵視しても無駄ですよ。相手は魔法のことしか頭にないですから。

「団長。ご命令通りに順調に進んでいます」

私は立ち上がって、団長に報告している従騎士を装います。ええ、これは団長の命令ではなく、セレグアーゼ経由の仕事ですからね。

そう、特殊部隊の将校セレグアーゼの命令です。

「このあと数か所回って、正午には完了予定です」

「え? 昼までに終わらせる気なのですか?」

私はしゃがんだままのグレンバーレルを睨みつけます。

終わらせるのです。

「ですので、団長。昼食は一緒にとるので、山のようなお仕事を終わらせてくださいね」

サボらないでくださいと、レクスに向かって笑顔でいいます。

団長の仕事量は本当に半端ないのです。

少しでもサボると後に響くのです。

……無言で殺気をまとったまま見下ろしてくるレクス。

「あ、帰りにお菓子でも買って帰りますね」

笑顔を浮かべながら、空を見上げたまま動かなくなっているグレンバーレルの肩を叩いて、次に行くように示唆した。

「はぁ、他の者に任せたほうが……」

ガンとグレンバーレルの背中を蹴り黙らせます。一人一回しか施行できない陣など、他の人に任せられないでしょう。

「マルトレディル。他の隊員でも代わりができるでしょう」

二人の団長が他の人に任せようとしています。言っている意味は別々ですけどね。

私は笑顔のまま魔法陣を飛び越えて、レクスの前に立ちます。

「団長。そんなに殺気立たないでくださいよ。今回のご命令は私が責任をもって遂行させていただきます」

そう言いながら、レクスを回れ右をさせて、騎士団本部のほうに行くように促しました。

「しかし、グレンバーレル魔導師団長と二人など……」

私に背中を押されているレクスがよくわからない理由を言ってきました。

相性は最悪ですが、仕事ならある程度は妥協しましょう。

それに、私にも言いたいことがあります。

「レクス。私は仕事ができない馬鹿は嫌いだ」

「え?」

仕事ができない部下をしつけるのも上官の役目です。まぁ、今はレクスが上官ですけど。

扉を開けて、その中にレクスを押し込みます。そして、その扉を閉じながらはっきりと言いました。

「昼までにあの書類を処理できていなければ、次の休みに出かける話はなしだ」

その一瞬の隙間から絶望の表情を浮かべるレクスが見えました。

バタンと閉じる扉の向こうからうめき声が聞こえますが、今はそれどころではありません。

私は瞬時にグレンバーレルのところに戻ります。

「逃げようとするな」

「帰ろうとしているだけです」

転移で移動しようとしているグレンバーレルの首根っこを掴んで引き留めました。

すぐに引きこもろうとするのはやめて欲しいものです。

「次だ。次」

「はぁ、帰りたい」

グレンバーレルはそう言って転移を発動させました。

「団長の従騎士も怖い」

転移するときに、門番の騎士の声が聞こえてきましたが、私は怖くはないですよ。